「2025年のわたしたちへ−全視情協10年ビジョン会議報告書」 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 目次 はじめに 第1章 視覚障害者の情報環境 1.1 読書環境の進化 指から耳へ 1.2 情報技術の進展による新たなサービス 1.3 “欲しい情報”は届く時代へ 1.4 視覚障害者文化の可能性を広げる新たな情報提供 1.5 コミュニケーション拠点としての情報提供施設 第2章 情報提供施設の役割 2.1 視覚障害者情報提供施設の役割 2.2 公共図書館と連携した情報支援 2.3 地域との連携 〜 専門機関とのネットワークを目指して 〜 2.4 ボランティアの新たな役割 2.5 災害・減災への取り組み 2.6 点字を守り、育てる意義 第3章 製作環境の変化とボランティアの関係性 3.1 製作環境の変化 3.2 出版データの活用 【コラム】合成音声が発展すると音訳ボランティアはなくなるのか? 第4章 10年後に向けた全国的な課題 4.1 10年後に向けて私たちが取り組むべき全国的な課題 4.2 必要な法制度の確立 4.3 ITの活用と新たな情報提供 4.4 各方面との連携強化 4.5 全視情協内部の組織強化 4.6 全視情協の財政問題の解決に向けて 第5章 2025年のわたしたちへ おわりに 付録 1.10年ビジョン会議委員 2.10年ビジョン会議 活動履歴 3.全視情協10年ビジョンに関わるアンケートまとめ 4.情報提供ネットワークシステムの進化 (目次終わり)   はじめに     理事長 後藤 健市  私が理事長に就任してまず手がけたのが「10年ビジョン」の策定の事業です。  その事業に全国各地の視覚障害者情報提供施設の現場で活躍している若手の職員に関わって欲しいと決め募集を開始しました。そして、個性豊かな8名のメンバーが集まりました。  「組織の在り方」や「ネットワークの構築」についての検討は、私自身もこれまで何度もやってきましたが、組織のサービス全体を見据えた10年後のビジョンの策定は、これまでも関係者の方々と議論はしてきましたが、具体的なアクションには至っていませんでした。  10年先は、ある人にとっては遠い先のことと感じられ、また別の人にはごくごく身近なことであると感じられるということで、人それぞれ捉え方は異なることを再確認し、メンバーの10年後の未来に対する意識合わせからこの活動が始まりました。  メンバーはそれぞれ所属する施設の現場において欠くことのできない重要人材であり、当然、仕事も多忙です。その合間を縫って、また仕事を終えてからのプライベートな時間も使っての作業を1年間続けていただきました。その中で、一堂に会しての会議だけではなく、メールを使った日々のやりとり、インターネットを使ったスカイプでの会議も重ね、それぞれが考えていることについて意見を交わし、その結果を本報告書としてまとめました。  未来を考える際に一番重要なことは、過去をしっかり振り返り、そこに学ぶことです。何故なら、過去から現在への道のりの中には、ここから未来への道のりを考える際に必要となるさまざまなヒントがあるからです。  従って、10年ビジョンを考える際に必要なことは、今から10年前をしっかりと振り返ることです。この10年間で、私たちが提供する情報環境はどう変化してきたのか?また、視覚障害者だけではなく、一般社会の情報環境はどう変化してきたのだろうか?  私が点字図書館に勤務したのは今から約30年前です。ちょうどその頃にソニーや松下電器などの家電メーカーがパソコンやワープロを製造販売するようになりました。そして、価格も急激に低下し、一般に普及し始めました。携帯電話も今とは比べ物にならないぐらい大きく重い物で、一部のビジネスマンが使っているものでした。  その後、技術の急速な発展にともない、パソコンも携帯電話もより便利に、そしてより安くなり、一般への普及が加速しました。さらにそれ以外の端末も開発されてきました。当時から、パソコンの1つの進化形はキーボードが無くなるということでした。その最終形でもあるアップル社のi-PADが誕生したのは今からわずか5年前のことです。  ちなみに今から10年前の2005年にFacebookが一般リリースされ、YouTubeもサービスを開始しました。そしてその翌年の06年にTwitterやGoogleMapがリリースされました。さらに、今は一般的に耳にするようになったクラウドコンピューティングも06年に提言され、それらの機器やシステムはさらに進化し、私たちのライフスタイルに大きな変化をもたらしました。そして、その進化はますます加速し、さらに新しい情報機器の誕生と情報環境の変化がもたらされます。  見えない・見えにくいという障害を持った方々と情報の間にいる私たちがそれらの先端機器をいち早く知り、また時代が進んでいく方向をしっかりと見極め、利用者を取り巻く情報格差を少しでも減らすことができるよう努力をしていくことが求められています。  限られた人材と予算の中でこれを実行していくのは容易ではありませんが、だからこそ、全視情協の施設・団体が協力しそれぞれの知恵と力を出し合い、行政、民間などさまざまな組織や企業とも連携しながら、新たな時代の情報提供の実現に向けて取り組んでいくことが必要です。  8人のメンバーによる1年間の議論を踏まえ、今後、具体的なビジョン策定とそこに向けた活動に入っていきますので、当会の会員の皆様のご協力を改めてお願い申し上げます。   第1章 視覚障害者の情報環境  視覚障害者の情報環境はIT技術の進化・スマートフォンの普及により、自らが自由に情報取得できる環境が整いつつある。ここでは、こうしたIT技術の進化を中心に、点字やテレビ雑誌等、その他の情報環境も含めた未来像を考える。 1.1 読書環境の進化 指から耳へ □ 読みたい本がすぐに手に入らないというジレンマ  「読書の秋と言われますが、電車の中で本を読む人は少なくなってきた気がします。都心では半分以上の人が、スマホを手にしているのではないでしょうか。朝晩の通勤時間帯は、いすに座っている人全員がスマホの画面を見ている、そんな光景を目にすることもありますね。では、活字離れした人が多いのかと言えば、違います。メールやSNSのやりとりなど、文章を書く機会は思った以上に多く、文章の書き方講座は人気を集めているそうですよ。案外、活字と接している時間は以前より増えているかもしれませんね。電子書籍も大分身近な物になってきました。本のようにかさばらないところが、最大のメリットですが、ここは賛否両論のあるところ。紙にこだわりたい人も多いと思います。あなたは、どちらですか?」  晩秋の夜、ラジオから聞こえてきた語りである。一般向けに視聴者に問いかけている文言であるが、翻って考えてみると、視覚障害者は、現代の「活字離れ」とは異なる意味で、これまで活字にアクセスするのが困難であった。  視覚障害者は、従来より点訳や音訳という代替手段によって活字にアクセスしているケースが多く、これらの翻訳形態による製作をするには、専門的な技術と能力のあるスタッフが対応してきた。ほとんどの作業はマンパワーのたまものであると言っても過言ではない。ボランティアの協力あってこその現在の点訳・音訳の製作環境と、そして利用者の読書環境である。しかし、いわば手作業である以上は、どんな流行本でも、利用者から見れば数カ月は待たされ、自分の手元に届いたときには、若干の隔たりを感じながら読み進める状況は珍しくない。  最新の本や今話題の本を、できるだけ早く読みたいという心情は、視覚障害の有無にかかわらず、当然のニーズであるが、現状はそのような状況を解消できているとは言えない。人の手によって丁寧に仕上げられた点訳本や音訳本を手にする喜びの一方で、読みたい本がすぐに手に入らないという満たされない感情との狭間で、利用者はジレンマを抱えている。 □ 視覚障害者の読書を身近なものにしたインターネット  1980年代以降の家庭用コンピューター(パーソナルコンピューター)の普及と、家庭向けネットワーク通信網が整備されたことによる社会環境の変化は、情報弱者ともいわれる視覚障害者の生活を変えた。それは、活字を合成音声や点字に変換して出力する代替方式が開発・実用化されたことである。電子化されたデータを介して読み書きが可能となり、自ら文字によるコミュニケーションができるようになった。情報化社会の潮流のもと、社会的な労働環境が変化するなか、視覚障害者の新たな職域を開拓し、生活環境を一変させるきっかけともなった。そして、21世紀になってからのインターネットの普及は、点訳や音訳を介さずとも、自ら情報をリアルタイムで直接受信できるようになった。インターネットは、特に最新ニュースやトレンドを入手する手段において、様々な「知りたい」という顕在化されたニーズを満たすツールになっており、視覚障害があってもその活用の仕方をマスターすれば情報から取り残されなくなっている。  中でも、1988年の「てんやく広場」は、ネットワーク通信網を活用した電子掲示板(BBS)(※1)をうまく取り込んだ、視覚障害者向け読書サービスであり、利用者とボランティアをつなぐネットコミュニケーションサービスであった。情報提供施設や公共図書館へ行かずとも、点訳データをダウンロードして本を読めるようになったことは、外出の困難を伴う視覚障害者が読書をする楽しみを身近にした。この頃、青春時代を過ごした全盲の筆者は、多くの小説から現実の社会を学び、人のなんたるかを学び、人類の歴史を知り、そして冒険することのあこがれを抱き、チャレンジする素晴らしさを知った。  ネットワーク通信網を活用した情報提供システムは、現在はサピエに受け継がれ、多くの視覚障害者に利用されている。時代とともに、点字図書は紙からデータへ、朗読は、カセットテープからDAISYへと変遷を続けている。情報技術の進歩により、当事者である筆者自身の生活が豊かになっていくさまを痛感している。 □ “指”から“耳”への読書環境シフト  視覚障害者の読書の利用実態について、日盲社協情報サービス部会が集計した『日本の点字図書館』にみる平成23年度から24年度の短期的比較をみると、新規登録者中、点字使用者は前年度比 -17.9% と減少傾向であり、点字による新規登録者数も鈍化している(※表1)。結果は、あくまでも情報提供施設における利用の実態であることから、利用者の読書スタイルを簡易的に把握するため、サピエ図書館における平成23年度から25年度のコンテンツ利用の実態についても確認したところ(※表2、図1)、実質伸び率は 2.9%(実利用率 2.7%) であった。一方、サピエ図書館における音声デイジーの実質伸び率は 101.8%(実利用率 22.5%)であり、増加の一途であった。 −−(図表)−−  表1:「日本の点字図書館」利用者数推移  ※ 日盲社協情報サービス部会集計「日本の点字図書館」(平成23年度、24年度)利用者数 より  (以下の数字は、23年度、24年度、伸び率、の順。)  点字利用者 28,556 28,428 -0.4%  B会員 121 148 22.3%  新規登録 2,816 2,923 3.8%  点字利用者(新規) 688 565 -17.9%  B会員(新規) 25 21 -16.0%  利用登録者合計 78,061 85,115 9.0%  表2:サピエ図書館におけるコンテンツ利用実態の推移  ※サピエ図書館H23年度〜H25年度の音声デイジー・点字データの利用実績より 【コンテンツ利用数】  (以下の数字は、23年度、24年度、25年度、の順。)  「音声デイジー」 1,251,094 1,696,812 2,524,200  実利用者数 7,812 8,262 9,567  1人当たり平均ダウンロード 160.2 205.4 263.8  「点字データ」 690,932 741,778 710,728  実利用者数 4,807 4,852 4,937  1人当たり平均ダウンロード 143.7 152.9 144.0 【前年比伸び率】  (以下の数字は、24年度、25年度、の順。)  「音声デイジー」 35.6% 48.8%  実利用者数 5.8% 15.8%  1人当たり平均ダウンロード 28.2% 28.5%  「点字データ」 7.4% -4.2%  実利用者数 0.9% 1.8%  1人当たり平均ダウンロード 6.4% -5.8% 【前前年比伸び率(25年度)】  「音声デイジー」 101.8%  実利用者数 22.5%  1人当たり平均ダウンロード 64.7%  「点字データ」 2.9%  実利用者数 2.7%  1人当たり平均ダウンロード 0.2%  図1:サピエ図書館におけるコンテンツ利用実態の推移グラフ  ※サピエ図書館H23年度〜H25年度の音声デイジー・点字データの利用実績より  (以下はグラフから読み取った数字)  「音声デイジー」 23年度 約130万、24年度 約170万、25年度 約260万  「点字データ」 23年度から25年度 約70万(横ばい)  −−(図表終わり)−−  この集計結果は、単純に点字利用者数の減少とは断定できないものの、点字図書の貸し出しと点字図書の読書の減少の一方で、耳で聞く音声、つまり音声デイジーの貸し出しと利用の増加が顕著であることが示唆される。プレクストーク(※2)等、専用のDAISY再生機器・録音機器の充実、その他デバイスやアプリケーション環境での再生環境の登場により、視覚障害者を中心とした読書環境は、指で読む読書から耳で聞く読書へと、急速にシフトしているように推測される。 □ 新たな読書環境を支えるアクセシビリティ機能の標準化  アクセシビリティ機能とは、すべての人が、機器やコンテンツを自由に取り扱えるようにする補助機能のこと。iPhoneやAndoroid機器のアクセシビリティ機能は年々進化している。また、書籍の電子化が進み、本格的な普及に向けた様々な取り組みが広がっている。このうち、iPhoneやiPad等の端末で読むことのできる電子書籍の活用は、視覚障害者の新たな読書環境を後押しする将来像が推測される[1]。電子書籍を読むために、現在最も広く活用されているのが Kindle サービスである。Kindle とは、Amazon.comが販売する電子書籍リーダー、ならびに、コンテンツ配信をはじめとする各種サービスの総称である。2007年11月に初めて発売され、特に2009年3月4日、iPhone(※3)版の Kindle アプリの提供開始は、Appleのタッチ型携帯デバイスの参入とユーザー層の獲得と相まって、その後の電子書籍の普及に多大な影響を与えている。Kindle のアクセシビリティ機能に関しては、Kindle 電子書籍を扱える端末や、同ソフトウェアごとで対応は様々である。まず、ハードウェアの動向としてみると、2015年1月現在、Amazon 純正のブックリーダー端末 Kindle デバイス群は、日本語の TTS(Text To Speach)に対応していない(※4)。一方、アプリケーションの動向では、アクセシビリティの一部としてスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)機能が標準的に提供されている iOS において、2013年5月に Kindle アプリがボイスオーバーに対応(※5)した。続いて、2013年12月に Android でも TalkBack(※6)に対応した。これにより、視覚障害者にも一般に流通している電子書籍を読む楽しさの機運が熟した。2013年を視覚障害者の電子書籍元年と呼んでもいいだろう。  iPhone や iPad などの Apple 製品は、購入段階でボイスオーバーというスクリーンリーダーが標準装備されており、視覚障害者にも配慮された設計になっている。このようなタッチ操作によるユーザー・インタフェイスが、真に視覚障害者にとって使いやすいか、というような議論は賛否両論あるものの、いわゆる晴眼者が使用するデバイスで、視覚障害者も同じように操作し、しかも最新の書籍を読める喜びは何ものにも代えがたい素晴らしい技術であることに間違いない。 Apple のアクセシビリティに関するコミュニティー「Apple Accessibility メーリングリスト(※7)」の一連の投稿からも、それへの期待がうかがえる(※8)。とはいえ、現状でのボイスオーバーの問題点は人の名前や組織名などの固有名詞、それから英語の読み下しにまだまだ聞きにくい部分があり、日本語音声合成エンジンの課題がある。  米国の全米盲人連合(NFB=National Federation of the Blind)が、2014年6月5日の代表者会議で、Appleに対して全てのアプリをアクセシブルにするための方針や標準化あるいは手続きを実行し、NFBと協力してこの問題を解決していくように決議(※9)した。この事実からもApple のアクセシビリティ機能は、今後も視覚障害者向けに、より最適化されていくことが予想される。 □ 情報技術は誰もが便利に使用できる形に変貌  iOS や Android がアクセシビリティ機能を標準化し、誰にでも使いやすい形に変貌していく潮流は、今後も続いていくであろう。Windows OS を手がける Microsoft もナレーターというスクリーンリーダーの標準装備を Windows8 より積極的に取り組み始めているところでもある。まさに、情報技術は、障害の有無にかかわらず、誰もが便利に使用できる形に変貌していく。  誰もが便利に使用できるということは、たとえば、ユーザーの手元にある一つの機器で、多くの人のニーズを満足させるような仕組みが搭載され、特別な機器を手に入れる必要性が薄らいでいく未来が訪れる。 【参考資料・注釈】  ※1 電子掲示板 - Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%8E%B2%E7%A4%BA%E6%9D%BF)  ※2 プレクストーク - Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF)  ※3 iPhone - Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/IPhone)  ※4 Kindle Accessibility(http://www.amazon.com/gp/feature.html?docId=1000632481)によれば、Kindleのハードウェアにおけるスクリーンリーダーの言語は、2014年時点では、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語の5つの言語に対応しているとなっている。  ※5 iOS版Kindleアプリ、アップデートで視覚障害ユーザー向け読み上げ機能をサポート - ITmedia ニュース(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1305/02/news034.html)  ※6 Kindle updated with handy new features, but may require a reinstall - Android Community(http://androidcommunity.com/kindle-updated-with-handy-new-features-but-may-require-a-reinstall-20131218/)  ※7 Apple Accessibility (Aa) 案内ページ(http://ml.nvsupport.org/mailman/listinfo/aa)  ※8 Apple Accessibility Archives 2225 アップル、日本で電子書籍 出版大手と大筋合意(http://ml.nvsupport.org/archives/aa/msg02223.html)  ※9 Comments on Apple and NFB Resolution 2014-12 | National Federation of the Blind(https://nfb.org/blog/vonb-blog/comments-apple-and-nfb-resolution-2014-12) 【引用文献】  [1] 櫻井悟史, 植村要. 視覚障害者の読書環境の歴史――1985年以降の電子書籍に注目して――. 『Core Ethics』(立命館大学大学院先端総合学術研究科紀要). 7.P355-PP364. http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/ce/2011/ss01.pdf 1.2 情報技術の進展による新たなサービス □ 合成音声による読書スタイル  前項で説明してきたとおり、今後、指で読む読書はさらに減少し、10年後には点字利用者の割合が危機的な状況になっていることが推測される。それは、音声合成技術や再生環境を提供するアプリケーション自体の使い勝手(ユーザー・インタフェイス)が改善されていくにつれて、皮肉にも進行するだろう。もちろん、「点字」という文化を守り・継承していくことは情報提供施設の使命である。そのような、危機的な状況とならないような方策や戦略が必要であり、どのような状況下でも、点字文化を次の世代へ受け継ぐことが重要である。この点は、後で述べる「点字を守る意義」で詳しく述べる。  一方、点字データであっても、マイブック(※1)等の視覚障害者向け総合読書ソフトウェアを使用することで、容易に音声合成による読書ができる。「点字を耳で読む」方法について違和感を持つかもしれないが、学齢期より点字を習得している筆者のような視覚障害者であっても、こうした読書スタイルは、すでに前述のてんやく広場の時代から活用しており、実際に便利だと感じている。DAISYとEPUB規格の統合が行われてきている情勢も考慮すると、障害の有無にかかわらず、耳で聞く読書はもはや近未来の当たり前の光景になっていくことであろう。  耳で読むスタイルは、読みに困難のある障害者や高齢者、また一般的にも、通勤時間帯等のあり方として定着していく可能性がある。このような読書が定着していくための必須条件は、合成音声の固有名詞や専門用語等の読み下しと、音質の改善である。前述した「マイブック」では、追加の音声エンジン(※2)を組み込むことにより、聞き取りやすい音声になるが、やはり専門用語や固有名詞の読み下しについては課題は山積している。「生の人の声に勝る」とは、とうてい言えない現状である。  しかし、未来は、現在よりもコンピューターのスペック(性能)が向上しているはずである。10年前の過去を振り返ってみれば、家庭用コンピューターのスペックは、ハードディスク容量が3GB、メモリが1GBでハイスペック型と言われた。それが現在ではハードディスク容量が1TBで、メモリが8GBでハイスペック型であると言われている。このようなスペックの変遷を振り返れば、単純計算でも10年後は約10倍のスペックとなっている。10年後は、音声データや読み方辞書を格納するハードディスクは余裕で東洋医学等の専門用語の全読み方を網羅しているし、多言語の音声エンジンを包含できるものと予測している。  音声合成エンジン技術に関しては、現在、「感情音声」について研究・開発が加速的に進められている。そのうち、HOYA社が研究・開発・発売する「VoiceText」は、音声合成では、機械的な声、平板な読み方が当たり前、淡々と伝えるのに適し感情は持たせない。VoiceTextは、こんな“業界の常識”に挑戦している[1]、として、より人の声に近いイントネーションで発音するまでに至っている。筆者が試聴した範囲になるが、本の種類によっては生の人間の声で作成されたデイジー図書よりも、よりクリアで聞き取りやすいケースがあった。いわゆる「アニメ声」の大げさなイントネーションではなく、自然な感情であり、人の話し方を見事に模倣して表現できていると感じた。 □ ウェアラブル・コンピューティングがもたらす未来像  次に、世界的な情報技術の潮流のなかで、コンピューターを利用する環境がどのように変貌していくのかを説明し、視覚障害分野への適用可能性について述べる。2015年は、情報技術は大胆に進展すると予想されている。その一つは機器の小型化である。機器が小型化して、いつでも、どこでも使えるようになる技術を「ウェアラブル・コンピューティング」といい、その機器を「ウェアラブル・コンピューター」という。服やカバン、腕時計のように身につけて(wear)利用するコンピューターの総称であり、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボで最初に提唱された概念[2]である。  ウェアラブル・コンピューターは、SNSや位置情報サービスなどの様々なサービスと連携しながらユーザーに情報を伝えるのが主眼の端末である。このとき、インターネットに接続するためのWi-Fi(※3)のような通信環境が必須条件である。身の回りの通信環境は、現時点でもすでに「どこでも繋がる」様相である。しかし、外出時にWi-Fiで高速通信網を手に入れるには、Wi-Fiルーター等を持ち運ぶ必要があったり、いささか高額な料金を支払う必要があったりと、誰でも容易に接続できる状況とはいえない。地域によっては携帯電話やスマートフォンの電波状況を気にしなければならないこと、パケット(通信量)料金を心配しなければならないこともある。だが、10年後の未来には、Wi-Fi環境を中心とするネットワークインフラが整備され、ウェアラブル・コンピューティングが進展することにより、これらの課題は必然的に解消されていくであろう。すなわち、インターネット等のネットワークに接続しているという認識はより低くなり、そのような通信網にアクセスする料金は低価格化が進行する。ネットワークインフラがさらに充実することにより、既存の技術ではなしえなかったことが着実に可能な社会となる。  こうした条件を前提としたウェアラブルな将来像について、Lyndsey Gilpin (TechREPUBlic)は興味深い記事をまとめている。文中で Gilpin は「6.ウェアラブルデバイスは『モノのインターネット』を後押しする」と題して以下のようにまとめている。  「ウェアラブル技術は、物理的なシナリオと仮想的なシナリオの両方を後押しする。健康や環境に関する状況は検知およびモニタリングされ、データは記録され(動画、音声、写真、位置情報など)、ユーザーとシステムはこれらの情報をさまざまに活用できる。Forresterの調査によれば、2014年から2016年までの間に、現在初期導入段階にあるウェアラブルは社会の主流になっていく見込みだ。2020年までには、ウェアラブルデバイスはビジネス、ヘルスケア、個人向けシステムの中心的な存在になるだろう。」[3,4,5]  この点「物理的なシナリオ」については、筆者は2015年に AppleWatch(※4)の発売により、急速にウェアラブルな生活環境が整っていくと予想している。  (写真は、GoogleGlass と AppleWatch)  http://ja.wikipedia.org/wiki/Google_Glass  http://ja.wikipedia.org/wiki/Apple_Watch □ クラウド技術による新たなサービス  一方で「仮想的なシナリオ」については、クラウドコンピューティングがもたらす技術を基軸としたビジネスやサービスとして展開されていくものと予想している。クラウドコンピューティングでは、ユーザーはインターネットの向こう側からサービスを受け、サービス利用料金を払う形になる。ユーザーが用意すべきものは最低限の接続環境(パーソナルコンピューターや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くブラウザ、インターネット接続環境など)のみであり、加えてクラウドサービス利用料金を支払う。実際に処理が実行されるコンピューターおよびコンピューター間のネットワークは、サービスを提供する企業側に設置されており、それらのコンピューター本体およびネットワークの購入・管理運営費用や蓄積されるデータの管理の手間は軽減される。  つまり、ユーザーが用意すべきものは最低限のインターネット接続環境と、自分自身が最も使いやすい機器である。機器はパソコンでもよいし iPhone でもよい。または、将来的にはクラウドサービスを想定した専用機器でもよいかもしれない。自分に合った機器を最低一つ用意すれば、必要な環境がそれ以上の負担なしに、すべて手に入る。そして、ライセンス料を支払うかぎりは、継続的にサービスを利用できると言った具合である。  従来型のコンピューター環境は、一台一台のパソコンにソフトウェアをインストールして使用する形態であった。購入するためには、1台当たり、数千円から数万円程度の金額を支払ってきた。クラウド型コンピューターが浸透すると、ユーザーは製品ではなく、サービスに対してライセンス料を支払うのが基本である。そのため、パソコン等の買い換えやソフトウェアのバージョンアップを気にせずに、使い続けられるようになる。 □ 新たなサービスはクラウドを基軸に利用者へ提供  視覚障害者向けのソフトウェアの利用状況については、これまでのスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)や、それに付随する専用のソフトウェアは高額である。たとえば、(株)高知システム開発から発売されている日本で最も普及しているスクリーンリーダー「PC-Talker」の新規購入価格は38,000円(税抜き、2015年1月現在)である。一般的な市場価格からみれば高額であると言わざるを得ない。特別なソフトの購入に際して、負担額を軽減するための助成制度を活用するやり方があるが、対応は自治体によって様々である。助成を受けられたとしても限度額が決まっており、パソコンの買い替えやバージョンアップで購入するには経済的な負担が大きい。視覚障害があるために、追加の負担をしなければならなかったり、特別なソフトを購入からセットアップまでする必要がある現状である。従来型のサービスや製品の提供形態は見直す時期にきているのではなかろうか。  そこで、クラウド技術の応用によるサービスの提供は、現状のあり方を改善し、視覚障害者の生活環境を変える可能性がある。機器・ソフトに依存しない読書環境の充実について考えると、まず、提供する側が予めソフトアプリケーションを配置し、利用者側(エンドユーザー)がそのサービス(サーバー)にアクセスする方式となる。以下で具体的に述べる。  仮に、わかりやすい操作性とユーザー・インタフェイスを備えており、現状の視覚障害者向け読書環境として最も評判のよいマイブックのような総合読書支援アプリケーションが、サービスを提供するサーバー上に存在するとしよう。マイブックはサピエ図書館のDAISYの再生や、音声合成による点字データの読み上げ、PDF等のデジタル文書やインターネット上のフリーな(無料の)書籍の読み上げ等、多機能である。利用者が自分のIDとパスワードで専用のサーバーにログインすると、その時点でマイブックのような操作が体験できる。このとき、マイブックは自分の手元のコンピューターにセットアップされているわけではない事に注意してほしい。この仕組みでは、パソコンであろうと iPhone であろうと、その他機器であろうと、使用環境は自分自身が一番使いやすい機器である。また、スクリーンリーダー等の初期セットアップやマイブック等の読書環境の設定は不要である。このように、利用者に対する経済的な負担が軽減され、利便性は非常に高くなる。クラウド技術がもたらす未来は、こうした体験をユーザーに提供できるようになる。  クラウド技術による読書環境の構築については、現状でも、いくつかのソリューションを使い分ければ可能である。しかし、あくまでもアプリケーションを使い分けたり、設定をしなければならないので、エンドユーザーに対しては使い勝手が良いとは言えない。 □ 視覚障害の有無に関わらず、いつでもどこでも読書を楽しめる未来が実現する  筆者は、日頃より障害の有無にかかわらず、同じコスト・環境で情報を受け取れる仕組み作りが必要であると考えている。できるだけ簡便に操作でき、低コストで利用できるサービスとして作り上げることにより、利用者が必要とする情報を利用者自身が選択し操作できるようになる。