「サピエ図書館」登録マルチメディアデイジーデータ製作基準       2015年3月10日         2018年10月20日改訂       2020年7月31日改訂       特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 T はじめに 1.『マルチメディアデイジーデータ』の定義  マルチメディアデイジーは、電子テキスト(文字列)や画像に音声ファイルを同期させて構造化したデイジーデータで、文字の色や大きさ・音声のスピード等を変更して利用することができる。墨字・画像のみのテキストデイジーとの違いは、正しい墨字と画像等の情報とともに誤読のない音声(肉声・合成音声)が同期されている点である。  「サピエ図書館」に登録するマルチメディアデイジーデータは、墨字の情報に加え音声の情報も必要としている視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある方への情報提供を目的として、一定の基準に基づいて製作し、原則としてデイジーバリデートをクリアしたマルチメディアデイジーデータであることとする。 2.語句の説明  『フレーズ』:マルチメディアデイジーデータを再生したときにハイライトしていく一番小さな文字列と音声のまとまり。一度にハイライトする文字列と音声=1フレーズとする。文章は「フレーズ」のまとまりで構成されている。  『セクション』:目次、第1章、第1節、第1項、あとがき、索引など、見出しごとのまとまり。  『レベル』:セクションの階層。目次、凡例、第1章、第2章、索引などの一番大きなセクションをレベル1、章の中にある、第1節、第2節、などのセクションをレベル2、節の中にある、第1項、第2項、などのセクションをレベル3・・・・・・と設定する。デイジー規格上、レベルは6まで設定可能。 U 「サピエ図書館」へのコンテンツ登録について 1.重複登録の定義  原則として、書名、著者名(編集者名等)が同一の図書のコンテンツは認めない。ただし、下記の場合を除く。 (1)原本に関して  @版次が異なる  Aハードカバー(単行本)と文庫本  B出版社が異なる  C翻訳物の場合、訳者が異なる (2)データに関して  @「サピエ図書館」にすでに書誌があってもコンテンツが登録されていない場合  A「サピエ図書館」に合成音声版のコンテンツ(収録されている音声情報のすべてまたは大部分が合成音声のコンテンツ)のみ登録されている場合。  注:ただし、(2)−Aの場合に登録できるのは、肉声で製作したコンテンツのみとする。 2.書誌登録  ※以下の項目以外については、「サピエ図書館書誌入力規則」に沿って記入する。  『3.製作』  ・資料種別 「マルチメディアデイジー」  ・校正レベル 「1校」以上  ・ 製作注記 製作ソフト名とバージョンを記入(例:「PLEXTALK Producer」Ver.1.3.0.0にて製作)  ・ 国会への通知 「通知する」にチェックを入れない  ・点字・墨字情報 総ページ数 「(原本のページ数を記入する)」  ・録音情報    総時間数「(録音時間数を記入する)」  DAISYバージョン「2.02」   音声圧縮形式「MP3」  なお、マルチメディアデイジーの音声部分の製作に合成音声を使用した場合は、下記のように表記する。 (1)収録されている音声情報のすべてが合成音声の場合  『1.書名』  ・《書名》:[合成音]○○○(タイトルの前に[合成音]と補記)  ・《書名読み》:○○○(タイトルのみ)  ・《書名点字》:○○○(タイトルのみ) (2)収録されている音声情報の大部分が合成音声で、一部が肉声の場合  『1.書名』  ・《書名》:[合成音] ○○○(タイトルの前に[合成音]と補記)  ・《書名読み》:○○○(タイトルのみ)  ・《書名点字》:○○○(タイトルのみ)  『3.製作』  ・《製作注記》:「一部、肉声音訳で製作」と明記 (3)収録されている音声情報の大部分が肉声で、一部が合成音声の場合  『3.製作』  ・《製作注記》:「一部、合成音声で製作」と明記 V マルチメディアデイジーデータの仕様 1.単位  製作単位は、原則として原本1冊につき1タイトルとする。 2.音声  肉声の場合は、全視情協発行『音訳マニュアル【音訳・調査編】』に則って録音する。収録環境および機材は『音訳マニュアル【デジタル録音編】』を参照し、一定の音質を確保すること。  合成音声を使用する場合は、肉声と同様、全視情協発行『音訳マニュアル【音訳・調査編】』に則って、聞いて理解できる音声情報であることを第一義とし、誤読の無いように読みの修正をおこなうこと。また、録音のピークは−6db〜−8dbを目安とする。 3.