厚生労働省 令和3年度障害者総合福祉推進事業 点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究事業 報告書 令和4年3月 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 目次 はじめに A 本事業について B アンケート調査結果 1)公共図書館(障害者サービス実施館)向けアンケート集計結果と考察 ①アンケート調査結果 ②公共図書館(障害者サービス実施館)における障害者サービスの現況と考察 2)視覚特別支援学校(盲学校)における学校図書館向けアンケート集計結果と考察 ①アンケート調査結果 ②視覚特別支援学校(盲学校)における学校図書館の現況と考察 3)点字図書館(視覚障害者情報提供施設)向けアンケート集計結果と考察 ①アンケート調査結果 ②点字図書館(視覚障害者情報提供施設)におけるサービスの現況と考察 C ヒアリング調査結果 1)大学関係へのヒアリング 2)点字出版所へのヒアリング まとめ 参考資料  公共図書館(障害者サービス実施館)向けアンケート  視覚特別支援学校(盲学校)図書館向けアンケート  点字図書館(視覚障害者情報提供施設)向けアンケート  点字図書館の点訳・音訳等のボランティアの実状(2019年度)  読書バリアフリー法(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律)  読書バリアフリー基本計画(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画) 目次終わり はじめに 全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)は、「情報共有社会」の実現を目指し、全国101の視覚障害者情報提供施設・団体が2万人に及ぶボランティアの協力により、国内の視覚障害者をはじめとする読書困難者に向けて、点字・録音図書とアクセシブルな電子書籍を製作・提供するとともに、その基盤システムである視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」の運営を行っている。 顧みると、日本の視覚障害者の読書は、1890年(明治23年)、日本点字の翻案を機に、視覚障害者が文字を獲得したことに始まったと言える。以来、視覚障害者の読書は、点字図書・雑誌、教科書等を中心として、視覚障害者自身をはじめ盲教育や点字出版、点字図書館の従事者や奉仕者に育てられ、その後、1957年の録音図書の誕生、1988年の「てんやく広場」の創設、1998年のDAISYの実用化、そして2010年の「サピエ」のスタートという大きな画期を経て、飛躍的な発展を遂げるに至った。 今日の「視覚障害者等」の読書を保障する法制度、すなわち2019年1月の「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の発効と「著作権第37条第3項」の改正、同年6月の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の施行は、こうした130年余に及ぶ当事者と協働者の熱意と献身的な努力が実ったものと言える。 こうして成立した「読書バリアフリー法」に基づき、その理念を推進する方途として、令和3年度障害者総合福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」が公募され、当協会が受託実施することになった。 これまでも、全国の点字図書館の実績については、当協会の姉妹団体である日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会が40年近く、毎年、調査してきた。また、公共図書館の障害者サービスについても、限られた地域や項目については行われてきた。しかし、国内の視覚障害者等への読書支援の全体像は、茫洋として明らかにされていない。今後、読書バリアフリー法の理念に基づきサービスの充実・改善を図るには、点字図書館や公共図書館、学校・大学図書館等におけるこうした実状を究明することが不可欠である。 本調査研究では、こうした広範な図書館や団体を対象として、アクセシブルな図書製作と提供、ボランティア活動やICT機器の利用支援の現状の横断的な調査に取り組んだ。図書館種別によって調査項目が不揃いだったり、ヒアリング調査にとどまったりという不十分な点もあるが、この調査研究が国内の読書バリアフリーの現状と課題を明らかにする基礎資料となり、各図書館や団体のサービス向上の参考となるとともに、今後の国や地方自治体の諸施策の立案・実施に役立つならばまことに幸いである。 2022年3月15日 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 理事長 竹下亘 ------------ A 本事業について 1. 事業名 「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」事業 2. 事業実施期間 令和3年6月から令和4年3月末まで 3. 事業の背景と目的 令和元年6月に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(通称:読書バリアフリー法)が公布・施行され、令和2年7月には、同法第7条に基づき、施策の一層の充実を図るため、文部科学省と厚生労働省が共同で「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(通称:読書バリアフリー基本計画)を策定した。 