これは、新たな情報提供サービスを検討するための重要なポイントになると考えている。  上述で、クラウド型マイブックの活用イメージを示したが、そのサーバーにアクセスさえすれば、利用者が必要とする全ての環境が手に入るサービスは、視覚障害当事者からすれば、夢のような世界である。容易にデイジー図書を再生したり、点字図書の音声による読書ができたり、サピエ図書館から読みたい本を探したり、さらには、次章以降で述べるような読んだことのない(未開拓の)書籍をお勧めするリコメンド機能や、電子書籍を入手し閲覧できる機能まで備えているサービスを一つのパッケージとして提供する仕組みは、クラウド技術が必須であると考えられる。今後、クラウド型サービスのプラットフォームとして総合的な読書環境が整備されるのを期待している。  クラウド型システムを全視情協のような組織で構築し運用できれば、視覚障害者を中心とする読み書きに困難のある人々に対する最大の情報提供手段となっていくであろう。利用者が社会的にどのような環境にあっても、視力の状況にあっても、読書の楽しさを伝える仕組み作りを行い、いつでも、どこでも、手のひらに読書環境がある。そんな未来が待ち遠しい。 【参考資料・注釈】  ※1 高知システム開発 MyBookVのご案内(http://www.aok-net.com/products/mybook.html)  ※2 ボイスソムリエ ネオ:汎用知的音声合成システム:株式会社 日立ソリューションズ・ビジネス(http://www.hitachi-solutions-business.co.jp/products/package/sound/voice/)  ※3 Wi-Fi - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/Wi-Fi  ※4 Apple - Apple Watch(https://www.apple.com/jp/watch/) 【引用文献】  [1] VoiceText ラボ | HOYA音声合成ソフトウェア VoiceText http://voicetext.jp/voicetextlab/  [2] ウェアラブルコンピューターとは 【 wearable computer 】 〔 ウェアラブル端末 〕 - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典(http://e-words.jp/w/E382A6E382A7E382A2E383A9E38396E383ABE382B3E383B3E38394E383A5E383BCE382BF.html)  [3] ウェアラブルコンピューティング--知っておきたい10のトレンド - ZDNet Japan http://japan.zdnet.com/mobile/sp/35043100/  [4] Wearable computing: 10 things you should know - TechRepublic http://www.techrepublic.com/article/wearable-computing-10-things-you-should-know/  [5] Forrester Research : Research : The Enterprise Wearables Journey https://www.forrester.com/The+Enterprise+Wearables+Journey/fulltext/-/E-RES103381 1.3 “欲しい情報”は届く時代へ  本節では、インターネットサービスを活用した情報収集に焦点をあて、新しい技術の活用によって、視覚障害者の情報収集にどのような革命をもたらすことができるのかを述べる。そして、筆者が考える10年ビジョンの一つとして、コンピューターが最も得意とする分野である「情報収集」を、視覚障害者の情報支援サービスへどう活かし、必要とする情報へのアクセスを容易にしていくか。また、誰もが利用できるためのユーザビリティの向上が、今後の重要な指針である。以下にビジョン策定にあたって、現状の課題や新しい技術の可能性を探り、情報収集のあり方について述べる。 □ インターネットを活用した視覚障害者の情報収集の現状と課題  1990年代に入り、インターネットを活用したサービスは急速に広まり、全国的な視覚障害者への情報提供ネットワークもてんやく広場からないーぶネット、そして、現サピエへと発展してきた。これにより、オンライン上で点字・録音図書データを取得できる環境が整備され、製作の効率化、貸し出しサービスの利便性向上により、視覚障害者の読書環境はかなり改善されてきた。しかし、紙に印字された活字情報の多くは、まだまだ点字や音声に変換されて、全てが読めるようになっているとは言えない。さらに、視覚障害者がインターネットの検索エンジンを利用して、検索結果から欲しい情報を見極めるのは至難の業であることが多い。また、ウェブサイトもflash画像の多用や、画像へのキャプション(注釈)が書かれていない場合があるなど、必ずしも、視覚障害者が情報を入手しやすい形式になっているとは言えない。  このように、健常者が日常生活において、当たり前に入手している活字情報を、視覚障害者はそのままでは入手することが難しく、社会生活をするうえで、かなりの情報格差を強いられていると言える。 □ 生活情報などの現状の配信サービスから見える課題  2010年4月にサピエ(視覚障害者情報総合ネットワーク)がスタートし、地域・生活情報の配信が始まった。このサービスは、前述のように視覚障害者情報提供施設がこれまで実現できなかった図書以外の生活に密着した情報をリアルタイムに配信するシステムである。利用者の住む地域でしか得られない情報や、視覚障害者関連の情報でも入手困難な情報をタイムリーに提供し、情報を得ることで社会との関わりを持てるような行動につなげることを目的としている。しかし、平成25年度の利用実績(平成26年度サピエ研修会報告から引用)では、個人利用会員12,476名に対し、情報閲覧の実利用者数が977名、利用率としてわずか7%の利用となっている。このように利用率が低い原因はどこにあるのだろうか? アンケート結果を見ると、「情報の検索がしづらい」「情報登録作業の負担が大きい」といった意見が多く、利用が少ない理由の一因としてあげられる。情報の入出力に関して、利用者目線での使い勝手を向上させる必要がある。  その一方で「今、必要としている情報を届けたいと感じる出来事はありましたか」という設問に対し、  「災害に関する支援情報」  「商品情報」  「福祉サービス情報」  「施設近くの道路工事情報」  「臨時休館」  「お悔み情報」  「新型インフルエンザに関する情報」  「路線バス時刻表の変更などの情報」  「地域のスーパー特売情報」 等々、多様な情報の配信が望まれていることも分かった。 □ “情報は探しやすく、届きやすいものへ”  ユーザビリティーの観点から、“欲しい情報を探す”手間をいかに省くことができるか。ここに大きな課題があるのではと考える。また、視覚障害者情報提供施設にとって、サピエの地域・生活情報による配信は、様々な生活情報という幅広い範囲の情報を取り扱うため、利用者にとってどんな情報が有益か、情報選択に苦慮している点も否めない。さらに、すでに配信されている情報の2次利用・加工などを経て配信しなければならず、登録時の作業負担と共に、人員も含め、どう対応すべきか、悩んでいる施設も少なくない。このような課題に対し、日々進化しているサービス・技術を活用しながら、よりよい情報支援サービスを提供するか。今後の方向性として提言していく。 □ リコメンドサービスによる情報収集  リコメンドとは、コンピューターが自動的に利用者の好みを分析して、利用者ごとに適すると思われる情報を提供するサービスのことである。あらかじめ登録された利用者の趣向に関する情報や、購買履歴などを参照して、それぞれの好みに合致すると思われる商品やサービスなどが届く仕組みである。具体的には以下のような事例が挙げられる。  事例1:インターネット上で提供されているサービス  アマゾン・楽天市場等のネットショッピングを利用すると、商品検索履歴や購入履歴から「あなたにおすすめの商品はこちらです」といった表示が画面上に出てくる(画像参照)  ※ 「amazon.co.jp ホームページよりおすすめ商品の紹介一例」(ホームページの画像)  こういったサービスはリコメンド機能を活用する代表例としてあげられる。また、iPhoneやスマートフォン用のアプリでも、このリコメンドの機能を活用したサービスがある。「グノシー」(http://gunosy.co.jp/)は、ニュース情報が読めるアプリで、独自のアルゴリズムでユーザーの興味にあった話題として、「エンタメ」「スポーツ」「コラム」「まとめ」「社会」「経済」など、幅広い分野の旬のトピック情報が届く。  また、インターネット上にもリコメンド技術を活用したサービスは多く、ニュース閲覧サイトでは関連記事へのリンクを表示、Facebookなどで、「知り合いかも」に友人と思われる人のプロフィールが表示されるといった機能もまさにリコメンドそのものである。このような便利な機能を、視覚障害者への情報提供サービスにも活用していくべきである。 □ 読書の新たな可能性へ  サピエ図書館と、電子書籍の配信サービスを実施しているAmazonKindle、楽天koboなどとの連携が実現できれば、リコメンド機能を活用した図書の横断的な検索が可能になる。サピエ図書館にない図書は電子書籍を購入し、音声読み上げ機能を使って読むといったことや、図書閲覧履歴から関連性の高い最新の図書などの情報も、いち早く入手することが可能になる。また、サピエ図書館に眠っているデイジー図書をリコメンド(お勧め)することで、有効活用ができ、かつ、本を選ぶ(探す)手間を省いてくれることにつながる。サピエ図書館でリコメンド機能を実現するには、検索・利用履歴を蓄積し、データ間の関係性などを分析できるようなシステム仕様を追加する必要がある。なお、プライバシーの問題に関しては、年齢・性別・利用履歴などの関連性を拾うことに特化し、個人を特定しないという方針を定めることで、実現可能になる。 □ 身近な生活情報の配信へ  現在のサピエ図書館だけでなく、視覚障害者にとって有用な様々な情報を入手できる全視情協アプリを開発・リリースすることで、一人一人の嗜好を踏まえた、身近な生活情報の配信が実現できれば、これまで諦めていた今欲しいと思う情報を、アプリを通して、リアルタイムに情報収集することができ、潜在的なニーズ(知的好奇心、行動意欲)の掘り起こしにもつながっていく。施設職員の立場から見れば、リコメンド技術の活用によって、“職員を介さず情報元から受信元”へ直接届けられるという仕組みそのものが、情報を配信する側の負担軽減にもつながる。但し、リコメンド技術を活用するためには個人情報も含め、膨大な利用履歴に関する情報が必要であり、今後のシステム更新時期に合わせてシステムを実現するにはそのことが前提にあり、実現に向けた積極的な活動を実施していく。 □ 10年後は、「あなただけ」のコンシェルジュサービスが当たり前に  10年後は、社会において情報機器やサービスは、個人一人一人の技術にパーソナライズされていき、今よりもさらに情報をリコメンドしていく仕組み作りが進み、“情報は探すものから届くもの”へ変わっていくことが予想される。さらに、10年後のインターネット環境は、コンピューターの処理スピードの向上、ビッグデータの活用やインターネット回線速度の向上により、ますます膨大な量のデータ処理が可能になる。さらに、公共性の高い自治体の情報や企業のデータなどはオープンデータ化が進み、身近な生活情報などは容易に入手できる環境も整備されるだろう。[1]  10年後に向けて、リコメンドサービスを活用した情報収集システムを構築することができれば、視覚障害者の読書の楽しみが格段に増すとともに、生活に役立つ情報の取得が容易になり、情報格差を少なくすることができる。今まで家族を通じて聞かなければわからなかったことが、自らの意思で欲しい情報などを入手できるようになり、より自立した生活を送ることができる。そういった「誰もが当たり前の生活環境の実現」に向け、活動を目指していく。 □ ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の活用による情報収集  SNSとはご存知の通り、ソーシャルネットワーキングサービスの略。代表的なサービスには、FacebookやTwitterなどがあげられる。機能としては、パソコン・スマートフォンを含む携帯電話・タブレット端末などを使用し、インターネットを介して遠く離れた家族または友人や知人との日々のコミュニケーションを円滑にしたり、メッセージ機能やチャット機能などで時と場所を選ばず他人同士とでも会話が楽しめるWebサイトだ。日本国内におけるSNS利用者は年々増加しており、このまま普及が進めば2016年末には利用者数は6,870万人、ネットユーザー全体に占める利用率は66.5%に達する見通しである。[2]  一方で、視覚障害者のSNSの利用状況は、「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013」(※1)によると、全盲の方で23.9%、ロービジョンの方で15.5%の利用にとどまっている。また、視覚障害が理由で使いづらい点を問う設問では、「文字入力がしづらい」「画面・文字が見づらい」「タッチ操作がしづらい」「読み上げの不具合」など、従来からの問題であるWebアクセシビリティや音声読み上げの不具合があげられる。これらの課題解決なくしては、視覚障害者のSNSの利用普及にはつながらず、利用促進のための環境改善に努めなければならない。 □ SNSで期待される情報支援サービス  SNSの活用によってもたらされる最大の利点は、情報の発信と同時に受け手になることができるという点。この双方向のコミュニケーションが円滑になることで、生活の質の向上につなげることが出来る。今後、ウェアラブル端末の進展とSNSの組み合わせにより、困っていること(特に視覚情報や外出支援情報)を知ることにつながることが期待される。事例としては、視覚障害者が、メガネ型のウェアラブル端末で目の前の風景などの情報を画像として撮影し、撮影された画像をSNSサービスと連携して配信できるようにすることで、世界中の誰かが目の代わりになり、何が映っているか伝えるといったサービスの実用化に向けた開発も進められている。これによって、例えば、「パソコンの画面どうなってる?」、「商品ラベルなんて書いてる?」など、様々な知りたい視覚情報が届けられるようになる。 □ 全視情協加盟施設・団体でのSNS利用状況  2014年7月に実施した全視情協加盟施設・団体へのアンケート結果によると、SNSを活用した情報発信を行っている施設は、全体で10%にも満たない。情報収集の改善のためにも今後は、情報提供施設は利用者への周知、使い方の指導など積極的に実施すべきである。さらに、全視情協などが情報コミュニティーサイトを構築したり、動画による配信などを行うことで、「全国的な情報の配信、最新福祉用具の紹介、視覚障害者の関わる重要な法制度の情報」など生活に深く関わる情報収集につながっていくことにも言及したい。こういったことが実現できれば、施設間のネットワーク強化にもつながり、情報の共有、サービスの質の向上が期待される。また、これらのネットワークが実現できれば、災害時には支援ネットワークへとシフトすることができ、迅速な支援体制構築、支援情報の提供にも活用が期待される。支援ネットワークに関しては、2.5で後述する。 □ 10年後の情報収集はこうなる!  10年後を考える前に、10年前を振り返ってみると、SNSを代表するTwitterは2006年にアメリカでサービスが開始され、Facebookに至っては2008年に日本語化対応になっており、10年前は、日本ではまだ普及していないことがわかる。このように、たった数年単位で人々のインフラに変化をもたらすIT技術の向上は、数年先でも人々の生活に劇的な変化をもたらすことが予想される。そんな中、SNSという名前は無くなったとしても、人が存在する以上、「人と人を結ぶネットワークツール」をもたらす機能をもったサービスは無くなることはないと思われる。視覚障害者の「便利で豊かな生活の実現」のため、今後は点字図書館など情報提供施設において、SNSとしての機能を持ったネットワークを構築し、個人一人一人に寄り添った情報支援サービスの実現を目指していく必要がある。 【参考資料・注釈】  ※1 「視覚障害者の携帯電話・スマートフォン・タブレット・パソコン利用状況調査2013」 国立大学法人 新潟大学 工学部 福祉人間工学科 渡辺 哲也 発行 【引用文献】  [1]平成26年版 情報通信白書 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/pdf/index.html  [2]株式会社ICT総研 http://www.ictr.co.jp/report/20140821000067.html 1.4 視覚障害者文化の可能性を広げる新たな情報提供  視覚障害者を取り巻く情報バリアは多くあるが、それらを取り除くことで、視覚障害者文化の可能性が広がるものと思われる。また、著作権法第37条第3項に規定されている「視覚著作物」には、絵画や彫刻、写真や建築物、映画や舞踊等も含まれており(※1)、これらの情報をいかに視覚障害者に伝えていくかを考えることも、情報提供施設の役割の一つであろう。  そこで本稿では、視覚障害者文化を念頭に置きながら、新たな情報提供のスタイルについて考えてみたい。 □ 障害者にとっての情報バリアの分類と到達点  視覚障害者にとっての情報バリアについて、便宜上、以下の五つのステップに分類する。  @ 文字情報  A イラストや図表による情報  B 動画情報  C 立体情報  D 目の前・周囲の様子・自身の見た目に関する情報  周知のとおり、視覚障害者への情報提供の歴史は、文字情報を点字や音声に変える取り組みから始められた。図表については以前は省略されることが多く、視覚障害者は図に対して想像力を働かせると共に、図の理解をあきらめざるをえない場面も少なからずあった。近年、イラストや図表の多様化の流れの中で、点図や言葉による説明を駆使して、イラストや図表を表現することが増加している。2000年代に入ると、視覚障害関係施設・団体はテレビ放送における解説放送(登場人物の動きや情景等を声で説明したもの)の充実を国や放送事業者に求めると共に、映画上映における音声ガイドの普及に取り組み、さらに2013年度からは「シネマ・デイジー」(※2)の作成を開始し、視覚障害者に対する動画の表現についても果敢に挑戦してきた。  このように考えると、上記五つのステップのうち、「動画情報」までは、一定程度到達できていると言える。次に求められるものは、  「立体物に触れたい!」  「目の前のものを知りたい!」 という視覚障害者のニーズに応えていくことである。 □ 気軽に立体的な情報を活用できる未来  晴眼者が視覚的に立体物を認識できる場面に比して、視覚障害者が立体物に手で触れられる場面ははるかに少ない。そのうえ、巨大・極小・遠距離・危険等の理由で手で触れられないものも多く存在する。欧米ではそれらを立体模型にする取り組みも進められているが、我が国においてはその取り組みは十分に進んでいない。  こうした中、注目したい二つの取り組みがある。  一つは、2013年9月に開始された、Yahoo! JAPANのプロジェクト「さわれる検索」である。立体物のデータを登録しておくと、3Dプリンターで打ち出すことができるシステムであり、いわば「サピエ図書館の立体模型版」である。同プロジェクトは盲学校在籍児童・生徒を主たる対象として開始されたが、物体の形状を知りたいというニーズは年齢に関わりなく持っているものであり、いずれ幅広い層の利用につながるものと思われる。  今一つは、国土地理院の開発した新技術を活用し、3Dプリンターを用いて地形を立体的に表現するものである。晴眼者であれば何百回、何千回と目にする地図も、視覚障害者が得にくい情報の一つである。  これらの技術を活かせば、立体模型が視覚障害者にとってより身近なものとなる。視覚障害者情報提供施設と関係機関が連携を深め、音声ガイドや立体模型等を活用し、さらには文化・観光サービスのアクセシビリティを謳った障害者権利条約30条を追い風に、劇場・ミュージアム・日本庭園等を楽しみたいという視覚障害者の声(※3,※4)に応えていきたいものである。  (写真は『さわれる検索』 の実物写真と、出力したサソリ)  触れる検索 http://sawareru.jp/about/ □ タイムリーな情報獲得を支援=自宅・外出先での切実なニーズに応えるために  視覚障害者の日常生活の中には多くの困難が存在する。自宅では「届いた郵便物が分からない(点字・音声・拡大文字になっていないため)」「家電製品の液晶表示が分からない」「物を探すのに困る」など、また、外出先では「道に迷ったときに困る」「今の身だしなみを確認したい」など切実な悩みがあり、これらに応える仕組みづくり、情報提供も必要である。  他方、視覚障害者情報提供施設には、蔵書製作や対面読書等で蓄積してきた「目の前の状況を言葉で説明する技術」がある。視覚障害者の目の前を映した映像をスマートフォンやタブレット等を介してボランティアが共有することにより、視覚障害者が困っている場面で、瞬時に状況説明することが可能となる。(第2章2-4参照) □「実感を伴う情報」を「いつでも」届けるために  映画・テレビの音声ガイド(音声解説)は充実しつつあるものの、作品に登場する空想上の生き物や建物等が、視覚障害者にとってイメージしづらいこともある。そこで、一部の音声ガイド付き映画上映会では立体模型を合わせて提示する取り組みが行われている。立体模型が簡便に製作できるようになれば、図書の中に描かれているイラストや写真の立体模型を情報提供施設が製作し、図書と共に貸し出すことも可能となる。こうした立体模型の活用は実感を伴う情報提供であり、今後の広がりが期待される。  また、音声ガイド付き映画上映会は日時が固定化されているのが現状である。「見たい時に見られる上映」を目指す動きも出てきており、今後はそうした形式が定着していくであろう。さらに、テレビ放送は、通信との融合の動きがあり、音声解説分野でも新たな可能性を秘めている。  このように、ますます発展するITを活用して、新たな情報提供のスタイルを確立することで、視覚障害者文化の可能性がさらに広がるのではないだろうか。 【参考資料・注釈】  ※1 (全国視覚障害者情報提供施設協会著作権プロジェクト編 『著作権マニュアル2008 新版 別冊 2009年改正著作権法第37条第3項を中心に』2011年)  ※2 シネマ・デイジー:映画のサウンドに登場人物の表情や動作、画面の様子を説明する音声解説を付けてDAISY編集したものであり、映像はない。著作権法第37条に則って視覚障害者等に提供されている。  ※3 広瀬浩二郎著『さわって楽しむ博物館 ユニバーサル・ミュージアムの可能性』青弓社、2012年  ※4 「日本庭園からの招待状」『点字ジャーナル』2012年12月号 東京ヘレン・ケラー協会点字出版所発行 1.5 コミュニケーション拠点としての情報提供施設 □ 情報提供施設と公共図書館を利用できるメリットを享受する  情報提供施設では、多種多様な情報サービスへの取り組みが広がっているが、都道府県によっては一つしかない地域もあり、規模も大小様々であるため環境によっては必ずしも利用しやすい環境とは言い難く、地域間のバリアを埋めるには公共図書館との連携は欠かすことができない。今後は、利用者自身が利用したいときに図書館(情報提供施設・公共図書館)を選べる環境づくりが求められていく。 □ 情報提供施設(点字図書館)の情報サービスは今後も広がっていく  情報提供施設の基本的なサービスは、点字・録音図書の製作・貸し出しであったが、現在は電子書籍も媒体の一つとして加わりつつある。また、今後は活字の資料を提供するだけに留まらず、映像作品に音声による説明を付けて情報を提供するシネマ・デイジーをはじめとする音声解説、3Dプリンタの立体情報等も加わってきており、このように利用者に対する情報サービスの幅が広がってきている。  これらと合わせて、情報提供施設の情報サービスには、用具・機器類の購入相談・販売、パソコン・機器類の使い方指導や相談、視覚障害者支援に対する相談、リハビリテーションなどの専門的な相談業務(歩行訓練、生活訓練、見え方に関する相談など)の充実も期待される。また、バリアフリーイベントや様々な講習会・研修会、当事者のサークル活動など、情報や文化、コミュニケーションの拠点としての位置づけも重要な役割として挙げられる。  ただ、これらの情報サービスを利用者が受けるには、地域の交通状況にも影響されるように移動の障壁は否めない。インターネットで利用できるサピエのようなネットワークも重要だが、人を介して情報提供を行うことができることも同様に重要である。 □ 公共図書館の障害者サービスの展開に期待  これからは、より一層公共図書館との連携が求められていく。日本には公共図書館の総数は、3,248館(日本図書館協会調べ、2013年度)あるので、これらと連携し、情報提供施設だけでは補えない地域間の格差を埋めていくことは必要不可欠である。また、地域性を活かし、その中に加わることでコミュニティに溶け込むといったメリットは大きいと思われる。健常者と同様に地域の公共図書館に視覚障害者も利用できる環境づくり(図書館内の閲覧・検索、発送等を含むサポート体制)を進め、情報提供施設までは遠くて利用できなくても、地域の公共図書館なら近いので利用できやすくなり、読みたくても読めなかった方が読書をする機会を得ることができる。図書館のイベントにも参加が可能になっていくであろう。障害者差別解消法等の法整備によって公共図書館における障害者サービスは大きな転換期を迎えるのである。私たちの暮らしや普段のコミュニケーションに合わせる形で図書館が存在していくことが今後は強く望まれる。   第2章 情報提供施設の役割  第1章で述べたように、ここ数年で誰もがスマートフォンを中心にした携帯電話を用いて、いつでもどこでもインターネットとつながるようになった。こうした通信インフラ環境の変化が情報提供施設の求められる役割にどのような変化をもたらすか。視覚障害者にとって情報収集はもちろん、情報発信も含めた情報プラットフォームとして情報提供施設が未来において果たす役割をここでは述べていく。 2.1 視覚障害者情報提供施設の役割  この項では、視覚障害者のノーマライゼーション(※1)、インクルージョン(※2)の視点に立ち、地域の社会資源との連携像を模索し、視覚障害者情報提供施設(以下 情報提供施設)の担うべき役割について考察する。また、定型的な連携では満たすことの難しい個別の事情を勘案し、情報提供施設の福祉的使命を問い直すこととする。  情報提供施設が設立以来果たしてきた図書の貸し出しの役割は、今後、公共図書館における障害者サービス拡充によって、順次統合されることが望ましい。これを受けて、情報提供施設は個人への支援等の課題に着手し、その福祉的役割を前進させる好機を迎えることとなる。  情報提供施設は、視覚障害者に対する情報提供を主たる存在意義としている。一方で、情報化によって視覚障害者間の情報格差も拡大し、情報提供ニーズは広義化、多様化の様相を呈している。特に、ITを活用する若年の視覚障害者と、高齢、重複障害等の視覚障害者の両側面は、その印象を明確に表している。  ここで情報提供は、大きく二つの方針に分かれる。一つは、一層の情報化が進む社会においても、視覚障害者が最新の情報を享受できるよう、高度な情報提供及び支援を目指すという方針である。もう一つは、情報の享受が著しく困難な視覚障害者に対して、社会福祉の立場を明確にすることで、情報遠隔地居住者、高齢要介護者、重複障害者などに向けた情報提供及び支援を目指す方針である。  この項では、まず、情報提供施設の基本的な視座を押さえ、その役割を再考する。次に、大型情報提供施設(※3)及び全視情協等における、拠点型の情報発信サービスの意義を踏まえ、高度な情報提供の必要性と課題を考察する。その上で、地域の情報提供施設における、地域化と個別化の必要性に触れ、社会福祉としての情報提供の役割を考察する。 □ 情報提供の概念の変化  情報提供の起源は点字図書館であり、点字図書の誕生から始まる。点字は、1890年に日本点字が採用され、点字の普及活動や点字タイプライターの登場などを経て次第に浸透したことで、印刷された図書を点字に訳した点字図書が誕生する。しかし、大きく、高価な点字図書を、個人が自宅に所有するには限界があり、共有するための図書館の必要性が認識されることとなった。視覚障害者のために点字図書を配置するというサービスは、公共図書館の一画から始まった。1916年には東京市の本郷図書館に点字文庫が開設され(※4)、1919年には新潟県立図書館盲人閲覧室(※5)が開設された。このように、点字図書館の設立に先立って、公共図書館に点字文庫や盲人閲覧室が併設され始めていた。なお、この頃の公共図書館の障害者サービスは、制度等によって規定されていない自発的なサービスとして提供されていた。続いて、現在の点字図書館の原型となる二つの施設が設立される。一つは、岩橋武夫によるライトハウス(現在の日本ライトハウス)である。ライトハウス運動に共感した岩橋武夫は、1928年に大阪の自宅を開放して点字図書の無料貸し出し事業を始め、その後、1935年にはライトハウスを設立した(※6)(※7)。もう一つは、本間一夫による日本盲人図書館(現在の日本点字図書館)である。本間一夫は約700冊の点字図書を備えて、視覚障害者に対する点字図書専門の図書館を設立した(※8)。こうした点字図書館の設置は、法制度の整備とともに拡大し、1970年代には各地に点字図書館が配置されることとなる。  各地に点字図書館が設置された当初の情報提供とは、図書の情報を点字や録音に変えて提供することであったと言える。また、こうした動きの中で、印刷された情報を、点字や録音の情報に変えて伝えることが普及する。この技術は、個人的に必要とされる情報に対しても活用され、プライベートサービスが普及したことで、次第に情報提供の概念は、点字や録音による視覚情報の提供へと拡大した。一方、IT技術の進展によって情報の多様化が進み、情報源も印刷物からウェブサイト等のデジタル情報へと多様化を続けている。障害者を取り巻く環境も例外ではなく、様々な福祉機器やソフトウェアによって情報化し、視覚障害者個人の技術によって取得できる情報も拡大した。このような個人の技術によって獲得できる情報の拡大は、情報提供のリハビリテーション的役割を強化し、広義の情報提供という概念を生んだと考えられる。こうした情報環境の充実によって、多くの情報が取得できるようになったことで、権利としての確立が進み、障害者の権利条約も、一つの契機を示している。視覚障害者の情報に関する権利の確立は、情報源の合理的配慮を代行する役割(※9)も含むこととなり、情報提供の概念をさらに押し広げている。 □ 情報提供施設の役割の変化  情報提供の概念の拡大は、情報提供施設にサービスの多様化を求めているが、限られた人的資源において、その必要、及び要望のすべてに応えることは容易ではない。そのため、各情報提供施設は許容範囲に応じて、独自に情報提供の概念を分割し、選択することで、利用者のニーズに最もこたえられる役割を見出さなければならない。その概念の分割にあたっては、対象となる視覚障害者のニーズの具体像と、情報提供主体の連携を考慮しなければならない。ここで一律に役割を示しえないのは、各情報提供施設が提供できるサービス量や、連携する社会資源によって補われるニーズの具体像が多様なためである。まず、視覚障害者のニーズの具体像をとらえる必要がある。それは、視覚障害の程度に始まり、情報処理技術力、遠隔地や移動困難、高齢に伴う要介護度や認知症状、家族などの支援者の有無、重複障害、読字障害など、視覚障害者の多様な背景を考慮し、生じるであろうニーズの具体像を想定することである。