著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン  2010年12月1日  2020年12月17日一部改定  全国視覚障害者情報提供施設協会 (目的) 1 このガイドラインは、著作権法第37条第3項に規定される権利制限に基づいて、「視覚障害者その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」(以下このガイドラインにおいて「視覚障害者等」という)に対し情報提供サービスを実施しようとする全国視覚障害者情報提供施設協会(以下「全視情協」という。)加盟施設・団体が、著作物の複製、譲渡、公衆送信を行う場合に、その取り扱いの指針を示すことを目的とする。 (経緯) 2 2010(平成22)年1月1日に改正施行された著作権法第37条第3項を的確に運用するために、全視情協は 2010年12月1日にこのガイドラインを作成し公表した。このガイドラインの作成にあたっては、「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」の了承を得て、その構成団体である図書館5団体が 2010(平成22)年2月18日に公表した「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」を参考にした。また、2020(令和2)年の改定において、第9項(2)で日本図書館協会サイト内に置かれた「著作権法第37条第3項ただし書該当資料確認リスト」を参照することについて、日本図書館協会障害者サービス委員会の了解を得た。  なお、このガイドラインは、あくまで著作権法第37条第3項に基づく運用を示すものであって、各施設等のサービス内容を規定するものではない。 (本ガイドラインの対象となる施設・団体) 3 このガイドラインにおいて、「施設・団体」とは、全視情協に加盟する施設・団体のうち著作権法施行令第2条に定める者をいう 。 (資料を利用できる者) 4 著作権法第37条第3項により複製された資料(以下「視覚障害者等用資料」という)を利用できる「視覚障害者等」とは、別表1に例示する状態にあって、視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な者をいう。 5 前項に該当する者が施設・団体において視覚障害者等用資料を利用しようとする場合は、利用登録を行う。その際、施設・団体は別表2「利用登録確認項目リスト」を用いて、前項に該当することについて確認する。当該施設・団体に登録を行っていない者に対しては、施設・団体は視覚障害者等用資料を利用に供さない。 (施設・団体が行う複製(等)の種類) 6 著作権法第37条第3項にいう「当該視覚障害者等が利用するために必要な方式」とは、視覚障害者等が利用しようとする当該視覚著作物にアクセスすることを保障する方式をいい、次に掲げる方式等をいう。  録音、拡大文字、テキストデータ、マルチメディアデイジー、布の絵本、触図・触地図、ピクトグラム、リライト(録音に伴うもの、拡大に伴うもの)、各種コード化(SPコードなど)、映像資料のサウンドを映像の音声解説とともに録音すること等 (相互協力) 7 視覚障害者等のための複製(等)が重複しないようにするため、視覚障害者等用資料の施設・団体間及び著作権法施行令第2条第1項各号に定める図書館等は積極的に相互貸借を行うものとする。また、それを円滑に行うための体制の整備を図る。 (複製の品質) 8 施設・団体は第6項に示す複製(等)の質の向上に努める。そのために施設・団体は担当者の研修を行い、全視情協が定める録音図書製作基準、録音図書校正基準、デイジー編集基準等に則り技術水準の維持を確保する。全視情協は、研修に関して積極的に支援する。 (市販される資料との関係) 9 著作権法第37条第3項ただし書に関して、施設・団体は次のように取り扱う。 (1) 市販されるもので、次の a)〜d)に示すものは、著作権法第37条第3項ただし書に該当しないものとする。  a)当該視覚著作物の一部分を提供するもの  b)録音資料において、朗読する者が演劇のように読んだり、個々の独特の表現方法で読んでいるもの  c)利用者の要求がデイジー形式の場合、それ以外の方式によるもの  d)インターネットのみでの販売などで、視覚障害者等が入手しにくい状態にあるもの(ただし、当面の間に限る。