「サピエ図書館」登録シネマ・デイジーデータ製作基準 2024年3月6日 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 T.はじめに 〜シネマ・デイジー誕生の歴史〜  映像を言葉で解説し補う取り組みは、一般に音声解説、副音声、音声ガイドなどと呼ばれ、1980年代にテレビ放送からはじまったと言われている。主に視覚に障害を持つ人々のために、映像のなかの登場人物の動き、表情、周囲の風景など視覚的な情報を音声で解説するもので、その後テレビのみならず、徐々に映画の上映やパッケージ版(DVD等)にも広がっていった。  点字図書館(視覚障害者情報提供施設)等では、2007年頃から音声解説だけを収録した「DVD映画音声解説CD」の製作・貸し出しを開始。これにより市販のDVDに音声解説を同期させ自宅のパソコンで映画を楽しむことが可能となった。しかしこの方式では、映画本編を別途入手する必要があったため、より簡便なサービスとして映像と解説の両方の音声を同時に提供する方法が模索されていた。  一方、2009年には著作権法の一部が改正。点字図書館等が複製できる媒体の範囲が拡大し、ガイドラインに「…映像資料のサウンドを映像の音声解説とともに録音すること等」と例示された。  この著作権法の改正とガイドラインへの例示に後押しされるように、2013年に日本ライトハウス情報文化センターと日本点字図書館とが共同で開発したのが「シネマ・デイジー」である。映画本編(サウンド)と音声解説を合わせた音源を作りデイジー編集することで、CD1枚、通常のデイジー図書と同様の簡便さで映像作品を楽しむことが可能となった。「耳で観る映画」の誕生である。  以降、現在まで製作館を増やしつつ、サピエ図書館でも人気のコンテンツとして「シネマ・デイジー」の製作と貸し出しを継続している。 U.『シネマ・デイジー』の定義  シネマ・デイジーは、映画本編のサウンドに情景や登場人物の動き等を説明した音声解説を合わせ、デイジー編集したものである。製作物は映画の他テレビ作品等も含む。  「サピエ図書館」に登録できるシネマ・デイジーデータは、次の条件をすべて満たしたものとする。 @当基準に則って製作されたものであること。 A当協会「音訳奉仕員養成講習会カリキュラム案〔入門課程〕〔基礎課程〕〔応用課程〕」または同等のカリキュラムの講習会を修了、もしくは、製作施設・団体が認めた一定の技術を習得した者が製作したものであること。 B合成音声は使用せず、肉声で読まれたものであること。 C製作施設・団体が責任をもって最終確認を行ったものであること。  なお、当基準では、「サピエ図書館」に登録されたダウンロード可能な状態になったシネマ・デイジーデータを『コンテンツ』と記す。 V.「サピエ図書館」への製作着手登録について  施設・団体で製作する作品が決まったら、サピエ図書館へ書誌登録(着手登録)を行う。  着手登録を行ったら、シネマ・デイジーデータとしての品質を担保しつつ、速やかに製作し、登録施設・団体の責任の下、必ずデータをアップする。 1.登録に関する注意事項 (1)コンテンツ登録について  利用者の求める形式で、映像作品のサウンドを音声解説と共に録音することは著作権法上認められている。但し、その作品の権利を持つ映画会社等が公式の音声解説を製作し、且つ、それがDVD等のパッケージ版に収載されている場合は、サピエ図書館にコンテンツ登録することを認めない。 ※公式の音声解説の利用を促進することで、映画・放送業界等が主体的に行う バリアフリーサービスの継続・発展に寄与するため (2)シネマ・デイジーの製作原本について  シネマ・デイジーを製作する際はDVD等のパッケージ版に入った映像資料を製作原本とする。ただし、レンタルを目的に製作・発売されたものは使用できない。また、配信のみのコンテンツ、上映のみでパッケージ化されなかった作品は原則製作できない。 2.コンテンツの重複登録の禁止  原則として、作品のタイトル、製作年、監督が同一のコンテンツは重複登録を認めない。ただし下記の場合を除く。 ・字幕版、吹き替え版の別 ・日本語吹き替えの演者が異なる場合 ・音質、画質等が異なる場合(例 デジタルリマスター版) その他、判断に迷う場合は当協会に相談する。 3.コンテンツの削除  サピエ図書館にコンテンツ登録後、映画会社等から音声解説付きDVD等が販売された場合は、速やかに登録されたコンテンツの削除を行う。 W.