この基本計画では、令和2~6年度に国が講ずる施策の方向性として、視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備、アクセシブルな書籍等の製作の支援、端末機器に関する情報の入手支援及び情報技術の習得支援、アクセシブルな図書等の製作人材の育成などが示されている。 これを受けて、同年10月に開催された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会(第6回)」において、点字図書館において実施されている支援の内容や視覚障害以外の者も含めた利用状況、点字図書館・点字出版施設・公共図書館等におけるアクセシブルな書籍等の製作状況や製作人材の育成の実情、点字図書館における端末機器等に関する情報の入手支援やICTの習得支援の実施状況等の調査を実施することとなった。 本事業は、上記を受けて、点字図書館、点字出版施設、公立図書館等を対象としたアンケート調査やヒアリング調査等を行うことで実態を明らかにし、社会調査、障害福祉、教育等の専門家による検討委員会等を開催して、調査結果の分析や活用に向けた論点の整理等を行うことを目的としている。 4. 事業実施体制 本会理事長・竹下亘の下、副理事長の川崎弘が中心になって、検討委員会の開催、アンケート調査項目のとりまとめ、調査票の発送等を行った。 アンケート回答の集計は外部機関に委託したが、集計結果をもとに検討委員会で意見交換を行った。また、大学図書館や点字出版施設等については、検討委員がヒアリング調査を行った。 これらの調査結果とともに、分析・提言を報告書としてとりまとめた。 5. 事業の内容 (1) 検討委員会の開催 検討委員会委員(9名、50音順) 安藤一博(国立国会図書館関西館) 川崎弘(全視情協理事、視覚障害者総合支援センターちば) 佐藤聖一(日本図書館協会障害者サービス委員会、埼玉県立久喜図書館) 竹下亘(全視情協 理事長、日本ライトハウス情報文化センター) 成松一郎(有限会社読書工房) 野口武悟(専修大学文学部) 原田敦史(日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会、堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター点字図書館) 宮城愛美(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター) 三宅隆(日本視覚障害者団体連合) 第1回検討委員会 日時:2021年6月18日(金)13:30~15:00 方法:ZOOM によるオンライン会議 議題: 1.本検討委員会の任務と、年間スケジュールについて(確認) 2.アンケート項目について(提案・検討) 3.その他 第2回検討委員会 日時:2021年8月4日(水)10:00~12:00 方法:ZOOMによるオンライン会議 議題: 1.アンケート調査項目について 2.大学への調査について 3.学校図書館への調査について 4.その他、意見交換 第3回検討委員会 日時:2022年2月22日(火)10:00~12:00 方法:ZOOMによるオンライン会議 議題: 1.アンケート結果について 2.点字出版所へのヒアリング報告 3.大学図書館へのヒアリング調査について 4.報告書作成について 5.今後のスケジュール ※ 第3回、第4回(実施せず)については、オンラインではなく、委員が一同に会して意見交換を行う予定であったが、コロナ禍が収束せず、すべての会合がオンライン開催となった。 ※ メーリングリストを活用し、日常的に情報共有を行い、意見交換できる環境を整えた。 (2)アンケート調査 検討委員会での意見交換等をふまえ、公立図書館向けのアンケート調査項目、視覚特別支援学校(盲学校)向けのアンケート調査項目を確定した。 調査項目の柱は以下のようなものである。 ① アクセシブルな図書等の製作状況(点字出版施設を含む) ② サービス提供の状況(サピエの利用状況、図書館の貸出数、等) ③ ボランティア等(製作人材)の養成・活動状況 ④ ICT機器の情報提供や利用支援の状況等 それぞれ、10月末に全国の公立図書館343館と全国の視覚特別支援学校(盲学校)67校宛に発送した。アンケート調査用紙は別掲のとおりである(「参考資料」1~3ページ参照)。回答締切を11月末として依頼したが、年内(12月末まで)に回答があったものを有効とした。結果、公共図書館からは310館(回収率90.4%)、視覚特別支援学校(盲学校)からは58校(回収率86.6%)の回答を得ることができた。 なお、本来であればこの時期の調査は前年度(2020年度)の実態について問うべきであるが、2020年2月に端を発する新型コロナウイルス感染症の拡大防止で、2020年度は「3密(密集・密接・密閉)回避」生活を余儀なくされ(いわゆる「コロナ禍」。2022年3月現在も収束に至っていない)、特に点字図書館ではボランティア活動が制限されるという大きな影響があった。 このため、2020年度を調査対象にすると、平常年での回答との大きな差異が懸念され、あえて調査対象を2019年度として行ったものである。 