次に、こうした視覚障害を含む多様な背景に対し、各地域でどのような社会資源によって補えるのかを知っておく必要がある。そして、可能な限り、連携のとれる体制を作っておくことが望ましい。この連携には、中央の大型情報提供施設、地域の情報提供施設、公共図書館など、既存の連携網も含まれる。情報化や多様化によって、一部の役割はより集約可能となり、また一部の役割はより地域化され、それぞれが持っていた役割を分け合うことが可能となった。つまり、こうした役割の流動性によって、視覚障害者の情報環境に貢献するという目的を共有しながらも、それぞれが独自性をもって方法論を持たなければならなくなったのである。そのため、中央の大型情報提供施設によって提供される役割を活用し、公共図書館のもつ特性を活用し、かつ、地域の社会資源を活用しても網羅しえない情報提供を把握して、それぞれが向き合っていくことが求められ、当然その役割像も多様となってくる。このように、目的論と方法論を共有してきた各情報提供施設が、これからも目的論を共有しながらも、その方法論、役割、あり方などを問い直す転換点に差し掛かっていると 言える。 □ 社会福祉としての情報提供  ここで、各情報提供施設が、それぞれのあり方を問い直すにあたっては、上記のとおり、ニーズの把握と連携によって再考する必要があるが、そこで軸となる目的論を明らかにし、共有しておかなければならない。そこで、情報提供施設が社会福祉の一端として存在している意義を確認するため、社会福祉の思想の基本である憲法25条の生存権を例に挙げて、情報提供施設の役割を解釈する。とすれば、視覚障害者の健康で文化的な最低限度の生活を情報提供によって保障することが、情報提供施設の主な目的であると言えるだろう。健康とは、身体的、心理的、社会的の3側面からとらえるのが、WHOの見解であるが、点字図書あるいは録音図書が、このいずれの健康にも、かつ文化的な生活にも貢献してきたことが説明できる。  ここで、注意すべき点は、この生存権の主語が「すべて国民」を指していること、及び「最低限度の生活の保障」ということである。この解釈については多数の文献があるため、ここでの説明を省略するが、情報提供施設として、限りなく少数のニーズであっても、可能な限り全ての人に応えていく使命があり、より最低限の生活を強いられている人のニーズを優先して応える使命があることの、2点に留意しなければならない。全ての人とは、情報提供施設が、視覚障害者という概念を中核とすべきか、境界とすべきかという課題に示唆を与えている。また、最低限度とは、絶対的なものではなく相対的なものであるため、個別のニーズを深く洞察する力が必要であることを示唆している。この目的を各情報提供施設と地域の社会資源が連携によって、網羅的に保障するためには、今こそ各情報提供施設のあり方を問い直すことが求められていると言える。 □ 拠点としての情報提供施設像とその課題  ここで、あり方の考察における視点を提案し、役割の考察を促したい。一つは、情報提供施設が拠点としての機能を強化することである。ITによる情報化は、視覚障害者に情報をもたらす場合と、情報格差によって新たな困難をもたらす場合があり、情報提供施設は、こうした潜在ニーズに応える必要が出てきている。つまり、情報提供施設は視覚障害者の駆け込み寺として、相談に応じ、潜在的なニーズや連携できる社会資源を検討し、具体的な方法論を持たなければならない。そのためには、点字や録音による情報の提供を主たる専門性としながらも、対人援助技術、相談援助技術、社会資源の連携調整技術など、多様な福祉的専門性も併せ持つことが望まれる。情報提供施設において社会福祉士の配置が求められることは、この点からも説明できるだろう。  また、拠点として求められる役割には、情報集約及び発信能力がある。これは、視覚障害者が必要とする情報を集約し、迅速に提供することで、より豊かな生活を行うための方法である。こうした情報発信には、全国的な情報と、地域において必要となる情報がある。各情報提供施設において、広報などの取り組みがなされているのも、こうした役割によるものと思われる。ここで、情報提供の指す、情報について認識が求められる。情報とは、「あることがらについてのしらせ」、「判断を下したり行動をおこしたりするために必要な、種々の媒体を介しての知識」(広辞苑第六版)などを指す。当然、情報の様相は多様であるが、自立支援法の定める「障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点」から、自立を支援する情報であることが求められてきた。  しかし、今後10年の人口構造の変化を勘案したとき、自立という概念が一つの境界となることも想定され、その踏まえるべき障害者基本法の基本的理念「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」に抵触することが懸念される。つまり、視覚障害者が高齢となり、自立という概念でQOLを評価することが難しくなる場合、基本理念に反し、自立への支援が難しくなるためである。こうした課題に対して、もう一つの視点を次に提示する。 □ 出ていく役割とその展望  一方、拠点としては成し得ない情報提供が存在する。それは、高齢化による介護や病気等、視覚障害者一人一人の置かれた環境でしか担えない役割である。視覚障害者という具体像が多様化する中、10年後という想定で考慮すれば、高齢社会はより成熟し、超高齢多死社会を迎える。推計によって、認知症高齢者の増加も示されており、安易に情報提供施設の領域外と無視することはできなくなるだろう。例えば、認知症や要介護をともなう者が視覚障害者となることもあれば、視覚障害者が認知症や要介護となることもあるが、決して、情報や読書との関係を断つ理由にはならない。一人一人が、固有の事情を持っていてもなお、情報を提供できる役割を持つためには、社会資源との連携とともに、積極的に館外に出ていく役割を持つことが必要となる。これらの視点は、障害者基本法の「可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられること」を踏まえても、その必要性を説明することができる。つまり、情報提供施設に来館が難しい視覚障害者に対し、その遠隔地を理由に支援の差を生じさせることは望ましくない。厚生労働省の示す地域包括ケアシステムは高齢者に限定したものではなく、障害者を含め、地域生活を支援するための構想である(※10)。地域包括ケアシステムを障害者にも適応可能な連携へと強化し、地域生活を支援していくにあたって、情報提供施設が担うべき役割を備えておくことが求められる。情報提供施設のあり方も、今後10年の社会構造の変化を見据え、視覚障害者の生活を目的論として、連携の中から方法論を柔軟に導くことが求められるだろう。 【参考資料・注釈】  ※1 社会生活上において1人の民としての権利を保障しようとする福祉の基本理念の一つ。  ※2 障害のあるなしにかかわらず、地域社会に包み込まれ、それぞれに必要な援助が保障されること。  ※3 ここでいう大型情報提供施設とは、身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準に示される5人体制に対し、より豊かな人的資源および技術、情報、支援等のサービス資源を持つ情報提供施設を指している。特に、利用対象に地域的限定のないサービスを展開している場合、これを有効な連携の手段として活用できると考えられる。  ※4 日本図書館協会障害者サービス委員会編(2003)『図書館員選書・12障害者サービス補訂版』日本図書館協会p25  ※5、※6 日本図書館協会障害者サービス委員会編(2006)『障害者サービスの今をみる:2005年障害者サービス全国実態調査(一次)報告書』日本図書館協会p1  ※7 金智鉉『どのように視覚障害者は読書環境を獲得してきたのか:点字図書館、公立図書館、読書権運動の関係を中心として』京都大学大学院教育学研究科紀要:p111  ※8 本間一夫『指と耳で読む-日本点字図書館と私-』岩波書店:p54  ※9 情報提供施設が直接行うサービスについての合理的配慮以外に、公共性の高い施設や取り組みなどにおいて行なわれるべき合理的配慮を、高い専門性によって代行する役割を意味している。例えば、選挙公報の点字・録音版の作製などが挙げられる。社会的に合理的配慮への機運が高まる中で、この代行的役割はさらに求められることになると考えられる。  ※10 厚生労働省老健局(2013)「地域包括ケアシステムについて」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ 地域包括ケアシステムは、厚生労働省が2025年を目途に構築を目指し、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制のこと  ・賀戸一郎、夏秋圭助(2011)「わが国における点字図書館の現状と課題に関する一考察〜点字図書館と公共図書館の役割分担を中心に〜」西南学院大学人間科学論集 7(1), 19-45, 2011-08  ・日本図書館協会障害者サービス委員会編(1994)『すべての人に図書館サービスを:障害者サービス入門』日本図書館協会  ・本間一夫(2001)『我が人生「日本点字図書館」』日本図書センター  ・日本図書館協会障害者サービス委員会編(2001)『図書館が変わる:1998年公共図書館の利用に障害のある人々へのサービス調査報告書』日本図書館協会  ・日本図書館情報学会研究委員会編(2008)『変革の時代の公共図書館』勉誠出版  ・日本盲人福祉委員会(2008)『日本の視覚障害者』日本盲人福祉委員会  ・全国視覚障害者情報提供施設協会サービス委員会(1999)『平成9年度全国視覚障害者情報提供施設実態調査報告』全国視覚障害者情報提供施設協会  ・全国視覚障害者情報提供施設協会(2008)『視覚障害者に対する新たな情報提供システムに関する研究』報告書  ・吉田右子(2010)『デンマークのにぎやかな公共図書館-平等・共有・セルフヘルプを実現する場所-』新評論  ・国立国会図書館(2011)『公共図書館における障害者サービスに関する調査研究』 http://current.ndl.go.jp/files/research/2010/2010research_report.pdf  ・日本障害者リハビリテーション協会『(日本政府仮訳文)障害者の権利に関する条約』 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention.html  ・新村出編集(2008)『広辞苑(第六版)』岩波書店  ・山縣文治編、柏女霊峰編(2013)『社会福祉用語辞典[第9版]』ミネルヴァ書房  ・ミネルヴァ書房編集部編(2011)『社会福祉小六法2011(平成23年版)』ミネルヴァ書房 2.2 公共図書館と連携した情報支援  本節では、点字図書館等視覚障害者情報提供施設(以下、「情報提供施設」という)が公共図書館と連携することにより、それぞれ、どのような役割を担っていくか、今後の方向性を示すとともに、連携によってもたらされる効果について述べていく。 □ 点字図書館から情報提供施設への変化  全国にある点字図書館は点字・録音図書などの貸し出しサービスを主な業務としてきたが、各地の職員の努力の甲斐もあり、視覚障害者の最も身近な存在として地域における視覚障害者情報提供施設として無くてはならない存在となっている。利用者一人一人のニーズに即した様々な役割を担い、視覚障害者向け用具の販売、機器の使い方の指導、生活全般の相談業務、リハビリ支援、移動図書館の実施、眼科医との連携、バリアフリー上映会の実施、IT講習会の実施など、対応する業務範囲は幅広く、新たな役割に即した体制作りが求められている。  また、IT技術の進化・インターネットの普及により、視覚障害者へのインターネット活用やパソコンの操作、携帯電話(スマートフォンやタブレット端末など)の利用サポートが重要になっている。筆者の属するほくてんでも、IT技術に長けた職員がこうしたニーズに即したリハビリ業務を積極的に行っており、利用者から好評を得ている。ほくてん以外でも、職員のITスキル向上を図りつつ積極的に利用サポートを行っている施設は多い。  図書の貸し出しサービスでは、サピエ図書館を約13,000名の個人利用会員が利用(平成25年度末現在)しており、書誌の検索、オンラインリクエストによる貸し出し申し込みと共に、点字データ・音声デイジーを利用者が直接ダウンロードしている。特に職員を介さない直接ダウンロード利用は利用者のプライバシー確保にもつながっており、音声デイジーの直接ダウンロードによる利用は約95万タイトル(2012年度末・同一タイトル図書も多数含まれる)と年々増加している (※1)。ダウンロードできる図書の数も2014年6月にはサピエ図書館から国立国会図書館の音声デイジーデータ、点字データが利用できるようになり、より多くの図書に触れる機会が拡大した。  一方、パソコン等を利用できない方々にとっては点字図書・音声デイジーの郵送での貸し出しは欠かせないサービスとして現在も根強いニーズがある。これは、今現在IT機器を利用できない世代の方々が多数を占めているためと思われるが、今後、10年先、20年先を考えるとデバイスの進歩と世代交代により、IT機器を自由に使いこなす視覚障害者は着実に増えていくと見込まれる。従来の郵送による図書貸し出しサービスは、将来、直接ダウンロードに完全に置き換わることは無いにしても、確実に減っていくことが予想される。音声解説付き映画、マルチメディアデイジーなど様々な媒体が今後、増加の一途をたどると見込まれ、こうしたコンテンツ製作を進められるより専門的な職員やボランティアの育成も情報提供施設の役割として求められる。 □ 点訳・音訳図書貸し出しは公共図書館の役割へとシフトする  全国各地の自治体が設置している公共図書館は前述のように3,000箇所を超え、視覚障害者情報提供施設の数とは比べ物にならない。地方在住の視覚障害者や目の不自由な方々にとっては身近な存在であると共に、各地の公共図書館もまた、地域住民に向けて果たすべき役割を問われている。図書館法における『図書館奉仕』の精神に則り、障害の有無に関わらず地域住民に遍く図書を読む機会を提供するのが地域図書館の果たすべき大きな役割の一つであり、この役割を後押しするかのように各種法制面の整備も進んでいる。  2014年1月に日本は国連障害者権利条約を批准した。また、障害者差別解消法も2016年4月に施行され、地域の公立図書館は読書が困難な人も図書館を利用できるように『合理的配慮』が求められる。また、著作権法の改正(第37条第3項)により、利用者は障害者手帳の有無に関わらず、ディスレクシアや識字障害の方に対しても点訳・音訳図書を作成し提供できるようになった。身体障害者福祉法において、点字図書館という名称は消え、より幅広い情報提供を担う『視聴覚障害者情報提供施設』となった。視覚障害者を含めた読書が困難な方への図書館サービスは、地域の公共図書館が担うべき役割へとシフトしていくのが自然な流れだと考えられる。利用者の立場からも地元の公共図書館でサピエの利用者登録ができれば便利になる。 □ 情報提供施設が目指すべき今後の大きな三つの方向性  前述の障害者差別解消法の施行と共に、情報提供施設はより専門的に、より一人一人のニーズに沿った対応が求められる。大きく分けて三つの方向性をここでは考える。  @ 視覚障害に起因する利用者一人一人の多様なニーズに応える 視覚障害者支援の専門ノウハウをさらに深め、個々人のニーズに即した生活全般への支援につなげていく。人から人へのきめ細やかなサービスは情報提供施設が担い、たった一人でも情報支援サービスが行き届くような役割を持った施設を目指していく。  A 誰もが利用しやすい図書館づくりを 〜利用者目線にたったサービス展開へ〜 『目に不自由さを感じる』方が障害の有無に関わらず、気軽に立ち寄り、相談できるような施設を目指す。  B 連携強化のための、コーディネート機能強化 前項で公共図書館との連携を推進する必要性を述べたが、これまで培ってきた専門性を活かし、公共図書館との連携を進めるためには、支援のためのコーディネーターが必要になる。今後は、全視情協などが中心となってコーディネーターのための職員研修を実施したり、IT技術に強い職員の育成事業を積極的に実施し、連携強化を図る必要がある。  これにより、公共図書館における障害者サービスの普及が進み、さらには点字図書館の利用者へのサービス向上が期待できる。 □ 障害者権利条約の批准 〜今こそ、その流れを力に〜  2014年1月、障害者権利条約が批准されたことを契機に、2016年に障害者差別解消法が施行される。それに伴い、内閣府障害者施策担当が実施した「障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見募集(※2)」に対して、平成26年12月25日「障害者の情報のアクセシビリティーの確保について」の意見が提出されている。以下に全文転載する。  (以下転載)  障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見  提案された原案の方向性や内容について、高く評価するものです。原案にもあるように広く社会に認知されていくことを期待するとともに、実際に障害者が生きていくために良い社会システムへ変化することを強く願います。  原案にもある各段階での障害者への方策を論議する場合、当事者を含めた検討が必要となります。またそれ以前に、障害者が現代社会で生きていくためには平等な情報の入手が不可欠です。つまり、全ての障害者へ他の者との平等を基礎とした情報提供は、今論議されている全ての施策を実現するための基礎的な要素であるといえます。  ところが、障害者の情報環境は甚だ貧しい現状にあります。情報提供機関である図書館はもちろんですが、社会のあらゆる場所で(政府・自治体・民間会社・個人等)、障害者への情報提供を自ら行うこと(=合理的配慮と環境整備)が必要であることを明らかにしてください。  具体的には、次の点に留意していただき、基本方針あるいはその後の要領等での明記をお願いします。  障害者の情報のアクセシビリティーの確保  1.図書館(公共、学校、大学、国立国会図書館等)に対し、障害により情報入手に困難のある人の利用を保障し、適切なサービスを義務付けてください。図書館は学校はもとより、博物館等社会教育施設や読書推進民間団体、及び障害者情報提供施設などと連携し、障害者への情報提供を進めます。  2.出版事業者にアクセシブルな電子書籍の出版を義務付けてください。図書館はそれを購入し、障害を持つ利用者に提供します。  アクセシブルな電子書籍とは、電子書籍データフォーマットと再生環境(ソフト・ハード)のすべてに配慮がなされていなくてはなりません。現状は障害者が使用できない方式がほとんどですが、技術的には十分可能といえます。  3.アクセシブルな電子書籍の提供が難しい出版社に対し、図書館などが行う著作権法第37条第3項による障害者用資料の製作を支援するため、テキストデータの提供を義務付けてください。障害者の中にはIT機器を利用できない人もいます。そのような人には図書館等からの資料の提供が求められています。  4.出版物に限らず、公的機関や民間企業からの文書・個人のウエブページ等も含め、あらゆる情報は、原則それを提供しているところが今できる限りの障害者への情報保障を行うべきことを明記してください。  (以上転載終わり)  このように公共図書館においても、障害者情報提供施設との連携を進める方向性が示されている。情報提供施設においても、これまで培ってきた知識・技術・ノウハウを結集し、相互協力体制を発展させ、地域に根差した情報支援サービスを推進していくことが求められている。 □ 「知る権利」の充実へ  さらに、推進を進めていくことで、多くの視覚障害者が、点字・音声図書の貸し出しサービス、対面朗読など読み書き支援サービス、日常生活用具の存在、同行援護などの外出支援、リハビリ支援など様々な情報支援サービスを受けられるきっかけにもつながっていき、読書ができる喜び、人と触れ合う喜び、外出ができる喜びが増え、社会生活の復帰及び生活の質の向上にもつながる。  そして、10年後に向けて、今こそ、全ての視覚障害者が望んでいる「知る権利」の充実につなげていくために、情報格差社会の解消に向け、情報提供施設は連携による支援活動を目指していくべきである。 【参考資料・注釈】  ※1 日本図書館協会・障害者差別解消法に基づく基本方針(原案)に関する意見 http://www.jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx?itemid=2518  ※2 「障害者の読書と電子書籍 〜見えない、見えにくい人の『読む権利』を求めて〜」 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 情報サービス部会 編 2.3 地域との連携 〜 専門機関とのネットワークを目指して 〜  2.2において触れたように、今後、視覚障害者の置かれた環境に即し、一人一人のニーズに合わせた情報提供が求められる中、地域内の専門機関と連携し多様化するニーズを満たす新たな情報提供施設のあり方についてここでは述べる。 □ 地域を巻き込んだ専門機関とのネットワーク  情報提供施設では、これまで行ってきた点字・録音図書などの製作・貸し出しに加え、用具・機器の相談・販売、見え方の相談などリハビリテーション分野に取り組むところも多くなってきている。これは、利用者ニーズが多様化してきており、従来の読書支援のみでなく、利用者が読書に至るまでの生活支援が求められている現状と言える。  利用者ニーズの多様化の原因には、利用者の年齢、性別、見え方をはじめ、他の疾患を併せ持つ障害の程度など個々の特性もさまざまであることが挙げられる。また、環境も大きく関与しており、現在、情報提供施設のサービスを受けるためには、最寄りの情報提供施設に利用者登録が必要であるが、遠隔地にある情報提供施設まで外出することがままならない利用者や、高齢化が進み思うように外出ができない利用者なども徐々に増加している。そういった背景の中で、障害の程度や居住空間などに関係なく、だれもが有益なサービスを受けられるよう環境を整えていくことが重要である。  とは言え、きめ細かなサービスを行うには、時間、人員などがまず必要である。しかし、現在の情報提供施設の予算、業務内容を考慮すると、適切な解決策が見当たらない。例えば、パソコン訓練を訪問支援で受けたいという希望がある場合、来館者対応の職員に加え個人宅に出向く人員が必要になる。さらに、既存の利用者だけでなく、新規の利用者のもとへもサービスの情報を届け、利用者拡大に努めたいが、そのための広報活動に取り組みたくても、情報提供施設のみの活動では限界がある。そのようなサービス拡大を行うための手立てとして、他の機関との「ネットワーク構築」の推進を提案する。 □ 利用者のニーズにどこまで応えられるか  本来、情報提供施設は読書支援に関する業務を専門としているところが多く、見え方の相談、歩行訓練、IT機器類の使い方など、利用者の相談内容が多岐にわたる今、情報提供施設だけでは解決が困難なこともある。日々利用者から寄せられる相談や依頼に応えていくためには、その分野に精通した専門家の支援が必須となる。  例えば、目が見えにくくなってきており、今後どのように生活すればよいか分からないといった相談に対しては、医療的支援が受けられるよう眼科を紹介するとともに、生活訓練に関することはリハビリテーション施設を紹介することが考えられる。拡大読書機を使って文字の読み書きが可能な利用者には、用具・機器類を販売している情報提供施設を紹介したり、点字を学習したいという希望者には点字教室を開催しているグループなどを紹介するなど、個々の状況やニーズに合わせた包括的支援が求められる。  もっとも、このような支援を行うためには支援体制が必要であり、日ごろから地域の医療機関や大学・学校、専門グループに情報提供施設のことを理解してもらえるよう、パンフレットを配布したり、研修会を開くなど、積極的にPRしていかなくてはならない。そして、「ネットワーク」を構築し、情報提供施設が単独で支援するのでなく、周囲の専門機関を巻き込んだ形での運用が期待される。  併せて学生支援についても考えておきたい。情報提供施設には成人した利用者ばかりでなく、学齢期の利用者からの相談も寄せられる。これまでは、特別支援学校での在学生を中心とした教材支援が広く行われているが、インクルーシブ教育を受ける学生への教材支援もさらに加速するだろう。特に、高等教育を受ける学生への支援内容は点字、音声、テキストデータなどニーズも幅広く、重複製作を避け、学生へのスムーズな教材提供を行うための、大学・学校と情報提供施設とが連携した「学生支援ネットワーク」の整備が有効となる。  以上、いくつか例を挙げてきたが、ここで重要なことは、どのケースにおいても、個々人に対する包括的支援を遂行できるコーディネーターを各情報提供施設に配置することである。利用者のニーズをしっかり把握した上で、どのような支援が必要なのかを見極め他機関につなぐ人材、要するに窓口となる人を配置しなくては進められない。そのための人員の確保・育成を提案したい。 □ 新規利用者の開拓と広報活動  行政と密に連携することも重要である。例えば、平成23年度に厚労省が実施した調査によると、全国の視覚障害者数は315,000人とあり、これは身体障害者手帳の保持者を意味する。この中で、情報提供施設に利用登録しているのは何人だろうか。残念ながら、未登録者が圧倒的に多い状況である。本人はもちろん、家族・関係者に、視覚障害者のQOLを向上させるための制度や、視覚障害についてさらに伝えていくためには、山間部など情報入手が困難な地域へのネットワークを広げることを忘れてはならない。  この新規利用者の開拓については、利用者の窓口として一番身近な、地域の福祉課など行政に呼びかけ、協力体制を作った結果、利用者拡大につながったという例がある。「付録」のアンケートにもあるように、すでに新潟県、福島県、山形県などでは「移動図書館」が実施されている。これは、年に数回、各地域に出かけ、情報提供施設の取り組みや、視覚障害者の文化活動の紹介、講演会などを行い、広報している取り組みである。その際の案内やチラシを福祉課に協力してもらい、視覚障害届出者に配布している。また、PR活動として、地域新聞やラジオなどで広報することも併せて行っている。  さらに、ホームページでの広報も必須である。特に、当人のご家族や関係者にとっては、インターネットによる情報入手は欠かせない手段であり、今後広報活動の骨幹となるだろう。 □ それぞれの専門性を生かして  こうした専門機関、眼科、特別支援学校、行政などと連携し、包括的に利用者を支援することで、より専門的、個別的な相談に対応することができる。その例として、「新潟県視覚障害者リハビリテーションネットワーク ささだんごネット」(http://sasadangonet. at.webry.info/)を紹介する。  このネットワークは、2005年に米国で始まったロービジョンケア推進プロジェクト「スマートサイト」※をモデルとして立ち上げたものである。新潟県では、情報提供施設、大学病院、視覚障害者協会、特別支援学校、NPOなどが協力し、利用者が求める情報や相談に対応できるよう取り組んでいる。始めた当初は集客数も思わしくなかったが、9回目を迎えた今年度(2014年度)は、これまで以上に活気があり、新規登録者も例年の2倍ほどだったという。このような取り組みは一過性のものではなく、長期に継続していくことで大きな手ごたえが得られる事業だと言える。  今後、スマートサイトをモデルとしたネットワークは、全国各地に広がり、現在は主にロービジョンのケアに関することが中心だが、目の見えない方、他の障害を併せ持つ方や関係者を対象とした相談支援プロジェクトが始まることも考えられる。 【参考資料・注釈】  ※スマートサイト  2005年より米国眼科学会がはじめたロービジョンケア推進プロジェクト。その概要は、ロービジョンケアの存在を知らせる啓発用資料を作成し、それを眼科が視覚障害のある患者に渡すことを推奨するもの。患者は資料からロービジョンケアの概要を知ることができ、そこに掲載されたホームページにアクセスすることでより詳細な情報を得ることが可能となる。  日本には2007年に兵庫県で導入され、現在は、北海道、宮城県、福島県、新潟県、山梨県、岡山県など、少しずつ各地に広がりつつある。 2.4 ボランティアの新たな役割  どこの地域でも同様だと思われるが、かつて点訳・音訳図書製作の中心的存在であった専業主婦が大幅に減少し、今後10年でボランティアの高齢化や人材不足がますます進むものと思われる。また、勤労世代が減少する一方で、高齢者の社会保障費を捻出することが見込まれ、個々の経済状況が厳しくなり、共働き家庭の増加が予想される。そして、各方面でパーソナライズが進み、さらに価値観や生活スタイルも多様化するであろう。そうした中で、ボランティア活動についても、従来の枠にとらわれず、新たなスタイルを考えていかなくてはならない。図書製作に関わるボランティアの減少が予想される中、本項ではそれ以外のボランティアのスタイルについて述べる。 □ 製作ボランティアから他の種類のボランティアへ  これまで、点訳・音訳講習会を受けても、途中で断念したり、修了後活動していただけなかったり、あるいは館主催の認定試験に不合格となったりするなどして、実際には活動していただけなかった方も多くいる。図書製作には、高い技術や多くの時間が要求されることもその一因である。  しかし、元々は「何かお役にたてれば……」という思いで受講を始められた方が大半であり、多様な活動内容・活動形態を設けることで、関わっていただける方も増えるのではないだろうか。社会における視覚障害理解の促進という観点からも、色々な層の方々にボランティアとして関わっていただくことは重要である。 □ 生活支援ボランティアの必要性  視覚障害者の中からは、図書製作だけでなく、日常生活のサポートを求める声が上がっている。実際、アクセシブルな電子図書が多く出版されれば、視覚障害者の自立的読書は進展するであろう。他方、ホームヘルパー等では制度的限界があることから、庭木の剪定や大掃除など既存の制度ではカバーできないニーズへの対応も今後必要である。 □ 情報支援ボランティアの必要性  今後はITスキルを高め、情報発信力を身に付けることが視覚障害者のQOLの向上の一つのカギとなるであろう。第4章でも述べている通り、全視情協としては今後こうした取り組みをバックアップしていくことになるであろうが、それぞれの地域においては、「一人一人の顔が見える距離」にある情報提供施設が拠点となって、取り組みを進めていくことが必要である。  以下に具体的な例を記す。  (1) IT機器の操作支援ボランティアの例  ・パソコン・スマートフォン・DAISY再生機等を利用開始前の支援と開始後のフォロー  (2) 情報発信支援ボランティアの例  ・墨字文書の誤字・レイアウトの修正  ・ホームページへのコンテンツのアップ  ・SNSを始めるための設定 □ 期待が高まるプチボラの可能性  長時間のボランティアが困難であるという人にとっても、短時間のかかわりで完結する、いわゆる「プチボラ」なら可能だという人もいるのではないだろうか。今後はプチボラの養成も含めて、視覚障害者支援の在り方を検討していくことが重要である。プチボラの具体例を以下に示すが、その養成にあたっては、これまで培ってきた「イラストや写真を言葉で説明する技術」も有効であろう。  (1) 遠距離による代読・代筆・代見  従来行われてきた代読・代筆に加え、テレビ電話機能を備えた端末を使用すれば、生活上必要なものを視覚障害者本人に代わって見て説明する「代見」も可能となる。予め登録しておいた利用者が、困ったときにSOSを出し、登録ボランティアが対応するという仕組みである。2015年1月にデンマークで公開されたiPhone用アプリ「BeMyEyes」は、この「代見」をネット上で完結できる仕組みであり、今後、日本でも利用者の拡大が見込まれる。  (BeMyEyes の画像あり)(URL:http://www.bemyeyes.org)  例:郵便物の確認、レトルト食品の作り方、服のマッチング、物を落とした時、 道に迷ったときの対応。  (2) 遠距離によるパソコン・スマートフォン等の操作  リモート接続という仕組みを使い、容易に遠く離れた場所からパソコン等の操作方法を伝えることができる。  例:画面読み上げ音声の声が出なくなったとき、どうなっているか分からないときの対応  (3) ちょこっと移動ボランティア  予め登録しておいた利用者が、出掛ける少し前にリクエストを出し、近くで受信したボランティアが移動をサポートする。  例:最寄の駅から会場までの移動を、その近くに居合わせる人がサポートする。  (4) 場面解説ボランティア  音声解説が付かないテレビ番組の場面解説を、同じ番組を見ているボランティアが解説する。  例:好きなテレビ番組やドラマを見たいけれど音声解説がないというときに、別の場所で見ながらリアルタイムで音声解説する。 □ ボランティア活動拠点として情報支援施設の改善  (1) 開館日の変更など条件整備  土日開館・夜間開館を行い、活動拠点としての自由度を増やすと共に、地域の大学や関連青年団体と普段から協力の得やすい協力関係の構築も重要である。  (2) 施設からの情報発信・コミュニケーション手段の整備  様々な方にボランティアとして関わってもらえるようにするためには、情報発信もまた重要である。  (3) 既存のボランティアグループとの連携  全国には、全視情協に加盟せずに視覚障害者のサポート(点訳・音訳・拡大写本・手引き等)を行っているグループも多くある。今後は情報提供施設が地域のボランティアと手を結び、視覚障害者の生活をトータルにサポートしていくことが重要である。 2.5 災害・減災への取り組み  近年、災害による大規模な被害が増加している。今後も災害はいつ起こるか分からない。施設職員が常に災害と隣合わせであるという意識を持ち、利用者を含め、地域で「助かる命を守る」ためにできる情報提供・支援について考える。 □ 1995.1.17 あの日から20年  阪神・淡路大震災より20年が経過した。その間も大小様々な災害は絶えることなく起こっているが、1995年に起きた阪神・淡路大震災は、発生当時、地震災害としては戦後最大規模の被害を出した都市型地震であった。当時は、現在のように災害時でも情報がすばやく、次々に入るような時代ではなく、「何が起こり、何をどうすればよいのか」と、都市全体がパニック状態に陥った。実際、どの職場でも通常の業務を行うことは皆無で、被災者でありながら多くの被災者や避難所の対応に追われる「明日」が見えない毎日であった。 □ 阪神・淡路大震災時の課題 .平常時こそ、緊急体制づくりを.  震災時、神戸市立点字図書館が入る建物自体が、倒壊危険建物と判断され、立ち入ることすらできず登録利用者の情報を取り出すことはもちろん、施設の被害状況を把握することも困難だった。震災発生以前、「地震災害」等の非常時の場合に対する危機感が薄く、それを想定しての備えや、組織、職員間での話し合いも持たれていなかった。また、「阪神大震災・視覚障害者被災者支援対策本部」(通称:ハビー)が日本ライトハウス・JBS日本福祉放送を中心に立ち上げられたが、そこに当時、神戸市立点字図書館が構成団体として加わっておらず、連携を持っていなかった。あの災害時、被災地の施設が、パイプ役として担う部分や、出来る活動が多くあったのではなかったかと思われる。いつ起こるかわからない災害に備え、平常時こそ、利用者の情報の整理、所在を把握し、関係先との連携策など、訓練を通して非常時に備えることが重要である。可能な限り災害時の体制づくりを進め、施設で災害に対応する意識を高め、様々なケースを想定して、情報を共有していくことが必要である。平常時にできていないことは、災害時にできないのである。 □ 防災・減災のキーワードは「情報」  災害時、被災者の正確な情報入手が円滑に出来ない場合が多い。しかし、「災害対策基本法」の改正により災害時要援護者名簿の作成が市町村に義務付けられた。その名簿を施設が共有できれば広く防災・減災の情報が発信でき、災害時の安否確認等が迅速に行え、継続的な支援も可能になる。(災害対策基本法改正では避難所以外の場所の被災者の配慮やそれと同時に避難所で要援護者への支援体制の指針も出された。動物愛護管理法では盲導犬は勿論、災害時動物に対しての対応も改正されている)  また、災害時には日頃あまり耳にしない用語も使用される。特に避難情報の種類(レベル)では、「避難準備情報」「避難勧告」「避難指示」が出されるが、「避難準備情報」が出た時点で視覚障害者は避難を開始することができ、すべきである。これらの用語についても本当に必要な情報をより具体的な言葉で伝えておくべきである。特に事前に知り、理解してもらうことで自らすぐに行動に移すことができる。さらに、津波、風水害、豪雪災害など種類によっては事前に予測できるものがある。それらは避難方法、避難場所が大きく異なる。これらは地域性を配慮しながら情報提供を行っていくことが求められる。「逃げる(避難)」という行動は、避難情報等を聞くだけで直に行動に移せるわけではない。視覚障害者自ら指定避難所までの経路の確認、自治体ごとに作成する「災害時要援護者台帳」への登録、そして、地域住民との関係性を構築し、いざという時に避難誘導が頼める関係づくりを築くことを促すことも重要な情報であろう。  東日本大震災後、東北地方で目にしたのは、商業施設を始めいくつかの建物の多人数の目に留まる場所に貼り出されていた「この建物から一番近い避難所」を示す場所と避難経路図だった。墨字ではあったがこのような情報は利用者だけでなく職員、来館者すべてに対しての啓発活動となる。  災害・減災に対する法律、情報は日々見直され、新しく発信されている。アンテナを張り、最新の情報を収集し、提供していくことが命を守る行動につながると考える。 □ 情報提供施設での防災・減災に向けて  ・防災ハンドブック、マニュアル等について   現在、日本盲人社会福祉施設協議会、日本盲人福祉委員会が作成したマニュアルが整備されている。各地の施設はこれらを参照にして「防災ハンドブック」や「行動マニュアル」を作成して欲しい。地域ごとに災害の想定が異なるので、避難場所をはじめ、災害時の対応、自治体の取り組み、支援体制の相違もある。各施設の実情に応じた独自のマニュアルの作成が利用者への災害への認識を高めるとともに職員の防災・減災に取り組む姿勢、意識も高まる。そうして作成されたマニュアル等はネット上で公開・情報共有できれば今後、参考となり、より施設の実情に沿ったものを創りあげることができる。  ・避難訓練への取り組みについて  避難訓練も地域、施設が合同で行う場合など大がかりなものになると事前の連携、調整、準備等に時間が必要である。しかし、同じ地域、同日、同時刻に合わせて実施できる地震災害訓練「シェイクアウト訓練」のように自由に参加できる訓練を積極的に取り入れることも一つである。また、日頃の施設の広報と区別したスタイルで災害に関する情報発信(防災メルマガの発信など)も積極的に行うことが必要である。 □ 災害時の相互支援・協働・連携  災害時、全国の施設が被災地へ支援したいと考えるであろう。しかし、個々の施設が被災地の施設等へ直接被害状況や支援内容を求めても対応は困難である。そのため、災害当初は、ブロック単位で対応・支援することが望ましい。被災地に隣接していることから正確な情報が早く入手でき、支援に赴く交通等の手段・方法もブロック外より迅速に行える。また、同じブロック間では、日頃から施設・職員間で接点がある場合も多く、災害時の応援が頼みやすいと考える。年度ごとに幹事施設を設け、被災した施設への連絡対応窓口を一本化し、被災施設からの情報の把握、必要とする支援を全国の施設へ提供していく。  それと同時にブロックと全視情協とが連携を取り災害支援に向けての対策、支援活動を早期にスタートさせていくことも必要である。  被災した視覚障害者が必要とし、施設側に求められる情報は、@安否確認、A指定避難所開設情報および福祉避難所に関する情報、B自宅避難者への情報、C救援物資等の配布に関する情報、D被災者への支援内容等の情報、E公的情報などが考えられる。しかし、被災施設で被災視覚障害者にタイムリーな情報を提供することは不可能に近い。その場合、提供できる情報のデータを被災エリア外にある救援側の施設へ送り、そこで24時間以内に点訳、音訳製作、コンテンツ配信をするしくみを構築していくことができればタイムロスのない情報を提供することができる。よりリアルタイムな情報は、被災者への大きな支援であり復興に向けての足掛かりとなる。  同時に被災施設としては、利用者、ボランティアの安否確認をはじめ被災状況の把握、災害支援情報の収集が急務となる。しかし実際、被災地の施設では職員が被災者となり、職員が施設に参集できない状況となる。その場合、限られた職員でできる支援の優先順位を検討し、支援体制が整うまでの間、協力者が必要である。協力者の確保については、日頃から施設自体が近隣地域で地域づくりを検討する場に同席するなど、積極的な活動を展開していくべきである。  また、災害時にラジオが果たす役割は大きく、JBS日本福祉放送をはじめ臨時災害放送局(既存のコミュニティFMが災害FMとなる場合がある)との連携も不可欠である。被災視覚障害者に向け必要な情報を提供することは勿論、募集を含めたボランティアに対する情報も充実させていくことができる。  社会福祉協議会(社協)では災害ボランティアセンター(災害ボラセン)を開設する。その災害ボラセンとの連携は欠かすことはできない。災害ボラセンから多くの情報提供を受けることができ、また、逆に被災者個々のニーズ(※1)を災害ボラセンへつなぐコーディネートの役割を担うことで、支援の方向性が見えてくるであろう。  災害ボラセンでは個人のニーズだけでなく、施設のニーズにも対応可能なため、施設の早期復旧の手段のひとつとなるだろう。  被災後、長期間、情報提供施設としての役割が果たせない場合も想定される。災害時、災害後における支援体制を強化していく上で、ブロック単位で災害時ネットワークの構築に向けて「討議する場」、「検証する場」、「研修する場」を定期的に設け職員間での共通理解と共有、意思統一を持つべきである。  今後、IT利用者はさらに拡大し、それに頼り生活していく比重も大きくなっていく。現在も「防災速報・情報」を提供するアプリがあり、利用されているが、OSごとに対応するものである。すでに「クラウド」については、各章でも提示されているが、同じようにOSに関係なく使用できる視覚障害者向けの「防災速報・情報」アプリが提供できれば、利用する側の情報の選択肢が広がるであろう。  災害が、いつ、どのような時間帯にどのような規模で発生するのかを事前に知ることは難しい。しかし、仮に災害が起こり被災地となった場合、情報提供施設がその地域に住む視覚障害者にとって無くてはならない情報ステーションの機能を果たせるよう、柔軟かつ迅速に対応し、様々な問題に対処しなければならない。災害は、その時だけの対応だけではなく、 長期的な心や体のケアも必要とされるケースが多い。これからの施設はそのことを視野に入れ、地域と協働して課題に取り組む施設の一つとして位置付けされればと考える。 【参考資料・注釈】  ※1 本文中では「ニーズ」としていますが、災害ボランティアセンターでは通常、被災者一人一人が求める具体的要求を「ニード」と表現します。ここでは読み手に伝わりやすくするために「ニーズ」と表記しました。  ・「防災から減災へ 東日本大震災の取材ノートから」(山崎 登 著 近代消防社) 2.6 点字を守り、育てる意義 □ ITやインターネットが進化しても点字図書は存在し続ける  IT機器の開発・普及が進むことにより視覚障害者の情報入手手段が変化する中、点字利用者の減少が危惧されている。それでも、点字図書が製作され貸し出されている現状がある今、改めて原点に立ち返り、なぜ点字は必要なのか、どのような役割を果たしているのかを考えてみたい。 □ 視覚障害者の知的好奇心の向上と、情報源としての点字  なぜ点字は作られたのか。それは、視覚障害者の社会参加が進み、健常者と同様に社会で学び、働き、生活したいという強い意志の下、自由に読み書きできる文字を必要としていたからだろう。だれかの手を介して墨字(活字)を代読・代筆してもらうのでなく、浮き出した墨字を触って読むのでもない、自分の意思を自ら表現し、また他者の書いたものを独力で読むことのできる文字を望み、生み出されたのである。しかし、時代とともに徐々に点字利用者は減少し、今では点字を利用する視覚障害者は圧倒的に少なくなっている。それは、音声媒体の利用が進み、利用者が各媒体の特性を客観的に見極め、必要に応じてメリットの高いものを選択する(できる)ようになったからであろう。では、点字・音声におけるメリット、デメリットをみてみよう。  (点字)  メリット:自分のペースで読み進められる。文字確認ができる。自由にメモを取ることができる  デメリット:点字習得の期間が必要。点字印刷物は嵩張るので図書の持ち運びが不便  (音声)  メリット:ソフト・機器類の使い方を教われば、すぐに聴くことができる  デメリット:自由にメモを取ることができない。考えながら音声を聴くことが難しい  このように、音声で読書をする場合、機器操作ができ、環境さえ整えば、手軽に読書ができるのに対し、点字は読みたいと思ってもまず文字を習得しなくてはならない。しかし、一度習得できれば、そのメリットは大きい。そのメリットとは、まず、個々のペースに合わせて文字を追うことができる点である。たとえば、文章中に不明な語句があれば、その文字の部分を自由に読み返すことができ、重要な語句が出てきたら、その部分をマークしたり、メモを取ることができる。これは、知識を構築したり、考えを整理したりする上で必要なプロセスと考える。筆者も、テレビやラジオで耳にした言葉、例えば固有名詞を「なんとなく」覚えていて、改めて点字で確認し、はっとさせられたことが多々ある。音はその場ですぐに消えてしまうが、点字のような文字では幾度となく確認することができ、確実に自分の知識として蓄積できる強みを持っている。  また、点字はある一定の習得期間が必要で、その期間の長さは個々の学習意欲やモチベーションなどにより個人差が見られるものの、数カ月要することが多い。しかし、いったん自分の使用文字として獲得すれば、自由自在に使いこなすことができ、読書のみならず、生活ツールとしても大きな支えとなり、何物にも代えがたい喜びとなる。  日盲社協が2009年に実施した『点字サインに関するアンケート調査』(※1)に興味深い結果がある。「エレベータ乗り場の説明点字表示(行先などの情報)を利用しているか」という質問に対し、頻繁に見る28.8%、たまに見る27.4%の回答があった。一方、「エレベータ操作ボタン(乗り場・かご内)を利用するか」という質問については、頻繁に見る74.7%、たまに見る19.4%と格段に利用率が上がっている。この結果から、読書以外に外出時など情報が必要とする場面では、ツールとして点字を多く利用していると言える。筆者も、外出途中で電車を乗り換える際、自分の行きたいホームを探すために、階段の手すりに表示されている点字案内をしばしば利用することがある。単独歩行に際しては、歩行の手掛かりとなるだけでなく、安全確保という点でも、点字による案内は必須と言える。 □ 点字を学ぶ意欲を支える  最近では、特別支援学校や情報提供施設・団体などで点字を教えられる教員・専門員が不足し、視覚障害者が点字を学習できる場が確保できなくなっている。しかし、点字を学びたいという利用者はいる。学齢期から点字を学んでいる視覚障害者だけでなく、成人してから見えにくくなり自分の使用文字にするために点字を習得したいという人も多い。こうした「点字を今、覚えたい」という利用者を前にして、即その希望にそえられるように、対応可能な受け皿を用意するのも情報提供施設の果たすべき役割の一つである。当事者の点字学習への意欲を支え、可能性を広げられるよう、施設職員は利用者の気持ちに寄り添い、導いていくことが求められる。 □ 学習会の実施  点字の学習会を実施するには、ノウハウや技術はもちろんのこと、人員や場所の確保といった課題もある。施設内で学習会を開催することが難しい場合は、地域のボランティアグループや当事者グループとつながりを持ち、協力体制を作っておくことが考えられる。また、開催場所も施設内だけでなく、公共施設や、利用者の自宅などに講師が出向き、学習会の場を持つこともあるだろう。さらに、外出が困難な利用者については、ネット環境さえ整えられればSkype等を活用した学習会も大いに有効である。ネット回線を結んでお互いにコミュニケーションを取れれば、対面型の学習会とある程度同じような学習環境を持つことができる。  また、学習会開催においては、講師の育成や教材開発にも心がける必要がある。講師の育成については、日ごろから学習会に向けた講師のための研修会を開催し、講習技術を研鑽しておく必要がある。点字に熟知しているとともに、学習者の意欲を後押しできる人材が求められる。 □ 学習者向けの教材開発  まず、点字の学習に入る前に、学習者の目標を明確にしておくことが望まれる。その到達地点を目指し、指導者は段階に適した、学習者の興味・関心に合った内容を教材として取り上げるなど、意欲を高められるきめ細かな対応が期待される。また、通常サイズの点字だけでなく、Lサイズ点字の導入や、点図の学習なども取り入れ、学習者が点字を「楽しく」学び、生活に役立てられるよう研究していくことが大切である。  現在のところ、視覚障害者が点字を学ぶための教材や学習会の情報を共有する場が数少なく、今後、教材開発を目的とした研修の場も必要である。こうした学習会での実践の積み重ねが、次なる学習者へと、ひいては、点字の継承につながるのである。  図:標準サイズ点字と、Lサイズ点字の比較図(http://tenjifukyu.jp/activity/l-size/)  (図の説明)  現在、日本で使用されている標準サイズ点字規格:マス間 3.2、横点間(1・2・3と4・5・6の点の間隔)2、縦点間(1と2、2と3の点の間隔)2.25、行間 6.75、点の高さ 0.5、点の直径 1.6  Lサイズ点字規格:マス間 3.84、横点間(1・2・3と4・5・6の点の間隔)2.4、縦点間(1と2、2と3の点の間隔)2.7、行間 8.1、点の高さ 0.6、点の直径 1.8  (図の説明終わり) □ 点字データの活用と普及  今後の点字は印刷物だけでなく、データの活用がますます加速するだろう。即時に文字情報を入手できる手段として、墨字から点字に自動変換したデータを点字ディスプレイに送信する方法は引き続き需要が高いと考える。現在すでに、点図が触読でき、複数行の文字を同時に表示できる端末の開発も進んでいる。近い将来、こうした端末が安価に入手できるようになれば、点字利用者数も一定の水準を維持することができ、点字の普及も進むと考えられる。 □ 点字検定試験の実施  現在、点字図書を製作するための技能試験が実施されているが、もう少し簡易な「点字検定試験」を行うことも提案したい。先にも書いたように、点字は読書だけでなく、日常生活の中でも利用されており、徐々に市民権を得てきている。一方で、「点字は難しい」とか、「関係する人だけが使用するもの」という偏ったイメージがあることも否めない。そういった現状を緩和し、さらに私たちにとって点字を身近なものにしていくために、検定試験を実施したい。「単語編」、「手紙編」、「外国語編」のようにいくつかの段階を設け、だれでも点字に触れる機会を増やせれば、点字を広く普及させることができるだろう。 □ 10年後の点字  これからも、便利な音声ソフトや端末の開発が進み、音声利用者の増加に歯止めがかかることはない。しかし、音声媒体と共存しながら、しっかりと点字の特性を理解し生かしていければ、点字の需要がなくなることはないと信じて止まない。今後、その利用内容はより個人的なものに特化され、歌の歌詞・取り扱い説明書といった趣味・娯楽をはじめ、語学テキスト、参考書のような教材、会議資料など、読者が能動的に読み進めたい場面で活用する資料の点訳が増加するだろう。また、現在と同様、盲ろう者のコミュニケーション手段として、今後も点字は必須となる。人と人を結び、ライフラインとも言える点字(指点字も含む)は、盲ろう者の生活の要として活用され続けるだろう。  最後に、視覚障害利用者に日々応対する私たち情報提供施設の職員が、点字習得を必須とすることを提案したい。点字の基礎を学ぶことは、視覚障害者理解を深める糸口になり、点字への意識を持つことで広い視野を養い、日々のサービスに生かせる豊かな発想にも通ずると考える。  こうして、一つの文字として欠くことのできない点字を守り育てていくことは、視覚障害者の生活を豊かにする上で私たちの重要な役割なのである。 【参考資料・注釈】  ※1 「点字サインJIS規格の普及を求めて 視覚障害者の安全で円滑な移動のために『点字サインに関するアンケート調査結果概要』p.27-42」(日本盲人社会福祉施設協議会点字出版部会点字サインJIS規格普及促進委員会編著) 【関連図書】  『日本点字表記法2001年版』(日本点字委員会)   第3章 製作環境の変化とボランティアの関係性  ここ数年で誰もがスマートフォンを中心にした携帯電話を用いて、いつでもどこでもインターネットとつながるようになった。こうした通信インフラ環境の変化が製作環境に及ぼす影響と、ボランティアの役割についてこの章では考える。 3.1 製作環境の変化 □ 点訳、音訳のこれまで  点訳の歴史は、点字器を使い、1点1点、点筆で打っていた時代から、タイプライターが登場し、6点が同時に打てる時代へ。そして今はパソコンで点訳をする時代となり、点訳のスピードだけでなく、製作しやすさの面でも改良が進んだ。点訳専用ソフトが開発され、パソコン画面上で点訳作業を行うため、打ち間違えても簡単に訂正ができてしまう。  音訳は、朗読という直接会って対面で行うものしかなかった時代から、音を磁気信号として記録する「録音」という技術が生まれたことにより、カセットテープに直接声を吹き込むという方法が可能となった。そして現在はDAISY(Digital Accessible Information System)というデジタル図書の開発により、点訳同様、パソコンと専用ソフトを使ったデイジー図書製作が主流となり、録音後の編集なども容易になった。  点訳、音訳共に「デジタル化」が進み、製作物が「物」から「データ」となったことにより、製作が容易になっただけでなく、その保存や移動なども楽になり、場所や時間が問われなくなった。 □ ソフトウェアによる製作からクラウド製作へ  点訳・音訳がデジタル化したことは前項で述べたとおりだが、「今のかたち」が最終形態というわけではない。技術は進化する。ここで登場するのが、1章でも話に出てきた「クラウド」というかたちだ。  点訳も音訳も、現在は専用ソフトをパソコンへインストールして使用している。当然のことながら、使用できるパソコンは、そのソフトを入れたものに限定され、作業可能なパソコンを増やしたければ、その台数分のソフトを購入しなければならない。また、これらのソフトはOSにも影響を受け、まずWindowsでなければならず、そのOSのバージョンが新しくなれば、それに合うように開発された新しいバージョンのソフトを再度購入しなければならない。点訳ボランティア、音訳ボランティアとして活動していただくためには、その方々のソフト購入についても考える必要がある。これらの課題を解決してくれるのが「クラウド」という技術だ。  すでにこのクラウド製作の環境を現実のものとして実用を始められたものとして、東芝のDaisyRings.(デイジーリングス)音訳クラウドサービスがあるが、これは、東芝の合成音声技術を活用したクラウド型のマルチメディアデイジー製作システムで、登録をすれば現時点では無料で利用することができる。登録者にはID・パスワードが発行され、利用が可能となる。このクラウド環境下での製作とはどのようなものか、イメージしやすいように次のような図に表した。  図:クラウド型製作のイメージ  (図の説明)  点訳・音訳・テキストデイジー等製作者は、自宅や職場、公園や駅のホームでも、Webブラウザにアクセスすることで、クラウド型製作支援システム(点訳システム、音訳システム、テキストデイジー等製作システム)を使って テキストデータアップロードや、テキストデイジー等製作、音訳・点訳校正作業、DAISY・点訳データダウンロードなどができる。  (図の説明終わり)  クラウド型製作のメリット  ・新規導入時やパソコン買い換えにフトウェアのインストール不要  ・再インストール、更新なしにいつでも最新のシステムが利用可能  ・USB などのメディアを介さず、安全にデータのやりとが可能  ・音訳作業の分担が可能  このクラウド化によるメリットは、さらに製作作業のネットワーク化が進むことだ。現在は製作物がデータ化されているにも関わらず、そのデータの受け渡しについては、まだFDを使っているところや、USBメモリやSDカードなど、そういった保存媒体を使用し、手渡しや郵送などで行っている施設も少なくない。しかし、クラウド化されれば、製作した点訳・音訳データもクラウド上に保存できるため、インターネット環境下では誰でもそのデータにアクセスすることが可能となる。データをもらいに行くための移動時間や郵送時間はゼロとなり、極端に言えば、点訳や音訳作業が終わった数秒後に校正作業が開始できる。  このクラウド化は、製作のしやすさやスピードが増すだけでなく、ボランティアの方々のより積極的な製作活動を後押しすることだろう。 □ 製作デバイスの多様化  クラウド製作が可能にしてくれるのは、ソフトレスということだけはない。OSに影響を受けず、WindowsでもiOS(アップル社)でもAndroid(Google)でも同じように作業ができる。デバイスもパソコンだけではなく、指で画面操作するタブレットと呼ばれるものや、スマートフォンでも作業が可能である。  これからの10年を考えると、デスクトップやノート型のいわゆる「パソコン」はその数を減らし、タブレット型のデバイスが主流となっていくだろう。点訳では、キーボードを使った6点入力という方法があるが、タブレットではキーボードは不要である。直接画面に6点入力をすれば(画面を指で触れれば)、点字入力が可能となっているだろうし、録音については、文字を入力する必要が点訳ほどないので、作業自体はスマートフォンで十分だ。マイクの機能が上がっていれば、スマートフォン一つで音訳作業が可能となる。未来の録音室には椅子と机だけが置かれていることだろう。もっと言えば、ノイズなどをカットできる機能が進歩すれば、自宅での録音が中心となり、録音室自体不要となるかもしれない。  デバイスがパソコンからタブレットやスマートフォンに変われば、現在のようなソフトウェアではなく、点訳アプリ、音訳アプリが開発されていることだろう。このアプリをタップすれば、すぐさまインターネットを経由して別サーバーにある点訳・音訳システムにつながり、作業が開始できる。これなら、パソコンが苦手な方でも、気軽にボランティアに加わっていただけるのではないだろうか。 □ 施設職員の役割と新たなボランティアの創出  クラウド製作が始まると、その使い方について、ボランティアの方へのサポートが必要となる。そのためにもまずは職員がクラウド製作について熟知し、また養成講習会もクラウド製作に対応したものに切り替えていかなくてはならない。講習会の会場もインターネット環境が必須となる。  細かなところを見ると、クラウド製作に必要な各ボランティアのID・パスワード管理や、先ほど述べたようにネットワーク化が進むことで、現在とは違った、点訳・音訳に係るコーディネート力も必要となる。作業の分担について、点訳ではこれまでも分冊をしてのグループ点訳が行われてきたが、テキストデイジーやマルチメディアデイジー製作が始まると、音訳でも作業の分担が始まる。  また、電子書籍の普及によって本文がテキスト化されることにより、テキストデイジーやマルチメディアデイジー製作はよりスピードを増し、点訳についてもエクストラに代表される自動点訳がより効果を発揮し、新たなボランティアの役割が見えてくる。  サピエ図書館に登録する点字図書・音訳図書は間違いのない正確なものを目指しているが、やはりこれには時間がかかってしまい、旬な話題、リアルタイムな話題をすぐに利用者へ届けることが難しい現実があった。しかし、テキストデイジーや、日々進化する自動点訳を使用することで、製作時間が短縮され、限りなくリアルタイムに近い情報を届けることが可能になる。また製作の担い手もこれまでのような1年間何十時間も講習会を受けて修了されたボランティアの方々だけではなく、学生ボランティア等にも製作の一員となっていただき、多少の間違いはあっても、リアルタイムで旬な情報をいち早くお届けする新しい分野の創設が望まれる。これはサピエ図書館に登録する図書とは別のものとして位置づける必要があるかと思う。しかし、利用者はこの情報を間違いなく求めている。正確な図書と、多少の間違いはあってもリアルタイムで旬な情報。この二つの製作を同時に進めていくことが、これからの点字図書館には求められる。私たち視覚障害者情報提供施設の職員はこれらに対応できるノウハウを身につけることがこれからの課題と言える。  大学の学生ボランティアと点字図書館がつながりを持つというのは、単に情報発信の即時性だけを考えているのではなく、学生が点訳した成果物が点字図書館をとおして世の中に発信され、それが実際に視覚障害者の情報保障として役立つという過程が、これからの視覚障害者福祉の担い手を育てるというところにおいても、大きな意味があると筆者は考える。若い力を活かし、若い力を育てる、未来を語る上ではとても大切なことではないだろうか。 【参考資料・注釈】  ※資料提供 (株)東芝 研究開発センター 3.2 出版データの活用  電子書籍が普及しはじめたことで、iPhoneやiPad、Kindleなどの様々な出力手段を用いて本を読むことが可能になった。視覚障害者もその恩恵は大きいと思われる。これまでの点字や音訳されたモノではなく、電子書籍を購入したその日に読むことが可能になるからである。  前出、1−1にも書かれている通り、IT関連機器のアクセシビリティ機能は年々進化している。中でも2013年は視覚障害者の方々にとって電子書籍を読める大きな分岐点になった年と言える。iPhone、iPad(iOS)のアマゾンKindleアプリで音声読み上げ対応したことで、iPhoneやiPadに標準搭載されているアクセシビリティ機能「VoiceOver」を活用し、多くの書籍が販売と同時に読めるようになったのである。しかしながら、書籍市場全体を占める電子書籍の割合は2011年の4.9%から2016年には18%と予測されている数字もあり、この比率から見ても、すべての図書が電子書籍化されるとは今後も考えにくいと思われる。  このように近年の出版界の電子書籍による提供の流れを考えると、出版される電子書籍が視覚障害者にとって、よりアクセシビリティな情報提供を形づけられるように、出版社との連携を図り、アクセシビリティ機能の充実、製作の効率化による製作速度の改善、様々なジャンルの図書製作へと幅を広げていきたい。  ここでは、出版社と連携を図るうえで、特に以下の3点について働きかけを提案したい。 □ 視覚障害者にも適切に利用できる電子書籍づくり  出版社からよりアクセシブルな電子書籍(EPUB3)(※1)の製作及び販売を求める。  これらを点字図書館、公共図書館が購入し、利用者に対して貸し出しをおこなう。 □ 出版社へEPUB3によるデータ提供を求める  EPUB3が元データになっていれば、活字(墨字)はもとより、テキスト、マルチメディアデイジー、点字が、ほぼタイムリーに利用者へ提供することが可能になる。出版社はアクセシブルなEPUB3で製作・販売するだけではなく、点字図書館等に対してコピーガードが付いていないものを提供し、視覚障害者等のためにアレンジできる環境が理想的な形と思われる。そのためにも、対応できる情報提供施設・団体の製作体制への用意が必要である。 □ 法整備を進める  2012年7月1日に改正された国立国会図書館法により、電子書籍や電子雑誌などの電子納本が義務化となった。