視覚障害者が必要とする情報をいかに届けるか〜点字文化の価値を改めて考える〜 日時:2022年10月13日(木)9:30〜12:00 会場:玉水記念会館(ZOOMハイブリッド) 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会点訳委員会・サービス委員会 目次 はじめに 1ページ 1 主旨説明 -点字離れを嘆く前に、自分ごととして見つめ直す場に- 2ページ 2 名古屋点訳ネットワークについて 3ページ 2−1.点字と私 -学生時代・ボランティア活動・漢点字- 3ページ 2−2.点訳ボランティアグループ「大樹会」 -月刊誌・歌詞点訳- 4ページ 2−3.名古屋点訳ネットワーク -様々な点訳データベース、交流会・勉強会、AI点訳- 4ページ 3 点字を生きた文字として継承していくために 7ページ 3−1.インクルーシブ教育における点字 -視覚障害者の文字からユニバーサルな文字へ- 7ページ 3−2.インクルーシブ教育の点字教科書製作と教育現場からの声 8ページ 3−3.児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』 -情報との能動的な関わり- 9ページ 3−4.現状と課題 -自身の文字として点字を習得する環境・機器類や専門性を持つ人財- 10ページ 4 点字力の向上は読書から−言葉を育てる現場から 11ページ 4−1.福島県の点字使用生徒と点字資料環境 12ページ 4−2.発達段階や興味関心に応じた読み物・点字資料 12ページ 4−3.点字図書館で自ら借りられるようになるまで -意欲を実行へ繋げる工夫- 13ページ 4−4.点字力向上のために -遊びから学びへ- 14ページ 4−5.良い読み物とは -学校生活での実践- 15ページ 4−6.点字図書館員へ望むこと -視覚障がい理解・専門性・姿勢- 16ページ 5 点字とともに 点字となかよし〜京都ライトハウス鳥居寮における点字訓練の取組み〜 16ページ 5−1.鳥居寮の点字訓練者数と習得状況 17ページ 5−2.基本訓練 -読みの3ステップから書き、点字ディスプレイの活用まで- 17ページ  ◆基本訓練の流れ  ◆形で覚えて書きへ移行 17ページ 5−3.オーダーメイドのテキスト -利用者作のオリジナルから図書館製作物まで- 18ページ  ◆興味関心に沿ったオーダーメイドテキスト  ◆利用者作のオリジナルテキスト  ◆図書館の製作物を活用 5−4.点字学習のモチベーション -点字サイン・メンタルケア・ボランティア・読書- 19ページ  ◆点字学習のニーズさまざま  ◆読みたい!の気持ち  ◆点字やっておけば良かった 5−5.訓練後の学習継続サポート -具体例と主体的な活動- 20ページ  ◆訓練修了後のサポート  ◆主体的な活動 5−6.課題 -ニーズに適切に対応する環境づくり、職員の姿勢・スキル・連携- 20ページ  ◆訓練後に継続できる場所づくり  ◆興味・要望を適切に繋げる 5−7.訓練利用者からの生の声 -ニーズ・自分の文字を再獲得するということ- 21ページ  ◆点字のハードル -ちょっとやってみようかな-  ◆訓練利用者の生の声 6 アンケート報告「点字図書・点字資料利用拡大のための工夫について」 22ページ 7 貸出現場からの取組み発表 24ページ 7−1.大阪府立中央図書館の取組み(公共図書館の取組み)-音訳・点訳・相互貸借、立体コピー機や点図ディスプレイの活用- 24ページ 7−2.静岡県視覚障害者情報支援センターの取組み(点字図書館の取組み)-貸出・プライベート点訳の工夫- 25ページ 8 質疑応答 26ページ 8−1.インクルーシブ教育の点字教科書製作についての質問 27ページ  ◆生徒数  ◆タイトル数  ◆ボランティア団体数  ◆需要と供給のバランス  ◆実働人数  ◆テスト製作依頼  ◆製作期間  ◆製作費  ◆副読本の製作方法 8−2.雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』の配布対象者 28ページ 8−3.リハビリ施設、点字図書館等の連携 29ページ 8−4.視覚特別支援学校からサピエの点字図書・資料への要望 29ページ 8−5.アンケート結果の共有 31ページ 9 まとめ 31ページ 9−1.ボランティアグループと点字図書館の連携-点訳の質を担保する触読校正・機器整備- 31ページ 9−2.次世代へ継承すべき点字、教科書点訳へご参加を! 32ページ 9−3.教育現場で活用される様々な点字資料と製作グループ 33ページ 9−4.リハビリテーション訓練修了後も点字を通して繋がるということ 33ページ 9−5.点字の繋がり -読む楽しみから点字による発信力強化へ- 34ページ あとがき 35ページ 【参照】 36ページ <1ページ> はじめに  この報告書は、2022年10月に開催された「全国視覚障害者情報提供施設大会」における「全体会2 視覚障害者が必要とする情報をいかに届けるか〜点字文化の価値を改めて考える〜」の内容をまとめたものです。  本会では、点字や点字文化について、ボランティアグループ、点字図書館(視覚障害者情報提供施設)、盲学校(視覚特別支援学校)、視覚リハビリテーション施設の4つの立場から、様々な点字資料の相互利用・データベース化、点字教科書製作現場の実情・児童雑誌製作における考察、児童・生徒の文字獲得の歩みと学習環境、中途視覚障害者の点字習得(自分の文字の再獲得)の道程・リハ的効果などについて、具体的な事例も含めた発表が行われました。  また、点字資料を広く活用するための貸出の工夫についての事前アンケートを行い、その結果報告と、公共図書館・点字図書館で実際に行われている利用者サービスの発表も行われました。  本会の参加者は、会場・オンライン合わせて225名。会の性質上、また、会のタイトルからか、点字図書館の点字製作担当者が参加者の多くを占めました。しかし内容は、教育・リハビリテーション・ボランティア、公共図書館での取組みと多岐にわたり、また相互に関連・連携していることの発表も見られました。  点字資料の充実、積極的な活用、技術の継承などにおいて、各方面での連携が重要であることは言うまでもなく、本会の発表を点字図書館関係者だけでなく、広く視覚障害に関係する人々、さらには、視覚障害とは関係ないと今は考えている人々にも、参考・活用いただきたいという趣旨で、全国視覚障害者情報提供施設協会(以下、全視情協)・点訳委員会より本報告書を発行するものです。  点字使用者の減少、ボランティアの高齢化など、決して明るくないと思われている点字の未来について、今私たちが個別に、そして連携してすべきこと、出来ることは何か。立場の異なる登壇者から口々に寄せられた「せっかく点字や点字図書館へ興味を持ってくれた利用者をがっかりさせることのないように、専門性を身につけ、個々のニーズに的確に対応して欲しい」という発言に真摯に向き合い、自らのサービスの基盤を整備し、さらに向上させるべき時に来ているのではないでしょうか。  本会での発表が、点字使用者・支援者の皆さまの一助となり、百年後、二百年後へ向けて点字文化の継承・発展に繋がれば幸いです。  ※本報告書作成にあたり、当日の発言・表現は各登壇者の承諾を得て修正しています。 <2ページ> 1 主旨説明 -点字離れを嘆く前に、自分ごととして見つめ直す場に- 野々村:  「視覚障害者が必要とする情報をいかに届けるか〜点字文化の価値を改めて考える〜」の進行を務めさせていただきます、京都ライトハウス情報ステーションの野々村好三と申します。全視情協では点訳委員会の委員長を仰せつかっております。  まず最初に、この会の趣旨説明と進め方について、簡単にご紹介いたします。  皆さんご存知の通り、今年は『点字毎日』創刊100年という節目の年を迎えました。視覚障害者が得られる情報が極めて乏しい大正時代から今日に至るまで、週刊により点字で新聞が発行されている意義については、私が改めて申すまでもございません。視覚障害者の文化の発展における大きな1ページ、それが『点字毎日』の創刊。そこから100年経った今日では、音声、テキストデータ、あるいはインターネット等々を視覚障害者が使えるようになり、選択肢の幅が広がってまいりました。  他方、ボランティアの高齢化、講習会の受講者の減少、そして技術の継承・ノウハウの蓄積等が難しいという状況も見られます。また、視覚障害者が様々な分野に参加する中でニーズが多様化していますが、その多様化するニーズにプライベートサービスが追いつけていないというのも実情です。そうした中、点字離れという言葉も耳にします。  しかし、視覚障害者が本当に点字から離れているのでしょうか。点字離れを嘆く前に、まず私たち自身が点字文化の価値を認識出来ているのか、問い直す時期ではないでしょうか。私たちがどんな取組みをしているのか、何が出来るのかについて、私たち自身が自分ごととして見つめ直す、そういう場にしていければと思っております。  本日は4名の方をお迎えしております。皆様から向かいまして右手から名古屋点訳ネットワークの平瀬徹様、日本ライトハウス情報文化センターの奥野真里様、福島県立視覚支援学校の渡邊寛子様、京都ライトハウス障害者支援施設・鳥居寮の石川佳子様です。  会の進め方として、前半4名の方にお話いただきます。まずは点字のデータや資料の提供をする立場のお二人に、何を大切にしていらっしゃるのかお話を伺います。平瀬さんと奥野さんです。続いて点字を学ぼう、あるいは点字には興味はないけどなあ、という人たちの気持ちにどう働きかけ、点字への関心を育み、私の文字としての実感に結びつけるにはどんなふうにされているのか、教育や支援の現場からお話を伺います。渡邊さんと石川さんです。  後半は4人の方に改めてお話を伺うとともに、貸出の現場での苦悩や工夫に迫ります。会場の皆さんにも、後ほど発言の機会を設けられればと思っております。オンラインの皆さんにつきましては、基本的にはチャットでご意見、あるいは発言者の方への質問や感想等をお寄せいただき、チャットが難しい方につきましては、メールで全視情協事務局宛にお送りくださいますよう、よろしくお願いします。後半のディスカッションの参考とさせていただきます。  それでは早速、4名の方にお話をしていただきたいと思います。 <3ページ> 2 名古屋点訳ネットワークについて  まず最初は、名古屋点訳ネットワークの平瀬様です。よろしくお願いします。 平瀬:  今日はお招きいただきありがとうございます。野々村さんとの出会いは、6月19日に名古屋点訳ネットワーク主催で「AIで変えていく点訳の未来」という勉強会をしました。その時に参加してくださっていて、それでお声がかかったものと思います。 2−1.点字と私 -学生時代・ボランティア活動・漢点字-  まず、名古屋点訳ネットワークの説明をする前に、私が点字を大好きになったきっかけからお話しさせて頂こうと思います。  盲学校の小学校5年生の時に、夏休みの宿題で本一冊分の転写をしてこいというのがありました。それで結局半分ぐらい、70ページぐらいしか出来なかったかな?でも、他の人たちは数ページしか出来なかった人も多かったのですけど。この先生、大変点字に熱心で、1日図書室で過ごさせてくださった日がありました。それで、『アルプスの少女ハイジ』全4巻を1日で読んでしまいました。  中学生の時に校内文集の亜鉛板製版を、先輩から教わりました。その時に、「点字表記法をきちんと読みなさい」と言われまして、買って読みました。それで、点字のマスあけに興味を持ちました。中学3年の時、『点字毎日』を購読し始めました。隣の中学校に1日入学というのが毎年ありまして、その時のことを投書して読者の広場に掲載されたのが、私の『点字毎日』の初めての記事です。  1980年の冬に、『点字毎日』に「ポール・モーリアのピアノ楽譜を名古屋の点訳サークルが亜鉛版製版して個人に販売し始めた」という記事が掲載されました。それで早速注文しました。これは名古屋市鶴舞中央図書館にあった「六つ星会」という結構歴史が古い点訳サークルです。注文した楽譜と一緒に「手打ちの点訳書は非常に貴重だから、転写してくださる視覚障害者のボランティアを募集します」というお便りが入っていました。  それで早速連絡したところ、「地元に住んでいるなら一緒に活動しませんか」と言われました。将棋の雑誌『こまおと』の発行、近代将棋社の将棋検定の問題の校正や読者からの解答の墨訳をして、段位取得のお手伝いをさせていただくようになりました。また『NHKみんなのうた』の転写の手伝いもしました。  このサークルは漢点訳にも取り組んでいて、当初は晴眼者も漢点字を通信教育で勉強しなさいということでしたが、それは大変だということで、漢点字創案者の川上泰一先生宅に押しかけて、全部一覧表を写させてもらって晴眼者向けの手引書を作ってしまいました。また、両面書きが出来る漢点字盤も作ってしまったという非常に熱心なサークルだったので、私も漢点字もボランティアの人に教えてもらいながら勉強しました。 <4ページ>  漢点字ばかりヨイショしてもいけないのですけど、実は六点漢字も勉強しました。