一方、点字図書館では、(社福)日本盲人社会福祉施設協議会の情報サービス部会が毎年、実態調査を行っており(内部資料「日本の点字図書館」)、2019年度の調査はすでに行われていたので、これを参考にさせていただくこととした。また、今回の新たな調査項目については、その部分のみを「2019年度分追加調査」として協力いただいた。追加調査項目は別掲のとおりである(「参考資料」3ページ参照)。 (3)ヒアリング調査 大学図書館については、「アクセシブルな書籍等の提供体制」をもつのは、視覚障害学生が在籍する場合等に限定されてしまうことから、調査件数が限られてくる。そのため、個別のヒアリング調査として実施した。 また、点字出版物についても調査対象とし、点字出版業界の現状についてはヒアリングで話を伺った。 ヒアリング調査実施状況 ① 大学図書館 国立A大学図書館 調査日:2022年1月27日(木) 私立B大学障害学生支援室 調査日:2022年3月7日(月) ② 点字出版関係 東京点字出版所 理事長 肥後正幸氏 調査日:2022年1月19日(水) (4)報告書の作成と配布 本事業により、アクセシブルな書籍の提供体制と製作状況について、まとまった調査を実施することができ、また、アンケートやヒアリングの結果について、社会調査や図書館、障害者教育の専門家と関係団体で構成する検討委員会メンバーで意見をいただきながら報告書としてまとめることができた。 この報告書は、特に全国の公立図書館(都道府県立ならびに市町村立図書館)に配布することで、「アクセシブルな書籍等」について理解を深めていただき、点字図書館をはじめとする関係機関との連携を進めていただくことを願うものである。 なお、アクセシブルであることに配慮し、活字版(冊子)だけでなく、点字・テキスト等のデータを収めたCDも同時に作成し、活字版冊子に封入している。 また、本会ホームページ等にも掲載し、広く周知を図る。 ------------ B アンケート調査結果 1) 公共図書館(障害者サービス実施館)向けアンケート集計結果と考察 ① アンケート調査結果 2021年10月末日、調査票を全国の公共図書館343館に送付し、310館からの回答を得た。 (回答率90.4%)N=310 0. 基本情報 ◎サピエ図書館への会員登録(N=310) あり 204館(65.8%) なし 106館(34.2%) 無回答 0館(0.0%) →「なし」回答館へ(N=106): 今後の予定 あり 5館(4.7%) 検討中 21館(19.8%) なし 75館(70.8%) 無回答 5館(4.7%) ◎国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスへの登録(N=310) あり 117館(37.7%) なし 192館(62.0%) 無回答 1館(0.3%) →「なし」回答館へ(N=192): 今後の予定 あり 10館(5.2%) 検討中 66館(34.4%) なし 109館(56.8%) 無回答 7館(3.6%) ◎特定録音物等発受施設指定(N=310) あり 68館(21.9%) なし 240館(77.4%) 無回答 2館(0.7%) ◎心身障害者用ゆうメール発受施設届出(N=310) あり 116館(37.4%) なし 189館(61.0%) 現在申請中 3館(1.0%) 無回答 2館(0.6%) 1. 障害者サービスを担当する職員がいますか いる 275館(88.7%) いない 35館(11.3%) →「いる」と回答した図書館のうち 正規 654人 非正規 520人 不明 26人 →「いる」と回答した図書館のうち ◎1~5人 232館 (内訳)1人 44館、2人 64館、3人 54館、4人 32館、5人 38館。 ◎6~10人 27館 (内訳)6人 8館、7人 8館、8人 3館、9人 5館、10 人 3館。 ◎11~15人 9館 (内訳)11人 1館、12 人 2館、13 人 2館、14 人 2館、15 人 2館。 ◎16人以上 7館 2. 障害者サービス用資料の所蔵、製作について(N=310) (1) 点字 所蔵あり 278館(89.7%) 所蔵なし 28館(9%) 無回答 4館(1.3%) 所蔵数(タイトル) 117,372タイトル(平均422タイトル) N=278 製作あり 76館(24.5%) 製作なし 218館(70.3%) 無回答 16 館(5.2%) 全製作数 27,488タイトル(平均362タイトル) N=76 2019年度製作数 955タイトル (2)カセットテープ 所蔵あり 173館(55.8%) 所蔵なし 134館(43.2%) 無回答 3館(1%) 所蔵数(タイトル) 160,542タイトル(平均928タイトル) N=173 製作あり 85館(27.4%) 製作なし 199館(64.2%) 無回答 26館(8.4%) 全製作数 71,261タイトル(平均838タイトル) N=85 2019年度製作数 948タイトル (3)音声デイジー 所蔵あり 214館(69%) 所蔵なし 92館(29.7%) 無回答 4館(1.3%) 所蔵数(タイトル) 93,756タイトル(平均438タイトル) N=214 製作あり 139館(44.8%) 製作なし 144館(46.5%) 無回答 27館(8.7%) 全製作数 44,782タイトル(平均322タイトル) N=139 2019年度製作数 3,830タイトル (4)テキストデイジー 所蔵あり 6館(1.9%) 所蔵なし 297館(95.8%) 無回答 7館(2.3%) 所蔵数(タイトル) 60タイトル(平均10タイトル) N=6 