シネマ・デイジーデータの仕様 1.製作単位  原則として原本DVD等1作品につき1タイトル。ただし、1枚のCDに収まらないものについては、タイトルを分割して製作する。 2.デイジーデータフォーマット (1)デイジーバージョン 2.02。 (2)MP3 128kbps Stereo。 3.録音・編集設定 (1)DVD等から「主音声」を録音する際は、ステレオを選択する。 (2)音声解説や始めの枠アナウンス、シネマ・デイジー奥付等は、モノラル録音してもよい。 (3)主音声と音声解説の音量バランスに注意する。但し、原本の改変に当たるため、主音声の音量を部分的に変えることはできない。 (4)主音声と音声解説を同期する際は、ステレオを選択する。 (5)デイジー編集時の録音設定は「PCM44.1kHz Stereo」を選択する。 X シネマ・デイジーの項目と順序  1.始めの枠アナウンス  2.シネマ・デイジー凡例  3.作品情報  4.キャスト・スタッフ等  5.作品本編  6.シネマ・デイジー奥付  それぞれの項目の内容は次の通りとする。 1.始めの枠アナウンス (1)タイトル(サブタイトル・シリーズ名・巻次・回次・年次等)  ※タイトルの前に必ず「シネマ・デイジー」と入れる。  ※同じタイトルで「実写版」や「アニメ版」、あるいは「テレビドラマ版」や「デ   ィレクターズカット版」など複数の作品が存在する場合、「〇〇版」とつけて   も良い。 (2)年齢による鑑賞制限情報  年齢による鑑賞制限がある場合に入れる。  例:「年齢制限 R18  18歳以上がご覧になれます」 「年齢制限 R15  15歳以上がご覧になれます」  「年齢制限 PG12 12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の  助言・指導が必要です」 (3)作品本編の時間  製作原本の記載に準じて入れる。 (4)作品の製作年・製作国・カラー、モノクロ等の色彩情報  製作原本の記載に準じて入れる。  例:「〇〇〇〇年 日本映画 モノクロ」 「〇〇〇〇年 アメリカ映画 カラー アニメーション」 「〇〇〇〇年 日本 テレビドラマ カラー」 (5)製作施設・団体名  著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に入れる。 (6)著作権処理について 例:「このシネマ・デイジーは著作権法第37条第3項に基づいて製作していま す。又貸し、複製等による第三者への提供はできません」 「このシネマ・デイジーは著作権者の許諾を得て製作しています。又貸し、 複製等による第三者への提供はできません」 ※映画本編の主音声と音声解説の音量差が大きく、内容が聴き取りにくい部分がある場合、そのことを伝えるアナウンスを挿入しても良い。 例:「主音声と音声解説の音量差が大きく聞き取りにくい部分があるかもしれませんが、著作権法上、主音声を部分的に調整することは認められていません。ご了承ください」 2.シネマ・デイジー凡例  階層についてのアナウンスを必ず入れ、続けて、シネマ・デイジーを使用する上で必要な情報(音声解説・編集の処理等)を入れる。 例:「シネマ・デイジー凡例 このシネマ・デイジーは、映画の主音声に音声解説を付けて、レベル1でデイジー編集したものです。 本編が始まる前に、作品情報やキャストを紹介しています。 なお、映画の本編は約○分ごとに区切られていて、移動することができます。 シネマ・デイジー凡例、終わり」 3.作品情報  原則として、製作原本の記載に準じて入れる。 4.キャスト・スタッフ等  キャスト・スタッフ等とは、出演者・監督のほか原作・主題歌等も含まれる。原則として、製作原本の記載に準じて入れる。 ※上記「3.」「4.」については、製作原本のパッケージに書かれた内容が事前情報として不適切(情報量の不足・過多、呼称の不一致等)と判断した場合は、適宜表現等を変更してもよい。 5.作品本編(主音声と音声解説を同期させた音声)  はじめに、作品本編の開始を伝えるアナウンスなどを入れる。 例:「それでは、映画をお楽しみください(ブザー音)」 「それでは、作品をお楽しみください」 6.シネマ・デイジー奥付 (1)製作原本情報  製作原本の記載に準じて、タイトル・発売元・発売年月日・品番を必ず入れる。 (2)製作施設・団体名 (3)製作完了年月 例:「シネマ・デイジー奥付 このシネマ・デイジーは、次のDVDを基に製作しました。 