書籍の電子納本の義務化にあたり、アクセシブルなEPUB3の形式による製作の標準化と国会図書館へのEPUB3の納本が望まれる。  また、2008年9月に施行された障害のある児童及び生徒のための教科書用特定図書等普及の促進等に関する法律(通称:教科書バリアフリー法)の仕組みも参考になると思われる。同法では障害児のための教科書等を作製する点字図書館やボランティアが求めた場合、教科書出版社は文部科学大臣等に対し、当該教科書の電子データを提供することが義務付けられている(法第5条)。点字図書館等はそれらの提供を受けることができる。この仕組みを参考に一般図書についても大いに参考になるものと考えられる。  【テキストデイジー(マルチメディアデイジー)図書の製作環境に求められること】  現状は、@本の裁断(スキャンのため)、Aスキャン、B修正(スキャンされたデータに誤字脱字がないか確認)、C校正 という一連の作業にかなりの時間を要している。これらの作業も出版社からデジタルデータが提供されれば、大幅に製作時間が短縮され、より正確な図書を提供することが可能になる。ただし、出版社は、図・表・写真等の説明を行うノウハウは持ち合わせておらず、それらを利用者に分かり易く情報提供するには情報提供施設・団体等がこれまで蓄積してきたノウハウの活用が期待されるなど、今後の役割は大きい。  図:テキストデイジー編集中の画面イメージ 【参考資料・注釈】  ※1 EPUB3:EPUBの規格に、DAISY規格(DAISYバージョン4)を採用した形式で、これからのアクセシブルな電子書籍として期待されている。 【コラム】合成音声が発展すると音訳ボランティアはなくなるのか?  IT技術が進み、合成音声が人の声に近づくことで音訳ボランティアはなくなるのでしょうか。  アンケートでもたくさんの声があがっていた“ボランティアの高齢化とその養成”についても一緒に考えたいと思います。  ある調査では20 年前から現在に至ってボランティアの平均年齢は並行して上がってきていると述べられています。私たちはボランティアの方々の人材を確保していくことは、これまで以上に困難になっていくことも念頭においておかなければなりません。  特に音訳ボランティアは、知識と経験が必要なことは言うまでもありませんが、人の肉声であるがゆえ、そのクオリティーを維持するには献身的な努力が必要です。そして製作もマンパワーが大きいため時間を要してしまいます。これらが製作物の安定化とスピーディーな製作、専門書の製作不足への課題にもつながっているのかもしれません。  一方、合成音声の発展は目覚ましいものがあります。今後は電子化(テキスト化、マルチメディアデイジー化など)に向けた備えが必要になってくると思われます。電子化されることで、製作は場所を選ばず、人を選ばず、分業も容易なため、よりタイムリーな製作が可能となります。また3−2であげているように出版社との連携も今後は大いに考えられます。ただ、電子化(合成音声化)では難しい、人の目で行うことでしかできない読みの校正や固有名詞等の読み方、写真・図・表の説明、文体の構成(見出しや注釈等)など、これまで蓄積されたノウハウを活用していくことにはなんら変わることはありません。合成音声(本文)と肉声の音声(写真や図の説明)によるハイブリット化製作だって考えられると思います。そう、ボランティアの役割は少しずつ変化していくのです。  図書の電子化や合成音声化の製作が進めば、現在の人の声で録音をするデイジー図書との製作比率は変わってきます。前述した通り、音訳ボランティアの役割も「読み」からテキスト化などの「合成音声編集」へ切り替わっていくことも考えられます。これは、肉声で読み上げる音訳ボランティアが必要ないということでは決してありません。その役割が変わっていくことも見据え、これからの世情やそれらに伴う製作環境の変化をしっかり受け止め、電子化(合成音声化)への環境づくり(研修・養成)を念頭に備えることが重要なのです。準備が間に合わず、その結果、利用者への情報提供に遅れがあってはならないからです。  繰り返しになりますが、これからの音訳ボランティアに求められることは、単にコンピューターの補助的な役割になるのではありません。音訳される図書のニーズはなくならないと思いますし、「音訳ボランティア」は数を減らすどころか、益々の活躍が期待されると思われます。   第4章 10年後に向けた全国的な課題 〜 地域が生き生きと輝く未来のために 〜  ここからは1章から3章までの視覚障害者情報提供施設の役割の変化に対応するために取り組むべきアクション・プランについて考える。 4.1 10年後に向けて私たちが取り組むべき全国的な課題  私たちが目指しているのは、視覚障害者をはじめ誰もが本を読むことができ、また、全国どこに住んでいても視覚障害者個々が必要な支援を受けられる環境を実現することである。視覚の障害により日常生活に困難を抱えている人は2007年時点で全国に164万人いると推定されているが(2009年、日本眼科医会)、全国の視覚障害者情報提供施設の利用登録者数は85,115人に留まっており(平成24年度実態調査「日本の点字図書館29」)、また、音声時計など日常生活用具の認知度が視覚障害者の間でも低いことが、日本盲人福祉委員会による東日本大震災の支援の中で見えてきた。こうしたことを勘案すると、今後ますます情報提供が重要であると言える。とりわけ、今後はロービジョン者や、盲ろう者を始めとする他障害を併せ持つ視覚障害者へのサービスの充実が望まれる。  さらには、点字・パソコン・歩行訓練、日常生活訓練等「視覚障害リハビリテーション」が行われていない地域も一定数あること(参考:『視覚障害者の生活訓練実施機関の現状(2014)』日本ライトハウス養成部)も重く受け止める必要がある。視覚障害者がリハビリテーションを受けられなければ、情報提供施設を利用できないばかりか、社会参加そのものが困難となる。  情報提供や生活相談、リハビリテーション等視覚障害者の全人的支援の核となるのは、各都道府県に1カ所以上ある視覚障害者情報提供施設・団体であり、支援が全国の隅々まで行き届くようにするためには、施設・団体間の連携がこれまで以上に重要である。また、地域の課題を解決するためには、全視情協を通じて、法制度の拡充をはじめとする環境整備を国や社会に対して働きかけていくことも必要である。さらに、民間企業による財政的援助についても検討する必要がある。  全国的な課題に取り組むことが地域の取り組みの活性化にもつながり、また、思いのある個人・施設・団体の行動が社会の変化をもたらすとの認識に立ち、以下を提案する。 4.2 必要な法制度の確立  全国の視覚障害者等が等しく適切な情報や支援を享受できるようにするためには、視覚障害者関係施設・団体が一丸となって、以下の法制度の確立を求めていくことが大切である。 □ 情報アクセシビリティ関連  2014年に我が国が批准した「障害者権利条約」では、障害のあるものが他のものとの平等を基礎として、自分らしく豊かな社会生活を送れる環境を整備することを締約国に求めている。我が国においては、1994年のハートビル法、2000年の交通バリアフリー法等により前世紀から物理的バリアの解消に向けて取り組まれているが、21世紀を迎えて10年たった今でも、未だ情報アクセシビリティに関わる包括的な法整備がなされていない。「情報」は人生を豊かにするのはもちろんのこと、人生のあらゆる場面での自己決定に欠くことのできないものであるがゆえに極めて重要である。視覚障害者は「情報障害者」であり、文化・情報面での不平等を解消するための法制度の確立が必要である。具体的には、米国の「リハビリテーション法508条」及び「21世紀の通信と映像アクセシビリティ法」を参考に、以下の内容を含む「情報アクセシビリティ法(仮称)」の制定が望まれる。  A.教育・雇用・政治参加・医療・財産管理をはじめとする社会生活におけるあらゆる場面での情報アクセシビリティの確保  B.Webを含む放送・通信のアクセシビリティの確保  C.情報機器の操作のアクセシビリティの確保  D.SNS等情報共有・発信におけるアクセシビリティの確保 □ 著作権法関連  マラケシュ条約(※1)を踏まえ、公表された全ての著作物のアクセシビリティを確保するための著作権法の改正が必要である。 □ 郵便法関連  第四種郵便物の適用範囲を大活字図書、マルチメディアデイジー、テキストデイジー等 に広げ、これらの郵送の無償化を図ることにより、ロービジョン者をはじめとする読書に困難を抱える人たちの読書権を保障することが求められる。 □ 身体障害者福祉法関連  (1) マラケシュ条約及び著作権法第37条第3項を踏まえ、身体障害者福祉法に言う「視聴覚障害者情報提供施設」を「視聴覚障害者等情報提供施設」と改め、ディスレクシア等視覚による表現の認識に障害のある方へのデイジー図書等の貸し出しについて明確化する必要がある。(現状では、図書の貸し出し対象者が条例で視覚障害者に限定されているケースが少なくない)  (2) 身体障害者福祉法において、視聴覚障害者情報提供施設の機能として「相談業務(視覚障害リハビリテーションを含む)」を位置付けること。  (3) 「身体障害者社会参加支援施設の設備及び運営に関する基準」第38条において、視覚障害生活訓練等指導者(通称:歩行訓練士)または社会福祉士を「点字図書館(または同一法人)に置くべき職員」に加えるものとする。ただし、視覚障害生活訓練等指導者は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士と同様、関連法規において国家資格とする。また、同条の「点字指導員」は「点字指導員または点字技能師」とし、その確保の容易さを図るものとする。 4.3 ITの活用と新たな情報提供 □ 視覚障害者総合支援のための「新ネットワークシステム」の開発  クラウド型の図書製作・読書、リコメンドサービス等を可能とすると共に、「サピエ」や「スマートサイト」(第2章の2.3参照)ともリンクし、総合的な情報支援拠点となる「新ネットワークシステム」の開発が必要である。 □ インターネットを活用した広域的な情報発信の強化  現在、多くの人がインターネットによって情報を得ており、この傾向がますます加速するものと思われる。真に情報を必要としている視覚障害者等に情報が行き渡るようにするためには、一般市民の中でその情報が「当たり前のもの」「常識」となることが必要である。そのため、動画やSNSを活用し、日常生活用具をはじめとする視覚障害関連情報を幅広い層の人たちに分かりやすく伝えていくことが求められる。 □ 新技術開発への参画  IT技術やロボット産業は更なる進展が期待されているが、新たな技術が視覚障害者の社会生活を阻む壁とならないよう、開発段階から参画し、ユニバーサルなモノづくり・社会づくりに貢献していくことが望まれる。また、企業等と協同で視覚障害者が必要としている機器等の開発を行うことも大切である。例えば、点字データを高音質な音声データに変換する機器の開発を進め、点字を読むことが困難な視覚障害者等に提供していくことも重要である。同様に、音声データから点字データに変換する機器の開発を促し、立ち遅れている盲ろう者への情報支援を促進することも忘れてはならない。 □ 情報支援ボランティアの全国的な養成  視覚障害者が情報技術から取り残されないようにするためには、全国どこに住んでいても、情報技術を習得できる環境の整備が必須である。そこで、各情報提供施設の職員が高いITスキルを身につけ、各地域でパソコン等サポーターの養成・派遣を行い、視覚障害者総体のITスキルの向上を推進する。サポーターは、DAISY、MP3プレーヤー、テレビ、スマートフォン、パソコンなどの最新技術を把握し、一人一人に寄り添ったきめ細やかな対応をすることが必要である。 4.4 各方面との連携強化 □ 視覚障害者関係施設・団体間の連携  まず、日盲連・日盲社協・全視情協が密接に連携し、三位一体となって、今後のビジョンを提示することが必要ではないだろうか。次に、視覚障害関係施設・団体と眼科、その他支援機関が連携し、年齢に関わらず、「目の障害が疑わしい段階」から必要な情報と支援が提供される仕組みづくりが進められなければならない。それにより、リハビリテーションから豊かな社会生活への道筋を確立することが大切である。また、教育・就労関係施設・団体とも連携し、視覚障害者の生活を総合的に支援していく仕組みも必要である。 □ 各方面との連携  視覚障害者の豊かな社会生活を実現するためには、視覚障害の枠組みに留まるのではなく、外部組織との連携が必要であり、視覚障害者情報提供施設・団体のネットワークである全視情協にとっては以下が重要である。  (1) 出版社、電子図書館、公共図書館、大学図書館、病院図書館、患者図書館等と連携し、読書におけるユニバーサル・デザインを、他障害の関係施設・団体と共に推進する。  (2) 放送事業者、映画業界、美術館・博物館とのネットワークを構築し、音声ガイドや立体模型等を活用した情報提供を推進する。  (3) マラケシュ条約の批准、国際規格であるDAISYの更なる活用、国を超えて利用される統一英語点字(UEB)の動きなども視野に入れ、サピエの国際版等、国際的な情報支援のあり方についても検討する。 4.5 全視情協内部の組織強化  全国の視覚障害者等に情報提供が行き渡るようにするためには、会員施設・団体が同じビジョンを共有し、相互に連携し、役割を分担して、事業を効果的に進めることがますます重要である。具体的には、以下のような取り組みや仕組みが必要である。 □ インターネットの活用  ・全視情協ウェブサイトの「会員用ページ」の更なる活用(先進事例の共有、個々の施設・団体で抱えている課題・疑問解決のための「全視情協知恵袋」(仮称)の開設等)  ・Ustream等を利用した研修会等のインターネット配信 □ 加盟施設・団体間の連携  ・各地域ブロックの連携を深め、大規模館が小規模館のサポートに当たる  ・職員数が極めて少ない施設・団体もあることから、広域連携を図り、各施設・団体を超えての図書製作や防災・減災対策など共同事業の可能性を探る  ・加盟施設・団体間の人事交流を行うことにより、各施設・団体の取り組みを活性化させる □ 事業の緩和と見直し  現在の「情報提供施設・団体の役割」を以下のように分類して、事業を選択的に行えるようにし、事業の効率化と、サービスの充実を目指す  ・情報資料(図書等)を製作する施設  ・情報資料(図書等)を貸し出す施設  ・生活相談・IT利用支援、リハビリテーションを重点的に行う施設  ・全国的サービスを積極的に行う施設 □ 新たなプロジェクトの設置  ・10年ビジョン推進プロジェクト  アクションプランである「10年ビジョン」が適切に推進されるよう各方面に働きかけると同時に、年次ごとに効果測定を行い、中間年に当たる5年後に社会環境の変化等を踏まえ、必要な見直しを行う。  ・人材開発プロジェクト   視覚障害者の多様なニーズを包括的に把握し、必要に応じて適切な政策提言を行える人材を育成する。  ・IT開発プロジェクト(4.3で挙げた各種事業を実施)  ・製作調整プロジェクト  全国の情報提供施設・団体で一つの図書館を作っているという意識のもと、全国的な製作調整に当たる。特に、絶対数が少ないジャンル・媒体の図書を増やすことや、図書以外も含めた誰もが待ち望んでいる資料を早期に製作することが重要である。例えば、2014年末現在、「障害者権利条約」のデータがサピエ図書館にアップされておらず、こうした課題の解消が急がれる。さらに、現在でも情報や流行はめまぐるしく変化しており、10年後にはますます加速する。古くなれば情報としての価値が損なわれる分野が確実に存在し、それは、視覚障害者と晴眼者との情報格差となる。正確さの追求のみならず、「不完全でもいいから早く情報がほしい」というニーズにも全力で応えることが今後の情報提供施設・団体の役割として求められる。 4.6 全視情協の財政問題の解決に向けて  4.3にあげた「新ネットワークシステム」構築を始め、様々な事業を行っていくための財源として、以下の方策が重要である。  ・視覚障害者が必要としている情報は書籍に留まらず、映像や美術作品、IT分野など幅広く、また、教育・労働・医療など様々な場面での情報提供が必要であることから、厚生労働省のみならず、総務省、経済産業省、文部科学省等省庁横断的な支援を要請する。  ・国際的な情報支援を行っていくことも視野に入れ、グローバル企業をはじめとする民間企業に支援を要請する。  ・各種研究費の活用  2012年の診療報酬改定により設定された「ロービジョン検査判断料」に見られるように、今後の眼科においては治療のみならず、福祉施設との連携が期待されており、「スマートサイト」と連携する「新ネットワークシステム」開発に医療関係の研究費が当てられることが合理的且つ重要であると考える。また、大学や企業と連携し、視覚障害者に役立つ機器の開発に当たると共に、視覚障害者がITスキル等を活かして社会貢献できる分野の開拓を進める観点から、各種研究費を活用したい。  ・「新ネットワークシステム」の読書以外のサービスにおいては、利用者向けの有料サービスも検討してもいいのではないか。 【参考資料・注釈】  ※1 マラケシュ条約は「視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するための条約」(http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2013_09/series_08/series_08.hhtm)   第5章 2025年のわたしたちへ  今から10年後の2025年に、私たちは今現在働いている施設でより大きな役割を担う立場にそれぞれが置かれているに違いない。そんな自分たちへ届ける言葉をここでは述べる。今回、10年ビジョン委員として参加している8名が、『10年後のわたしたちへ』という共通のテーマで各自の想いを込めて述べた文章をここで紹介する。(順不同)  (事務局より)委員一人一人の想いや考え・強調したい箇所を読み取っていただけるよう、文字強調等は筆者からの原稿をそのままで掲載しています。  (テキストデータでは文字強調等は省略しています。)   「10年後の私へ」(京都ライトハウス情報ステーション 野々村 好三)  現在、情報提供施設の利用者は視覚障害者の1.2割に留まっており、まだまだ多くの方に情報が行き届いていません。筆者は、施設入所者、ロービジョン者、福祉サービスにつながっていない中途視覚障害者等、1人でも多くの方に「読書の喜び」をお届けできればと思います。そのためには、情報提供施設が色々な場に出ていき、つながっていくことが重要であり、10年後、そうした取り組みを担う一翼でありたいと考えます。  10年後は高齢化やITが更に進展します。視覚障害者にとって電子書籍が利用しやすくなってきていると思いますが、たとえカセットテープ図書の製作が終了しても、貸出希望者はゼロにならないと考えます。つまり、電子書籍とカセットテープが共存する時代です。個々の思いに寄り添いながら、その人にあった説明方法などを工夫して、幅広い情報ニーズに応えていければと思います。  さて、この先、私自身も含め、視覚障害者は何を求めていくでしょうか。やはり「障害理解=視覚障害に対する正しい認識の普及」ではないかと思います。これを進めるために有効なのは、視覚障害者自らの情報発信とインクルージョンだと考えます。前者については多くの視覚障害者がSNSやホームページを通じての発信を手軽にできるようにするための支援が重要です。後者の「インクルージョン」には公共図書館の利用も含まれますが、その推進には視覚障害者自身の意識変革も必要です。情報提供施設として、公共図書館のサービスやイベントなどの情報も視覚障害者の皆さんに積極的に伝えていきたいものです。  何もしないままでも10年経ちますが、社会に働きかければ歴史が動きます。それは、過去の歴史が教えてくれています。そして、先人たちが50年後、百年後のありようをデザインしていたからこそ、10年後を変えられたのだと思います。仲間の皆さんと共に引き続き未来を語り、できることから少しずつ実行していきたいものです。視覚障害者にとって輝かしい未来を実現するために。   「2025年(10年後)のわたしたちへ 〜バリアフリーという、その価値観を変える〜」(日本ライトハウス情報文化センター 林田 茂)  これから急速に発展するものを五つあげてみます。  @ 合成音声  A 電子書籍  B 音声解説  C 3Dプリンタ  D ウェアラブルコンピュータ  これらは共通して、コンピュータの処理能力とインターネットの取り扱えるデータ量が増えていくことでさらに発展していくと考えられます。おそらく何もしなくても進んでいきます。  では、待っていればいいのでしょうか?  そうではありません。私たちの関わり方によって、進んでいくスピードとその方向性には大きな違いが生まれてきます。  今回は、日本ライトハウスが全国のリーダーシップを取りながら取り進め、私が大きく関わっている「音声解説」の今後5年〜10年後の可能性について述べさせていただきます。  ◆映画館では、多くの作品がいつでも観られる音声解説付き(バリアフリー上映)となる。  現在、バリアフリー上映は、年間4〜5作品程度で日時も限定されています。映画は、その時の気分によって観たい感情は違います。観たい作品を観たいときに観られる環境をつくる必要があります。  その可能性を秘めた技術が「音声透かし」です。人には聞こえない周波数を使い、その周波数帯をタイムコード化し、アプリを使いタイムコード化された音声解説を読み取ることができます。現在、実用化に向けて検証を進め、全国の主要都市にモデル映画館を位置づけ、課題の洗い出しと作品増に向けて取り組んでいます。  ◆TSUTAYAに並ぶレンタルDVDのほとんどが音声解説付きで聴ける。  音声解説の普及と促進により、配給から発売されるDVDに音声解説が付けられた作品は増加すると考えられます。もちろん常にそれらの重要性を訴えていくこと・働きかけていくことは言うまでもありません。音声解説が付けられていない作品もシネマ・デイジーの充実によりカバーすることが見込めます。  ちなみに2012年度の映画上映は、邦画554作品・洋画429作品、合わせて983作品でした。  全視情協のシネマ・デイジー検討プロジェクトでは、全国の情報提供施設・団体がシネマ・デイジーを製作し、取り扱える環境づくりを進めています。全国の100の施設・団体が年間10作品弱を製作すれば、年間の上映作品を網羅することが可能です。  書店のように平積みしている図書が点訳・音訳されているように、DVDも店頭の入り口に並べられているモノは、視覚障害の方も楽しめる形にしたいです。一緒に実現しませんか!  ◆2020年 東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに。  テレビの解説放送も待ったナシです。オリンピック・パラリンピックをきっかけにスポーツの情報もニュースや事後報告の記事ではなくライブ感覚で、今を知り・楽しむ環境を作らなければなりません。  テレビで期待されるのは、セカンドスクリーンの技術です。ITを用いて、既存の放送に補足する情報を加えることも考えられます。  そして、音声解説は、映画やテレビの情報を伝える手段だけに留まりません。2014年のW杯では、ブラジルの競技場で視覚障害者向けに音声解説の情況解説が実施されました。このように適切な情報環境さえあれば競技場(現地)に出向いて楽しむことができます。新国立はアクセシブル化が検討されていますので、音声解説のシステムやiBeacon(情報ナビ)、3Dプリンタ、ウェアラブルコンピュータなどとの連動した情報提供に期待が膨らみます。  これまでの点字図書館(情報提供施設・団体)は、活字のモノを視覚障害者の方が利用できるように取り組みを進めてきましたが、ITの可能性と比例して、新たに映像作品(見えることを伝える)も加わることの重要性と可能性を見過ごすことはできません。特別に何かをするという考えではなく、当然のようにあるモノになれば、バリアフリー何某という言葉は、きっと別の言葉、別の意味付けになると思います。  その価値観を筆者は変えていきたい。   「2025年の私へ」(神戸市立点字図書館 松本 麻紀)  2015年の今、子どもの頃「こうなればいいな」と思い描いた事が「なりました」と、現実になっていることが多くあります。これからの10年、特にIT関係はさらに進歩し続けることは間違いありません。  しかし、何年たってもそこには、必ず「人」がいて、「人とのつながり」は変わらずに存在しているでしょう。  ◆出ていく点字図書館  今は図書館内だけの業務が中心ですが、どんどん地域へ出向いていける点字図書館でありたいです。区や町単位に出向いていく、蔵書等の貸し出しだけでなく、そこで利用登録は勿論、読書・機器ミニ体験会、読書相談、ボランティア活動への相談、見えにくい方や当事者以外からの相談なども行い、もちろん、点字図書館の広報活動も積極的に行います。  特別支援学校、地域の公民館、商店街の空き店舗など気軽に地域に出ていく「出前点字図書館」を展開して行くことが出来ると考えます。  ◆つながる点字図書館  地域に出向いていくにもその地域を知る団体、施設との連携・ネットワークがなくては、多様なニーズに即応できません。また、点字図書館だけでは解決できない相談・問題などを関連団体に繋げていくシステム作りが必要です。それに加え、県下の情報提供施設・団体、公共図書館との連携の強化も重要になると考えます。情報の確認・共有・問題を話し合う場を持ち、情報交換や一団体・施設では解決しえない問題の検討や、変化していく公共図書館の情報も大いに必要です。  協働でイベント的な催しものからスタートしても構いません。連携・協働した事業が行えることが第一歩です。点字図書館を利用される側にとっては、どの施設・団体からも出来る限り同じサービスを受けることができ、情報がもらえることが当たり前であるべきです。そのためにも、県下での連携が大きなポイントになるでしょう。  ◆ 広げる点字図書館  点字図書館は、視覚障害者の立場に立った施設であるべきですが、晴眼の方にも周知してもらいたい施設です。視覚のことで気になる、不安に感じる人が身近に居れば、「点字図書館に相談したら」と、すぐさま言葉に出るような施設にならなくてはいけません。  学校からの見学希望や、点字指導にボランティアの方と出向いていますが、一部の学校関係だけでなく、全市での福祉教育の一部を担う立場に立てるようになりたいと考えます。カリキュラムをボランティアと協力して考え、学校現場だけでなく、児童館などの子育て支援の現場にも広げ、視覚障害者の支援が当たり前にできるノーマライゼーションな地域となるべく取り組みを進めていくことが必要です。また、福祉教育活動の実施が、新たなボランティア活動の一助となるのではないかと考えます。  ◆集う点字図書館  点字図書館に来館し、気軽に集える場を定期的に設けることが出来ればと考えます。すでにサロンを開催されている施設・団体は多いかと思いますが、あまり堅苦しいスタイルではなく、お茶を飲みながら利用者同士で交流、情報交換ができ、時には点字図書館やボランティアの企画タイムを設け、利用者の方やご家族、また友達同士で空いた時間に点図に行き、新しい情報を得たり、図書の閲覧ができたりする空間を作ることが出来ればより一層、点字図書館が身近なものとなるでしょう。また、その運営を利用者の方に協力していただくことも可能でしょう。  「いつでも、どこでも、だれでも」が利用できる点字図書館を目指し、地域に根付いた施設になるよう、開館時間、開館曜日の変更など、柔軟性のある点字図書館となれば、視覚障害者の生活文化が豊かになり、点字図書館の存在価値が大きく変わると考えます。   「2025年(10年後)のわたしたちへ」(社会福祉法人ほくてん 北海点字図書館 南部 慶太)  以下は10年後の自分の施設への想いとして書きました。私自身の行動指針としていきます。  10年後はわたしたちの想像を超える技術が台頭しているかもしれません。しかし、それを活かすには人と人とのつながりがこれからますます重要になってくるでしょう。10年ビジョン会議のネットワークもその一つです。  第1章から第4章に掲げたビジョンの実現に向け、委員のメンバーがそれぞれの地域でできること、チームとして実現していくことはもちろんですが、各施設の方々や読者のみなさんと共にビジョンを共有し、実践していきたいと思います。本書が皆様にとってビジョンへの道しるべになれば幸いです。  <未来へ向けて目指すこと>  『目が見えない、見えにくい人が視覚障害によるハンディを乗り越えて、自らの意志で自由に行動できる社会の実現』を目指します。  そのために必要なインフラ整備やソフト提供を、最新のITサービスや多くのボランティア・協力者の方々と連携して実現していきます。  (1)北海道全体における情報支援サービスの推進を目指す  北海道内において、点字図書館がない地域に住んでいる方は、充分な情報支援を受けられていません。このような顕在的な課題解決のため、サピエ活用をきっかけとした公共図書館による支援窓口を増やすため、今後は公立図書館の障害者サービス推進のための活動を中心に進めていきます。  特に北海道は他の地域の県域と比べ、広範囲にわたるため、地方にいけばいくほど、必要な情報が届きにくい環境にあります。こういった問題を解決するために、これまで北海道庁も含め、道社協、道立図書館、その他関係機関と連携し、取り組みを進めています。  10年後には道内のすべての公立図書館で障害者サービスが実施されることを目指し、それぞれの地域特性に対応した柔軟なサービスが整備されるよう、努めていきます。  (2)いつでもどこでも『最適な生活情報』が届く環境の実現へ  今後、10年かけて、サピエ 地域・生活情報配信の実践・ノウハウを活かし、リコメンドサービスなど新しいIT技術を活用した情報支援サービスを推進していきます。  これからは必要度が高いものの、情報製作や提供手段の時間的制約によって中々実現できていない地域での日々の生活に密着した情報が、間違いなく必要とされるものだと思っています。  個人に寄り添った生活情報の配信によって、生活の質の向上を実現していきます。そして、御園さんがビジョンで提言されているように、クラウドなどの技術によって、それぞれの利用しやすい端末などで情報を受けられる仕組みづくりが今後重要であり、そのベースとなる土台の中にいかに役立つ情報や趣味・嗜好が楽しめる情報・思いがけない情報などを入れられるか。そういった情報環境が整備できれば、非常に魅力的なコンテンツになると思っています。  また、自治体が取り扱うデータのオープンデータ化が進むことが予想されますが、自治体が発信している情報(観光、防災、福祉制度など)の活用も検討し、視覚障害者にとって、いつでも、どこでも最適な情報が届くような情報配信を目指していきます。  (3)いつでも、自由な外出ができる環境づくり  帯広市(帯広市だけに限りませんが)は現在、視覚障害を持つ方が、単独で外出ができるための社会的なインフラ整備は残念ながら整っていません。そのため、QOLが低くなり、自立した社会生活を営むことが困難な状況にあります。特に中途失明された方にとってみると、北海道内にはリハビリ支援施設が札幌市と函館市にしかなく、それ以外の地域に住んでいる方は必然的に住み慣れた地域を離れざるをえない状況にあり、社会復帰への機会を諦めてしまう方も少なくありません。そういった方に対しての情報支援のあり方についても、検討し、自立に向けたサポートが出来るようにしていき、安心して外出ができる環境整備に積極的に取り組んでいきます。  そのためには行政機関、地域街づくり団体、視覚障害者団体、点字図書館などが一体となって取り組んでいかなければなりません。  また、今後は他機関との連携や全国の情報支援施設等と横のつながりを大切にし、ウェアラブル端末の活用など、新しいIT技術を駆使した新たな外出支援サポートの実現も目指していきます。そのためにはボランティアも含めた協力サポート体制を作っていき、地域連携体制の構築を進めていきます。  同行援護事業など人的支援サービスについても、利用が少ないことにより、従事者の質の向上につながらなかったり、事業者の運営ができないなど悪循環になっている現状があります。