アビリンピックに出た時に、職能センターの二人の人に負けまして悔しい思いをしました。また、「漢点字のことを良く言うのだったら、六点漢字も勉強したほうがいい」と、当時まだ東京でボランティアをされていて、後に名古屋盲人情報文化センターの所長もされた故・浦口さんから言われました。  六点漢字には一覧表はあっても、『漢点字解説』のように文章を読みながらだんだん漢字が増えていくという学習書がなく、現・霊友会法友文庫点字図書館の岩上さんに一生懸命質問しました。岩上さんから「あなたの質問にいちいち答えていたら、良い学習書が出来ますね」と言われてしまいました。その後も解説書は出来ていないようなので、機会があったら私も作ってもいいかなと思っているのですけど、なかなか時間がありません。 2−2.点訳ボランティアグループ「大樹会」 -月刊誌・歌詞点訳- 【スライド:大樹会HP(※1)】  これは「大樹会」のホームページです。1981年に、「六つ星会」から分かれて「大樹会」が設立されました。名古屋市鶴舞中央図書館の立て替えで、仮の建物に製版機を置く場所がないということになって、手打ちのグループと分かれて活動するようになりました。  その後、札幌ライトハウスの岩元式簡易印刷機も使ったりもしたのですけど、だんだんパソコン点訳に移行しました。パソコンそのものの勉強もボランティアの人達と一緒にして、私は視覚障害者のパソコン講習会には通ったことがありません。 【スライド:大樹会サークル概要】  「大樹会」では月間ミニコミ誌の『ハロー』というのを作っていて、2022年10月現在436号です。カナ点字と漢点字の両方を作っています。盲聾者の方も読者にいらっしゃいます。新聞や雑誌からの話題性がある記事をということで、カナ点字でだいたい今70ページから80ページぐらいです。  あとは、リクエスト歌詞点訳をやっています。1,000円で年間50曲まで歌詞を点訳しています。最初のきっかけは、筑波大学の中に「てんつく」という点訳サークルがあり、沢山カラオケの歌詞を点訳していました。J-POPが中心でしたが、学生さんが卒業してしまって、引き継いでということになります。  「大樹会」は社会人の会員がほとんどなので、一人年1冊、本を点訳するというのが目標です。あまり沢山はできないので、記事を分担して点訳・校正したり、歌詞点訳をしています。 2−3.名古屋点訳ネットワーク -様々な点訳データベース、交流会・勉強会、AI点訳- 【スライド:名古屋点訳ネットワークの紹介文】  名古屋点訳ネットワークの発起人の一人である中島正二さんは、跳び箱から落ちて、頸椎を損傷、車椅子生活ですが、腕と指は動くので、パソコンは堪能な方です。<5ページ>重複点訳を避けて有効活用したいというのと、点字図書館以外で活動しているボランティアと読者の繋がりを作りたいという中島さんの思いから、1998年に設立されました。  名古屋市社会福祉協議会の助成金を受けて運営していますが、参加は全国の点訳サークル、個人もOKです。まだデータベースが出来る前ですけど、『ハリー・ポッター』を発売から3週間で点訳してしまったというサークルもあったりします。あと特徴的なところは、「点訳ポチの会」は将棋の観戦記をずっと点訳しています。皆さんもご存知の、有名な点字技能師さんがいらっしゃるサークルです。 【スライド:名古屋点訳ネットワークHP(※2)(以下、HP)】  これは、名古屋点訳ネットワークのトップページです。2009年にデータベースを完成しました。リクエスト歌詞点訳とか、「てんつく」のものをデータベース化しようと、「大樹会」で業者にデータベースを見積依頼したところ100万円ぐらいかかると言われましたが、中島さんは一人で作ってしまいました。現在、サーバーのOSのアップデートでプログラミングをし直し中ということで、ちょっと検索が上手くいってないのですけども、また業者に依頼したら大変なことになっていたなあということで、中島さんには感謝してもしきれないです。 【スライド:HPのデータ検索ページ】  東海三県が中心ですけども、現在北海道から広島までデータ登録があります。皆さんも是非、登録していただきたいと思います。 【スライド:HPへの登録タイトル数】  2022年10月9日現在、小説が660、エッセイが160、児童書が527、ノンフィクションが141、その他が170、新聞・雑誌などの記事が3,515、カラオケの歌詞が3,354ということで、歌詞が沢山ありますね。  最近また漢点字の登録が増えていっており52タイトル、漢点字だけであります。愛知県内に漢点字の点訳をやっているグループが二つと、あと三重県にも一つあるということで、漢点字もこれからまた充実していくんじゃないかなと思います。  それから、サピエにも漢点字登録出来るようになりましたね。「大樹会」で作った『ボランティアのための漢点字入門』(※3)も、サピエ研修会(サピエ図書館加盟施設向けの研修会)で紹介していただきましてありがとうございます。  視覚障害者の場合はメールアドレスを登録しておくと、着手情報がリアルタイムに届くようになっています。ボランティアさんの場合は、個人でも団体でも、登録されるたびにメールが配信されて、ダウンロード回数がその都度届くようになっていて、これが皆さんの励みにもなっているのだなと思います。 【スライド:検索結果画面3枚】  書籍、取扱説明書、児童書などの検索結果です。  新聞からの抜粋、月刊誌・週刊誌からの抜粋です。  カラオケ等の歌詞の検索結果です。 <6ページ> 【スライド:ルーブル彫刻美術館の写真3枚】  これは、三重県の榊原温泉の近くにある「ルーブル彫刻美術館」というところの写真です。  名古屋点訳ネットワークでは、点訳のノウハウの勉強会として今日も参加しておられる加藤俊和先生ですとか、教科書点訳については坂井仁美先生、あとエーデルの勉強会を藤野稔寛先生にお願いしました。図や絵、写真などの説明のノウハウを勉強するということで、シーンボイスガイドのグループに来ていただいて、勉強会をしたこともあります。  それから「安城産業文化公園デンパーク」というところで、持ち出しの総会をやりながら、花に触れたり、パン作り体験をしたり、地ビールの試飲をしたりということをやったことがあります。愛知県には「かわら美術館」というのがありまして、三河地方というのは名古屋市内から遠いので、そちらの方のサークルとの交流会ということで瓦に実際に触れられたりとか、鬼道という鬼瓦の道を散策したりということがあります。あと「岐阜県美術館」、これも触れるものが沢山あります。「国立民族学博物館」にも福祉バスを使って行ったことがあります。  「ルーブル彫刻美術館」というのが、すべての作品に触れられて写真撮影もOK。実際にフランスの「ルーブル美術館」に行って型を取ったので全部本物だというのですけど、どうなんでしょうね! 本物の「ルーブル美術館」にも、「ルイ・ブライユ博物館」と一緒に行ったことがありますが、これは触れるレプリカがあるだけで実際に触れるものはなかった! 作品には直接は触れなかったのですけど。ということで、ルーブル彫刻美術館の作品は怪しいなと思いつつ、良い所なので皆さんも行ってください。大きい作品は、ポーズを真似するということも出来ますね。  あと、名古屋点訳ネットワークだからこそ出来ていることですね。サピエに所属していないサークルの重複点訳を避けるということ。地元に密着したニーズに応える、愛知県にも知多新四国八十八ヶ所というのがあり、そこのお経の本や資料を点訳したグループもあります。また、一つのサークルでは応えられない資料の分担点訳をしたり、最近はテキスト入力の依頼もあります。  問題点としてはボランティアの高齢化です。あと、教科書点訳をやっているボランティアが結構多いので教科書点訳と重なって忙しくてネットワークの役員のなり手がないということです。同じ役員で催しを企画するためマンネリ化しているんじゃないかと私は心配しています。  今後への期待は、点字図書館、全視情協との勉強会や交流会の共催が出来るといいなと。加藤先生なんか安く来ていただいていますが、助成金を受けているとはいっても、遠くからの交通費は捻出できません。あと、全国の点字図書館だけじゃなくて、地域のボランティアネットワークで、点訳データを共有したり相互検索出来るといいなと思います。催しは、名古屋点訳ネットワークに関しては、平日は所属サークルの活動が忙しくて日曜日にしてほしいという声が多いです。  あとは、AIの迅速かつ正確な点訳ということがあると良いのじゃないかなと思います。各種催しのプログラム、鍼灸マッサージの講座のレジュメ、スーパーのチラシなんかも早く点訳して提供できるといいと思います。 <7ページ>  AIの話を最初にしましたが、「:::doc(てんどっく)」という東京工業高等専門学校の生徒さんが作ったシステムがありまして、これが「第1回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト」の最優秀になりました。それで「TAKAO AI」(※4)という会社が起業されました。絵や写真の説明、表のレイアウトなど、点訳上の必要な配慮というものをAIに学習させることによって、点訳や校正の流れの中で労力を減らすことが出来ます。そのためには、原本と正確な点訳データの提供が求められますので、今日参加されている全視情協の方々にも協力していただいて、より良い点訳、迅速な点訳が出来るようになるといいなと思っています。 野々村:  平瀬様、ありがとうございました。ご自身の体験、そしてサピエ以外でのデータ構築をされていますけれども、サピエに入っていないボランティアグループ等の総合的なデータベースにしていけないだろうかというご提案、そしてAIを活用した自動点訳もうまく取り入れながら進めていけないだろうかというご提案等いただきました。 3 点字を生きた文字として継承していくために  続きまして、日本ライトハウス情報文化センターの奥野様、よろしくお願いします。 奥野:  日本ライトハウス情報文化センターの奥野と申します。  私は日頃、触読者として図書製作の他に、インクルーシブ教育で学ぶ視覚障害児童・生徒のための教科書点訳にも関わっています。また、当館が発行している児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』の編集を担当しています。そのような製作の立場から今日はお話をさせていただきます。 3−1.インクルーシブ教育における点字 -視覚障害者の文字からユニバーサルな文字へ-  まず、教科書点訳についてお話します。  現在日本では、視覚障害児童・生徒が教育を受ける際、盲学校教育と、インクルーシブ教育の二つの選択肢があります。  盲学校教育は、視覚障害のある児童生徒が盲学校(視覚特別支援学校)で共に学ぶことで、日本では130年余の歴史があります。一方、インクルーシブ教育は目の見える生徒と目の見えない・見えにくい生徒が共に同じ場所で学ぶ教育方法で、日本では40数年ほど前から始まったとされており、特にこの20年ぐらいで急速に広がってきています。  インクルーシブ教育の場合、日ごろ同じ視覚障害の児童生徒が身近にいないというのはもちろんですが、教員も視覚障害児童生徒を受け入れるのが初めてのことが多く、どのように対応すればいいのかわからず、特に点字で学ぶお子さんが孤立感を持ってしまうケースもあるようです。<8ページ>一方、点字を周りの友達や先生とのコミュニケーションツールとしてうまく取り入れ、点字を通じて積極的に人間関係を作っているお子さんもいらっしゃいます。  最近ではインクルーシブ教育を希望するお子さんや保護者の方が多くなってきています。そうした状況も相まって、以前は点字は視覚障害者やその関係者の間でしか使用されていなかったのが、今は視覚障害者と晴眼者が垣根を超えて点字を共通文字として使用していると言えると思います。  では、実際に点字を学ぶ、習得出来る場について考えてみたいと思います。  点訳ボランティアさんに関しては点字図書館や地域のグループ、社会福祉協議会が運営する点字サークルなどが主催する講習会や学習会で学ばれることが考えられます。  利用者については、大きく三つの方法が考えられ、一つは盲学校で手ほどきを受けるという方法があります。二つ目に、点字図書館が開催する点字学習教室で学ぶ方法。特にこの点字図書館で学ぶ方法というのは、どちらかというと、中途視覚障害者の方が多く学んでおられるかと思います。そして三つ目に、同じ当事者の先輩から直々に学ぶ方法です。例えば、地域の学校でインクルーシブ教育を受けていたお子さんが大学生になり、また新たに後輩として入ってきたインクルーシブ教育のお子さんに教えるといったケースもあります。このうち、学齢期のお子さんが学ぶ場としては、盲学校や、先輩から直々に学んでいくケースが多いと思います。学校での点字学習については後ほど発表される渡邊さんに託したいと思います。 3−2.インクルーシブ教育の点字教科書製作と教育現場からの声  次に点字教科書の供給についてお話をさせていただきます。  