タイトル ○○ 発売元 ○○ 発売年月日 ○○○○年○月○日 品番 ○○ 製作 ○○ 製作完了 ○○○○年○月 以上で「○○」を終わります」 Z.シネマ・デイジー編集の規則  1.階層(レベル) (1)以下の項目は、独立した1セクションとし、その階層はレベル1とする。  なお、見出し入力については【 】内の文字のみ入力する。 〔レベル1に設定する項目(セクション)〕 ・始めの枠アナウンス【シネマ・デイジー[全角スペース]タイトル】 ・シネマ・デイジー凡例【シネマ・デイジー凡例】 ・作品情報、キャスト・スタッフ等、作品本編など。 ・シネマ・デイジー奥付【シネマ・デイジー奥付】 (2)作品本編は、区切りのよいところ(時間、時系列や場面転換など)でセクション分けを行う。 2.見出し入力 (1)原則として作品の内容に準じて入力する。  ただし15分ごとなど時間でセクションを分けた場合は、「1」、「2」などの項番を付ける。 (2)特殊記号(☆、△、†、‡など)  装飾的な使い方をしているものについては省略してもよい。 (3)表示できない文字  機種依存文字や、パソコンで表示できない文字については仮名(カタカナなど)で入力してもよい。また、英語以外の言語で書かれている場合は、表示できる範囲でアルファベットに置き換えてもよい。 3.フレーズ  「シネマ・デイジー タイトル(サブタイトル・シリーズ名・巻次・回次・年次等)」(第1セクション先頭フレーズ)は、1フレーズ化する。ただし、デイジー図書としての利便性が損なわれる場合は、適宜フレーズを分けてもよい。 4.マーク・コメント  マーク・コメント情報は、製作上の便宜のために特定のフレーズに付けるものであり、作成されたシネマ・デイジーには反映されない。編集が完了した段階で、マーク及びコメントは削除しておく。 5.シネマ・デイジーデータの書誌情報  書誌情報は下記のPRS−Proの項目を参考に、各編集ソフトウェアの入力規則に準拠して入力する。なお、入力には機種依存文字等を使用しないよう注意する(デイジー再生機器・ソフトウェアによっては書誌情報内に機種依存文字等が使われていると読み込まない場合があるため)。 (1)タイトル……シネマ・デイジー[全角スペース]タイトル(サブタイトル・シリーズ名・巻次・回次・年次等) (2)著者……監督、脚本、原作等の氏名 (3)原本発行者……製作原本の発売元 (4)原本発行年月日……製作原本の発売された年月日を半角で入力 (5)ISBN……(入力の必要なし) (6)識別名……デイジーデータのID(蔵書番号等)を入力 ※PRS−Proでは未入力の場合、自動的に日時情報が入力される (7)言語……日本語(使用言語。デフォルトでは日本語) (8)文字コードセット…… [Shift_JIS](デフォルトは[Shift_JIS]) (9)DAISY発行者……シネマ・デイジーの製作施設・団体名 (著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に入力) (10)DAISY発行年月日……デイジーデータの完成日等を半角で入力 [.シネマ・デイジーデータの校正について  サピエ図書館に登録できるシネマ・デイジーデータは、音声解説(台本・ナレーション)、およびデイジー編集の校正を、各「1校」以上行ったものであることとする。必須ポイントを以下に記す。 1.音声解説(台本)の校正 ・ 用語は適切か ・ 聴いてわかりやすい表現になっているか ・ 解説内容に過不足はないか 2.音声解説(ナレーション)の校正  (基本的な方法は全視情協発行『音訳ボランティア養成講習会テキスト−基礎課程編−』を参照) ・ 音量、音質は適切か ・ 誤読が無いか ・ 明瞭な発声、発音か ・ アクセントは適切か ・ 作品に沿った抑揚、スピード、間の取り方で読めているか ・ 主音声と音声解説の音量バランスは適切か 3.デイジー編集の校正 ・「W.シネマ・デイジーデータの仕様」に則り、製作されているか。 ・「Z.シネマ・デイジー編集の規則」に則り、利便性に優れた図書として編集されているか。 4.「サピエ図書館」へのコンテンツ登録前の最終点検  サピエ図書館にコンテンツ登録する前に、必ず、施設・団体の担当者が責任をもって最終点検を行う。  なお、登録されたデイジーコンテンツが製作基準に準拠していないなど、データに誤りや不具合が見つかった場合は、速やかにコンテンツを修正のうえ、再登録を行う。 以上