利用促進につなげるために行政、事業者、当事者、ボランティアなどと連携し、課題解決に向けた活動にも取り組んでいきます。具体的には「利用促進のための検討委員会」などを作り、利用しやすい体制づくりの検討や利用のPRなど、地域一体となって、取り組んでいきます。  (4)必要と思われる施設へ  手帳の有無を問わず、点字図書館を利用している人の数は残念ながら、少ないという現状があります。この原因として考えられるのが、点字図書館を知らない方が多くいるということです。さらに、知っているけども、具体的な事業内容を知らなかったり、もしかしたら、必要と思われていないだけかもしれません。  個人一人ひとりのニーズを引き出すため、直接の対話(相談事業)が重要であり、目が見えない、見えにくい方が集まりやすい施設になるよう、場所づくり、空間づくりを進めていきます。  ほくてんは目が見えない、見えにくい方が自立した生活をするため、活動意欲を引き出すためのきっかけになることが役割であると考えます。ほくてんにいけば、必要な情報が手に入るなど、地域の中で無くてはならない存在でいつづけられるよう、常に当事者目線で考える「進化し続ける施設」を目指していきます。  (5)視覚障害者の遊びへのニーズに応えられる施設へ  ほくてんでは、平成6年から10年間、とかち体感ツアーという、視覚障害者を対象とした、様々な楽しい遊びの体感プログラムを実施してきました。主には、乗馬、釣り、キャンプ、パラグライダー、カヌー、レーシングカート、スノーモービル、スキー、氷のグラス作り、温泉などです。  十勝は大自然という最大の強みを持っている場所であり、その場所を活かした体験プログラムを再度、定期的に行えるようプログラム化し、視覚障害者の遊びへのニーズに応えていきます。   「10年後に向けてのメッセージ」(日本ライトハウス情報文化センター 奥野 真里)  今から10年前の2005年頃、視覚障害者を取り巻く環境や社会はどうだったかと振り返ると、今とそれほど大き変わっていないところもありますが、やはりこの10年で目覚しく変化したと感じるのは、IT環境でしょう。  例えば、スマートフォンの登場により、明らかに私たち視覚障害者の社会参加を促し、晴眼者とのコミュニケーションが容易になったほか、SNSなど手軽に情報のやりとりができるようになりました。今後の10年、その後の未来においても大きく期待されるところです。  ○サービスの目的  技術が発展する一方で、コスト削減があちこちで行われるようになりました。国や自治体からの予算が削られ、企業・公共団体が行うさまざまな事業運営に影響が及び、ひいては、私たち情報提供施設・団体も少なからずその影響を受けています。  「パソコン・機器類があれば、なんとかなる」と考えられがちですが、ITは私たちの生活を豊かにするためのツールであり、それを使いこなすのは私たち。どれだけ便利なソフトや機器が開発されたとしても、それを利用する人が機器類を使いこなせるようになるまでの手ほどきをしたり、その環境を整えるのも私たち人でなくてはできません。ですから、IT技術がなんとかしてくれるから人員を少なくしてもいいといった考え方は、本末転倒だということを忘れてはいけません。せっかくの技術を宝の持ち腐れにしないためにも、私たち施設・団体が、最終的に目を向けるべきところをしっかり見据えて進んでいきましょう。  ○サービスの効率化  現在、各都道府県・政令指定都市に少なくとも1か所は視覚障害者情報提供施設が設置されており、都市部においては、1都府県内に複数の施設があります。大阪府下には4館の施設があり、それぞれ運営は異なるものの、視覚障害者へのサービスを行っていることに違いはありません。しかし、業務内容をみてみると、各館の特性に即した業務を行う一方、同様の業務を行っていることもあります。  利用者は、居住区に近い視覚障害者情報提供施設(場合によっては、公共図書館)を利用するという状況は今後も変わらないかもしれませんが、施設側として業務の効率化を図れないかと考えます。  たとえば、製作に関して考えてみると、各館の強みを生かした製作体制を作れないものでしょうか。例えば、A図書館は長年雑誌を多く製作しているので、専門的に雑誌を担当する。B図書館はマンガをよく製作しているので、コミック書などを担当する、といったふうにです。それぞれに蓄積したノウハウや専門性を生かし、横のつながりを持って取り組むことで、図書製作の効率化が考えられます。  さらに、視覚障害者団体や眼科、教育関係機関と連携し、一体となって視覚障害者支援を進めていくことも重要です。その窓口を、視覚障害者情報提供施設・団体が担い、「視覚障害者関係機関ネットワーク」を各自治体で立ち上げ、関係機関の情報共有や研修会等を行うことが必要になるでしょう。  今後、利用者のニーズはますます多様化するでしょう。読書形態も、音声・マルチメディア・テキストデイジーを始め、電子書籍や拡大文字、点字、テキストデータなど、多くの選択肢から利用者が自分に適した媒体を選んでいるでしょうし、外出手段においても新たな補助機器が開発されたり、IT技術を取り入れたサービスが始まっているかもしれません。しかし、利用者一人ひとりが情報や手段を取捨選択できる社会を目指すために、施設・団体はさまざまなニーズに応えていけるよう、技術で豊かになる部分と、人的に取り組むべきことをうまく組み合わせる力がますます求められることでしょう。   「10年後の私たちへ」(福岡点字図書館 夏秋 圭助)  私が10年後という未来に視覚障害者情報提供施設の理想を描くならば、「視覚障がい者や情報提供の概念を起点とした福祉施設である」を望む。いかにも当たり前の表現であるが、変革期や未来にこそ本来の使命に立ち返るべき視点から考察し、「10年後の私たちへ」を提言したいと思う。具体的な考察に先立って、本ビジョンにおける私の基本的な考え方を、第2章の1項より整理する。一つは、「視覚障がい者」や「情報提供」という概念の多様化や拡大に対して、流動的な境界を模索するのではなく、中核や起点としてとらえる考え方である。もう一つは、視覚障害者情報提供施設における、福祉としての専門性や使命を位置づけなおす考え方である。  こうした視点から、10年後の人口推計を勘案した利用者像、および潜在利用者像の超高齢多死化を見るならば、高齢者福祉との境界を模索するのではなく、むしろ今後増えるであろう、視覚障がいをもつ高齢者に向けてどのように貢献できるかという視点でなければならない。そして、高齢者や認知症の人を対象として含むとき、成年後見制度が存在しているように、これまで自立や自己決定、契約などの概念のみでは対応が難しいことも踏まえておかなければならない。ここで、障がい者福祉としての情報提供施設においても、「要求(ニーズ)」のみに立脚するのではなく、「必要」にも視野を広げることで、両側面から本来的な福祉の専門性と使命を見出していかなければならない。  これらの基本的なビジョンをおさえ、取り組んだであろう10年後の私たちに、さらに何らかの提言をするならば、このビジョンをもとに、次の10年に向けた中核の変化をとらえてほしいと思う。本ビジョンは、さらに10年後の考察にあたっても用いられることを願うものである。ただ、私はさらに、福祉として、「すべての人の健康で文化的な生活を願う基本的な方針の中で、視覚障害者情報提供施設がどのように貢献してきたか、これからどのように貢献できるか」という視点で考察を重ね、安易な準市場化に対する、福祉的自己説明力を持ち続けほしいと願うものである。  一方、これらの概念的整理によって得られる目的論に対し、情報提供施設が臨床の実現性を得るためには、同時に拡大を続ける作業量に対し、それらの作業の整理や柔軟な体制の構築を含む方法論を持たなければならない。そのために、連携機能を設け、公共図書館や隣接医療福祉領域等の外部連携を強化し、総合的な視覚障がい者福祉体制の実現を目指す必要がある。 これは、福祉体制の地域化を兼ねるものでもあり、視覚障がい者の社会参加の促進を目指すものでもある。また、既存の情報提供支援体制を尊重し、障害者の権利条約の実務を代行、遂行する役割も担い続けていくことも必要がある。  末筆となるが、さらに具体的な例として、次の四つ課題を挙げることとする。貸出について、公共施設を利用できる利用者の、順次利用の移行、啓発、促進。あわせて、カセットテープ等の媒体利用者に対しては、DAISYへの移行の促進。ただし、これらは可能な限り個々の事情に対応し、すべての人の読書環境保障への尽力を前提とする。選挙や大型の作業等に対する柔軟な人的体制を可能とすることも兼ねて、全国の情報提供施設設置基準の7人体制移行の検討。点字文化、録音文化の保存、繁栄に向けて、技術資源の継承。以上の提言を持って、今後10年及び、10年後の私たちへに向けたビジョンを表明する。   「10年後の私たちへ 〜 未来への旗印 〜」(視覚障害者総合支援センターちば 御園 政光)  私たちは、この1年間、先人達の経験談を聴き、adviceを受け、全視情協を取り巻く種々の現状と課題を洗い出した上で、10年後のビジョンについてディスカッションを重ねてきました。  ディスカッションは、2025年に、視覚障害者がどのような生活をしているか、点字図書館はどのようにサービスを拡大していくか(あるいは縮小していくか)を、10年ビジョン会議委員の8名の現場の経験知から話し合いを続けました。  ビジョンについて、各委員の現場で置かれた状況の相違から、善くも悪くも、十分な考察ができたとは言えないものの、それ自体が私たち、つまり点字図書館の未来の姿なのかもしれません。  現状に踏みとどまろうとする立場、現状はすべてリセットして新しいサービスを展開していく立場、情報技術を駆使してサービスを拡大していく立場、現場の職員のスタンスに特筆する立場など、多くの意見とアイディアが出されました。いずれも、どれが正しいというわけではありませんし、間違っているわけでもありません。一つ一つの意見やアイディアが10年後のビジョンの土台となっていくものと思います。  第1章から第4章までは、まさに、それらアイディアの縮図が納められています。  アイディアを形にするのは、私(たち)自身であり、各委員が所属する施設・団体であり、そして読者の皆さんであると思います。  ●困難な時代にあって  21世紀の最初の15年目を迎えている今、情報提供施設・団体の周辺環境は必ずしも順風満帆とは言えない状況です。日本の財政基盤の衰退、高齢社会の到来、格差社会の顕在化、自然災害への不安と警戒など、私たちの生活に直接に影響を与える社会問題が山積しています。そのなかで、情報提供施設・団体に対する指定管理制度の拡大、点字図書館・視覚障害福祉関連財政の縮小の動きなどの問題が多数出現し、それらへの取り組みが求められています。  それぞれの問題に取り組んでいくためには、サービスの構造改革(情報技術やロボット産業技術の活用、情報提供システムのあり方の見直し、視覚障害者への新たな支援の可能性)と、サービスの対象範囲(利用対象者の拡大、ボランティアの状況に対するアプローチ、障害の多様性を受け入れるサービス、高齢社会と認知症の社会問題の解決)を見極め、向き合っていくことにより、それらの社会を形成していくための新たな技と方法を模索していくことが不可欠です。人と社会の望ましい未来の実現に向けて不断の挑みを続けていくことは、次世代に対して、今を生きるすべての人びとに課せられた大きな責務であると考えます。  ●新たなサービスの形を求めて  昨年NEDOより発行された『ロボット白書2014』の提言で述べられている事柄に、これから先、さらに変化が進む社会の姿は成熟社会と高齢社会であることが示されています。両者に共通しているのは個々人が必要とするものや欲求するものが個々人ごとに異なり、その個々人の満足を充足するデマンドが高まっていきます。成熟社会ではより人間らしい生活や仕事を求めるようになり、サービス提供者は、個々人の満足を実現するための競争優位な製品、サービスを、個々人のこの自己実現欲求を引き出し、明確化し、それを各個人と共創しながら実現していくという方向に向かっていくことになるでしょう。私たちの情報提供におけるサービスの提供主体は、必然性を持ってより個人に最適化されていくと考えます。  ●個々人が必要とする身近な情報を伝えるために  個々人に最適化されたサービスを実現するために、インターネットは不可欠です。いつでも・どこでも・だれでもインターネット環境が手に入りやすい社会となり、個々人に最適化された情報が、今いる場所・環境や状況に応じて、リアルタイムに入手できるようになると考えます。  リコメンドサービスにより「ほしかった情報」が見つけやすくなり、クラウド型のサービスが主流となることで、手持ちの機器の種類や OS に依存しない情報の閲覧環境が実現し、利用環境を問わない読書システム・製作環境も構築されると考えます。そして、機器単位・個々人の閲覧環境を加味した画面の表示拡大率の調整、読み上げ機能の有無は自動化でき、人と機会をフィッティング(合わせる)機能(アクセシリビティ)が充実すると思います。  今でもあるような「お任せボタン」で、たとえば本を借りる(買う)→機器にダウンロードする→再生・停止→続きから・・・みたいなことがボタンだけではなく、タッチしたり、音声で話しかける認識機能などで、どんどん実現されるでしょう。  ●新たなボランティア活動の創生に向けて  クラウド型製作環境が定着することにより、これまで施設・団体単位のボランティア養成や点訳・音訳活動が、地域を問わないインターネットによるネットワーク型ボランティア活動へと進展していくと思います。従来の地域コミュニティーにおけるボランティア会やサークルの単位の意義は薄らぎ、どこに住んでいてもどこにいてもボランティアに参加できる仕組み作りが可能となっていくと考えます。  同時に、録音機材の機器の高性能化・小型化が進展することにより、自宅での音訳活動がよりやりやすくなり、点字図書館の音訳スタジオを他の利用用途に置き換えることが可能となると考えます。  さらに、合成音声エンジンが、読み間違いがなく、聞き取りやすい音質になると、従来の音訳活動は、別の活動に重点を移せるようになる可能性があります。ボランティアの役割が変わり、ボランティア自身が新たな社会貢献活動を見いだしていくと考えます。  ●等しくすべての人が書籍や動画を楽しめる社会を目指して  内閣府の「イノベーションで拓く2025年の日本の姿」で示されているとおり、今後、国家規模でデジタル・コンテンツ流通促進の法制度整備が進みます。  結果、現在キックオフしたばかりで議論のさなかにあるマラケシュ条約にまつわる国内法が制定され、多くの活字媒体が電子化されます。視覚障害でも音声合成や点字ディスプレイで読むことが可能なデジタルコンテンツが倍増すると考えます。  それから、3Dプリンタの進歩により、どんな図形や画像でも立体に復元できる技術が生まれる可能性があります。そうなると、視覚障害者向け教材提供事業などで、これらの立体模型が活用される時代が到来すると考えます。(なお、現状は2Dから3Dへの自動変換処理は不可能です)  さらに、音声ガイド付き映画で知られる「音声ガイド」についてです。動画の音声ガイドは、10年後には70%の精度で、自動的に説明文をつけられるようになるでしょう。視覚障害者が必要とする情報(俳優のファッションや風景の微妙な色合い)の表現手法は、まだまだ難しく、その頃になってやっと研究が進み始めると考えます。  ●より価値ある情報提供施設・団体を目指して  現在、主に点字図書館で行われている貸出業務は、今以上に、公共図書館でも行われるようになります。10年後、点字図書館における貸出業務は見直しが迫られている可能性があります。  現状は、点字図書館事業によって運営されている所が大半であると思いますが、視覚障害者・児の減少、点字使用者の減少、財政の落ち込みと相まって、公的サービスは、今後ます ます縮小される可能性があります。東京オリンピックの諸事業で、日本全体が莫大な収益を上げているか、次のいざなぎ景気があれば、それらを期待したいですね。  もちろん、当事者として、私たちが点字図書館など事業予算を縮小しないよう働きかけるのも大切なことです。また、企業とタイアップしたサービスがあってもいいですね。  そのなかで、点字図書館の専門性は「製作面」でさらに強化されていくことが求められるでしょう。言い換えると、ブランド力を高めるという意味でです。ルイ・ヴィトンにしかない、シャネルにしかないような強みを、私たちも持っています。もっと売り込んでいきませんか。  加えて、点字図書館の業務(またはサービス)は障害の多様性を受け入れる対人サービスを基軸とした「相談機能」と「コーディネート機能」に特化していくことが求められると考えます。  「製作」「相談」「コーディネート」の3本の柱(機能)について、専門性をどのように担保するかが鍵になるはずです。  ●緊急時・災害時にひとりでも多くの弱者を支援する未来に向けて  災害時の避難誘導は、ウェアラブルコンピューターに備わった GPS により、全盲でも一人で避難所へ行けるようになる可能性があります。また、避難困難者の居場所を特定しやすくなります。  さらにウェアラブルコンピューターに内蔵された各種センサーにより、心拍数などのバイタルサインで、生存確認が可能となったり、ヘッドマウント型ウェアラブルコンピューターを使って、視覚障害者が単独で山登りができたり、通常歩行時の目の前の障害物を特定し回避することもできる社会を期待しています。絶対にトラックの荷台や電信柱にぶつからなくなっていると大変助かります。  それから、緊急時は独居高齢者など、一人で移動が困難な場合でも、ロボットが安全に病院や避難場所・知人宅まで誘導してくれて、バイタルサイン、人の動き、うめき声をセンサーで感知し自動レスキュー可能な社会になっていると考えます。  ●視覚障害者も便利に活用できる生活ロボット  家庭用ロボットが普及し、今日の献立の提案から食材をそろえるまでを任せられるようになったり、人工知能で考えて、部屋の掃除をするタイミングや洗濯するタイミングなどを、人間のいいなりにも、自動的にも、やってくれる生活が訪れている可能性があります。ロボット執事の誕生ですね。`1台、いかがですか? お安くしますよ。  また、食品の賞味期限チェック、エアコンの温度調節、本やCD・DVDの返却確認を任せられるようになり、ものによっては人が介在しなくとも、すべてロボットがやってくれるようになったら、視覚障害でも安心して一人暮らしができそうです。ロボットに指示を与えるときは声で呼びかける、キーボードで命令を入力する、タッチパネルでアイコンをタップする・・・、ハイテクなやり方からローテクなやり方まで網羅されているといいと思います。  ●文化の継承と創造  石川倉次氏が考案した日本の点字を、今後も、我が国の視覚障害文化の本流として、学び・改善し、継承していくことは「点字図書館」を包含する情報提供施設・団体全体のミッションです。  2014年10月29日にご逝去されました岩井和彦氏が関わった『未来へ点字をつなげる宣言』には「未来はきっと、様々な情報利用の方法を用いる多くの人達が一堂に会し、そこにいる全ての人が、誰一人漏れることなく、リアルタイムに、心からのコミュニケーションがなされている。」と宣言しています。点字は、これまでも、この先も、情報コミュニケーションの一つであり続ける必要があります。  それから、私がこの10年ビジョン会議の中で先駆者の方々からご指導を受けて学んだことは、どのような未来が訪れたとしても、情報提供施設・団体が、視覚障害者のよりどころで有り続けることである大切さ・・・、その重みを受け取りました。  以上の「2025年のわたしたちへ」は、あくまでも、私の私見です。根拠のない事項も含まれています。しかし、少しでも、読者の皆さんに、未来のわくわくを届けられたなら、幸いです。そして、10年後の自分は、これを読んでどや顔になることを願っています。  先駆者から受け取った思いをしっかりと、次世代へ伝えていけるよう、全力で取り組みたいと思います。  2015年2月20日 梅香る窓辺にて   「2025年(10年後)のわたしたちへ」(徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター 三井 貴浩)  10年後、情報提供施設としての役割は、今以上に「点字図書館」という枠組みでは語れないものになっているはずだ。点字や音声の図書を「作る」役割は残っても、「貸出」を行う役割は減っている、またはなくなっているかもしれない。  私たちが働いているこの「情報提供施設」というのは、一般社会の中では特別な存在である。何が特別か? そもそも、なぜ点字図書館というものが必要だったのか。公共図書館が当初からその役割を担っていれば、点字図書館をわざわざ作る必要はなかった。教育分野でも同じことが言える。なぜ盲学校や養護学校が必要だったのか。一般の学校で障害のある子どもが学べる環境がなかったために、別に作るという発想にならざるを得なかった。しかし、現在はインクルーシブ教育という言葉が社会に浸透してきているように、障害のある児童であっても、地域の学校で、障害のない友達とともに学び、遊べる環境作りを進めようとしている。インクルーシブな社会、アクセシブルな情報、これらが10年後には当たり前の世の中になっていてほしいし、そうでなければならない。  インクルーシブな社会、それは学校でも会社でも、わざわざ割合など定めなくても当然のように障害のある人、ない人が共に行動している社会。そのような社会で交わされる情報はアクセシブルなもの。それが当たり前になった世の中では、情報提供施設は必要とされない。しかし、残念ながらそのような社会になるのはまだまだ先で、10年では実現しないだろう。私たちは10年後を通過地点としながらも、よりアクセシブルな情報提供、情報製作、情報支援を率先して実施し、特に視覚障害者に対してのものについては、これまで培ってきた経験や技術をさらに磨き、専門家(プロ)としての自覚を持ち、情報提供施設が必要でない社会の実現に向けて、努力し続けなければならない。  とは言いつつも、10年後の私は、点字担当として、ボランティアの方々と点字の分かち書きについて、ああでもない、こうでもないと今と変わらない日常を送っていることだろう。大事なのは、同じことをする中でも、環境の変化に敏感に対応し、常にビジョンを持って取り組むこと。これを皆で実践し、笑顔で10年後(2025年)を迎えたいと思う。   おわりに  本報告書を手に取ってくださった皆様、最後までお読みくださった皆様、誠にありがとうございます。私たち委員8名はこの1年間、先達の取り組みに学び、現在の最新技術の把握に努め、そして、私たち自身の思いをぶつけあい、夢を語り合ってきました。この報告書には、そんな思いや夢を沢山散りばめました。  本報告書は「完成したもの」ではなく、発展途上にある一つの提案だと考えます。本報告書の発刊が一つのきっかけとなり、各方面で新たな議論や取り組みが生まれ、10年後の視覚障害者を取り巻く環境が飛躍的に進展すれば、これに勝る喜びはありません。  1人でできることは限られていますが、1人の人が動き出すことで、周囲の空気が変わり、世の中が変わることを、私たちは多くの先人から学びました。1人の思いを共有することで、大きな力が生まれます。皆さん、ぜひ一緒に10年後を作ってまいりましょう。  さて、本報告書の作成過程で色々な方にお話を伺いました。先達の業績について詳細にご教示くださいました日本盲人社会福祉施設協議会名誉会長・本間昭雄様、日本ライトハウス常務理事・關宏之様に厚く御礼申し上げます。続いて、最新技術等の動向についてご講義くださいました静岡県立大学教授・石川准様、株式会社東芝研究開発センター・黒田由加様、国立国会図書館・兼松芳之様、日本ライトハウス・久保田文様に心より御礼申し上げます。また、お忙しい中アンケートにお答えくださいました全視情協会員施設・団体の皆様にもこの場をお借りして御礼申し上げます。そして、本報告書を手に取っていただいた皆様に心より感謝いたします。誠にありがとうございました。  私たち委員は読者の皆さんと共に、視覚障害者の10年後をより豊かなものにすべく、できることから取り組んでいくことをお誓い申し上げ、ここに本報告書を発刊いたします。   2015年3月9日 全視情協10年ビジョン会議委員 リーダー 野々村 好三   付録 1.10年ビジョン会議委員(敬称略、50音順)  【氏名、所属、執筆担当箇所の順に明記】  奥野 真里(日本ライトハウス情報文化センター) 2-3, 2-6  夏秋 圭助(福岡点字図書館) 2-1  南部 慶太(ほくてん・北海点字図書館) 1-3, 2-2  野々村 好三(京都ライトハウス情報ステーション) 1-4, 2-4, 4章全て  林田 茂(日本ライトハウス情報文化センター) 1-5,3-2, コラム  松本 麻紀(神戸市立点字図書館) 2-5  御園 政光(視覚障害者総合支援センターちば) 1-1, 1-2  三井 貴浩(徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター) 3-1  10年ビジョン会議事務局  林 克也(ほくてん・北海点字図書館) 2.10年ビジョン会議 活動履歴  === 会議 ===  第1回会議 平成26年 2月1日、2日(東京、戸山サンライズ)  第2回会議 平成26年 4月6日、7日(大阪、日本ライトハウス情報文化センター)  第3回会議 平成26年 8月4日、5日(東京、新宿NPO協働推進センター)  第4回会議 平成26年 10月22日〜24日(徳島、全視情協全国大会にて中間発表)  第5回会議 平成26年 12月8日、9日(東京、新宿NPO協働推進センター)  第6回会議 平成27年 2月1日、2日(帯広、ほくてん・北海点字図書館)  === Skype会議 ===  第1回会議 平成26年 3月13日 9:30〜12:00  第2回会議 平成26年 3月26日 13:00〜15:00  第3回会議 平成26年 4月18日 13:00〜15:00  第4回会議 平成26年 5月23日 15:00〜17:00  第5回会議 平成26年 6月4日 15:00〜17:00  第6回会議 平成26年 7月23日 10:00〜12:00  第7回会議 平成26年 8月28日 13:00〜15:00  第8回会議 平成26年 10月30日 13:00〜15:00  第9回会議 平成26年 11月28日 15:00〜17:00  第10回会議 平成27年 1月23日 15:00〜17:00  第11回会議 平成27年 3月6日 15:00〜17:00  === メーリングリスト ===  平成26年1月〜平成27年2月 約2,200通  === その他 ===  中間発表への告知等を行ったウェブサイト http://vcast.jp/  議論の履歴や各種製作データ等のプロジェクト管理ツール http://redmine.jp/ 3.全視情協10年ビジョンに関わるアンケートまとめ  平成26年7月に全国各地の全視情協加盟施設・団体へアンケートを実施し、その結果を『全視情協10年ビジョン会議アンケート結果要旨』として取りまとめを行った。 === 調査要領 === 1.目 的 10年ビジョンの提言に向けた課題・意見集約のため 2.方 法 全視情協加盟施設98施設に対し、記入式アンケートを実施 3.調査期間 平成26年7月5日〜18日 4.回答方法 メール、ファックス、郵送、Web入力フォームによる。 5.回収率 全98施設中、81施設より回答あり (回収率: 83%)  調査結果については、以下のアンケート結果要旨を参照 【全視情協10年ビジョン会議 アンケート結果要旨】 <調査要領> 1.目的 10年ビジョンの提言に向けた課題・意見集約のため 2.方法 全視情協加盟施設98施設に対し、記入式アンケートを実施 3.調査期間 平成26年7月5日〜18日 4.回答方法 メール、ファックス、郵送、web入力フォームによる。 5.回収率 全98施設中、81施設より回答あり (回収率: 83%) <アンケート結果と分析> 以下、数字は回答数、%は回答率 1.貴施設・団体が提供している主なサービスと、関連する業務内容について 1−1 利用者へ提供しているサービス内容をお答えください(複数回答可)  (以下、サービス内容、回答数、回答率の順。)  図書館業務 80 98.7%  生活相談 44 54.3%  リハビリテーション 48 59.2%  その他 29 35.8%  【その他記述欄より】  ・視覚障害者用用具の販売 ・プライベートサービス(点訳・音訳)  ・IT(パソコン・携帯電話・スマートフォン)の個人講習  ・バリアフリー映画上映  ・中途視覚障害者対象の点字講習会、利用者懇談会  ・読み書きサービス  ・会議室の提供  ・地域の視覚障害者社会参加促進事業(旅行、スポーツ、映画鑑賞会、料理・お抹茶、お花教室など)  図書館業務と合わせて生活相談、リハビリテーションを実施する施設が半数以上。多様なニーズにより、 点字図書館サービスだけでは対応できなくなっているともいえる。 1−2 サービス提供の対象者は?(複数回答可)  (以下、対象者、回答数、回答率の順。)  視覚障害者(手帳あり、もしくは診断書を持っている) 80 98.7%  目の見えにくい、通常の読書が困難な方(LD、ディスレクシア等) 36 44.4%  その他 8 9.8%  【その他記述欄より】  ・障害者サービス提供事業者  ・各種ボランティア等  ・視覚障害者の家族等  ・視覚障がいにより日常生活に困難を感じている方  ・一部肢体障害者  活字を読むことが困難な方へ何らかのサービスを提供している施設が約半数にのぼることがわかった。 1−2−1 障害の有無について、障害者手帳や医師の診断書を確認していますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 47 58.0%  いいえ 21 25.9%  その他 16 19.7%  【その他記述欄より】  ・電話等口頭で確認をとっている  ・身障手帳無しの場合は、現在の見え方を確認し判断  ・級を確認するのみ  ・無い方でも、本人の申告により館長判断で利用できる場合もある  ・手帳保持でない場合は診断書も含め、確認書類などの提出を求めている 1−2−2 サービスを提供するに当たって対象者を制限するような条例、内規、規約等はありますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 57 70.3%  いいえ 24 29.6%  【「はい」記述欄より】  ・運営規程  ・県の条例  ・利用規則条例  ・定款(事業で「視覚障害者」とうたっている)  ・貸出規定  ・利用案内  ・視覚障害者等サービス要綱  ・利用規程  ・市の条例  ・点字図書館条例  ・原則県内在住の視覚障害者等  利用対象者を制限する条例など 「はい」と答えた施設が約7割。かなり多いことがわかった。 1−3 (図書館業務を実施している施設・団体にお聞きします)サピエの利用者も年々増え続けていますが、点字図書館の貸出利用を増やす取り組みがあれば、お答えください。  (例:デイジー再生機の貸出、SDカードによる他媒体の貸出、読書会の開催、機関誌等の発行の工夫など)  回答数 74  回答率 91.3%  ・図書館だより、ホームページで紹介  ・デイジー再生機の貸出  ・SDカード貸出  ・地元のケーブルテレビで紹介  ・利用者、ボランティア、職員の三者交流会の開催  ・移動図書館の実施  ・メーリングリストでの新刊案内、メールによる貸出申込み受付  ・広報誌での周知  ・利用者アンケートの実施  ・利用案内の作成、配布  ・ICT相談会の開催  ・人気図書、おすすめ図書の紹介  ・1回の貸出タイトル数の制限拡大  ・デイジー再生機講習会  SDカード貸出に対応している施設が多い。デイジー再生機の貸出が増えていることがわかった。 1−4 点字利用者数は、年々減少傾向にありますが、貴施設・団体では点字の利用拡大につなが る活動を行っていますか?   (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 47 58.0%  いいえ 34 41.9%  【「はい」記述欄より】  ・中途失明者への点字指導、点字教室  ・点字普及イベントの実施  ・移動点字図書館での点字触読体験  ・行政資料の点訳化(障害福祉の手引き、ごみの分別方法の一覧など)  ・点字協議会の開催(年1回 視覚障害者協会事業)  回答施設全体の半分近くの施設で、利用拡大のための活動を行っていないことがわかった。 1−5 サービスを提供するなかで、利用者との間で抱えている問題等はありますか?   (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 59 72.8%  いいえ 19 23.4%  【「はい」記述欄より】  ・デイジー再生機の普及が進まず、テープ利用者が相当多い  ・読みたい図書を自分で選ぶことが苦手な利用者への対応  ・ニーズの多様化により、職員による均一な対応が困難  ・利用者からの電話が長い  ・点字利用者の開拓  ・図書の滞納、破損、紛失等への対応が増加。利用者のマナーを守ってもらうための取り組みが急務  ・利用者の高齢化などで情報がうまく伝わらないことがある  ・提供しているサービス以外のことを求められる時、どこまで対応可能かの判断に迷う  ・点字図書館の存在、情報提供、歩行訓練等のサービスが視覚障害の方になかなか伝わらない  ・利用者アンケートを実施しているが、読み書き困難者が多く、回収率が低迷している  利用者からの様々なニーズにどこまで対応していいのか、対応に苦慮している施設も多いことがわかった。カセットテープ利用者が多いことがわかった。IT技術に取り残される人へのフォローが必要(情報格差問題)  また、職員の育成や減少などは、あまり問題として取り上げられていなかった。 1−6 貴施設・団体で行っている利用者への情報提供、情報発信手段は?(複数回答可)   (以下、情報提供・情報発信手段、回答数、回答率の順。)  機関誌発行 72 88.8%  メール 40 49.3%  ウェブサイト 61 75.3%  Facebook 4 4.9%  Twitter 4 4.9%  その他 4 4.9%  【その他記述欄より】  ・機関誌発行  ・市町村広報誌  ・ウェブサイト  ・新聞紙面への掲載  ・メールマガジン  ・メーリングリスト  ・電話ナビゲーション  フェイスブックやツイッターなどのSNSによる情報発信をしている施設がほとんど無いことがわかった。SNSの活用により、施設間や製作者と利用者間も情報を共有できる双方向性のネットワークの仕組みがあれば、さらに、個人のニーズを引き出すことも可能になるのではと考えられる。 1−7 サービスの提供に関連する業務について、利用者の声等、伝えたい事があれば自由にお答え下さい。  回答数 33  回答率 40.7%  【自由記述欄より】  ・センターから情報発信しているが、利用者の声が聞こえてこないのでわからない。  ・デイジー雑誌の配布サービスをしてほしい。  ・電子書籍の貸出サービスについて検討を希望する。  ・今なお、テープ図書利用者が少なくない。取り残された人々を排除しない方向にするためにはどうしたら良いか答えがでない  ・サピエ図書館から直接の利用が多くなっており、点字図書館の利用者が少なくなる一方である。いずれは、点字図書館の存在意義そのものが、問われる時がやってくると考える。  ・音訳図書に対し、利用者から音質の悪さを指摘されることがある。製作スピードは速い方がよいが、質の向上も求められている。  ・サピエの書誌 完成しているのに、「所蔵なし」 「オンリクできない」 スムーズに借りられるようにしてほしい。  ・点字の委託図書の配架に困っている。データでいただいて、どこかの館が当番制ででも所蔵するなどの工夫はできないか。  ・製作図書の新刊の着手が難しくなっている。新しい小説を選びたいが、ほとんど着手されている。多少の重複はあってもよいのではないか。  ・「この本を点字・デイジーなどにしてほしい!」とネット上で呼びかけると、どこか出来る団体やボランティアさんが対応してくださるシステムがあると嬉しい。  ・サピエ図書館で完成予定日から1年以上経過しているものの完成予定日再設定(チェック体制)ができないか?  ・サピエのシステム動作が支障なく動いてほしい。書誌データベースの整理、統一作業をしてほしい。(特にシリーズで刊行される図書)  ・幅広い内容の多くの本を迅速に提供してほしいという声が多い。  ・白杖歩行、日常生活訓練等の専従的職員常設の要望がある。 1−8 貴施設・団体のサービス内容や、取組み、ボランティアの活動等を視覚障害者関連団体等以外の 一般の方・企業等に知っていただく取組みを行っていますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 66 81.4%  いいえ 14 17.2%  【はい 記述欄より】  ・地域イベント  ・ホームページ  ・パンフレット配布  ・ケーブルテレビやメディアでのPR  ・ラジオ  ・移動点字図書館  ・facebookやTwitterでのPR  ・チラシ、ポスター作成、配布  ・自治体広報誌などへ掲載  ・同行援護従事者養成研修の実施  ・一般参加の可能なバリアフリー上映会を企画、実施  ・小学生への点字、アイマスク体験、運輸局が実施するバス乗降の手引き講習などへの協力  ・社会福祉協議会や公共図書館への広報活動。  ・一般の方々を含めた情報機器展の開催  ・親子点字体験教室  ・地域訪問サービス、盲学校事業への参加、専門学校への講師協力  関連団体以外へのPRが出来ていない施設が2割弱あることがわかった。また、それぞれの地域において、テレビやメディアでのPRや移動点字図書館の実施、Facebook、TwitterでのPRなど、独自に様々な取り組みを実施していることがわかった。 2.(視覚障害者等の生活全般に関わる)相談業務での課題・他機関との連携について 2−1 利用者から相談を受けた際、自施設・団体だけでの対応が難しい時などに、他機関(同一法人内の他部署も含む)と連携していますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 70 86.4%  いいえ 5 6.1%  その他 7 8.6%  【その他記述欄より】  ・該当する機関・団体への直接連絡と紹介  ・連携ではないが、福祉関連部署との相互の情報提供や、研修の依頼等をしている。  ・紹介する程度  ・点字を勉強したい旨の相談があったが、他施設を紹介するのみ。これは連携とは言いがたい。  ・同一法人内の他部署と連携。他施設とは連携していないが、他施設で受けられるサービスを案内することはある。  ・行政(相談員)、中途失明巡回生活指導員 2−2 具体的な連携内容について、きっかけとなった出来事・メリット等、可能な限りお答え下さい。  ※連携先例 : 市町村自治体、社会福祉協議会、リハビリテーション機関、公共図書館、眼科、盲学校、(同一法人内の他部署 etc・・  記入例 : 公共図書館 サピエ利用登録 遠方の利用者が地元の図書館で点訳図書を借りられた  回答数 65  回答率 80.2%  (以下、連携先、回答数の順。)  盲学校 20  公立図書館 19  自治体(市町村福祉課等) 19  身体障害者福祉協会(支援センター等含む) 19  リハビリテーション機関(盲導犬協会含む) 13  社会福祉協議会 12  視覚障害者団体等 11  眼科等 10  同一法人内施設 8  販売業者 5  養護盲老人ホーム等入所施設 4  視覚支援学校 3  ITサポートセンター 2  その他 各1(県立美術館・企業等・教育委員会・研究機関・大学(短大含む)・ハローワーク・聾学校・職業能力開発校・JRPS・きんきビジョンサポート・道路管理者)  【きっかけ、メリット等より】  盲学校  ・三療免許取得希望 : 利用者の社会復帰のきっかけとなった。  ・点字・音訳などの提供、情報交換  ・進学相談、生活相談、特に児童の保護者からの相談 : 教員との情報交換において、盲学校で使用する教科書等、情報を収集できた。  ・スポーツ行事 家族教室 配本サービス等 : 進学や就労に繋がる。卒業後の視覚障害者のサポート  ・ネットワーク会議 : 盲学校からの呼びかけで視覚障害者からの相談や情報提供等でよりスムーズな対応ができるようにした。  ・教育後援会及び学校評議員等の歴任を含め、学校主体で自治体、眼科医、その他視覚障害者サポート関係者による同サポート連絡会を構成しメンバーの一員となっており、情報の入手に役立っている。  ・サピエの利用登録: 利用者がサピエを利用できた。  公立図書館  ・情報の共有。視覚障がい者等への貸出の件で、相談したことにより、連携がしやすくなった。  ・視覚障害者以外の者に対する情報提供、B会員相互貸借 : 公共図書館への貸出の形による公共図書館利用者等への閲覧、搬送 音声版CDの視覚障害者以外への貸出対応  ・相互貸借 : 拡大文字図書を郵送すると有料になるが、府内をまわる図書館メール便(無料)でやりとりできるよう交渉。  ・プライベートデイジーの製作協力 : 公共図書館利用登録者からの依頼であったが、製作体制が整っていないため当館で製作し提供した。  ・サピエ利用促進 : 公共図書館会議等で施設やサピエ図書館の概要等を紹介  ・SDカード : SDカードでの貸出依頼があった時に紹介している。  ・大活字図書の貸出希望への対応  ・テキストデータ化: テキストデータで図書を読みたいとリクエストがあった時に紹介している。  自治体  ・QRコード・デイジー再生機等の体験 : 給付を受けるに当たり、操作体験の要望があり、当施設において体験を行った。  ・危機対応マニュアル作成 : 利用者からの要望で危機管理マニュアルの音訳版・点訳版を製作した。  ・日常生活用具についての相談 : プレクストークを1割負担で購入してもらうことができた。  ・生活訓練・相談 : 市町自治体での生活相談を行い、アドバイスや歩行指導・点字指導・プレクストークなど視覚障害者用機器の使用に関する指導など。  ・国道沿いバス停移設: 国道沿いのバス停が危険な場所(歩道橋の階段下を利用したバス停のため、頭部や顔をぶつける危険性)に設置されていたため、安全な場所へ移設していただいた。  ・同行援護、移動支援等について担当課と連携している。毎月数名の新規登録者がいる。  ・生活保護、福祉施策等について相談を受け、申請手続き等について連携している  ・年金手続き等について連携している。一般的には制度の内容が知られていないことから自分が対象者であることを知らない人も多い。  また、具体的に何を説明主張すべきか知らないところから窓口で十分な理解が得られず受給できなかった方の相談を受け行政と連携することで受給可能となった。  身体障害者福祉協会(支援センター等含む)  ・点字教室の活用 : 点字を習いたい方の問い合わせにより紹介。当館と協会の役割分担、課題が明確化。又、連携がしやすくなった。  ・日常生活用具申請 : 当館と同じ複合施設内に事務所あり、ワンストップサービスが可能。担当者が来館し対応していただく場合もある。  ・ロービジョンの方への歩行に関する相談会の開催: 個々に見え方の状況が違うので、専門の相談員による個別の相談会で、個々の状況に応じたアドバイスができる。  リハビリテーション機関(盲導犬協会含む)  ・就労、進学相談、パソコン相談、機器操作相談、調理・化粧教室、悩み相談、ピアカウンセリング等 : 話し相手、同障害の仲間作りを希望する方に紹介することができた。この会から利用登録者の紹介がある。  ・ピアカウンセリング : 自施設での障害受容の支援、用具制度の紹介 カウンセラーとの出会いで障害受容の足掛かりになる。  ・お互いの情報交換 : 訓練関係について相談している。定期的にサービス、研修などの協議を行っている。  ・歩行、日常生活訓練 : 中途で視覚障害になった人からの相談  社会福祉協議会  ・ボランティア養成 : 視覚障害者生活支援ボランティアの活動が発展した。  ・図書館登録 : 各機関からの紹介や相談などにより点字図書館の利用につながる。  ・テープの貸出 : デイサービスの利用者にテープを提供する。娯楽になっている。  ・生活福祉資金貸付 : 利用者が、鍼灸院改行の際に連携。  ・広報誌のデジタル化支援  視覚障害者団体等  ・スポーツサークルへの入会 : 好きな水泳ができるようになった。  ・盲人用信号機設置のための協力 : 視覚障がい者団体から当館前の交差点に盲人用の信号機を設置して欲しいとの要望があり、市、警察と連携し、実施。幅広い相互理解ができた。  ・訓練内容の紹介 : 中途視覚障害者の生活訓練事業(県委託事業)を相談者に紹介する  ・点字の習得、歩行・生活訓練 : 中途失明者の訓練を当事者団体が行っていることをお知らせすることにより、その後の訓練につながった。  眼科等(医療機関含む)  ・ロービジョン支援 : ロービジョンルームの開設。ORTや盲学校教諭による相談。医療機関・教育機関への支援機器の貸出。  ・訓練 : 点字やプレクストークの訓練により点字図書館の利用につながる  ・当事者への相談、生活訓練(ロービジョンケア)や用具の紹介等。: きっかけは近年眼科向けに開催している「ロービジョン研修会」や、リハビリテーション担当の「視能訓練士勉強会」参加等により、つながりが出来つつあるため。従来医療と福祉の間でサポートを受けられなかった方々へのアプローチできることが増えた。  ・受診者の方への点字図書館の紹介、情報交換会での中途失明となる病気の講演や医療関係者のセミナー等でPR  同一法人内施設  ・生活相談 : 図書貸出のやりとりの中で話に出てきた(PCの操作方法、眼科相談など)  ・中途失明者の点字習得 : 法人内のリハビリテーションセンターを紹介した。  ・利用者のニーズに対応 : 利用者が、点字指導や歩行訓練が受けられる。相談をしたり、生活用具が購入できる。  販売業者  ・購入先の紹介 : 日常生活用具の体験・相談で支給申請手続きや購入のためのサポート  ・センターに設置できていない機器等の体験 : 最新の機器などを実際に手をとって購入の判断材料にできる  養護盲老人ホーム等入所施設  ・入所者への図書貸出 : 点字図書館のコーナーを設け、団体貸出をしている。  ・盲老人ホーム職員への助言 : 2013年に新設された施設で、職員が視覚障害者の対応に慣れていないため。  ・図書貸出 : 在宅と同様の利用が出来た。  視覚支援学校  ・就労相談があった場合の選択肢として紹介  ・就労・あはき視覚取得 : 中途視覚障がい者の社会参加(就労)につなげた。  ・中途失明者の資格取得等支援 : 相談があったときに 視覚支援学校を紹介する  ・進路相談があり、年1〜2名の中途視覚障害者が進学している。  ITサポートセンター  ・パソコン・支援機器の相談、ICTを利用した就労・就業・就学・相談 : 視覚障害者に限らず、「識字困難者」からの相談に対応することが出来た。専門性の高い情報機器に関する問い合わせに対応してもらえた。この団体から、利用登録者の紹介がある。  ・パソコンの操作習得 : インターネットやメールをするためにパソコンの操作を習得したいという相談  その他  ・聾学校:教職員向け ipad講習会の講師 盲学校からの紹介。これ自体がきっかけとなり、今後盲ろう者の発掘やサポートにつながる可能性がある。  ・県立美術館:触れる絵画展展開 美術に興味のある視覚障害者のほか、一般の方々にも関心をよせていただき、他県の点字図書館からも問い合わせがあった。  ・大学:中途失明者生活訓練 地元の4年制大学に入学する盲学生に対し、大学と協議し、覚えてほしい教室、歩行順路等を教えた。  ・ハローワーク:就労に関する相談・支援 利用者からの相談・互いの専門性を用いて支援に当たることが出来る。  関連する機関との連携は強いが、外部機関との連携が少ないことが現状の取り組みからうかがえる。 また、今回の調査により、公共図書館との連携事例をあげた施設が20施設と、回答施設全体でみると、約25%と少なく、連携によるサービスがあまり進んでいないことがうかがえる。さらに、リハビリテーション機関や眼科医などの連携をあげた施設が合わせて23施設あげており、ロービジョンケア等への取り組みやこれまでサポートできていない方への周知及び支援など、今後はますます、連携によって支援の広がりが期待されるのではと考えられる。 2−3 自施設・団体だけで相談に対応し、うまくいった実例があれば、お答え下さい。  回答数 22  回答率 27.1%  【回答内容】  ・市内在住の視覚障害者の方より対面朗読するための場所提供の依頼を受けました。現在も、2年間継続して施設を利用してもらい、身近な情報やプライベートな朗読サービスをボランティアさんを通して、行っている。  ・視覚障害者団体より、様々な情報提供に関する企画立案に協力している。例として、防災講座の実施や、プレクストークの使い方講座、今年度は災害伝言ダイヤルのかけ方等を実施している。  ・自らが視覚障がい者である職員が対応することで、パソコンやプレクストークなどの操作アドバイスがより的確に行なえている。  ・歩行指導を行った結果、公共交通機関を利用し様々な活動に参加できるようになった。  ・相談に来られた方に用具や点字教室を紹介し、そこで仲間に出会い、前向きになられる。だが、リハビリセンターにも地域活動センターや計画相談センターなど、ほかの機関、施設との連携の中での支援となる。自施設だけで支援を完結することはないと考える。  ・中途視覚障がいの方が読書をしたいと相談にきた場合にまずは音声図書を紹介し、館内にある機器展示ブースですぐにDAISY再生機を触ってもらい日常生活用具の申請ができることを紹介し利用につなげた。  ・ロービジョンの方で手帳取得まではいっていないケースであったが、まずは当センターの料理講座に参加してもらうことでつながりを持っておくという対応をした結果、その後関わっていく中で点字ボランティアに興味をもち、点字を知っておきたいという意味もあって点訳ボランティアをはじめ、今では日々のやりがいになっている。  ・新聞が見えづらくなってきた方へパソコン訓練を行い、読み上げソフトを使ってインターネットニュースが読めるようになった。  ・見えづらくなり通勤に危険を感じ始めた方へ歩行訓練を行い、継続して通勤ができるようになった。  ・デイジー図書を聞きたいが、障害等級が4級であるため、プレクストークを入手することが困難であると相談された。  ・10年以上も前に認定された等級だったので、眼科を受診するようにと対応した結果、2級となり、プレクストークを自治体を通じて入手。  ・家族関係、自己の重複障害などの中で多面的に障害を抱え出口を見いだせないでいる方に継続的に相談を受けることで、少しずつ生活改善を進めながら解決の糸口を見出してきている人がいる。  ・当施設における情報提供、リハビリテーションの受講により、大学進学を経て再就職につながった事例。  ※ 各施設からの回答を見ると、視覚障害に対する支援と並行して、生活全般への支援が求められており、個人一人ひとりのニーズに即した『社会復帰へのきっかけとなるサポート』が重要であることがうかがえる。 2−4 連携しようとしてうまく行かなかった事例があればお答え下さい(特に、課題・問題となった事柄を中心にして)  回答数 22  回答率 27.1%  【回答内容】  ・自治体福祉担当職員との連携について  移動点字図書館の実施、周知等で開催地の自治体に当館のPRも兼ねて協力を依頼するが、担当職員によって連携がうまくいかなかった事例がある。また、人事異動で担当者が変わると、当館に関する情報について引継ぎされないという課題がある。  ・視覚障害以外の障害者に、録音図書の配送をお願いしたいと相談したが、まだ、具体的な実施にはつながっていない。  ・公共図書館との連携は、一部反応があるものの、予算人員等から反応は鈍い  ・SNSやショッピングサイトを利用したいという利用者への対応。パソコンボランティア養成講座ではそれらの内容はやっておらず、個人情報や金銭が絡む難しさなどから現時点では県の障害者ITサポートセンターでは対応不可能と判断された。  ・サピエの地域・生活情報に登録する情報の提供をお願いしましたが、紙媒体での提供や、データを整理してから登録しなければならないなど職員の作業負担が大きく、断念したことがあります。  ・年頃の人の最終の目的は就職という人が多い。しかし、仕事の選択肢は限られており、マッサージ等に興味を持ってもらえなかった。持っていもらえるような支援をちゃんとしなかったところもある。盲学校の1日授業参観に付き添うなどもっとできることがあったかもしれない。  ・知的障害があったり、精神障害があり支援する関係者がいないため(あるいは家族がかわってくれないため。)コミュニケーションがうまくいかない事例があり、いつの間にか連絡できなくなった事例。障害のある人の家族が本人を抱え込み、連絡ができなくなった事例などがある。  ・医療機関主催のロービジョンクリニックにおいて、医療機関における個人情報提供制限との関連から、当事者(受診者)への対応が円滑に進まず不信感が生じてしまったことがあった。  連携先との情報共有(担当職員の引継ぎ)及び個人情報提供に関する問題や連携先の『支援に関する理解不足』をあげている施設が多かった。  また、就労に関する支援を課題としてあげている施設もあり、今後ますます多様化する利用者のニーズに対応するためには、他機関との円滑な連携及び継続的な連携が重要であると考えられる。 2−5 相談以外で他機関と連携している業務があれば、お答え下さい (例: 社会福祉協議会と共同で点字体験イベントを開催)  回答数 48  回答率 59.2% 【回答内容】  ・社会福祉協議会と連携して点訳者・音訳校正者養成講習会、音訳者研修会を実施している。ボランティア体験や福祉の授業についても協力している。  ・北海道眼科医会に協力して、ロービジョンケア/視覚障害リハビリテーション連携推進プログラムスマートサイト北海道版(ホームページ)へ当センターの事業内容等の情報を提供。  ・県内各地域で実施する点訳及び音声訳奉仕員養成講座(県委託講座)開催時の、市町村行政、社協、公立図書館との連携。  ・移動点字図書館開催時の、市町村行政、社協、公立図書館との連携。(職員派遣等の協力がある場合もある)  ・各市町の福祉課・社協・民生委員との連携で、各市町に出向いて「視覚障害者の集い」を開催。  ・地域福祉アクションプランに参加。バリアフリー企画、マルチメディアデイジーの製作を協同で実施。  ・資生堂と共同で化粧体験イベントを開催。  ・市内の社協と共催で夏休み小学生ボランティア体験実施  ・視覚障害者へのITサポートグループ主催の相談会・機器展に協力。  ・県内公共図書館のネットワークを利用し、カセットのデイジー化に必要な原本を借用している。  ・市民会館と連携し、バリアフリー映画上映会実施  ・中学生の職場体験。  ・大学生の社会福祉主事実習等の受入。  ・各地で開催される「福祉まつり」、地元商店街のお祭り、そのほか各種イベントに「移動ライトセンター」として参加し、主催団体からも喜ばれている。内容は、点字体験、各種機器・用具の紹介、点字・録音図書の紹介、ボランティア相談、利用相談等。  ・企業とipad、スマートフォン体験会開催  ・NTTクラルティと協同でケータイお役立ち講座を開催 3.点訳・音訳図書の製作、ボランティア育成について 3−1 点訳・音訳図書の製作で何か抱えている問題はありますか? (パソコンのOSへの対応、利用している機器への不安等)  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 67 82.7%  いいえ 10 12.3%  【「はい」記述欄】  ・点字指導員、音訳指導員を積極的に取得しようとするボランティアが少ない  ・パソコンのOSの変更に伴う、ソフト等の対応について。  ・難度の高い点訳ができる点訳奉仕員が少ない。  ・点訳ボランティアの高齢化による不足。  ・点訳・音訳の知識・技術だけでなく、パソコンやソフトウェアなど、IT関連の知識や技術が求められるようになってきており、職員のスキルをどうしていくか。  ・テープ録音からデジタル録音への切りかえが難しい為、活動をやめる人がいる。  ・機材、原本などほとんどがボランティアによる出費  ・録音図書のクオリティ管理(スキルが十分でないボランティアもいるが、フォローアップや指導等が十分できないまま、完成品を受け入れている)  ・より専門性の高い図書に対応できるボランティアの不足  ・点字プリンタの耐久性(買い替えたいがなかなか難しい)  以前から課題としてあがっている図書製作(重複製作やパソコンOS・ソフトへの対応など)に関する問題やボランティア育成(高齢化、減少など)に関する諸問題が浮き彫りになった。 3−2 電子書籍(テキストデイジー、マルチメディアデイジーを含む)の将来的な展望をどのように考えていますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  ますます普及していく 42 51.8%  それほど変わらない 6 7.4%  わからない 22 27.1%  その他 16 19.7%  【その他記述欄より】  ・市販の図書の読み上げが出来る再生ソフト次第で、急速に広がると思う。  ・既存のメディアとのすみ分けが必要になる。マルチメディアデイジーを増やすには、視覚障害者以外の人も主な対象にするかどうかによって変わってくる。  ・EPUBに対応した視覚障害者も使いやすい機器の普及がカギではないか。  ・「視覚障害者」に限定しない部分で、ますます必要とされるのでは?一般図書館との連携で充実していく分野ではないでしょうか?  ・スマートフォンやアイパッドを使って電子書籍を利用する視覚障がい者も増えてきたが、専門の指導が必要なので、全国的にその指導が可能かどうかに左右されるのでは。  ・公共図書館が視覚障害者以外の方へのサービスとして製作するなどができたらよいと思う。また、音声版を点字図書館が製作するなどして連携がはかれたらよいのでは。  半数の施設がますます普及していくという回答があった。一方で、3割弱の施設が分からないと回答しており、電子書籍がどの程度、視覚障害者が読むことができているかなど、実態を把握できていないともいえる。 3−3 合成音声の利用が広がりつつありますが、今後への期待、または懸念することなどがありましたら、お答え下さい。  回答数 57  回答率 70.3%  【回答内容】  ・早く出来るなど利用者にとってメリットがある。広がりに期待しますが、人の声での情報提供の希望も多いので、両立で考えている。  ・より肉声に近い合成音声になることを期待する。  ・合成音声により、利用者の点字離れが心配。(便利になるのは良いこと)  ・音訳ボランティアが減少しないか 活動への影響を懸念する  ・かなり肉声に近くなってきている。アクセント調整もできるソフトが増えてきている。取扱説明書・価格表、カタログ等、合成音声でも聞き取りやすいものへの使用が増えると思う。なので、企業やメーカーの依頼が増えるかもしれない。視覚障害者用のリライトが我々の仕事となるかもしれない。  ・利用者の選択の幅が広がりとても良いことだと考える。  ・合成音声は便利な道具のひとつではあるが、すべての障害者、すべての場面で有効なものではない。合成音声 = 「簡単、早い、無いよりまし」と考えるのではなく、合成音声が有効に活用される場面にこそ、その技術を投入するべきである。  ・今後、これまで以上に読み上げの性能が良くなることには期待しているが、逆に音訳者の役割がどのように変わっていくのか、心配なところもある。  ・利用者ニーズに対応できる職員の技術の習得  ・すべての出版物のテキストデータが提供されれば、健常者との読書の格差はなくなる。出版社へフェアユースの理解が浸透することを望む。  合成音声に関する期待感が結果から伝わってきた。合成音声技術の向上により、音訳者の役割がどのように変わっていくか、現状のボランティア人員減少とあわせて、しっかりと考える必要がある。 3−4 点訳・音訳ボランティア育成に関して、抱えている問題はありますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 72 88.8%  いいえ 5 6.1%  その他 4 4.9%  【はい 記述欄より】  ・点訳・音訳共通で指導者の育成。長期に活動できる方の確保。  ・人員不足、高齢化による製作数の落ち込み、新人が育たない  ・校正者を対象とした勉強会が開けていない → 校正者不足、高齢化 若い方は仕事を持っているため活動が継続しにくい  ・使用機器等の整備に関する予算不足  ・ボランティア育成講座を開設しても応募者が少ない  ・利用者の高度なニーズに応えられるボランティアが少ない  【その他記述欄より】  ・原本等の送料の予算確保  ・県からの委託料が毎年減額されている。  ・応募者が少なく、適性の乏しい人も採用せざるを得ないので、養成に手がかかる。  ・講習会が終わった後のフォローアップに対する予算をつけにくい。(主に講師謝礼)  ・パソコン点訳を主とすることで、点訳が気軽な作業となり、きちんと正しく点訳できない、間違いの多い点訳をするボランティアが増えている。結局、修正、校正に時間がかかり、特に校正を行うボランティアの負担が増している状況で、点訳者育成が思うように進んでいない。  点訳・音訳ボランティア共通して、高齢化や新規ボランティアの減少等、顕在的な課題を抱えていることが分かった。今後は早急に時代変化に対応した『製作のあり方』を検討し、実施していかなければならない状況にあるといえる。 3−5 点訳・音訳ボランティアへ以下の支援を行っていますか?(複数回答可)  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  交通費 16 19.7%  機材購入費 21 25.9%  ソフトウェア購入費 34 41.9%  郵送料等 40 49.3%  活動場所の提供 72 88.8%  その他 33 40.7%  特に支援を行っていない 0 0.0%  【その他記述欄より】  ・ボランティア保険  ・指導者認定講習会参加費助成  ・点訳ソフト、パソコンの貸与  ・活動に必要な資材の提供、職員の派遣、専用電話回線・事務機器等の提供、等々。機材やソフトウェアの購入は施設で購入し、貸し出している。  ・デジタル研修の実施、県知事表彰の推薦、機関誌発行の補助  ・製作謝金の支出、インターネット回線の提供、機材の購入  ・年1回、資料等購入の助成として、図書カードを渡している  ・資料印刷費  ・USBメモリーの貸出、パソコン貸出、録音ソフト貸出、研修会の参加費補助  回答施設全体で活動場所の提供を中心とした支援が行われている。  そして、ソフトウェア購入費で34施設、機材購入費で21施設、交通費16施設と費用の支援を行っている施設が半数以下となっており、約半数の施設では、ボランティアの方の自費によって活動していることが分かった。 3−6 製作対象図書の選び方(=選書)には様々な考え方がありますが、貴施設・団体における選書方針や基準の策定等、実践している取り組みがあればお答え下さい (例: 現物の本を見て選書している、地図や取扱説明書など図書以外の資料も選ぶようにしている)  回答数 70  回答率 86.4% 【回答内容】  ・話題の小説などに偏らず、様々な分野の図書を製作するよう心がけている。  ・郷土の内容の図書や地元出版社、地元出身作家の図書の製作も積極的に行いたいと考えている。  ・利用者、ボランティア双方からアンケートをとり、希望分野や興味のある作家等をあげていただき、参考にしている。  ・月1回、センター職員内での選定会議により、製作する図書の選書をする。自館の選定図書収集方針に基づき、他館での製作が行われていない図書を選定している。  ・サピエを中心となったサービスの提供状況を考えると、基準の策定等の図書館界の観点で考える時代は終わっていると思う。選書方針や基準の策定等の図書館用語に縛られることは辞めた方がよいと考える。