インクルーシブ教育で使用される教科書は、各市区町村の教育委員会、もしくは学校から依頼が入ります。そして依頼を受けると、担当のボランティアさんに点訳をお願いしていきます。各教科書の点訳担当者が決まったら、打ち合わせをし製作を進めていきます。ではスライドをご覧ください。 【写真:校正風景1】  こちらは、データ入力し終わったものを点字で印刷してそれを触読している様子です。 【写真:校正風景2】  これは読み合わせ校正といって、晴眼のボランティアの方と触読者とが声を出して読み上げながら、点字や触図のチェックをしていきます。教科書は点図の作成も多く、一枚ずつ丹念に検討していきます。また教科書製作では、納期がしっかり決められています。例えば、4月から始まる新学期に間に合うように届けなくてはいけないというスケジュールの管理や、学齢期のお子さんに間違った言葉を伝えないよう点訳・校正に注力するなど、作業では常に緊張感が走っていると思います。 <9ページ> 【写真:図の打ち出し】  仕上がったデータを点字プリンターで打ち出します。現在は数種類のピンを使って表わすことのできる点字プリンターが、ジェイ・ティー・アール社製の「ESA721」のみですので、こちらを使用しています。 【写真:地理の教科書1】  完成した地理の教科書の写真です。中学の地理で、こちらは全25巻になりました。地理といえばやはり地図もありますし、グラフや表もふんだんに掲載されていますので、手間と時間を要しますが、それだけに達成感も大きいと感じています。 【写真:地理の教科書2〜4】  最終巻の25巻です。  地図の中から、今日は大阪を拠点にこの大会が開催されているため近畿地方を選びました。  同じく近畿地方のアップの地図です。 【写真:教科書勉強会1〜2】  こちらは数学の勉強会の様子です。数学も図が多い科目の一つです。ただ他の科目に比べるとパターンがあり、比較的点訳に取組みやすい科目かもしれません。そうは言っても、最近は数学の中で歴史的要素を取り入れたり、理科的な問題も含まれていたりして複雑で苦戦することもあります。定期的に勉強会や打ち合わせをしながら進めています。  こうして入力、校正を経て完成した教科書は、納期に間に合うように学校に納入されていきます。納入された後、現場から寄せられる声もありますので、ご紹介します。  例えば中学以上になりますと英語の縮約が出てきますが、「どのように学習したら良いか」と、学校や教育委員会から尋ねられることもあります。また、とにかく地図が教科書以外の教材資料で使用されるのですが、「大阪府内のある地域の地図を作るにはどうしたらよいですか」といった問い合わせもあります。このほか、「中間テストなどの定期試験を作るにはどうしたらいいですか」、「点字教科書の内容を教員も知りたいのですが、どうすればよいでしょうか」といったお問い合わせもいただいています。  そのようなお問い合わせについては、各学校での学習環境などをうかがいながら、その都度お答えしています。 3−3.児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』 -情報との能動的な関わり-  今度はちょっと目線を変えて、児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』を通して感じる子供からの反応についてお話したいと思います。  現在、インターネットからの情報を沢山得られるようになりましたが、児童生徒は点字の情報を本当に待ちわびてくれていると痛感しています。  おそらく家庭でもインターネットやSNSに関する情報で溢れていると思うのです。 <10ページ>  日常生活で、SNSやインターネット、テレビなどから受動的に情報を得ることは出来ても、点字を使って能動的に情報を検索・収集したり、自分の意見を組み立てたり、自分の考えを誰かに発信したりすることも重要です。そうした時に自身の使用文字である点字で文章を整理したりまとめたりする力が必要になると思うのですね。  この『アミ・ドゥ・ブライユ』では、点字で楽しく本を読んでもらいたい、点字と仲良くなって自分の文字として活用してもらいたいという願いを込めて、2015年10月に第1号を創刊しました。 【写真:『アミ・ドゥ・ブライユ』】  こちらが『アミ・ドゥ・ブライユ』の表紙です。2022年10月で43号を迎えます。 【写真:『アミ・ドゥ・ブライユ』原本】  本誌の内容ですが、一般に出版されている『小学8年生』、『月刊Newsがわかる』、『子供の科学』といった雑誌からの抜粋記事や、こちらが作ったオリジナルコーナーを掲載しています。大きく分けて二つの構成になっており、こちらは、その抜粋している雑誌の表紙です。 【写真:『アミ・ドゥ・ブライユ』 VOL.43の内容】  こちらが最新号の目次です。オリジナルコーナーでは、「アミ川柳」といって、毎回テーマを決めて川柳を投句してもらっています。前回のテーマは「におい」と「ころころ」でした。それから、楽しかったことや最近感じていることを自由につぶやいてもらう「ラッキーつぶつぶ」や、解答を送ってもらう双方向型クイズコーナー「脳トレクイズ」もあります。毎回100ページにまとめて発行しています。  お子さんは吸収が早くて、雑誌の書き方を真似て送ってくれたりします。手紙の中で枠線や小見出し符を使っていたりするのを見ると、ほほえましい気持ちになります。同時に、正しく読みやすい点訳をしないといけないという気持ちになり、襟を正す思いにもさせられます。  読者からの反応は、とてもストレートですし、時にはシビアでもあります。内容が楽しいとリアクションが返ってきますし、つまらなかったら何もありません。毎回ドキドキしながら待っているという状態です。 3−4.現状と課題 -自身の文字として点字を習得する環境・機器類や専門性を持つ人財-  最後に、現状と課題について考えてみたいと思います。  まず、児童生徒の身近に点字の表記が分かる専門員がいないことです。盲学校の教員や点字図書館の点字担当者が短期間で異動してしまい、点字を学習したくても指導できる人がいません。  二つ目は、点字プリンターやピンディスプレイなどのデバイスのさらなる開発、機器類の維持も必要だと思います。最近、機器類が販売終了になるという話をよく耳にしますので、継続的に環境を整えられるようにしておくことも、これからの課題かと思います。 <11ページ>  最後ですね、インクルーシブ教育において点字がとても大事なんですが、先ほども言いましたように、インクルーシブ教育を選択するお子さんが年々増加しているのに、点訳するボランティアさんが高齢化してきていたり、新たに加わる方が少なくなっていて、活動人数が減少しているという危機的状況になっています。様々な改善策がそれぞれ取られると思いますが、そうした逼迫感が増してきています。  特に教科書については、なんとなく難しそうだし敬遠されがちですが、教科書はほんとうになくてはならないものです。同時に、教科書だけでは教育が成り立たないというところもあり、参考書や問題集といった副読本の製作や、試験なども整って、初めて学習環境が整備されると思います。ぜひこういった教材資料の点訳に関わってみたいなと手を上げてくださるボランティアの方、点字図書館の方がもっと増えることを期待しています。  「全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会」という団体がありまして、こちらでは点訳者向けの研修会を行なったりしていますので、もし詳しい活動について関心を持ってくださる方がおられましたら、お問い合わせください。インターネットで教科書点訳連絡会(※5)と検索していただければ、ホームページがヒットしますので是非よろしくお願いします。  まだまだ課題も山積していますが、大人の私たちがここで点字を絶やすことのないように、将来点字を読む人がいなくなって、「もう点字なくなっちゃったよね」ということがないように、今一度しっかり点字の意義を見つめ直していきたいと思っています。 野々村:  奥野さん、ありがとうございました。点字資料を製作するという立場で学校の先生のリクエストに応えたり、あるいは子供さんの反応を見ながらということで、読者の方とのコミュニケーションを大切にしながら製作をされている様子、伝わってまいりましたし、また、教材製作に関わる方の活動人数が減少している中で、新たに教材作り等に関わっていただけるボランティアの方や点字図書館等、増えていって欲しいという思いもお伺いしました。 4 点字力の向上は読書から -言葉を育てる現場から-  続きまして福島県立視覚支援学校の渡邊様、よろしくお願いします。 渡邊:  はい、渡邊です。  私としては、中途失明の立場で、点字を使って国語の教員をしているという立場で、そして図書主任を長く務めていて現場のニーズをボランティアさん達に繋いでいるという立場で、どんなふうに子供達を育てているか、点字力をアップさせているかということを、お伝え出来たらなと思います。資料を作った時から1ヶ月以上経過して、色々なことが学校行事でもありましたし、日々成長している子供たちの様子を、ただ喋るだけでお伝えさせていただきたいと思います。 <12ページ> 4−1.福島県の点字使用生徒と点字資料環境  結論から言いますと、福島県は恵まれております。点字図書館があり、さらに小さな地域の点訳サークルがあり、そして「にじの会」があり、使い分けさせていただいていると言っては何ですが、借りるものは点字図書館、手元に置く急ぎのものは「にじの会」。そしてインクルーシブしていた人達は地域のボランティアさん達にお世話になりながら、「にじの会」のフォローを受けながら、そして盲学校へ帰ってきていると。  今、県内に点字使用者はインクルーシブいないのです。全員盲学校にいるという状態で。私の場合は、5歳の子が地域の小学校に上がる前に点字を教えてくださいといって教えた子が、今、私、高校3年生の点字の子の担任をしております。その子が小5で戻ってきて、中3から私が国語を担任して、高等部で3年間担任をしているという、そのような状況で、長い目で子供たちが育っていく様子、点字使用者が育っていく様子はやっぱりすごいご縁を感じますし、大勢の人達に支えられて学びが継続していると、そんなところをお伝え出来たらなと思っています。  本当に小1で点字使用が入ってきたのは18、9年ぶりなんですよ、本校は。今26歳ぐらいの人が小1だった以来。やはり中途から入ってくる子、重度重複障がいが増えて点字使用の子がなかなかいなかったりとか。本当に寄宿舎に小さい頃から入るのは大変だということで、5年生ぐらいから転校してくる子が多いので。そのたまたま貴重な5歳で教えた子が戻ってきて私が担任しているのですけど、そうなるとやはり、試験問題、高3が受ける点字の試験問題は全部私も校正しておりますし。  そして今、奥野さんのおっしゃった『アミ・ドゥ・ブライユ』も学校として頂いていて、私が、その読める子がいる時に、その子達の担任の先生へ全部目次を墨字で起こして、「何ページに何がある」というのをお伝えして、「ここが点図があって面白かったよ」というコメントを添えてお届けするので、小学部で備えてあったり中学部で備えてあったりということで、点字雑誌も活用させてもらっております。お話が前後すると思いますけど、忘れないように今言っておきたいと思います。 4−2.発達段階や興味関心に応じた読み物・点字資料  では、なぜ1年生がまだ点字図書館じゃないかというと、一生懸命読む子達は、お口を閉じるのさえ忘れて読むのですね。そうするとどうなるか、よだれで点字がふやけます。ということで、教科書以外のものは複数欲しいのです。そうすると「にじの会」の方に、一冊は紙で届けてもらいますけどデータも貰っておいて、何回も印刷出来るように。そして大好きなものは何回も繰り返して読みますので、データがあると教員はすごく楽なんです。サピエにあがっているかどうかというのをまず調べて、リクエストがあった時は。それでも無いという時に、じゃあどっちに頼むかというと、「借りるのはまだ早いよね」というのと、「両面はまだダメだよね」という時がありますので、片面にしてデータを届けてもらったりとか、紙と片面でお願いします、ということとかあります。発達段階に応じてというのは、そういうことですね。 <13ページ>  興味関心に応じてというのは、教科書の単元ごとにオススメの作品がいくつか載っている時に、小学部の先生から「これあるかな、点字で欲しいんだけどな」という問い合わせが来ますので、そこを無いものは点訳してもらうという。つい最近は『がまくんとかえるくん』、1個だけサピエにあがっていましたが、あともうちょっとあった方がいいな、去年の生徒もそれを読んで、児童が読んで学習発表会で登場人物二人で成立出来てしまうという。なので、今年もやっぱりそういうことをやるのなら他の作品が欲しいから点訳お願いしたりとか、そういうふうに急ぎのもの、手元に置きたいものというのと、借りられるものというふうに分けてオーダーをしています。 4−3.