(p1) 「サピエ図書館」登録音声デイジーデータ製作基準     2022年10月1日     特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会  T.はじめに  2011年の「サピエ」開設以降、情報保障に関する諸法令の成立・改正により、「サピエ図書館」の利用は、視覚障害・読字障害・肢体不自由等の障害により、活字で印刷された著作物の利用が困難なすべての人へと広がりました。インターネットやパソコン・スマートフォンの普及も進み、今や「サピエ図書館」は、全国の視覚障害等の方々の読書を保障するために無くてはならないツールとなっています。  「サピエ図書館」に登録された種々の媒体のデータは、全国の視覚障害者情報提供施設・団体、公共図書館、学校図書館、視覚障害者等個人利用者の共有財産です。中でも、最も利用の多い媒体である音声デイジーは、日本のスタンダードな視覚障害者等用録音図書であることに加え、「サピエ図書館」の価値を高める重要なコンテンツとしての役割も担っています。  当基準は、「サピエ図書館」の音声デイジーデータが同一品質となるよう、仕様等の取り決めを記したものです。記載されていない事項については、各製作施設・団体でご検討いただき、より良い音声デイジーになるようご尽力ください。また、音声デイジーの具体的な製作については、全視情協発行の『音訳ボランティア養成講習会テキスト−基礎課程編−』等を参照してください。  U.「サピエ図書館」登録音声デイジーデータの定義  「サピエ図書館」に登録できる音声デイジーデータは、次の条件をすべて満たしたものとする。  @当基準に則って製作されたものであること。  A当協会「音訳奉仕員養成講習会カリキュラム案〔入門課程〕〔基礎課程〕〔応用課程〕」または同等のカリキュラムの講習会を修了し、一定の技術を習得した音訳者・校正者・編集者が製作したものであること。  B合成音声は使用せず、肉声で読まれたものであること。  C文字、図、表、写真等の原本の情報が適切に音訳されており、音声を聞いただけで内容が理解できる録音図書であること。 (p2)  D製作施設・団体が責任をもって最終確認をおこなったものであること。  なお、当基準では、「サピエ図書館」に登録されダウンロード可能な状態になった音声デイジーデータを『音声デイジーコンテンツ』と記す。  V.「サピエ図書館」への製作着手登録について  施設・団体で音声デイジーデータとして製作する図書が決まったら、まずは「サピエ図書館書誌入力規則」に基づいて書誌登録(着手登録)を行う。  なお、著作権法第37条第3項に則り、権利者等の権益を阻害しないよう、選書時には必ず出版登録の確認を行う。すでにデイジー形式で出版されている音声デイジーデータは、著作権者の許諾なしに製作・登録できない。  着手登録を行ったら、音声デイジーデータとしての品質を担保しつつ、速やかに製作し、登録施設・団体の責任の下、必ずデータをアップする。  W.「サピエ図書館」へのコンテンツ登録について  1.コンテンツの重複登録の禁止  原則として、書名、著者名(編集者名等)が同一の図書のコンテンツの重複登録は認めない。ただし、下記の場合を除く。  (1)原本に関して  @版次が異なる  Aハードカバー(単行本)と文庫本  B出版社が異なる  C翻訳物の場合、訳者が異なる  (2)国立国会図書館のサーバーから音声デイジーコンテンツが提供されている場合  2.コンテンツ登録期間について  原則として、音声デイジーコンテンツの登録期間は限定しない。なお、逐次刊行物等、期間を限定して提供する情報については、次のとおりとする。  (1)書誌に削除予定日を入力する。 (p3)  (2)逐次刊行物等の登録期間は、原則として最新号と前3号分とする。  (3)デイジーコンテンツの削除後も書誌情報を残し、バックナンバー等へのニーズに応えられるよう、音声デイジーデータの管理保管に努める。  (4)他施設・団体の依頼により、バックナンバーを一時的にコンテンツ登録できる期間は、原則として2週間とする。  3.コンテンツの削除  次の場合、速やかに登録されたコンテンツの削除を行う。  (1)削除予定日を経過したもの。  (2)音声デイジーコンテンツ登録後に、出版社等から音声デイジーデータ形式で販売されたもの。  X.音声デイジーデータの仕様  1.製作単位は、原則として原本1冊につき、1タイトルとする  ただし、原本1冊が1枚のCDに収まらないものについては、タイトルを分割して製作する。  2.データフォーマット  (1)デイジーバージョン2.02。  (2)MP3 32kbps Mono。  3.録音設定  (1)PCM 22.05kHz Monoで録音・編集を行う。  (2)録音のピークは−6dBから−8dBくらいとする。  Y.音声デイジーデータの項目と順序  1.始めの枠アナウンス  2.デイジー図書凡例  3.原本凡例、まえがき、目次、本文、著者略歴、原本奥付など  4.デイジー図書奥付 (p4)  それぞれの項目の内容は次の通りとする。  1.始めの枠アナウンス  (1)書名・副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次  (2)著者名(編者名・訳者名)  (3)ディスクナンバー(ディスク複数化の場合のみ)  例:「ディスク全○枚、ディスク1」  ※書名、著者名、ディスクナンバー(第1セクションの先頭フレーズ)は原則1フレーズ化する。  なお、書名、副書名などが長く、デイジー図書としての利便性が損なわれる場合は、適宜フレーズを分けてもよい。ただし、ディスク複数化の場合、ディスクナンバーについては、第1セクションの先頭フレーズに含めるものとする。  (4)製作施設・団体名  ※著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に入れる。  (5)著作権処理について  例:「この図書は著作権法第37条第3項に基づいて製作しています。又貸し、複製等による第三者への提供はできません。」 「この図書は著作権者の許諾を得て製作しています。又貸し、複製等による第三者への提供はできません。」  2.デイジー図書凡例  階層についてのアナウンスを必ず入れ、続けて、そのデイジー図書を使用する上で必要な情報(音訳・編集の処理等)を入れる。  例:「デイジー図書凡例 この図書の階層は、レベル3まであります。レベル1は、まえがき、それぞれの章、あとがき、参考文献、および索引などです。レベル2は、節とコラム、索引の中の人名索引、事項索引です。レベル3は、節の中の目次に無い項目と、索引の中の〈あ行〉〈か行〉などです。図・表・写真の最初と最後をグループで区切っています。デイジー図書凡例、終わり。」 (p5)  ディスク収録情報(ディスク複数化の場合のみ)  例:「ディスク1には、○○から○○まで、ディスク2には○○から○○までを収録しています」 「この図書は「○○○」原本1冊をデイジー編集により[分冊1][分冊2]に分けたものの[分冊1]です。階層は 〜中略〜 。ページ付けはデイジー図書として行い、 〜中略〜 [分冊1]の最終ページは○ページ、[分冊2]の本文は○ページから、最終ページは○ページです。 〜後略〜」  3.原本凡例、まえがき、目次、本文、著者略歴、原本奥付など  原則として、原本の記載順序に基づいて音声デイジー化する。  ※レベル1の見出しについては、目次でページ数が記載されていない場合はページ数を補って読む。  ※原本の「凡例」「奥付」は、原文によらず見出しを「原本凡例」「原本奥付」とする。  4.デイジー図書奥付  (1)書名(副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次)  (2)製作施設・団体名  例:「製作 ○○○」(著作権法第37条第3項に基づいて、製作している施設・団体名を正確に読む。) 「製作協力 ○○○」(著作権法第37条第3項に該当しない団体、あるいはボランティアグループなどが希望すれば読んでもよい。)  (3)製作完了年月  例:「デイジー図書奥付 書名○〇 製作〇〇 製作完了○○○○年○月 以上で、「○〇」を終わります。」 (p6)  ※ディスクナンバー(ディスク複数化の場合のみ) 例:「ディスク○に続きます」  Z.音声デイジー編集の規則  1.階層(レベル)  (1)以下の項目は、独立した1セクションとし、その階層はレベル1とする。なお、見出し入力については【 】内の文字のみ入力とする。  〔レベル1に設定する項目(セクション)〕  ・始めの枠アナウンス【書名】  ・デイジー図書凡例【デイジー図書凡例】  ・原本凡例、まえがき、目次、本文(*)、著者略歴、原本奥付など。  ・デイジー図書奥付【デイジー図書奥付】  (*)本文のレベル付けは、原則として原本の構造通りに階層化する(レベル1〜6まで設定可能)。ただし、階層が深すぎると使いにくくなる場合もあるので、その点も考慮する。  (2)目次のない原本も適宜セクション分けを行う。  (3)目次の階層化は原則として行わない。  2.見出し入力  (1)原則として原本通りに入力する  入力には機種依存文字および旧字などを使用しないよう注意する(デイジー再生機器・ソフトウェアによっては見出しに機種依存文字や旧字が使われていると読み込まない場合があるため)。  ソフトウェアの仕様により入力文字数に制限がある場合は略記してもよい。  (2)特殊記号(☆、△、†、‡など)  装飾的な使い方をしているものについては省略してもよい。  (3)表示できない文字  パソコンで表示できない文字については仮名(カタカナなど)で入力してもよい。また、英語以外の言語で書かれている場合は表示できる範囲でアルファベットに置き換えてもよい。 (p7)  3.フレーズ  以下の項目は、1フレーズ化する。ただし、デイジー図書としての利便性が損なわれる場合は、適宜フレーズを分けてもよい。  ・書名(副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次)と著者名(第1セクションの先頭フレーズ)。  ・目次の中の、見出しとページ数。(例:『第1章 ○○○ 2ページ』)  ・本文の各セクションの見出し。  ・索引の中の、見出しとページ数。  4.ページ設定  (1)ページ設定は、原則として原本ページの変わり目の直近のフレーズで行う。  (2)目次のない原本もページ設定をする。  (3)原則として原本に存在するページはページ設定をする。また、前付ページ、特殊ページについては、原本の内容により適宜省略してもよい。  (4)原本通りにページ設定をしない場合は、その旨をデイジー図書凡例等に入れる。  5.マーク・コメント  マーク・コメント情報は、製作上の便宜のために特定のフレーズに付けるものであり、作成されたデイジー図書には反映されないが、編集が完了した段階で、マーク及びコメントは削除しておく。  6.音声デイジーデータの書誌情報  書誌情報は下記のPRS−Proの項目を参考に、各編集ソフトウェアの入力規則に準拠して入力する。なお、入力には機種依存文字および旧字などを使用しないよう注意する(デイジー再生機器・ソフトウェアによっては書誌情報内に機種依存文字や旧字が使われていると読み込まない場合があるため)。  (1)タイトル……書名(副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次) (p8)  (2)著者……著者名(訳者、監修者、編集者等を含む)  (3)原本発行者……発行所名(発行人ではなく、発行所・出版社・発行元のいずれかを入力)  (4)原本発行年月日……デイジー化した原本の版・刷の発行日を半角で入力  例)2022年1月11日→20220111  (5)ISBN……ISBN(ISBN等が無い資料は入力不要)  (6)識別名……デイジーデータのID(蔵書番号等)を入力 ※PRS−Proでは未入力の場合、自動的に日時情報が入力される  (7)言語……日本語(使用言語。デフォルトでは日本語)  (8)文字コードセット…… [Shift_JIS](デフォルトは[Shift_JIS])  (9)DAISY発行者……施設・団体名(著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に入力)  (10)DAISY発行年月日……デイジーデータの完成日等を半角で入力 例)2022年7月1日→20220701  [.音声デイジーデータの校正について  サピエ図書館に登録できる音声デイジーデータは、同一版・刷の原本を用い、音声の校正およびデイジー編集の校正を「1校」以上行ったものであることとする。必須ポイントを下記に記す(具体的な方法は全視情協発行『音訳ボランティア養成講習会テキスト−基礎課程編−』を参照)。  1.音声の校正  ・録音の順序、枠アナウンスが適切か。  ・音量・音質は適切か。  ・誤読が無いか。  ・明瞭な発声・発音か。  ・言葉の繋がり、文章の切れ目、間の取り方は適切か。  ・全体を通して自然な抑揚、スピードで読めているか。  ・処理方法が適切か。 (p9)  2.デイジー編集の校正  ・「Z.音声デイジー編集の規則」に則り、利便性に優れた図書として編集されているか。  3.「サピエ図書館」へのコンテンツ登録前の最終点検  サピエ図書館にコンテンツ登録する前に、必ず、施設・団体の担当者が責任をもって最終点検を行う。  なお、登録されたデイジーコンテンツが製作基準に準拠していないなど、データに誤りや不具合が見つかった場合は、速やかにコンテンツを修正のうえ、再登録を行う。  《改訂履歴》  2011年2月 策定  2018年10月 改訂:(主な改訂内容)コンテンツ登録にあたっての「出版登録」の確認を新規追加。音声デイジー編集の「見出し」「グループチェック」「ビルドブック」「音声エクスポート」についての役割・注意事項等を追記。合成音声デイジーの書誌の記載方法を新規追加。  2020年7月 改訂:(主な改訂内容)「校正について」を新規追加。  2022年10月 改訂:(主な改定内容)全面的な文言等の見直し。「音声デイジーデータの項目と順序」の変更。参照マニュアルの変更。 以上