もっと自由に製作に取り組む姿勢が大切だと考える。  ・現物の本を見て選書してもすでに着手されていることが大半です。本が出版される前の情報で入れないと製作できない。競争ではなく、もっと合理的な方法で製作できるようになることを望む。  ・主に利用者からのリクエストで本を選び、蔵書として製作している。  ・全国の情報提供施設、団体で1つの図書館を作っているという意識のもと、他の図書館との重複製作を避け、他施設・団体で製作しない本(調査に時間がかかる、専門的な内容、図表などの視覚的資料が多い、等)、類書があまりない本を積極的に選書する。なお、専門書、視覚的資料がある本については必ず内容を確認して選書する。  ・メーリングリストを利用し、利用者とボランティアの代表及び職員で推薦図書を出し合い、それに投票する形で月2回5冊ずつ選書を行っている。  ・私たちのグループは宗教書を始めとする、心に残る良書を製作することを目標にしている。主に本屋で現物の本に目を通し、他館と重ならないように、流行を追わない隠れた良書を探し求めている。  多くの施設で、利用者のリクエストにもとづいて選書されている一方で、重複製作の問題も含め、着手競争ではなく、合理的な方法で製作できる環境を望む声もあった。 3−7 図書製作、ボランティア活動に関して、現在考えている事、抱えている問題、将来への展望など、自由にお答えください。  回答数 54  回答率 66.6%  【回答内容】  <ボランティア活動 問題・意見など>  ・音訳ボランティア養成に関して、モデルカリキュラムを作ってほしい。音訳指導技術の向上が今後の課題となる。  ・長く活動していると、ボランティア各人の意識について、ボランティアの意味や 図書製作の意味、目的等、さまざまな部分でズレが生じてくる。そのズレの修正と、意識の改革が課題。  ・社会情勢(少子高齢化や女性の就業、社会活動の多様化)で、ボランティア応募者が減少しつつある。校正職員も含め、今後の人材育成が課題。  ・有償ボランティアという言葉がしばしば使われるようになって以降、特に音訳ボランティアからは、報酬の有無や額、公平性等に拘る声が盛んに聴かれるようになり、本来のボランティアの意味を考え直さなければならない状況に直面している。  ・デイジー製作ができる人材不足。(パソコン操作ができない、苦手な人が多い)  ・数十年前と現在ではボランティア活動に対する意識が変わってきているように感じ(現在はプロ意識が薄い、図書製作以外の図書館活動にはあまり関心がない)ボランティアの方への対応にやりにくさを感じることがある。  ・図書製作が中心だった活動から、地域情報を発信できる体制づくりを考え始めたところである。図書製作のみで活動していたボランティアが多い中、どのようにシフトしていったらよいかが課題である。  ・地域情報提供の部分では、学生ボランティアや街づくりに関わっている方々とのつながりを持てたらいいのではないかと思う。事例があったら知りたい。  ・点訳グループは、中心的役割(代表・副代表など)を引き継いでもらえる人が育たない。若い世代で活動している方がほぼいないので、今の代表の方が引退すれば、代表を引き受けていただける方がいない。  <図書製作のあり方 問題・意見など>  ・将来的には、点字図書が少ない分野や人知れず読みたい分野(特に病気関係等)に着目し、そうした分野の点字図書製作が必要ではないかと考える。  ・点字図書だけでなく、多くの人が必要とするであろう資料(取扱説明書等)の製作を増やすことも必要ではないか。  ・選書について施設間の着手競争が激しいので、将来的には、サピエ加入団体の中で選書会議をし、各施設に制作を割り当てられるようになるとよい。  ・能力の高い若い人はたいがい仕事をもっていて、ボランティア活動をする時間がない。これまで図書製作は、一人のボランティアが1冊の本の下読み・調査から録音まですべてしていたが、短時間でも協力してもらえるよう分業化して、多くの人の力を借りる方法を探りたい。  <合成音声への対応 問題、意見など>  ・合成音声の図書や音声変換ソフトの普及により、音訳者による図書の必要性が以前程は大きくないといった感覚もあり、今後の音訳者の活動について、見えないところがある。  ・テキストデイジー製作に積極的に取り組むため、テキストデイジー製作ボランティア育成を検討。将来的には、テキストデイジー製作ボランティアに、視覚障がい者へのパソコン等の情報機器の指導をお願いしたい。  <職員の業務体制 問題 意見など>  ・図書館職員の仕事内容は広がっているので、図書製作など根幹の仕事にかけられる時間の減少と、製作するものも多岐に渡るため技術の習得や技術の継承に不安がある。  <全国組織 あり方 問題 意見など>  ・サピエ図書館の点字・録音図書データを安定的に利用者に提供できるように、国立国会図書館に移管することを真剣に議論すべきである。  ・毎日のようにレイアウト・アス空けの質問が来るが、他府県の指導者等にも相談できる体制が欲しい。  ・無償奉仕の作業であるが、将来にわたりこのままでよいのか、国レベルで検討しても良いのではないかサピエ図書館のダウンロードを有料化するなどの方法を検討して製作活動の補助にあてるなど。 4.自然災害に対する対応や、防災・減災の取り組みについて 4−1 (職員の)災害発生時の行動マニュアル等を整備していますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 44 54.3%  いいえ 24 29.6%  その他 11 13.5% 4−2 平常時に防災・減災に向けた取組みを行っていますか?(例: 停電を想定した避難訓練、生活物資の備蓄)  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 61 75.3%  いいえ 18 22.2% 【「はい」記述欄より】  ・大規模な災害が発生時には、利用者・ボランティアの安否確認を行うことを想定して、名簿など準備をしている。  ・複合施設全体で物資の備蓄、避難訓練などを実施している。  ・防災用品の準備、AED設置  ・ボランティア・利用者参加の防災訓練、食糧簡易トイレ等の備蓄  ・ボランティアや視覚障害者対象の減災講演会の実施  ・食料の備蓄、発信規制のない携帯電話の所有(1台)  ・市立図書館との防災連携  ・毎日の朝礼の際、視覚障害職員と晴眼職員の「避難ペア」を確認し合う → 災害発生の際は必ずこのペアで行動するルールを設けている。また、自席を離れる際はどの部屋に移動しているかを声掛けし、黒板にはマグネットを貼りつけ、触覚・視覚で確認できるようにしている。  おおむね8割弱の施設で、何らかの防災・災害への備えや取組みを実施している一方で、他機関と繋がりを持って取り組んでいる施設は少ないことがわかった。 4−3 防災・減災に向け、連携協定等を結んでいる機関・施設はありますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 20 24.6%  いいえ 56 69.1%  【「はい」記述欄より】  ・福祉避難所として、市と協定を結んでいる  ・法人として協定を締結している  ・連携協定等はありませんが、同一施設内ということで市の社協の防災訓練等に参加している。  ・運営者が日赤であることから取り組みやすさがある。 4−4 災害発生時に独自に行った対応、防災・減災につながる仕組み作り、貴施設・団体の取り組まれている現状をお答え下さい。 (例: 利用者名簿を元に行った安否確認等)  回答数 29  回答率 35.8%  【回答内容】  ・災害時の搬出物として、利用者のデータの持ち出し(HD)を検討しており、安否確認や情報提供及び業務の早期再開につなげたいと考えている。  ・平成16年中越地震発生時には、被災地域の利用登録者全員の安否確認を実施した。被災した盲ろう者に点字のお知らせを発行し、地域の点訳ボランティアの紹介などもあわせて行った。  ・平成23年東日本大震災発生時には、福島県から避難した視覚障害者の利用登録を受付、新潟県内の避難所に点字図書や図書館だより等を送付した。  ・東日本大震災当日に帰宅できなかった視覚障害者およびボランティアに対し、宿泊場所および非常食の提供を行った。  ・職員が大規模地震発生時に素早く対応できるよう、初動マニュアルを作成中。  ・定期的な避難訓練の実施により避難経路の周知を行っている  ・阪神淡路大震災時、利用者名簿を元に他団体に協力を得て安否確認。また、ボランティアグループの避難所訪問による状況確認。今年度より防災メルマガの定期的配信。  ・視覚障がい者のための防災ハンドブック(点字版、音声版、拡大文字版)の作成。県内を4地区に分け、各地区の視覚障がい者向け防災講習会を開催。  ・一人暮らしとわかっている利用者への安否確認(生活支援)  ・利用者名簿による安否確認  ・横須賀市では「災害時要援護支援プラン」を策定し、災害から自らを守ることが困難な災害時要援護者の方々(一人暮らしの高齢者、障害者、寝たきり高齢者等)から横須賀市災害時要援護者名簿に登録を申請していただき、市を通じて登録した個人情報を地域の支援者へ提供いただくことを同意いただく仕組み作りをしている。(任意)  災害時にどう対応したか、具体的に取り組んでいる施設が少ないことが分かった。  各施設からの回答を受け、今後は『当事者への情報支援のあり方』や『ネットワークによる相互支援と連携』といった側面から、全国的な取り組みとして、アクションプランをしっかりと持つ事が重要である。 5.新たな情報提供の手段 5−1 今後、全視情協およびサピエのホームページを活用した情報の提供に関して、取り組んで欲しい事などあれば自由にお答え下さい (例: 日常生活用具・機器の最新情報、動画配信、SNSとの連携、研修会や大会の実施状況のリアルタイム配信等)  回答数 45  回答率 55.5%  【回答内容】  ・研修会や大会の実施状況のリアルタイム配信  ・機器の最新情報。機器の使用方法や情報やデータの取得方法等。  ・SNSと言えるのかどうかは分からないが、掲示板とは別に、施設会員専用の情報交換の場があると良いと思う。責任ある発言をしてもらうために記名投稿を原則とし、新たな取り組み、抱えている課題、他施設・団体への質問(相談)等、共通理解の場としての機能を望む。  ・利用者の受益者負担を一度検討してみてもよいのでは?(個人)という意見があった。  ・大会の内容を配信してほしい。とくに分科会の内容について、研修内容が振り返れるようになればうれしい。  ・サピエの地域・生活情報に日常生活情報や福祉制度情報をアップすることは、有効だと思うが、使いやすいシステム改修や代行アップなど、手段について検討すべき。  ・各館での最新の取組事例(他館では今まで行われていないであろう取組みなど)全視情協で各館のfacebookページ(別に有効なツールがあれば何でも可)の作成をサポートしてそのfacebookページの情報をサピエ上または全視情協のHPで公開する。  ・取り組んでほしいこと以前にサピエの動作の安定、予算の確保が先では。  ・サピエのホームページ上での地域生活情報はあまり必要性を感じない。  ・事務局施設会員からのお知らせが煩雑で読みづらい。図書のことと、他のこととはわかれていたほうがよいのでは。  ・日常生活用具の申請方法など、基本的なこと  ・動画、音声付きデイジー、テキストデイジー、マルチメディアデイジー、点字データの読み上げ(ピンディスプレイ含む)の操作方法。  ・サピエのホームページの片隅でよいので、登録者数(個人や団体)の現状を載せてほしい。毎月か隔月か。  ・点訳、音訳、テキストデイジー等のソフト開発 利用者の対応機器、ソフト開発の進捗状況などの情報発信  全視情協として、大会や研修会などの動画配信を求める声も多く、最新の用具に関する情報や、新しい取り組みの紹介等、全国的に情報を共有する場が求められていることが分かった。 5−2 サピエの地域・生活情報を活用して情報を配信したことがありますか?  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 18 22.2%  いいえ 58 71.6%  【「はい」記述欄より】  ・道路工事情報、副音声付映画上映情報、市内コンサート、イベント情報  ・新聞記事、スーパー特売情報、スポーツ情報、夜間救急当番医 他 多数)  ・京都市防災マップ、京都市の観光案内記事、点字メニュー情報、バリアフリー映画情報など  ・イベント情報  ・講演会の案内  ・視覚障がい者のための防災ハンドブック、観光情報など  【「いいえ」記述欄より】  ・利用者からのニーズがない。  ・配信のための情報収集や体制作りが困難  ・地域の情報についてはメールなどの方が簡単に利用者に伝わるので  ・継続性のある情報を配信する場合は、人的確保が必要なため地元のボランティアグループが地域に根差した情報提供につとめている  ・設定等が煩雑で、多くの利用者に配信設定の案内が難しそう  ・職員数が少ない  ・情報の登録や利用に関して、通常業務内でなかなか手が回らない状況  ・活用の仕方が明確でないため  ・定期的に発信するのに手間がかかるので、他の業務を優先してしまう  配信したことがないと回答した施設が58施設と多く、配信のための職員体制が整っていないことや情報配信の煩雑さなどが多くあげられ、現状サービスの課題としては、情報提供の負担軽減や誰でも簡単に情報へアクセスできる仕組みづくりがカギになってくるといえる。  また、利用者からのニーズがないといった回答もあり、今後は新しいニーズの掘り起しのためにも、課題解決に向けた取組みを実施していかなければいけない。 5−3 “(利用者が)今、必要としている情報を届けたい”と感じる出来事は今までにありましたか? (例: 施設近くの道路工事、PCのセキュリティ情報、臨時休館、お悔やみ情報等)  (以下、回答内容、回答数、回答率の順。)  はい 35 43.2%  いいえ 35 43.2%  【「はい」記述欄より】  ・災害に関する支援情報などに活用したい  ・施設近くの道路工事、PCのセキュリティ情報、臨時休館、お悔やみ情報等  ・臨時施設閉鎖、新型インフルエンザ、原発事故、熱中症対策等々  ・お悔み情報  ・自治体のハザードマップには視覚に訴える地域の地図が多様されている。これを視覚障害者も有益に把握できるようにするべき。触地図にするか、言葉への言い換えかは、私たち施設職員が最も得意とする分野。晴眼者と同等に近いハザードマップ情報を届けたい。いや、届けるべきだ!  ・地方の公共交通機関の時刻  ・今後やってみたい  ・飲食店の情報  ・機器などの情報  『はい』と回答した施設が35施設と半数の施設が、リアルタイムに生活に密着した情報提供の必要性を感じていることが分かった。 5−3−1 “今、必要とされている情報を届ける”為に、貴施設・団体で取り組まれている事や実現につながるアイデア等がありましたら、お答え下さい。  回答数 32  回答率 39.5%  【回答内容】  ・メーリングリスト(利用登録者の約17.5%がメールアドレスを登録)による、情報提供を実施している。  ・ボランティアグループ20数名でメールマガジン作成のグループを組織し、利用者100名弱に毎日配信している。地域のイベントやお店情報、新製品や、図書の案内などで好評をいただいている。  ・実践例 関西版のバリアフリー映画情報MLを運用。タイムリーな映画情報などを発信している。  ・アイデア 簡易な情報発信の手段として facebookなどTwitterの活用  ・視覚障害者のみならず一般〔民間〕にサピエ図書館の周知が必要ではないか。→ そこから視覚障害者への利用促進が広がるような気がする。  ・インターネットから情報を上手く入手できない(情報が多すぎるため)視覚障がい者が知りたい情報をインターネット上から入手するための対面朗読ならぬ対面検索(代わりにインターネット検索するサービス)対面朗読のように実際に図書館に来てもらって行っても良いし、IP 電話・SNS・電子メール等を活用しても可。  ・必要なことはすぐ実行できる体制の整備が求められる。そのためには組織がフレキシブルである必要がある。 6.その他 6−1 貴施設・団体の10年後を考えた時に想像される課題・アイデア等、または10年ビジョン会議に対するご意見・ご質問、ご要望をお答え下さい  回答数 46  回答率 56.7%  【回答内容】  <運営面の課題・意見など>  ・指定管理では10年先を見越したビジョンが立てにくい。現実的には短期的な展望しかたてることが難しい。ただ、その日暮らし的な対応は決して好ましくない。10年かどうかは別としても、ある程度先を見越したビジョンをたてなければならない必要性は十分にある。  ・障害者差別解消法の施行で職員の負担が増える見込みであり職員定数の増員が必要。  ・点字図書館は制度的にも、予算的にもいったん解体し、合理的に再編成すべきだと思う。例えば、 @情報を製作する施設 A図書を貸し出す施設 B中途視覚障害者の相談・ICT利用支援、地域リハを行う施設 C全国的サービス(サーバ)の管理・調整を行う施設 以上を重複的に行う選択肢もあり  これにより、公的予算と人的資源を活用し、事業の効率化と、サービスの充実を目指すべきだと考える。  ・障害者のみならず、誰でも自由に利用できる施設づくり  ・利用者の高齢化で、情報支援機器の習得が難しくなっている状況のなか、支援機器は日々進歩している。それらのサポートをする機関がないという現状に対して、今後の情報提供施設の在り方が問われ、変化していくと思われる。職員の情報支援員の増員及びそのボランティア人材育成。  ・眼の前にあるユーザーさんの要望に応えていくことで精いっぱい、というのが現状です。限られた予算、という現実問題も大きいです。本当は、それではいけないのでしょうけれど。指定管理という枠の中で、どれだけできるか、というのが現場の実情ではないでしょうか。  ・図書館部門はおもいきって、国会図書館や公立図書館に業務を委譲し、視覚障害者のリハビリ、相談、IT支援に軸足を移していくことが必要ではないか。  <財政、予算面の課題、意見など>  ・福祉(施設)の健全運営に必要な利益確保について、職員、利用者の意識改革と理解を得る努力が必要  ・行政からの予算カットが続き、10年後には団体が存続しているかどうかわからない。行政に対して、団体の必要性、事業の重要性を理解していただく働きかけが必要。  ・当施設は、限られた予算の中で運営しているため利用者あるいは対象者の要望に応えきれていないため、収益のあがる自主事業を展開し総合施設に脱皮したい。  <支援のあり方 課題・意見など>  ・インターネット等を使わない人との格差がなお一層広がると思われるので、使わない人への情報確保が課題。  ・点訳・音訳のスキルを持ったボランティアの活動の場が広く展開していくと良いと思う。「視覚的な情報の言語化」スキルを向上させるようなプログラムがあれば、視覚障害者の美術鑑賞、同行援護等、様々な場面に応用できると思う。  ・10年後、合成音声が普及し、機器類も利用者の方々の使いやすいものが普及し、私たちの活動も必要とされない時が来るかもしれません。正確な情報がより早く利用者に届くようになればそれはそれで良しと考える。  ・電子書籍(kindle等)のアクセシビリティ向上による情報提供施設の存在価値低下→関係を持てば協同できたり改善を求められる(関係を持って置かないとお株を奪われる)ので、こちらから積極的にコンタクトを取り、機能向上の提案をする。  ・電子書籍との融合による録音図書製作→出版社提供のテキスト部分は合成音声での読み上げ、図表などの視覚的資料を音訳者が録音し相互をリンクさせる形ができれば製作期間と製作労力の省力化が図られるのではないか。  ・「視覚障害者を囲い込んで特化した情報を提供する」という枠組みの限界→社会と当事者双方を知る立場から、両者をつないでコミュニケーションを促すことで、現状を伝え入手可能な情報を増やしていくというスタンスで活動する。  ・視覚障害者に占めるロービジョン者の割合が増加傾向が続いているため、10年後のサービス主体がロービジョン者への対応となると考える。  <全国組織としてのあり方 課題・意見など>  ・情報提供施設・団体に求められる「情報」の拡大化への対応。全視情協として取り組むべきものと、地域で取り組むべきものの役割の明確化が必要。  ・貸出窓口は公共図書館、製作は情報提供施設・団体でという時が間近い。そろそろボランティアだけではなく、専門家集団を形成することも考えるべきではないか。  ・指定管理や公立施設等の事業内容の問題もあるが、既に情報提供施設を超える機能を持つ施設として推進している図書館(センター)が多い中、これまで以上のすべての視覚障害者等サポートの必要性から、各図書館独自の事業展開により存続を目指すしかないのではないか。そのための複数の全国組織は必要無いと考える。  ・障害の重度化、高齢化の進展に伴い、障害者支援サービスの充実を総合的に考慮したシステム構築をしていく必要があるのでは。  <10年ビジョン会議に対する意見・要望など>  ・10年ビジョン会議では、過去にとらわれず斬新な発想を交えて検討していただき、全視情協加盟施設・団体にインパクトを与えていただけることを期待している。  ・提言をまとめた後も継続的な話し合いをしてほしい  ・障害者権利条約や批准のための著作権法改正等により読書困難者の対象は大幅に拡大された。視覚障害者情報提供施設の関係法令は改正されていないが、このまま「視覚障害」への対応を主としていくのか、あるいはその他の高齢、疾病、障害等で読書が困難な人も含め幅広く「活字情報等の利用に障害のある人」に対応する施設となるのかが大きな課題になると思います。できれば、今までの点字・録音図書の製作や情報支援等のノウハウのある点字図書館が、その他の障害者向けの資料の製作や情報支援等にも貢献していくことが社会にとってメリットがあるように思う。 しかし、そのことで逆に公共図書館や出版社等の障害者対応が進展しないようでは困るし、また、視覚障害者へのサービスが低下してもダメだと思う。大変だとは思うが、10年ビジョンは、点字図書館だけでなく、公共図書館等の関係なども含め、どうあるべきかをご検討いただけたらと思うのですが。  ・サピエ図書館の将来展望を考えたとき、利用者の拡充の前提として、利用者がパソコン等情報機器の利用に習熟する必要があると考える。かつて、IT戦略のため国が全国的に講習会を実施したように、視覚障害者全員に情報機器を配るなど思い切った製作実現を求める運動があっても良いのではないかと考える。少なくとも全国で講習会を実施できる予算と合わせてサピエに対する予算を要求しても良いのではないでしょうか?  ・どこまで視覚障害を支援する地域の中心的存在になれるかがカギだと思っています。この会議が提言にとどまらず、全視情協を動かすものになることを期待します。  6−2 その他感じておられること・お気づきの点などありましたら、ご自由にお書きください。  回答数 20  回答率 24.6%  【回答内容】  <情報提供施設のあり方 意見など>  ・情報提供施設のあり方について、利用者、職員を問わず、現状と剥離した理想論から論じられる傾向がある。職員としては、現状、現実を踏まえて、利用者に現状を理解してもらう努力も必要と思う。  <支援のあり方 意見など>  ・高齢になられた視覚障害をお持ちの利用者の皆さんが、役所の手続きや物品の購入を行うことが困難な様に度々遭遇します。そうした困難を克服されるために、私たち自身がお手伝いしたり、他機関との連携を深めたりすることで問題解決に貢献していかなければならないと思っている。  ・多くのボランティアが携わって製作した録音図書等をもっと広く活用してもらえるよう、対象拡大が急務であると感じている。  ・公共図書館の障害者サービスとの連携強化  ・日点・日ラ製作の厚労省委託図書のあり方の検討が必要。サピエ図書館を利用すれば各県に配布しなくてもよいと思う  <全視情協について 意見など>  ・全視情協における地域ブロック単位の連携が今以上に必要だと思う。  ・利用者個々の図書製作リクエストを全視情協として受付し、そのリクエストをもとに、各館が図書を製作する仕組みがあってもよいのではないだろうか。  ・全視情協としては、出版物等のテキストデータの利用へのアプローチを課題として取り組んで欲しい。(出版社による提供)図書製作が格段に早く、正確に行なえるようになると思う。全国的にテキストデータの依頼が多くなることを想定してこの点について検討をしていただきたい。  ・サピエでは、様々な情報を入手できる反面、図書に関してだけを言えば、検索など情報を得るまでに、すぐにページにたどり着けないという手間がかかる。サピエ図書館だけを別なサイトにして、図書情報を別立てで提供していくほうが、雑多な情報の中に図書情報が埋もれてしまうより良いように感じる。  ・サピエの窮状を聞くたび心が痛む。一刻も早く改善されることを願っている。  <サピエ 地域・生活情報について 意見など>  ・サピエの地域・生活情報について 入力が入れにくい。また利用者が探す場合も難しいという声があった。ジャンルが混合しているので、利用者にとっての情報の焦点がぼやけている。  ・マルチユースな図書が出版されるようになれば、施設として「地域・生活情報の提供」や必要なプライベートサービスなどに注力できるようになり利用者にとっても有益になるのではないか。出版時はマルチユースな状態で提供しなければならないという一定の情報保障の制約を出版業界に課し、対応ができない出版社の部分を点字出版所や大規模な点字図書館などで受注できれば共存していけるのではないだろうか。  <点訳ソフトについて 意見など>  ・点字編集システムについて、今のようにOSが変われば、そのOSに合う新しいソフトを購入しなければならないというのは、点訳ボランティア活動を進めるうえで、大きな障壁となっている。OSに依存しないソフトの開発、または使用方法を是非、考えてほしい。例)点訳ソフトのクラウド化 サピエの製作支援に点訳ソフトを置き、点訳者はそこから点訳を始める。サピエの中に製作館ごとのデータ管理の部屋を作り、製作途中のデータなどもそこで管理する。サピエを利用するためのIDやパスワードは、ボランティア用に製作館ごとに管理(一人につき一つ持つのか、製作館ごとに1つとするのか、要検討)。製作支援の運営費やソフト開発にかかる費用については、どうしても別に必要ということであれば、サピエ会員費に上乗せする形で、製作館で負担する。毎年養成講習会を修了された方にソフトを購入することを考えると会費に上乗せの方が安くつくのではないか?ボランティアさんが購入をされているところであれば、施設の負担が増えるだけではあるが。インターネット環境がない方向けに購入版を残すのも良い。  ・パソコンがXPからwindows8に変わったことだけでも、何かと大変で施設側で追いついていない状況です。このまま「8」で図書製作をしてよいのかどうか、よくわかりません。点訳ソフトも今後はwin−besが使えなくなると聞きました。ボランティアさんにも新しいソフトを購入してくださいとも言えず、今の機器が使用不可能になったとき、どうしたらいいのかと思います。多くの方が製作活動や普及に携われるのは、やはりフリーソフトの力は大きいと思いますがいかがでしょうか。  <障害者権利条約について 意見など>  ・障害者権利条約を追い風にし、出版界に対しテキストデータの提供やユニバーサルな書籍を出版するよう積極的に働きかけるべき。このことについて、制度化、国庫補助も視野に入れ、国に要望することも必要ではないか。  <10年ビジョン会議について 意見など>  ・今回は業務改善の傾向が強い。課題が見つけ出せればいいが、視点を変える考えも必要だと思う。たとえば、異業種から見た視覚障害者情報提供施設はどのように見えているか等、その中から何を活かしていくのか。  ・この10年ビジョンもマンネリ化を打破したいという側面もあると思う。これからの10年、20年に向けて方向性を見出そうとしておられる皆様に敬意をと熱きエールを送る。  ・現状に対しての質問はすぐに答えられますが、10年ビジョンという大きな取組みに対するアンケートなので、このアンケートの回答期間をもう少し長くしていただけると色々な課題に対して考える時間ができたのではないかと思いました。   4.情報提供ネットワークシステムの進化 〜「てんやく広場」「ないーぶネット」から「サピエ」へ〜  【てんやく広場】  1988(昭和63)年 日本IBMが社会貢献事業で「てんやく広場」を開始(点字図書館5施設と点訳ボランティア6グループが参加):データの共有  1993(平成5)年 日本盲人福祉施設協議会の点字図書館部会(現・情報サービス部会)に位置づける。運営事務局を引き継ぐ。  1994(平成6)年 個人会員と公共図書館にネットワークを開放(個人会員158名)。年会費制(個人6,000円、公共図書館6万円、点字図書館等4万円)  【ないーぶネット】  1998(平成10)年 全視情協へ移管。「ないーぶネット」に改称  2001(平成13)年 補正予算でインターネット化。国の方針として個人会員の会費を無料にする。結果として個人会員が大幅増加(662名→1,763名)  2004(平成16)年 日本点字図書館と日本ライトハウスが共同で「びぶりおネット」を開始。音声データの配信が始まる。全視情協が「視覚障害者のための豊かな地域サービスをめざして − 視覚障害者への情報提供施設のあり方」をまとめる。  2007(平成19)年 7月、著作権法の改正により視覚障害者向けの録音データの公衆送信が可能になる。全視情協が厚生労働省「平成19年度障害者保健福祉推進事業」の採択を受け、外部のネットワーク関係の専門家、学識経験者等を交えた委員会を構成し、情報収集活動、調査活動を行った。08年3月に報告書「視覚障害者に対する新たな情報提供システムに関する研究」を作成  2009(平成21)年 平成21年度厚生労働省補正予算をうけ、日本点字図書館との協力による「視覚障害者情報総合ネットワーク」構築事業を開始(点字・音声図書、図書製作支援、地域・生活情報)  2010(平成22)年 1月、著作権法が改正され、障害者のための著作物利用についての権利制限の範囲が拡大された。具体的には、視覚による表現の認識が困難な者を対象に、障害者が必要とする幅広い方式での複製等が可能となった。  【サピエ】  2010(平成22)年 4月、視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」スタート。10月、NTTドコモの携帯電話からアクセスできる「サピエモバイル」のサービス始まる。  2011(平成23)年 3月、東日本大震災。震災後、厚生労働省の「生活支援ニュース」や「点字毎日」特別号外などの支援情報がサピエの「地域・生活情報」に継続してアップされた。9月、デイジーオンラインサービス始まる。これに対応する端末機器としてシナノケンシ社から「リンクポケット」が発売された。  2012(平成24)年 4月下旬、サーバー更新時の不具合とバックアップ体制の不備が原因でサピエ図書館の音声デイジーデータの一部が消失。5月末に復旧。  2014(平成26)年 1月、シネマ・デイジーのダウンロードサービス開始。1月、国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」が開始される。6月、「サピエ図書館」の検索ページから、国会図書館が所蔵する点字・音声データを含めて検索することが可能になった。これにより公共図書館が作成した音声デイジーデータも利用できることになった。 (奥付)   「2025年のわたしたちへ 全視情協10年ビジョン会議報告書」  発行日 2015年3月31日  編集 全視情協10年ビジョン会議  発行 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会      〒550-0002 大阪市西区江戸堀1丁目13番2号      電話 06−6441−1068      FAX 06−6441−1066      E-mail zensijokyo-jimu@naiiv.net (終わり)