点字図書館で自ら借りられるようになるまで -意欲を実行へ繋げる工夫-  では点字図書館で借りられるようになるまで、どんな道のりがあるかということですけど、紙で読むというところでいくと、手元にあるもので、まず背表紙の点字の触読をしてタイトルから選ぶという、図書室にある紙の点字を自分で選ぶということと、小さなお話が沢山入っている場合は目次から自分の読みたいものを選ぶ経験ですね。そして今度は、手に取りたい・取りやすい所に置く工夫ということで、小学部前の廊下とか、普通科に点字使用がいれば普通科の前の廊下の棚とか、それから「点字付き絵本はここにありますよ」というのをまとめて、「図書室の入ってすぐのクルクル回るラックね」と、先生方が共通理解して探しやすい、それも小学部の先生からの提案でここにまとめるねという、自分たちで探せる工夫というふうにしています。  そして、もっと紙で読んでもらうための工夫としては、「図書だより」の中に紹介をしていくのですけども、夏の課題図書は徳島の「点訳燦の会」さんから、燦然と輝くの燦で難しい字ですけど、4月、5月の課題図書が決まった時にちゃんと問い合わせしてくれて、「紙で欲しいですか、データで欲しいですか」というようなことを、小中学生のを頂くのですけど、私たちはわがまま言って紙とデータ両方もらっています。そして高校生用も点訳してくださいと言って、無理をお願いしてやってもらった時もありますし。  私の場合はそれを点字データで6月頃まとめてもらったら、全部読んであらすじを書いています。小中高のトータル18タイトルぐらいですけど、いっぺんに読んだのでは発行に間に合わないということがこの頃あるので、サピエにあがるのを待って、読んではあらすじを書き、読んでは書きというふうにして、最後までは言わないんですね、ひっぱるあらすじですけど、書評じゃないのでね。  それで今度、7月に夏休みになる前に「図書だより」を先生方が活用してくれて、どれを選んで帰ろうかということで図書室から借りて帰る。そして、夏休み明けは感想文を寄せてくれて、秋は感想文が載っていると。そうすると、友達が読んだものを読みたくなりますので図書室に借りに行く。そして図書室にないものは、いよいよ点字図書館に借りに行く、探してもらいに行くと、そんなふうになっています。  そして、2月は最後の「図書だより」ですが、何で2月で切るかというと、3月1日に高等部が卒業してしまうからですけど、3月から2月までで読書量のランキングを「図書だより」に載せていて、点字図書館から借りたのも合わせています、集計にちょっと混ぜる。だから点字使用者の大逆転というのが、ある時もあるんですね。<14ページ>去年に関しては、高等部の生徒とかも日頃の勉強で目いっぱいで借りてないというのは分かっていたので、合わせなくてもいいような状況でしたが、そういうふうに点字図書館とも連携といいますか、やり取りさせてもらっています。  どのぐらいのタイミングで点字図書館に自分で借りられるようになるかというと、中学生ぐらいかなと思います。まず小学生の段階で、小学2年生と3年生は生活科で点字図書館の見学に行きます。同じ敷地内に県の生活支援センターがありまして、そこには日常生活用具とか便利グッズを展示してありますので、大体セットで盲学校に来たら見学はするのですけども、小5で転校してきた子も行ったけど、では実際借りられるようになったのはというと中学生ぐらい。  担任の先生が1回ついて行って、上履きのまま裏から行けるので行き方を教えて、一緒に借りに行く。または寄宿舎は、寄宿舎の先生がついて行って、借りるとか返すとかをやってくれます。そして、いずれはメールとか電話で自分で伝えられたらいいな、急ぎのものは私の方で一報しておいて送ってもらうような、例えばコロナで休業中になった時なんかは、自宅にこれを送ってくださいというふうなお願いをして、点字図書館の活用が出来るようになってきます。  インクルーシブ教育の場合、だいたい登録しています、もう個人登録を。小さい頃から図書館に繋がってはいる、点字広報も来ているという状態ですが、実際には親さんの文字で来ているので子供は読んでいない。ということで、18歳になる前に「選挙公報来るからね」と、点字図書館への団体登録から個人登録へ促しています。  中途で理療科へ大人さんも入ってくる時も、「選挙公報、拡大でもらった方がいいでしょう」とか、そういうのをお伝えしながら個人登録は進めています。東日本大震災の時、やはり安否確認の名簿にもなりましたし、対策本部が置かれたというようなこともありましたし、点字図書館の役割は広げようと思えばいくらでも広げられるところでありますけど、そこへ行ける子供達を育てている。 4−4.点字力向上のために -遊びから学びへ-  読めば読むほど速くなります、触読は。そのための取組みとしては、全国では点字競技会があります。今年は岩手が主管で全国大会があります。一年おきなのですけど、無い時は東北で点字競技会があって、五十音書き、転写、聴写の3種類です。それを、校内では文字能力テストといって、速読を含めて五十音書き、転写、聴写、速読というのを年に2回。点字盤で速く正確にという、その前には点字タイプライターのパーキンスで書けるようになってから、ある程度速くなったら点字盤に移行するというふうに、級の認定をしています。  墨字の子は漢字ですね、その文字能力テストの間は。点字は50分の間に残りの時間が出来るので、転写、聴写、速読、五十音書きの後の残りは、点字付きかるたで百人一首をやっておりました。ここ8年ぐらい、今、高3の子が少5で来た頃に百人一首の点字付きかるたを、私と、あと小学生にとって高校生の点字使用者がいる場合は一緒にやった方が速くなりますね。速いモデルというのも必要なので、小学生が高校生と一緒にやる。その子が一人になっちゃった時は、点字使用者が他にいなくなっちゃった時は、私がガチでお相手をする、大人げなくちゃんとやる、と。 <15ページ>  そして今年の前期は、7月はなんとパーキンスの男子2人と、点字盤の女子・高校3年生と私で、4人なんですけど2対2の団体戦で、おやじギャグかるたの点字かるたというふうに。最初「やだー」と、パーキンスの子は「やんない」とか言うのですけど、「大丈夫、大丈夫。勝つから」とか言うと、段々枚数減ってきますので、減れば取れるんですよね。最初10枚とか並んじゃっていると覚えるだけで大変。空間認知力の向上にも点字付きかるたは役に立ちますので、そういう意味で、百人一首だけじゃなく遊ぶということを取り入れる。そうすると墨字の子が「いいなー、私もかるたやりたいな」と言うので、その今高3の子が小6の時に、小5の弱視の子と一緒に拡大文字付きの白黒反転の百人一首で点字がついているというので対戦をしたり、そんなことをやっていました。 4−5.良い読み物とは -学校生活での実践-  良いものを沢山読ませているということが、分かち書きも入っていくということで、1年生はやはりきちんと書かれた点字から。大量に読んでいくと、どんどんスピードが上がっていくということで、私が今、高校1年生で取り組んでいるのは、1年生の教科書に『羅生門』があります。死骸の山から老婆が髪を抜いていますが、「生きるために仕方なくする悪は許される、そして悪を働いたものに対する悪は許される」というのが老婆の主張ですけども、「じゃあ、生きるために仕方なく悪を犯さなくて済むのが福祉じゃないの」という話を高校生に投げかけまして。発展教材としては『ヘレン・ケラー 岩橋武夫物語』、10年前の『点字毎日』の連載記事ですけど、あれをデータ化してありまして、拡大も点字もすぐ作れるようにしてあるので読みます。  そして、去年読んだ子達が、今年修学旅行に来ました。「日本ライトハウス行くよ」と言ったら、弱視の女の子が「岩橋武夫さんのですか」という言葉が出てきました。そして、点字使用の女の子には奥野さんと引き合わせて、編集のお姉さんだよーということで『アミ・ドゥ・ブライユ』で育った子も高校生になりまして。  そしてその後、なんと串カツで満喫していたところへ100周年の『点字毎日』創刊号を持ってきていただき、最新号と100年前のを触り比べさせていただいたということで。本当に点字使用の子は読める、紙の点字は読めるということで、「時間があればもっと読みたい」と言っていました。データ化してくださっていますしね。すごくそこは感動しておりましたし、この子達は、岩橋武夫さんが身を呈して身体障害者福祉法のために、大阪から鉄道に乗って肺を悪くしながらという、「あー、もうこの時から鉄道料金割引って請願してたんだ」ということに、点字の子は感動したし。  良いものを読ませていく、これから社会に出るために読ませていくというところで、本当に良いものを読ませたいなと。良い文章、その子に合った良い文章なんですよね。そういう意味でいくと、紙で手に入るものから借りて、大量に読めるものへという指導をしますけども、やっぱりその子達が社会に出て行く時に恥ずかしくない、胸を張って点字使用ですと言える実力をつけてあげたいというところで、日々を送っています。  今回『じゅげむ』の話も資料には書いたのですけど、データでもらったら最後変えました、小学部の先生が。<16ページ>そこが良いところで、データをもらってこっちで作り変えたのは、要は長い名前を言っている間に溺れて死んじゃうのではなく、たんこぶが引っ込んじゃったよという終わりにして、それを小学部の点字使用の子達が、まずやったんです。落語家さんとのコラボで、本人たちでやって、さらに本物を聞くという芸術鑑賞会に発展しましたし、色んな所でそれを活用する、先生方がそれを活用して。  そして、小学部がやるのなら高等部も唱えられた方がいいよということで、修学旅行の新幹線の中で私がなんと『じゅげむ』を2冊持っていて、潰さないように往復して新幹線の中で高3の子に読ませた。で、国語の時間で他の子もやって、小学部さんに華を添えて、みんなで言えたらいいよねということで。すぐ暗記しちゃうのね、小学部の子達は。そんなことをやっています。 4−6.点字図書館員へ望むこと -視覚障がい理解・専門性・姿勢-  ですから、社会に出て今度自分で借りられるようになる、または点訳依頼を出来るようになるという力をつけるためにも、そこに対応してくださる点字図書館の職員の皆様、そこでやっぱり関わっていただく時に、この子達の言っていることが分かるレベルの視覚障がいに対する理解、点字は読めて欲しいなとか。  私たちは点字図書館も利用者の一人ですので、色んなこと聞きます。やっぱり言っていることが通じないと諦めて言わなくなりますので、そういう生徒達も見てきましたので。インクルーシブしていると、言ってることが通じないから黙っちゃうというような。「点字間違ってるよと言っていいんだよ」と言うのですけど、「先生、気が付かないよ」と言うのです。  試験問題校正していると、化学も物理も、おーやってるなと思いながら、私は弱視で受験していたので、今、点字で読む科学、点字で読む『アミ・ドゥ・ブライユ』のアイドルの名前、すごい新鮮ですので、あーこんなふうに書いてるんだ、これを正しく子どもたちに伝えたい、そして作ってくれている人達の気持ちも伝えたい。あの被災地で点字のデータをね、「わざわざ一時帰宅してデータを取りに帰ってくれたからこそ繋がっているシリーズがあるんですよ」というのは、点字図書館からも聞いたので、そんなことを伝えながら、日々の生活、言葉を育てるという授業を行っていきたいと思います。 野々村:  渡邊さん、ありがとうございました。とっても引き込まれていくお話で、先生の授業を受けてみたいなという思いもしながら。そして、福島県立視覚支援学校といえば全国盲学校弁論大会で優勝されたりしているわけですけれども、レジュメに「いきなり全国弁論大会で優勝するわけではありません」と書いてありますけれど、本当にその日々のきめ細かな教育実践をされている様子の一端を伺えて嬉しいです。 5 点字とともに 点字となかよし -京都ライトハウス鳥居寮における点字訓練の取組み-  続きましては京都ライトハウス鳥居寮の石川さんです。よろしくお願いします。 <17ページ> 石川: 京都ライトハウス鳥居寮の石川です。私は20年前に点字を勉強した中途障害者です。日々、中途で視覚に障害を持たれた方達に、触読の支援をしています。京都ライトハウスにおける点字訓練の取組みについて、今日はお話をいたします。 5−1.鳥居寮の点字訓練者数と習得状況  京都ライトハウス鳥居寮は、入所・通所・訪問で機能訓練を提供する、いわゆる視覚リハビリテーションの施設です。入所・通所のご利用者数、2021年度は約80名おられました。その内の32名の方が点字の訓練に挑戦されています。  今年度も、その内14名の方が継続して点字を学ばれていまして、18名の修了された方の到達度は、「コミュニケーション手段としてのスキルを獲得された方」が7名、「ゆっくりだけど読み書きが出来る方」5名、「概要を知る」とか「体験をした」という方が3名ずつおられます。また、今年度10月現在の点字訓練をされている方は24名。この内、実際にペンを持って紙に書いている人が13名、半分以上。また再訓練という形で、以前に訓練をされていてもう1回点字やりたいという方が7名おられます。  