マルチメディアデイジー化すべき項目と順序 (1)タイトル(原本書名)  ・書名(副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次)  ・著者名(編者名・訳者名)  ・製作施設・団体名(著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に記述)  ・製作年  ・著作権処理について  例:「この図書は著作権法第37条第3項に基づいて製作しています。又貸し、複製等による第三者への提供はできません。」  「この図書は著作権者の許諾を得て製作しています。又貸し、複製等による第三者への提供はできません。」 (2)デイジー図書凡例  階層などの構成、およびマルチメディアデイジー化するうえでの処理方針を表記する。 (3)原本凡例、まえがき、目次、本文、著者略歴、原本奥付など  原則として、原本の記載順序に基づいてマルチメディアデイジー化する。  ※ 原本の「凡例」「奥付」は、原文によらず見出しを「原本凡例」「原本奥付」とする。 (4)デイジー図書奥付  ・書名(副書名・シリーズ名・巻次・回次・年次)  ・製作 ○○○(著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に記述)  ・製作協力 ○○○(著作権法第37条第3項に該当しない団体、あるいはボランティアグループなどが希望すれば記入してもよい。)  ・製作完了 ○○○○年○月 4.マルチメディアデイジー図書の形式 (1)階層(レベル)  @「V−3.マルチメディアデイジー化すべき項目と順序」であげた項目(以下に改めて列記)は、独立した1セクションとし、その階層はレベル1とする。  【レベル1に設定する項目(セクション)】  ・タイトル(原本書名)  ・デイジー図書凡例  ・原本凡例、まえがき、目次、本文(*)、著者略歴、原本奥付など。  ・デイジー図書奥付  (*)本文のレベル付けは、原則として原本の構造通りに階層化する(レベル1〜6まで設定可能)。ただし、階層が深すぎると使いにくくなる場合もあるので、その点も考慮する。見出しの語句については、原則として原文に準拠する。  A目次のない原本も適宜セクション分けを行う。  B本文の階層の見出しの語句は、原則として原文に準拠する。原本によって原文と同じ語句にできない場合は適宜検討し別の語句を記入してもよい。 (2)デイジー図書凡例  階層などの構成、およびマルチメディアデイジー化するうえでの処理方針を表記する。  @ 階層(レベル)について  例:この図書の階層はレベル3まであります。レベル1は、それぞれの章と索引、レベル2は、それぞれの節とコラム、レベル3は、目次にない本文中の項目と図表等です。  Aその他、原本の表記と異なる編集をした箇所 (3)目次・索引  @目次の階層化は原則として行わない。  A目次や索引にある、「…」等の装飾的な表現は省略する。ページ番号は「○○(半角数字)ページ」と表記する。  B見出しとページ数は1フレーズ化する。 (4)ページ設定  @ページフレーズは「○○ページ」と表記し、「飛ばし読み(スキッパブル)」設定を行う。  Aページフレーズは、原則として音声化しない。  Bページ設定は、原則として、原本ページのかわり目の直近の句点、および「!」「?」など句点と同様の役割をする記号の位置とする。  C段落内や「」()などのカッコ類の中にページフレーズを設定する場合、ページフレーズは原則として独立した1行にしない。  Dセクションの先頭にページのフレーズが来る場合は、直前のセクションの最後のフレーズとしてページのフレーズを設定する。  E目次のない原本もページ設定をする。  F原則として原本に存在するページはページ設定をする。ただし、原本の空白ページにはページ設定をしない。また、前付ページ、特殊ページについては、原本の内容により適宜省略してもよい。  【ページ付けの例:原本が下記のようになっていた場合】  (原本の30ページ)(説明:本文1行目「■■でした。」。 ページ数30)   (原本の31ページにあたる所)(説明:空白)  (原本の32ページ)(説明:本文1行目「第▲章」。2行目「●●について」。ページ数32)  ・31ページのページ付けは行わない。  ・32ページにあたるページ設定は、原本の30ページが存在するセクションの最後にページ付けを行う(30ページの『■■でした。』のフレーズの後ろに『32ページ』とページのフレーズを入れる)。  G原本中の図表などの関係で原本通りにページ設定をしない場合は、その旨をデイジー図書凡例に記述する。  例:「図・表・グラフ等は、原本と違うページに移動している場合があります。」 (5)飛ばし読み(スキッパブル)機能の設定  @飛ばし読み機能を設定するフレーズは1フレーズ化する(複数のフレーズにまたがって飛ばし読み機能を設定することはできない)。  A通常ページ以外のフレーズの飛ばし読みは、適宜、製作施設で判断して設定する。 (6)改行・段落  @原則として原本に準じて改行する(原本の文字列の折り返し箇所ではない)。  A段落のインデント(字下がり)は、原本通り設定する。  B問題集など、原本では問題と解答が1行に表記されていてもマルチメディアデイジーでは行を変えた方がよいのではないかと思われる資料は、適宜、改行の処理を行ってよい。 (7)フレーズ  @原則として、フレーズ内のテキストと音声の情報は同じものとする。  A次のものは1フレーズ化する。  ・書名と著者名(第1セクションの先頭フレーズ)。ただし、書名、副書名などが長い場合は、適宜フレーズを分けてもよい。  ・目次の中の、見出しとページ数。(例:『第1章 ○○○ 2ページ』)  ・本文の各セクションの見出し。  ・索引の中の、見出しとページ数。  ・飛ばし読み(スキッパブル)機能を設定する文字列 (8)図、表、写真等  @原本での役割を考えた上で、適切に挿入する。  A原則として挿入した画像には、画像が表示されない時の為に代替テキストを入力する。  B本文と、図、表、写真等の区別がつくように音声化する。  C必要に応じて、音声で説明を補足する。  D画像データは、サイズ、解像度ともに適切に編集したものを挿入する。ただし、縦横の比率はそのまま保持する。 (9)製作者注  製作者による注をテキストとして表示する場合は、『製作者注 ○○○○。注、終わり。』などのように、原本の情報と区別できるように記述する。 (10)ルビ  原則として原本に準じてルビをふる。 (11)太字、斜体、下線など  @原則として原本に準じて設定する。ただし、装飾的な使い方をしているものについては省略してもよい。  A原本通り設定できない文字装飾は、内容に応じて他の装飾に置き換えるなど適宜変更してもよい。その場合は、デイジー図書凡例や製作者注などでその旨を明記する。 (12)数字、外国語など  @原則として原本通りに記述する。  A本文内のローマ数字(@、Uなど)については原本に準じて表記するが、『第T章 ○○』などアラビア数字に置き換えても問題がない箇所については、適宜、変更してもよい。 (13)特殊記号(☆、△、†、‡など)  @原則として原本に準じて表記するが、装飾的な使い方をしているものについては省略してもよい。  A合成音声でマルチメディアデイジー化する際は、「※」を「注」などの語句に適宜変更してもよい。 (14)表示できない文字  パソコンで表示できない文字については仮名(カタカナなど)で表記してもよい。また、英語以外の言語で書かれている場合は、表示できる範囲でアルファベットに置き換えてもよい。その場合は、デイジー図書凡例や製作者注などでその旨を明記する。 (15)ビルドブック、および、デイジーバリデート  @最後にビルドブック、および、デイジーバリデートを行わなければならない。  ADAISYバージョンは、原則としてDAISY2.02とし、音声の圧縮率はMP3の32kbpsとする。 (16)コピーガードについて  「サピエ図書館」に登録するマルチメディアデイジーデータについては、コピーガード(DRM)は付けない。(「サピエ図書館」からダウンロードしたデータには自動的に電子透かし(ウォーターマーク)が入るので、製作側でコピーガードについての処理はしない) 5.マルチメディアデイジー図書の書誌情報 (1)書誌情報の記述には、機種依存文字および旧字体を使用しない。 (2)以下の情報は必ず記述する。  @タイトル  A著者名(訳者、監修者、編集者等を含む)  B原本発行者(発行人ではなく出版社名を記述)  C原本発行年月日(デイジー化した原本の版・刷の発行日を記述)  DISBN/ISSN(ISBN等が無い資料は記述不要)  E言語  FDAISY発行者(著作権法第37条第3項に基づいて製作している施設・団体名を正確に記述)  GDAISY発行年月日 6.校正について  文字の校正、音声の校正、デイジー編集の校正を、それぞれ1回以上行うこととする。校正については、原本と照合して以下の項目をチェックする。 (1)テキストの誤字脱字はないか。 (2)音声に誤読はないか。  ※肉声の場合は、全視情協が定める録音図書校正基準(『音訳マニュアル【音訳・調査編】』参照)に準拠する。  ※合成音声の場合は、文意が理解できるよう適切に調整されているか確認する。 (3)デイジー編集が適切であるか。  ・レベル(階層)  ・デイジー図書凡例  ・フレーズ内の文字列と音声の同期  ・目次、見出し、索引のフレーズ化  ・飛ばし読み(スキッパブル)設定  ・図、表、写真等の処理 以上