また、施設・団体が入手し障害者等に提供できるものはこの限りでない) (2) 施設・団体は、第6項に示す複製(等)を行おうとする方式と同様の方式による市販資料の存在を確認するため、日本図書館協会サイト内に置かれた「著作権法第37条第3項ただし書該当資料確認リスト」を参照する。当該方式によるオンデマンド出版もこれに含む。なお、個々の情報については、以下に例示するように具体的にどのような配慮がなされているかが示されていることを要件とする。  また、販売予定(販売日を示したもの)も同様に扱う。   (資料種別と具体的配慮内容) 例:音声デイジー、マルチメディアデイジー(収録データ形式)、大活字図書(字体とポイント数)、テキストデータ、触ってわかる絵本、リライト (3) 前記(2)の販売予定の場合、販売予告提示からその販売予定日が1カ月以内までのものを著作権法第37条第3項ただし書にある「提供又は提示された資料」として扱う。ただし、予定販売日を 1 カ月超えても販売されていない場合は、施設・団体は第6項に示す複製(等)を開始することができる。デイジー編集による市販資料に関してはその製作期間を考慮し、3カ月程度の猶予を見ることとする。 (4) 施設・団体が視覚障害者等用資料の複製(等)を開始した後に販売情報が出された場合であっても、施設・団体は引き続き当該複製(等)を継続し、かつ複製物の提供を行うことができる。ただし、公衆送信については、視覚障害者等が利用できる方式により販売されている事実を認識した時点で中止する。 (ガイドラインの見直し) 10 本ガイドラインは、社会状況の変化等に応じて随時見直し、改訂を行う。 (附則) 1.2018(平成 30)年5月25日に公布された著作権法の一部を改正する法律(平成31年1月1日施行)に合わせ、ガイドラインの一部を修正することとした。  以上 運用にあたっての補足 1.著作権法第37条第3項のただし書に関して  なお、著作権法第37条第3項のただし書に関しては、上記ガイドライン9に定めるとおりであるが、著作権法の一部を改正する法律(平成 21 年法律第53号。以下「平成21年改正法」という。)の施行の日(平成22年1月1日)より前に同法による改正前の著作権法第37条第3項の適用を受けて作成された録音物の使用については、平成21年改正法附則第2条の定めにより、同項ただし書の対象とはならない。 2.新たに政令指定された施設・団体の過去の複製物の取り扱い  著作権法施行令第2条第1項第1号ニ、第2条第1項第2号の適用(=政令指定によらずSARTRASへの登録により)及び第3号の文化庁長官の指定を受けて新たに著作権法第37条第3項の主体となった者が、当該指定が行われる前に著作権者の許諾を得て製作した複製物の使用については、著作権法第37条第3項の規定の適用を受ける。 別表1 視覚障害 聴覚障害 肢体障害 精神障害 知的障害 内部障害 発達障害 学習障害 いわゆる「寝たきり」の状態 一過性の障害 入院患者 その他施設・団体が認めた障害 別表2 ※ガイドラインに基づき、施設・団体職員が「視覚障害者その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」を判断するための一助としてこのリストを作成する。以下の項目のいずれかに該当する場合は、施設・団体の情報提供サービスの利用者として登録ができる。(本人以外の家族等代理人によるものも含む) 利用登録確認項目リスト (リストの左列に各項目のチェック欄あり) 確認事項−− 障害者手帳の所持 [ ]級 精神障害者保健福祉手帳の所持[ ]級 療育手帳の所持 [ ]級 医療機関・医療従事者からの証明書がある 福祉窓口等から障害の状態を示す文書がある 学校・教師から障害の状態を示す文書がある 職場から障害の状態を示す文書がある 学校における特別支援を受けているか受けていた 福祉サービスを受けている ボランティアのサポートを受けている 家族やヘルパーに文書類を読んでもらっている 活字をそのままの大きさでは読めない 活字を長時間集中して読むことができない 目で読んでも内容が分からない、あるいは内容を記憶できない 身体の病臥状態やまひ等により、資料を持ったりページをめくったりできない その他、原本をそのままの形では利用できない (障害の種類) 視覚、聴覚、平衡、音声、言語、咀嚼、上肢、下肢、体幹、運動-上肢、運動-移動、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸、免疫