今年度の24名中、すでに6名の方が修了されていて、今現在訓練されている方は18名で、18名のうち6名の方が実はもう図書館で本を借りて読んでいます、1/3です。点字離れと言われていますけれど、うちの利用者さんの実態はそうです。 5−2.基本訓練 -読みの3ステップから書き、点字ディスプレイの活用まで- ◆基本訓練の流れ  うちの訓練の流れです。昔はスライド式という形で触読をお伝えしていたのですけど、今は名古屋式、縦触りですね。上中下、左右どこに点があるか、一マスの感覚をしっかり掴んでいくという形で指導しています。この形に変えてから、何をどうやっても点字掴めないという人は、お一人もいなくなられました。  基本訓練の流れは3ステップです。Lサイズの導入で基本文字、それからそれを使った短文、3ステップ目で初めてサイズ移行、普通サイズの長文であったり、パラグラフなんかを導入していきます。 ◆形で覚えて書きへ移行  見る点字からのアプローチという形で、オセロを用いて、まず点字を楽しみたい、非常に高齢でちょっと覚えるのが大変という方もいらっしゃるのですけれども、オセロで先に形を覚えて、それから紙で実際に読むという移行をしています。手先が氷のように冷たくて、そして学習にも困難があって、全盲でという方も、実はこのスタイリングで単語が読めるようになっていっています。  書きに関しては、うちは読みが優先ですので、文字の形がしっかり入って、縦1ページ20分以上かかっていても文字の形がしっかり安定していれば、書きを始めます。 <18ページ>  分かち書きに関しては簡単バージョン、メモとかちょっとした手紙が書ける程度を希望される方が多いのですが、ボランティア希望の方もいらっしゃいますので、がっつり『点訳のてびき』を使ってやることもあります。  点字ディスプレイに関しましては、2018年度以降、京都市も単一障害の方も給付対象になったことでニーズが増えています。これは、紙での読み書きがしっかり出来るようになってからやっていまして、到達度も紙と同等レベルか、それ以上のところまで引っ張っていっています。 5−3.オーダーメイドのテキスト -利用者作のオリジナルから図書館製作物まで- ◆興味関心に沿ったオーダーメイドテキスト  テキストについてです。主に30ページを1単位として提案していまして、この30ページあるシリーズが沢山の種類があるというのではなくて、色んな素材を30ページ分に盛り合わせをする。その方の、その時の状態に合わせて、興味関心やそういったものを鑑みて、アラカルトで盛り合わせをして30ページをこしらえて、パーソナルにご提案するということをしています。  また、基本の段階で普通サイズの移行がやっぱり難しいという人がいるのですけど、そういう方に関しては、Lサイズで2文字だったら読めるとか、ちょっと言葉力の助けになるような「しりとり」だったらいけるとか、そんなふうに、その方の潜在的にお持ちの力を発揮していただきながら、点字続けたい、読める、楽しいということをまず大事に、その方に体感していただけるようなデータを作っています。  特殊音とかアルファベットなんかは、基本的な3ステップが終わってから。また、『点字毎日』や様々な印刷物、色んな文体に触れていくということを、それ以降にしています。 ◆利用者作のオリジナルテキスト  うちのテキストの特徴として、利用者さんが作った文章をテキストにしているというのがあります。まさにオリジナルで、データ化を私がしたりボランティアさんに頼みながらしていたりするのですけど、物語であったり川柳だったり、大喜利とかエッセイとか、これも皆さんに呼びかけて作品募集をして、石川の独断と偏見で点字のテキストになっています。  これは利用者さん同士の交流のきっかけにもなっていくんですね。あるあるの共感が生まれますし、なによりも、うちに来てくださっているボランティアさん、図書館のボランティアさんが多いのですけれども、本を作る側におられた方が、実際にこれから点字をやっていこうとする人たちに、実際目の前にいるのだけど、挟んでいるもの点字だけなんですね。でも、「見えない・見えにくい人たちの生活とかって、あっこういう事なんや、こういう思いなんや」ということを知っていただける、そんな啓発にもなっています。 ◆図書館の製作物を活用  実際に図書館の製作物、これも積極的に私は取り入れています。こんな本、図書館で作っているよというのを紹介して、もちろん目録とかもあるのですけど、実際現物触りに行こうよということをやりながら。雑誌の『きょうきらら』(※6)おしゃれ好きの方だったらこういうの、すごく難しいんですね実際に読むの、だけど読みたいと言ってくれるし。<19ページ>歌が好きな人だったら懐メロの歌詞とかLサイズで作っていたりするので、そういうのを紹介したりしています。そうやって他部署との連携というのを早い段階から入れています。 5−4.点字学習のモチベーション -点字サイン・メンタルケア・ボランティア・読書- ◆点字学習のニーズさまざま  点字をやりたいということのニーズです。もう断トツ、点字サインを使いたい、ここ数年すごく増えています。外出先やもちろん家電製品、「あっここに点字あるやん」というのが分かるのに、肝心の自分は読めない。これ読めたらいいなと思って点字やると言われるんですね。  二つ目、リハビリテーションにとって欠かすことの出来ないこと、メンタルケアの一助になるということです。「今まだ見えているのだけど、進行性だし将来に備えて点字やっときたい」、今から点字をやるという自分の行為が、その方の心の安心に繋がっていくとか。頑張って見ているのだけど、「これ見んでもええやん、見るより楽やん」というのを指で感じられることは、文字を見るということの喪失感の中にあっても、新たな文字に繋がる期待になっていく、その方の心を支えています。  三つ目です。点字をやるビジョン。点字を使ってボランティアをしたい。ボランティアをしたいということになれば、がっつりしっかり正確に、速くなくても良いからしっかり読めるようになりたい。そこで、地域に帰って必要とされる自分を描きながら頑張って点字をやりたい、そんなモチベーションを支えています。 ◆読みたい!の気持ち  今日皆さんの関心の高いところは、「うれしたのしや読書」ではないでしょうか。資料にもネットに上がっているエピソード(※7)をあげていますので、ぜひ読んでいただきたい。そして私、昨日出会った利用者さんからの言葉を紹介したいんです。  点字を始めてまだ3ヶ月足らずの彼女が、実はこの3連休の前にオー・ヘンリーの本を借りに行きました。自分の読みたい本は、そのオー・ヘンリーのどの場所にあるのかも分からないから、「図書館の人に相談してごらん」と言ったんですね。彼女はまだ3ステップ目、基本の訓練の流れで、まだ1ページ読むのが18分ぐらいかかっている人です。でも彼女の「読みたい」は、その瞬間にあったわけです。3連休、彼女は歌うことが大好きなんですけど全く歌わなかった。なぜなら、点字ももう潰れて薄くなっている、その点字の本に引き込まれて読んでいたから。時間がかかっても、読みたいと思えば人は読みます、そんな事例です。 ◆点字やっておけば良かった  訓練を離れて改めて思うニーズ(※8)というのがありまして、働きながら訓練する人がおられるのですけれども、やはりそのニーズというのは歩行であったり、パソコンというところに集中してしまうのですが、「あーやっぱり点字やっときゃ良かったな」という声が届いているんです。これも動画でアップしていますので、ぜひ生の声で皆さん聞いてください、アクセスしてください。 <20ページ> 5−5.訓練後の学習継続サポート -具体例と主体的な活動- ◆訓練修了後のサポート  修了後の、点字のある生活ということを想定した支援をしています。これは、訓練中から「訓練終わる時に、こんなふうにやったら続けて読めるよ」とお話だけしても、なかなか一人になるとやらないとか、広げなくなっちゃったりするので、訓練中から、お家の時間の中で点字と戯れる時間をなるべく入れて行くというか、そういう助走をさせたいという狙いもあります。  点字ディスプレイお使いの方であれば、もちろん紙との併用で、ダウンロードしたデータでディスプレイと両方を使いながら、時々分からないものが出てきたら、慣れない記号が出てきても、ディスプレイが音で教えてくれたりするから、そういうものを使いながら自習をしたりとか。  また、紙で読むという方であっても、家族との読み合わせが出来たらいいなということで、プリントアウトしたテキストに加えて、墨字のデータですね、カナのデータをセットアップでお届けする。そしてご家族の方と読まれたり、もちろんご自身で確認出来る方もおられます。  三つ目です。ボランティア希望の方、こういう方には、やはりグループでの読み合わせを訓練の中でも体験していただいて、「うーん」と考えている方を待っている間、どんなことに留意しながらお声がけをしたらいいかなんてことも含めて、体験をしていただいたり。点訳やりたいなと思っている人も弱視でいたりするので、点字編集システムの操作、データ作りに必要な基本操作や既存の点字データの加工方法などをお伝えしています。そういう訓練もしています。  図書館との連携はもう当然のことです。データのダウンロードの方法や、先ほども申しましたデータを加工していくようなことなんかも、お伝えしていっています。 ◆主体的な活動  今日伝えたかった事の大事な部分です。主体的な活動として、点字サークルというものが京都にはあります。ライトハウスのクラブハウスの中に点字のサークルがあって、今コロナ禍でなかなか直接集まれなくなってしまっていますが、ここには「ちょっと読めるよ、大体1ページ5分程で読めるかな」ぐらいの人がいて、「でも一人じゃ読めないな、あってるかどうかわからんから不安だな」という人が、そこに集ってという形で点字の読み合わせをされています。  コロナ禍でオンラインになって、もともと月1回ぐらいされてたのが、実は毎週になって活発になっているというのを先日お聞きしました。また、訓練の同期生の方達が集まって点字の読みサークルというのも、細々とだけど仲間で集まりながら続けておられるということがあります。 5−6.課題 -ニーズに適切に対応する環境づくり、職員の姿勢・スキル・連携- ◆訓練後に継続できる場所づくり  課題です。訓練後もやはり点字を継続してやれる場所というのは求められています。ただ、その繋いでいける場所というのはなかなか無くて、先ほどのサークルにも、やはり受け入れ人数にも限界があります。 <21ページ>  1ページ10分かかっていたとしても、本を読みたいという方は図書館とちゃんと繋がっていくので、そういう方は良いのですが、やっぱりゆっくりなら読めるけど、手が隣のマスにひっつくという方もいますので。そういう方達が主体的に集まっているということは、これって本当に点字を通して人と情報に繋がる、しかも技術を継続する、まさに持続可能な視覚リハビリテーションを、勝手に皆さんやっているんです。素晴らしいことだと私、感じています。  なので、これからも既存のそういうグループに頼るだけじゃなくて、読み合わせのボランティアやりたいと思っている人と、誰か一緒に読んでくれる人いないかなという、そういう人と人を繋いでいけるマッチングというものがとても大事。それが、地域に根ざした形で出来たらいいなというふうに、私は感じています。 ◆興味・要望を適切に繋げる  スマートサイトの広がりで、早い段階で図書館に繋がってこられるケースもあります。そういった方の見え方の状況であったり、ライフスタイルなんかを鑑みて、多様な読書スタイルがあるわけなんですけど、それを適切にお伝えしていくということが、とても大事かなと思います。せっかく本が読めるということで興味を持って繋がってくださったのに、なんか思ってるのと違うなとなってガッカリされるようなことがないように。必要なロービジョンケアであったり、時には図書館から直接視覚リハビリテーション、私たちの施設と連携して、包括的なその方の楽しい読書に繋げていけたらいいなと思っています。 5−7.訓練利用者からの生の声 -ニーズ・自分の文字を再獲得するということ- ◆点字のハードル -ちょっとやってみようかな-  終わりにです。もう点字はいい、難しい、しんどいわりには得られるものが少ない、こういう声は昔も今もやはり聞こえてきます。パソコンやiPhoneやiPadに比べたら、ニーズとしては数字の上では少ないです。でも実際に点字をやりたいという人のニーズは幅広い、多様化しています。情報を取る手段というのは色々あるのだけれども、点字もやってみようかなという人が増えている、私の目の前に。視覚障害イコール点字でしょという、形から入る人もいます。  先日、パソコンだけ訓練している二十歳の女性に「他にどんな訓練やってみたいと思いますか」と聞いたら、「点字かな」と言うので、ボールペンでメモをしている、白杖も持っていない彼女が言うんですよね。「なんで」と聞いたら、「いやなんか、点字読めたら格好良くないすか」。「点字読めたら格好良くないすか」ですよ。めっちゃ格好良い一言やなと。私、よっしゃと思いました。