音声について

普通の文字を読むことが困難な場合、点字で読む方法がありますが、近年、中途視覚障害者が増えるにつれ、点字を読むことが困難な方も増えてきました。また、点字で読むものと音声で情報を得るものを、種類によって区別して利用している人もいます。

音声による情報には、録音によるもの、対面朗読、合成音声によるものなどがあります。

音訳(音声訳)

書かれた文字を、視覚障害者の目の代わりに、声に出して読むことを「音訳(音声訳)」と言います。

文字を読むことは誰にでもできそうですが、正しい発音・アクセントで、聞きやすい速度で読むには、訓練が必要です。

また、日本語には漢字がありますから、漢字を正しく読まなくてはなりません。固有名詞も曖昧な記憶や推測で読むことはできません。持っている辞書や図書館・インターネットなどで常に調査することが、音訳者には求められます。

アクセントのちがい

「飴」と「雨」、「端」と「橋」と「箸」など、同じ語でもアクセントの違いによって意味が異なってきます。

たとえば、

火がつく
日が落ちる
歯が痛い
葉が落ちる
雨が降ったので飴をなめた
咳が出るので席を変わった
未知の人から道を聞かれた

読み方によって意味が異なってくる文

意味が正しく伝わるように読まなければなりません。

庭には二羽鶏がいます。
会社の廊下を見たことがある男の子が歩いていました。
その建物は遠くに見える高いビルのすぐ近くにあります。

読みを間違えやすい漢字

うっかり、読み間違えてしまう漢字もあります。
次の漢字を読んでみましょう。

一矢
花穂
言質
他所様
奇しくも
箴言
遂行
神道
大音声
柿落とし
漸次
弱竹
喧伝
労しい
美味しい
【答】一矢(いっし) 花穂(かすい) 言質(げんち) 他所様(よそさま) 奇しくも(くしくも) 箴言(しんげん)  遂行(すいこう) 神道(しんとう)  大音声(だいおんじょう) 柿落とし(こけらおとし) 漸次(ぜんじ) 弱竹(なよたけ) 喧伝(けんでん)  労しい(いたわしい) 美味しい(おいしい)

固有名詞

固有名詞は必ず調査しなければなりません。
次の固有名詞を読んでみましょう。

日本橋(東京)と 日本橋(大阪)
神戸(兵庫県)と 神戸(岐阜県)
西田幾多郎(哲学者)と 清水幾太郎(社会学者・思想家)
大岡忠相
松平保容
源順
【答】日本橋(東京 にほんばし、大阪 にっぽんばし) 神戸(兵庫県 こうべ、岐阜県 ごうど)  西田幾多郎(にしだ きたろう) 清水幾太郎(しみず いくたろう)  大岡忠相(おおおか ただすけ) 松平保容(まつだいら かたもり)  源順(みなもとの したごう)

歴史上の人物だけでなく、人名は本人に確かめなければ読めないほどいろいろな読み方があります。

幸子   ゆきこ  さちこ  こうこ
和子   かずこ  ますこ  よりこ
存    あきら  すすむ  やすし
潤    じゅん  さかえ  しげる  ゆたか
これらのほかに、資料や図書に、図や表、写真があった場合、どのように伝えるかの配慮など、さまざまな技術が必要になります。

録音図書

カセットテープ

音訳した資料・図書は、数年前まではカセットテープでした。1冊の本が10数本のテープになることもありますが、視覚障害者は、長い間テープ録音図書を楽しんできました。しかし、カセットテープは、検索に時間がかかることや何本にもなってかさばるなど不便な点もあります。また、次第にカセットデッキやテープが市場から消えているという現実もあります。

デイジー

デイジーは、パソコンを使って音声を録音・編集するシステムです。視覚障害者用のプレクストークという機器で、CDで聞くことができます。カセットテープは最大120分しか録音できませんが、デイジーは、CD1枚に20~50時間記録できます。検索の機能に優れ、章やページの指定ができ、必要なところにしおりを付けることもできます。

対面朗読

情報を得たい人と対面して読む方法です。図書館の対面朗読室や、お互いに利用しやすい公共施設の一室を利用して行いますが、視覚障害者の自宅を訪問して読む場合もあります。

お互いに対面していますから、読みの速度や一度に読む時間の希望をだしたり、必要なときにストップしてメモをとったり、疑問が出てきたら質問したり、その場で調査したりできるという利点があります。

合成音声

パソコンに、視覚障害者用の音声ソフトをインストールすることによって、ワープロソフト・表計算ソフト、インターネットやメールも合成音声で利用できます。それによって、種々の情報を得ることができます。 点訳したデータも音声で利用することもできます。

また、2007年7月に行われた「第21回参議院通常選挙」の視覚障害者向け「選挙のお知らせ」は、合成音声でテープに録音されました。

街の中の音声

街の中や電気製品にも音声の案内が多く見られます。
音の出る信号機では、メロディや鳥の鳴き声などで青の方向を知らせています。駅や建物の入り口に音声案内が付いている場合もあります。
また、コンピュータ制御の家庭用機器(電磁調理器など)にも音声による操作案内が付いていることもあります。
身の回りにどんな音声案内があるか調べてみましょう。

音訳のテキスト

※クリックすると出版元のホームページへ移動します。

初めての音訳(初心者のためのテキスト)
音訳マニュアル 音訳・調査編(音訳ボランティア向け)
このほか、録音編。デジタル録音編、処理事例集などもあります。

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