周りで楽しく、なんか点字やってる人がいたら、なんとなくだけど私もやってみたいと思って、今月始めた人もいます。仕事、学習、読書、色んな繋がっていく大事な図書館の役割あると思うのですけど、そのもっと手前のとこで、まずは気楽に点字と出会えるかどうかというのがすごく大事じゃないかなと、私は感じています。  「本なんか嫌い、読書もせえへんかった」という人が、デイジーに出会って、それも最初はシネマ・デイジーからで、そこから本の広がりに行くのですけど、私が提案した西加奈子さんのぶっ飛んだ小説を、今読んでくれているのですが、彼女は「これ面白いから絶対デイジー借りひんで」と言うんですね。<22ページ>「だって点字で読む時に、次どないなんの、どないなんの、風間君何言うのって、それが気になって読んでいきたいから、ずるしてデイジーなんて絶対借りひんからな」と。最高ですよね。彼女どっちかというと、IT万歳で合理主義者で面倒くさいこと大嫌いな人なんですよ。そんな人がこういうことを言う、点字ラブな発言が出てくる。そんな人に、私はこれからも出会っていきたいですね。  視覚リハビリテーションの中で大事なことは、見えないけど大丈夫ということなんですよね。触ったら分かる、たとえ2文字でも触ってそれが掴めるという、その瞬間に出会ってもらうことなんですよ。これが出来るのが、理屈や概念で「視覚以外の代替手段がどうや」と、そんな説明じゃなくて、その方が指でそれを感じた瞬間にストンと落ちる、これが出来るのが点字の力なんです。ハッとされる瞬間に私、何度も出会ってきました。 ◆訓練利用者の生の声  ここからは、点字と向き合う方のお声を実際に紹介したいです。「本なんかきらいやったけど、これおもろいで」、「今日もエレベーターのボタン押せたで」、「トイレで‘ながす’読めた。これで出かけんのも安心やわ」、「歌おぼえるのに点字って良いな」、「先生って呼ばれてちょっとニヤニヤ、でも必要とされるのって悪くないな」。さて、これからどんな点字私流が生まれていくでしょうか。  まだ見えてるから点字はいらんとか、身につかへんとか、安易な決めつけはめちゃくちゃナンセンスだと私は思います。新たな文字の前には、皆真っ白スタートなんです。そこには数多の可能性が含まれている、誰もがその可能性を持っていると思います。これからも、指が目になる瞬間にご一緒しながら、そんな宝探しをしていきたいです。  資料の中に、動画(※9)で生の声、利用者さんの声、それから文集「点字と私」(※10)ということで、ボランティアさんも含めた声を掲載しています。絶対にアクセスして読んでください。私の話は代弁に過ぎません。後半の時間で、決して明るくないと思われている点字の未来について、皆さんと熱く語り合いたいです。 野々村: 石川さん、ありがとうございました。沢山の事例も紹介していただきながら、元気の出るお話をいただきました。ではまた後半も、引き続き熱く語り合っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 6 アンケート報告「点字図書・点字資料利用拡大のための工夫について」  それでは、後半の方に移って参りたいと思います。まず、この間、全視情協加盟施設・団体の皆さんに、点字の貸出の工夫ということでアンケートを取らせていただいていますので、その分析をサービス委員会の平井さんからお願いしたいと思います。 <23ページ> 平井:  全視情協サービス委員会・委員長代行でロゴス点字図書館の平井と申します。「点字図書・点字資料利用拡大のための工夫について」の、アンケートの結果報告を簡単にいたします。  まず、加盟施設・団体100のうち65施設・団体から回答いただきました。ご協力ありがとうございました。  アンケートは、「設問1 貴施設・団体で、以下の項目に当てはまるもの全てに○をつけてください」として、点字利用者に関する項目と、リクエスト製作、プライベート製作の方針、あとは提供方針として、検索性、図書の紹介、予約、貸出についてお尋ねしました。「設問2」では、「設問1以外に点字図書の貸出を活性化させるために取り組んでおられること、工夫されていることがありましたら、ご記入ください」としました。  「設問1」の○の多かった項目をピックアップします。  点字利用者に関する項目については、「点字図書の熱心なユーザーがいる」が58件、「リクエスト製作は利用者からの点字の製作依頼については原則として断らない」が53件ありました。  提供方針ですが、検索性、図書の方針で、「サピエや厚労省委託図書で点字データでしか存在していないものについても、利用者希望があれば点字プリントアウトして貸出をしている」55件、「自館製作の点字図書でサピエにはデータのみとしている図書についても、他館から依頼があればプリントアウトして提供している」43件、「自館所蔵の点字データから点字プリントアウトを行ったものは、サピエに所蔵登録、オンリク可にする」が48件ありました。  貸出については、「国や地方自治体、他施設から送付されてくる点字冊子は利用者に紹介し、点字冊子として希望者に貸出を行っている」が48件でした。  「設問2」ですが、参考となる工夫の記述の意見が複数あったものを紹介します。  点字を既に使っている人、利用者向けについては、 ・中途視覚障害者の点字訓練、点字教室、学習支援 ・機関誌広報で点字に関する情報を載せる ・文学賞などテーマを決めた点字図書の紹介 ・希望に沿った図書、ニーズに合わせた図書製作 ・分冊での貸出 ・自館・他館にかかわらず現物での貸出をする ・点字データのメールでの送付サービスをする  普及・啓発に関しては、 ・見学やイベントでの点字関連の紹介 ・点字図書館以外での展示紹介  という工夫がありました。  印象としましては、多くの点字図書館で熱心な点字利用者は存在していて、利用者に丁寧に対応していると感じました。課題もありましたので、詳しい考察は改めてまとめます。<24ページ>後日結果報告と考察をまとめたものを送信します。今日の「全体会2」の内容とともに、点字の発展に役立てていけたらと思っています。 野々村:  平井さん、詳しく分析してくださいまして、ありがとうございました。 7 貸出現場からの取組み発表  続きまして、実際の貸出現場の取組みの紹介ということで、二つの図書館さんにお願いしています。 7−1.大阪府立中央図書館の取組み -音訳・点訳・相互貸借、立体コピー機や点図ディスプレイの活用-  まずは公共図書館の立場で、大阪府立中央図書館の小笠原様よろしくお願いします。 小笠原:  大阪府立中央図書館の小笠原です、よろしくお願いいたします。  府立図書館、公共図書館の立場ということでお話をさせていただきます。公共図書館全体もそうかもしれないのですが、当館でも音声資料が中心になっています。音訳資料の製作や対面朗読を実施していますが、資料の点訳等は当館では行っていないんですね。  どうしても音声が中心にはなってくるのですが、それでも図書館にも点字資料はございます。当館が開館した1996年から2016年までは、「視覚障害児のためのわんぱく文庫」というボランティア活動も館内で行われていました。残念ながら、ボランティアの皆さんがご高齢になられて、2016年で活動自体終わってしまったのですが、その時に作られた点字資料をご寄贈いただいています。それから数は少ないのですが、今も購入や寄贈による点字資料の収集も続けています。  あとは、サピエを使った相互貸借で、利用者さんのために点字資料を取り寄せてお送りするという、仲介的な形にはなってしまうのですけれども、そういったことも行っています。それから、最近さわる絵本や布の絵本などのリクエストなども頂くようになっていて、近くの大阪市立中央図書館さんや、東京の品川区立図書館さんなどから取り寄せてご提供したりもしています。そういったものというのはずっと続いていくのかなと思います。  それから当館で対面朗読をする中で、よく調査相談もお受けするのですが、どうしても音声、朗読だけでは把握しにくい地図、それから物の形、例えば落語家さんの家紋、定紋というらしいのですけれども、そういったものの形が分かるようにというご希望を頂いて立体コピー機や点図ディスプレイ(KGS社製GD−8x6B 販売終了品)を使うこともあります。点図ディスプレイは、パソコンの画面上の表示をそのまま、3,000本ぐらいのピンで凹凸をつけて表示し、触って形が分かるようにしているものです。<25ページ>こうしたものを使って、補足的に触って分かるような形でお示しをするということもやっております。 野々村:  小笠原様、詳しく取組みをご紹介くださいましてありがとうございます。 7−2.静岡県視覚障害者情報支援センターの取組み -貸出・プライベート点訳の工夫-  それでは、点字図書館の立場で静岡県視覚障害者情報支援センターの塚本様、よろしくお願いします。 塚本:  静岡県視覚障害者情報支援センターの塚本です、よろしくお願いします。  こちらのセンターの取組みとしましては主に2点ありまして、一つが全国の新刊図書の目録の発行と、もう一つがメーリングリストを使用した図書の紹介です。特に点字の貸出も減っているものですから、貸出を増やしたいということで続けております。  まず全国目録ですが、当センターでは新刊目録デイジー版を作っているのですけれども、同じように点字版のサピエの新着目録を製作して配布しています。現在利用者は、点字版が14名の方、点字データ版が6名の方、延べ20名の方が利用しています。こちらからのリクエストはかなり多くて、相互貸借で利用していただく図書の半分かそれぐらいは、このサピエの新刊目録からリクエストを頂いております。  2点目がメーリングリストでの図書の紹介ですけれども、センターの情報を配信するためのメーリングリストがありまして、それを利用して月に1、2回図書の紹介をしております。内容は、その時々の話題になっていること、そういったことをテーマに、司書、私の他にもう一人おりまして、二人で協力して図書の紹介を出しております。最近ですと、ノーベル文学賞を受賞されたアニー・エルノーさんの本を紹介しました。こちらのメーリングリストは、登録されているのが昨年度末の数になりますけれども669名の方が利用していただいていますので、それで図書の紹介を出しますと、ほどほどに利用が頂けるという状態です。  以上、2点が主な取組みですけれども、点字の利用者さんはやはり減っておりまして、現状は少数精鋭といいますか、少ない人数の方が沢山本を読んでくれていて、なんとか利用数を維持しているというような状態で、新規の利用者さんはかなり少ないです。 黒崎:  続きまして静岡県視覚障害者情報支援センターの黒崎と申します。よろしくお願いいたします。私の方では、プライベート点訳についてのご報告ということで、少しご紹介させていただきます。 <26ページ>  当センターでは、やはり常連の利用者さんからのプライベート依頼を多く受け付けていますけれども、昨今は楽譜の点訳とか、編み物の点訳、ちょっと前には数学の専門的な読み物の点訳などの依頼が多いです。ボランティアさんはプライベート点訳以外に普段の蔵書の点訳もやっておりまして、並行して専門点訳のグループを作っています。それぞれ月1回ぐらい勉強会を開きながら専門点訳のスキルを高めてくださっています。  プライベート依頼に関して気をつけていることは、やはり利用者さんのニーズにいかに添えるかということです。きめ細やかな対応をしたいということで、製作にあたっては利用者さんとの連絡を密にし、利用者さんのご希望に沿える処理をしております。例えば毎週、ラジオ番組のプレイリストを依頼されているのですけれども、英語のタイトルの場合には、カタカナを最初に書いて、後ろに括弧の中に外国語引用符で英語の方を入れてほしいという希望をいただき、対応しております。そういう細かいところに関して、利用者さんとの連絡をしっかり取り合いながら、一番読みやすいものをご提供するように心がけております。  昨今はピアノの楽譜とか、コカリナの楽譜などの依頼が多く、その数がプライベート依頼の多くを占めています。ピアノに関しては、月1回利用者さんが会館に来所して、音楽室で実際に楽譜点訳をされたものを使いながらピアノを弾いています。ベートーベンの「月光」をはじめ、色んなレパートリーが増えています。  今後とも専門点訳のスキルアップをしながら、利用者さんのニーズに応えていきたいと思っております。 野々村:  ありがとうございます。そして静岡では、本の一部のこのページからこのページというプリントアウトも対応されているということですよね。 黒崎:  はい。サピエにアップされているものとか、その中の何ページのところをプリントアウトして欲しいとか、そんな依頼もありまして、部分書き出しをやって必要なところだけ取り出してプリントアウトサービスというものも行なっております。 野々村:  静岡県視覚障害者情報支援センターの塚本様、黒崎様ありがとうございました。このような、貸出の現場での工夫ということで、二つの取組み紹介をいただきました。 8 質疑応答  それでは続いて、前半の部分でオンラインの参加者の皆さんからご質問等を頂いています。まずそのご質問について、奥野さんからお願いしたいと思います。 <27ページ> 奥野:  ご質問下さった皆さん、ありがとうございます。教科書とか『アミ・ドゥ・ブライユ』に関すること、何名かの方から頂いていますので、まとめて私の方からお答えさせていただきます。 8−1.インクルーシブ教育の点字教科書製作についての質問 ◆生徒数  「今、全国のインクルーシブ教育で学んでいるお子さん、生徒の人数はどれぐらいですか?」  A.こちらでもはっきりとした人数は把握出来ていないのですが、今ちょっと色々資料を作る関係で調べていたところ、おそらく約25名から30名ぐらいのお子さんが、北海道から沖縄まで、インクルーシブ教育を受けておられるかと思います。これが少ないか多いかというのは、それぞれの感じ方が違うと思うのですが、視覚障害児童生徒数全体の比率で考えると、多いと思います。 ◆タイトル数  「教科書のタイトル数はどれぐらいありますか?」  A.申し訳ありません、これは把握出来ていません。一つ言えることは、例えば算数については1個というわけではなくて、小学校1年生の算数だけでも数社から出版されていますね。5、6出版社あります。ある学校がどの出版社の教科書を使うかというのが、まったく予測が出来なくて。なので、1タイトル小学校1年生の算数を作っているからといって、別の小学校1年生のお子さんが、その出版社のを使うというわけではないので、同じ小学1年生の算数でも、出版社が違えば別タイトルとして作らなくてはいけないということが生じてきます。ですので、かなりの小中学校の教科書が全国で作られていると思います。 ◆ボランティア団体数  「教科書点訳をしているボランティア団体数は?」  A.教科書点訳連絡会に加盟している点訳ボランティア団体数でいきますと、約20団体ぐらいですが、実際にその中で実働しているグループの数は、今調査中です。 ◆需要と供給のバランス  「需要と供給については、本当にバランス取れていますか?」  A.取れていないと思います、結論から言いますと。やはり今申し上げたように、30人ぐらい全国で必要なお子さんがいらっしゃる中で、教科書だけでなく副読本やそれ以外の参考書、ドリルといったような教材が、日々学校から出されているわけですね。それを、一人一人に合わせて点訳していくとなると、それだけの手が必要になりますが、なかなかそういった供給が追いついていません。 ◆実働人数  「ボランティアの実働人数は?」  A.これも全国でどれぐらいいらっしゃるのか、実は今、色々調査をしているところで、まだ把握には至っていません。 <28ページ> ◆テスト製作依頼  「教科書点訳連絡会として、テストの依頼を受け入れていますか?」  A.受け入れていません。というのも、例えば試験問題というのは、各地域に応じた内容が盛り込まれていたり、学校と直接やり取りをするところも大きく、教科書点訳連絡会として受け入れてしまうと、その小回りの利いた部分、ケアが出来にくいので、テストについては受け入れはしていません。 ◆製作期間  「一冊のタイトルを作るのにどれぐらいかかりますか?」  A.本当にこれは一般書と同じで、教科書原本のページ数であったり内容によって変わってきます。先ほどの写真で見ていただいた地理の教科書を例に上げさせていただくと、コロナ禍でなかなか進まない時期もありましたが、約半年強、7〜8ヶ月ぐらいかけて25巻を製作しました。 ◆製作費  「教科書点訳に関わっておられるボランティアさんは、無償か有償か?」  A.小中学校は義務教育ですので、基本的に教科書は国費保障されています。ですので、その製作費は国からお支払いいただけるのですね。ボランティアグループ、ないしは団体はその費用を活動費に充てている状況です。 ◆副読本の製作方法  「最近作った社会の副読本で、エーデルではなく説明のみで対応したのですが、これでよかったでしょうか?」  A.小学校3年生の副読本ということで、中身を見てみないと分からないですが、低学年のお子さんは図を確認しながら勉強していくという過程を踏まれることも多いと思いますので、もしかするとちょっと図も入れた方がいい場合もあるかと思います。言葉による説明が悪いというわけではなくて、学年に応じてどのくらい説明し図を付け加えていくかという判断が必要かと思いますので。何かあれば、またご質問をお送りください。 8−2.雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』の配布対象者   「『アミ・ドゥ・ブライユ』の配布対象者はどういった人たちでしょうか?」  A.お子さんに限らせていただいていますが、全国の個人希望者ですね。また、学校の図書館や盲学校の図書館にお送りしています。もともと、この雑誌は、ご寄付をもとに始まった事業ですので無料でお送りしています。そのため、限られた方にお送りしている状況ですが、今後どう展開していくかは、検討していきたいと思います。 野々村:  奥野さん、ありがとうございました。続いて石川さんの方に質問が寄せられていますので、お願いします。 <29ページ> 8−3.リハビリ施設、点字図書館等の連携  石川:  「京都は当事者団体も図書館もリハビリ施設もワンストップにあるけれども、地方ではなかなか難しいので、そういった場合どのように連携したら良いか」というようなご質問がありました。  確かに京都はワンストップで一つの箱の中にいるのですけど、かといって綺麗に気持ちよく連携出来ているかというと、あえて言いますけど、難しいところは正直あります。でも私は、日々感じていることは、やはり顔の見える関係だなと思っているんですよ。顔の見える関係の中で、「こんな人おるんやけどこんな要望あるんやけど、何か繋げられへんかな」という、そういう話が出来るブレーンがいれば、それは一つの箱であったりワンストップである必要は特にないと、私は感じています。一つの箱の中にいるからといって、何もかもがうまくいってるわけでは実はない、ライトハウスのような恵まれた環境にあっても、課題は山積しています。  そう考えた時に、先ほどもオンラインでの読み合わせの話を事例としてお出ししていますが、私はそれは、それこそ県をまたいででもいけるかなと思いますし、こんな人がいるのだけど、点訳してるけど実際に読み合わせとかお手伝いが出来るとかいう点訳のボランティアさんがいらっしゃったら、そういう方と当事者さんを繋ぐとか、そういう自分が持っている社会資源を、それぞれのお互いの顔の見える関係の中でシェアが出来れば、箱であるとかハードとかそんな事は関係なく、実は豊かな点字の繋がりが広がっていくと思います。実は私もそういう形で2、3人とか、小さなグループをいくつも作れたらいいなと思って、今準備をしているところです。 野々村:  ありがとうございました。それでは会場からも、もしご意見等ありましたら、お一人ぐらいであればお受け出来るかと思いますが、いかがでしょうか。 8−4.視覚特別支援学校からサピエの点字図書・資料への要望 竹下:  すみません全視情協の竹下です。今日は皆さん、本当に貴重な報告・発表ありがとうございました。渡邊さんに伺いたいのですが、全視情協、サピエ図書館では、視覚特別支援学校でのサピエ図書館の利用登録をお願いしていて、最近だいぶ増えてきたんですね。それで渡邊さんご自身はもちろんサピエ図書館を活用し、生徒さんにも広げてくださっている訳ですが、サピエ設置利用登録、利用というのは、福島ではどうでしょうか。そしてそれに加えた上で、視覚特別支援学校としてサピエ図書館に登録されている点字図書・点字資料についてのご要望があれば伺いたいと思いますが、お願いします。 <30ページ> 渡邊:  はい、福島は登録していないんですね。図書予算が非常に少なくて、県費で買えるものとPTAとか後援会とかから掻き集めて、図書予算の捻出をしているのですけども、県の図書予算は生徒の人数割なんです。だから県立高校に配分される額と、前、私、県立高校で図書もやっていたので、クラスとか生徒数によって配分される額が全然違って、本校25人ぐらいしかいないので、そこでやっぱり年間4万円は厳しいので。  まず自分はサピエに登録していますので、寄付もしてきましたが、それでまず自分のIDで調べて、あるかどうかを確認して、あるものについては借りるということです。生徒には、サピエの登録は卒業の時にはご案内をして、あと自分でも登録している子も結構いますし、成人の生徒もちゃんと活用はしていますね。何らかの形でサピエは使っていますね。なので、自分たちに都合のよい使い方が出来るということは、弱視の生徒も含めてお願いは、理療科には理療科の先生方がいるので、入ってきた時の図書室のガイダンスをやってもらって、便利なグッズを使う紹介と共に、みんな今度は生徒が生徒同士で自分はこうやって本読んでるというのを大人は紹介し合ってますので。  後はそうですね、サピエに学校としてあげてほしいのは、教科書会社がそれぞれに国語の教科書で推薦している、参考にあげている本を片っ端からあげていただけると。教科書が大幅変更されたんですね、今年高校生用が。来年度も変わります。そうすると作者がずいぶん新しくなっています。今回、細馬宏通さんかな、人間観察をして介護の現場で本を書いているんですよね。だからいわゆる作家だけじゃなくて、書き手がずいぶん変わってきていますので、今出ている教科書を見ていただいて、その人達の作品をリストアップしていただくと。今回その人のあるかなと思ったら、二つかな一つかな点訳あがっていたのは。参考図書として生徒に読んどきなと言うと、真面目な生徒は点字図書館にちゃんと借りに行きます。  15年ぐらい前は、これとこれとこれの中から何か一つ、生徒に夏休み中に借りなと言ったら、点字の子は点字で見つけられたんですね。弱視の子は、「テープで見つけたら全然まとめられませんでした」といって、でもそれを正直に言わないで、「テープレコーダー壊れました」と言ったんですね。「じゃあ貸してあげるよ、学校の」と言ったら、「もう返しちゃったんです」と鬼の首を取ったように言われて。あと点字の子がテープで借りた時は、「やっぱりまとめられなかったです」と、ちゃんと言いました。点字の子が点字で読んだら、本当に一章一章を全部あらすじがきちっと書いてあるような、私が読む方が大変という、その提出された宿題を、そんな子でしたので。  その時の教科書に載っている色々な出版社、教科書会社がいくつかありますけど、東京書籍とかが今年の1年生です。点字出版されている教科書をちょっと優先的に作者当たっていただけると。来年度も3種類、論理国語とか色々始まるんですよ、新しい教科が。なので、作家が大分変わっていますので、ぜひそこをチェックしていただくと、その人が出している作品、教科書に載っている作者の作品を当たっていただけると、積極的に「探しに行って自分で借りて読みなさい」が言えるというか。デイジーの方が多いと残念なので、点字あがってるからということで、高校生はそうやってやると広がっていくので。<31ページ>なかなか教科書も頑張っていますので、副読本がサピエで探せるという環境になるといいと思います。 竹下:  ありがとうございました。このテーマには蛇足ですみませんけども、視覚特別支援学校の予算が厳しくてサピエに入れないという話は昔から伺っていて、私どももお金を取りたいわけじゃないのですが、それをタダにしちゃうと文科省や教育委員会がやっぱりサピエに対する認識がね、本当はそこを考えて欲しいと思っているところがあるので、また今後考えていきたいと思います。 8−5.アンケート結果の共有 野々村:  ありがとうございます。チャットの方で、先ほど平井さんからご報告いただきました「アンケートの結果について、全視情協ホームページに掲載して欲しい」(※11)という希望を2件いただいておりまして、事務局より掲載可能だと聞いていますので、お伝えしておきます。 9 まとめ  さて最後ですね、登壇者の方にお一人ずつお話を頂こうと思いますが、出来れば私からの質問を汲んでまとめていただければと思います。 9−1.ボランティアグループと点字図書館の連携、点訳の質を担保する触読校正、機器整備  まず平瀬様ですけれど、図書館とボランティアグループとの役割というか、連携とかそういった部分についてのことも含んで、お話しいただけますとありがたいです、お願いします。 平瀬:  ジャンルの分け方はサピエと名古屋点訳ネットワークでは違うのですが、両方あるようなものを検索して利用出来るようになったらいいかなと思います。  あと、奥野さんや渡邊さんからもお話があったんですけども、点字プリンターが古くなって修理できないとか、修理を依頼しても時間がかかることがあるので、地域のボランティアが作ったものを、点字図書館でプリントアウトしてもらえるようなサービスなんかもあってもいいかなと思います(※12)。  あと、パソコン点訳が主流になって、読者からの手紙を読めないボランティアもいらっしゃいます。それが結構点訳の質にも関わってきていると感じています。私の所は触読校正していますけど、触読校正の人材がいないサークルも結構あるので、その辺も何とかしていかないといけないなというふうに思いました。 <32ページ> 野々村:  あと学習会についてもあれですかね、図書館とボランティアで連携してという。 平瀬:  そうですね、講演会の講師料とかいうこともありますし。あと、これは点字図書館の方のボランティアの人は、地域のボランティアの活動だから遠慮しとこかなというのがあったりして、なかなか情報交換が出来ないし。だから誰でも参加出来るような、点訳ボランティアなら参加出来るような形での講習会だとか、あとやっぱり視覚障害者、読者との交流会なんかも共催出来るといいなと思います。 野々村:  はい、ありがとうございました。 9−2.次世代へ継承すべき点字、教科書点訳へご参加を!  続いて奥野さんですが、今回点字教科書についての質問も9件寄せられていましたが、これから点字教材に関わっていきたいと思っている図書館さん、ボランティアさんがやって行きやすいようなというか、何かヒントになるようなことを含んでお話しいただいてもよろしいでしょうか。 奥野:  はい、まず先ほどもご質問にあったように、教科書点訳という意味でいくと、やはり需要と供給というのは残念ながらバランスが取れていない現状がありますので、「ちょっとやってみようかな」と、「ちょっとドアを叩いてみようかな」と思われる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教科書点訳連絡会の方にご連絡いただけたらと思います。ただ、この活動については一人だけでは活動出来ないものなので、やっぱり点訳してそれをどなたかに校正してもらってというような大きな作業になりますので、グループ単位か図書館単位にはなってくると思うんですね。なので是非ちょっとそういった部分で、お一人お二人でもやってみようかなという方がいらっしゃったら、嬉しく思います。  そして点字に関しては、色々今もデイジーとかテキストデイジーとか音声媒体は沢山出てきていますけれども、もちろんそれを私自身も毛嫌いしているわけではなくて、本当にそれも重要な一つの媒体だと思うのですが、やはり教育の分野で見てみると、学齢期のお子さんであるとか、中途視覚障害の方もそうかもしれません、使用文字として活用されていくという意味では、点字はなくてはならないものだと思っていますので、そういったものが身近に感じてもらえるように。やっぱり「点字ってどんなんだったっけ」みたいなことになってしまうと、なにか広がっていきませんので、点字も一つの媒体としてあるんだよということを、使われる方は少数かもしれないですけど、少数であってもやっぱり使われるものは使われるので、ぜひ継承していけたらなと思っていますので、よろしくお願いします。 <33ページ> 野々村:  はい、ありがとうございました。 9−3.教育現場で活用される様々な点字資料と製作グループ  そして渡邊さんですけれども、今回、サピエ以外にも色々な活用出来るデータがあるということで、その一つとして名古屋点訳ネットワークさんのデータベースというのもあるわけで、学校だけではなくて図書館もそうですが、サピエ以外のデータ活用の可能性とか、そういった部分も含めてお話しいただいてよろしいでしょうか。 渡邊:  はい。私たち視覚障害教員の中では、図書の情報というのが時々あります。  中学生用の各教科の教科書準拠のワークブックなんていうのは、元・宮城教育大教授の長尾博先生、今京都在住の方が、ワークブック仕上がりましたということをご連絡いただいて、「ムツボシくんの点字の部屋」というところにあげていらっしゃいます。多分滋賀県の点訳グループの皆様とかが、お力を貸していただいているのじゃないでしょうか。  あとは、あがっているかどうか分かりませんが、京都の「五十棲点字教室」さんは、学校に年に1回、紙と原本とでボンっと送ってくださるんですね。とても子供達にちょうどいいものを送っていただいているので、あがっているのだったらいいですけど、もしかしたら個人のグループの財産なのかどうかというところで、それはデータじゃなくて紙で頂いています。  あと触図の入った点訳「UZUの会」徳島のところは点図入りですから、逆に紙で頂けてすごくありがたいですね。私たちは点図のデータの方を読めないというか確認出来ないので、きっとサピエにももしかしたら本文だけはあがっているかもしれないのですけど、触図入りのものがあるのじゃないかなと思っていて。  課題図書をやってくださっている方達も最終的にはサピエにあがっているかもしれませんけども、早くという時には、もう直接そこの団体が持っているということが分かっているので、私たちは全部小中高揃った段階で、視覚障害の教員の、盲学校の先生方にはそれを共有しているというか、そんなことをやっています。 野々村:  ありがとうございます。ですので、私達はサピエも充実させるとともに、幅広いニーズに応えるためにサピエ以外のデータもうまく活用していけるといいのかなと思います。 9−4.リハビリテーション訓練修了後も点字を通して繋がるということ  続いて石川さんです。京都ライトハウス鳥居寮の一つの特色かなと思われますが、点字の訓練を修了した方も、ボランティアとしてこれから触読をしていく方の支援にも携わっておられるということですけれども、この辺りも含めて少しよろしいでしょうか。 <34ページ> 石川:  はい。訓練を修了された方が、OBボランティアさんとして活動してくださっています。もちろんライトハウスの方、鳥居寮の方でのお手伝いもあるのですが、地域の南部や北部やそれぞれの場所で必要とされるところで、OBボランティアとしてされています。  やはり当事者ならではの「確かにシとト読みにくいよね」とか、「真ん中二つ点あって、上1個ずつのやつっていつも間違えるんだよね」とか。ご自身も体験された、難しいよね、あるよねという、その寄り添いというのは、やっぱりなかなか読むの大変やったという、そういう経験があってこそ分かち合える場所だったり、安心してくださるというか。「あなたも苦労したのよね」と、「でもそれ、どれぐらいで今みたいに読めるようになったの」なんて、そんなお話も出てきます。仲間同士だからこそ出来る良さというのもあるので。  今現在、私の目の前にも二人ほどボランティア希望の人がいて、実際グループの読み合わせとかそんなことをやってもらうのですけれども、自分が読んでいる側と読まれるのに寄り添うのとは、また少し違うんですよね。でも、その寄り添うこと自体が楽しい。点字というツールを通して、その方が、ボランティアさん自身が活き活きされているなあと、すごく私は思います。すごく私も力をもらっています。 野々村:  ありがとうございます。点訳ボランティアの方もボランティアとして関わるし、訓練修了者の方もOBとして関わる、そういう人の繋がりの中で訓練を進めておられるということです。 9−5.点字の繋がり -読む楽しみから点字による発信力強化へ-  それでは今日、多岐にわたる発表をいただきました。最後、点訳委員会担当常任理事の岐阜アソシアの山田館長よりまとめをいただきたいと思います。よろしくお願いします。 山田:  はい、山田です。どうも今日は貴重なお話をいただきまして、私は色々と反省をさせられまして。私に欠けているものを、平瀬さん、奥野さん、渡邊さん、石川さん、皆さん持ち合わせている。何かといいますと、色々な人から受けた恩恵を一生懸命気持ちとして返すという、その気持ちがひしひしと伝わってくるお話ばかりに、これが私にはとても無いということが気づきまして、これからの仕事に活かしていかなければと思いました。  子供から、それから中途視覚障害者、大人まで、一つのきっかけというものを大事にして、ただ単に教えるだけではなくて、点字を読むことの楽しみとともにやっていく。それから図書館の利用ですとか、そういったものに繋げていく。多くの人たちの連携というものも作っていく。こういったものが点字を読む人達を増やしていくのだろうなというふうにも。  今私は、当事者として、それから当事者団体に今関わっていまして思うことは、点字って今日もそうなのですけど、読むために色々と提供されているのですけど、まだまだ発信力というものが弱い。<35ページ>私たち視覚障害者は点字という文化と、もう一つ、ICT機器の普及に伴って墨字文化も共有しながら頑張ってICT機器を駆使して発信をしている。でも、やはりICT機器というのは使える人、それから得意じゃない人、これは健常者も同じで視覚障害者も同じなんですね。  なんとか点字がですね、今発信出来るのは試験などの点字受験や、郵便物の宛名書きとかも点字で発信出来ます。それからマイナンバーの記載なども、点字での発信が出来ます。もっと、差別解消法ですとか、そういったものが普及して広まってきて、我々が書いたものを読んでもらえるような環境づくりというのも、やっぱり必要なのかなということを考えております。  まずは今日の4名の皆さんのお話に非常に感動いたしまして、参考にさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございます。 野々村:  山田館長、ありがとうございました。お忙しい中、登壇者の4名の方には短い期間に沢山のご準備をいただいて、本日を迎えてくださいました。そして、オンラインで事例報告をいただきました大阪府立中央図書館さんと静岡県視覚障害者情報支援センターさん。参加者の皆さんも本当にありがとうございます。皆さんと共に点字の未来をさらに切りひらいていければと思います。 あとがき  この報告書を最後まで読んでくださった皆様に心よりお礼申し上げます。  今回の全体会では、点字図書を作る立場、貸出す立場、点字図書館・公共図書館・点訳グループのネットワークに加え、視覚障害リハビリテーションの現場、教育現場から貴重な実践報告をいただき、日々のご奮闘の様子が伝わってまいりました。立場を越えて一緒に取り組んでいく意義を改めて感じた次第です。また、事前に行いましたアンケートにも詳細な回答をお寄せいただき、各館の現状や工夫の一端を知ることができました。皆様、ありがとうございました。  本報告書が、それぞれの地域での取組み、それぞれの現場での取組みのヒントになればと願います。そして、点字文化を守り育て、視覚障害者の読書バリアフリーをさらに推し進めるべく、関係者の皆様と手を携えて、その手のぬくもりを感じながら、また新たな一歩を踏み出せればと思います。引き続き皆様のお力添えをいただけましたら幸いです。今後とも、どうぞ宜しくお願い申し上げます。   2023年4月 全視情協点訳委員会 <36ページ> 【参照】 ※1 大樹会HP https://www.n-braille.net/taijukai/index.html ※2 名古屋点訳ネットワークHP https://www.n-braille.net/ ※3 ボランティアのための漢点字入門 http://www.n-braille.net/kantenji/eib.pdf ※4 TAKAO AI https://takao.ai/ ※5 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会HP https://kyotenren.org/ ※6 きょうきらら:京都ライトハウスで販売している点字雑誌 https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/service/center/center2/#kirara ※7 うれしたのしや読書 エピソード(メルマガ色鉛筆第37号「点字で開くワンダーランドへの扉」) http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/97 ※8 訓練を離れて改めて思うニーズ(就労ニーズへの取組み事例) https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/news/news-8763/#content_area ※9 動画(鳥居寮の点字訓練の様子「点字とともに 点字となかよし」) https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/news/news-6564/ ※10 文集「点字と私」 https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/column/column-6505/#content_area ※11 「点字図書・点字資料利用拡大のための工夫について」アンケート報告書(全視情協HP会員専用ページ内「会員向け資料」に掲載) ※12 点字のプリントサービス:名古屋市は「視覚障害者ワードプロセッサの共同利用」という事業で「視覚障害者の方または視覚障害者の方へ点字情報を提供しているボランティアの方が、市内4ヵ所の施設にて、文書の作成と印刷を行う」ことが出来る。(名古屋点訳ネットワークには名古屋市以外のボランティアサークルも登録しており、社会福祉協議会や公共図書館などの点字プリンター設置有無は地域によって様々である。)