製作あり 2館(33.3%) 製作なし 4館(66.7%) 全製作数 9タイトル(平均4.5タイトル) N=2 2019年度製作数 7タイトル (5)マルチメディアデイジー 所蔵あり 154館(49.7%) 所蔵なし 151館(48.7%) 無回答 6館(1.6%) 所蔵数(タイトル) 14,742タイトル(平均96タイトル) N=154 製作あり 8館(5.2%)N=154 製作なし 146館(94.8%) 全製作数 198タイトル(平均25タイトル) N=8 2019年度製作数 28タイトル (6) 拡大写本 所蔵あり 40館(12.9%) 所蔵なし 264館(85.2%) 無回答 6館(1.9%) 所蔵数(タイトル) 6,616タイトル(平均662タイトル) N=40 製作あり 7館(17.5%)N=40 製作なし 33館(82.5%) 全製作数 484タイトル(平均69タイトル) N=7 2019年度製作数 16タイトル (7)大活字本 所蔵あり 300館(96.8%) 所蔵なし 6館(1.9%) 無回答 4館(1.3%) 所蔵数(タイトル) 621,671タイトル(平均2,072タイトル) N=300 (8)触る絵本 所蔵あり 280館(90.3%) 所蔵なし 25館(8.1%) 無回答 5館(1.6%) 所蔵数(タイトル) 18,957タイトル(平均68タイトル) N=280 製作あり 28館(10%) N=280  製作なし 252館(90%) 全製作数 1,948タイトル(平均70タイトル) N=28 2019年度製作数 121 タイトル (9)布の絵本 所蔵あり 176館(56.8%) 所蔵なし 125館(40.3%) 無回答 9館(2.9%) 所蔵数(タイトル) 6,290タイトル(平均36タイトル) N=176 製作あり 54館(30.7%) N=176  製作なし 122館(69.3%) 全製作数 1,849タイトル(平均34タイトル) N=54 2019年度製作数 81タイトル (10)LLブック 所蔵あり 260館(83.9%) 所蔵なし 45館(14.5%) 無回答 5館(1.6%) 所蔵数(タイトル) 6,128タイトル(平均24タイトル) N=260 (11)市販CD・カセット 所蔵あり 107館(34.5%) 所蔵なし 195館(63.2%) 無回答 7館(2.3%) 所蔵数(タイトル) 57,591タイトル(平均538タイトル) N=10 (12)テキストデータ 所蔵あり 7館(2.3%) 所蔵なし 298館(96.1%) 無回答 5館(1.6%) 所蔵数(タイトル) 122タイトル(平均17タイトル) N=176 製作あり 7館(100%)N=7  全製作数 68タイトル(平均10タイトル) N=7 2019年度製作数 6タイトル 3. 障害者サービスの利用実績(N=310) (1)利用登録者数 登録を行っている図書館 257館(82.9%) 登録を行っていない図書館 34館(11.0%) 無回答 19館(6.1%) 登録を行っている図書館の中で利用者登録者総数は、34,159人(うち視覚障害者は10,408人)(注:不明の割合が高い。) (2)資料の個人貸出数とオンライン提供数 (製作した資料データを国立国会図書館のサイトから送信している場合) ①点字 個人貸出数 15,464タイトル オンライン提供数 11,063タイトル ②カセットテープ 個人貸出数 23,293タイトル ③音声デイジー (注:図書館によっては、テキストデイジーやマルチメディアデイジーのタイトル数もここに入れている場合があります) 個人貸出数 200,251タイトル オンライン提供数 281,798タイトル ④テキストデイジー 個人貸出数 15タイトル オンライン提供数 14タイトル ⑤マルチメディアデイジー 個人貸出数 970タイトル オンライン提供数 424タイトル ⑥拡大写本(パソコンなどによる手製) (注:図書館によっては、拡大写本のタイトル数が大活字本のタイトル数の中に含まれている場合があります) 個人貸出数 520タイトル ⑦大活字本 (注:図書館によっては、高齢者への貸し出し数が含まれている場合があります) 個人貸出数 371,640タイトル ⑧触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) 個人貸出数 8,936タイトル ⑨布の絵本 個人貸出数 2,119タイトル ⑩LLブック 個人貸出数 1,263タイトル ⑪市販 CD・カセット(障害者への提供数) 個人貸出数 17,108タイトル ⑫テキストデータ 個人貸出数 38タイトル (3) 資料の貸出状況・相互貸借(図書館・点字図書館・学校・団体への貸出) ①点字 相互貸借貸出数(タイトル) 6,390タイトル ②カセットテープ 相互貸借貸出数(タイトル) 1,420タイトル ③ 音声デイジー 相互貸借貸出数(タイトル) 40,046タイトル ④ テキストデイジー 相互貸借貸出数(タイトル) 51タイトル ⑤ マルチメディアデイジー 相互貸借貸出数(タイトル) 236タイトル ⑥ 拡大写本(パソコンなどによる手製)相互貸借貸出数(タイトル) 56タイトル ⑦ 大活字本(市販)相互貸借貸出数(タイトル) 11,274タイトル ⑧ 触る絵本(点字絵本・ユニバーサル絵本を含む)相互貸借貸出数(タイトル) 196タイトル ⑨ 布の絵本 相互貸借貸出数(タイトル) 746タイトル ⑩ LLブック 相互貸借貸出数(タイトル) 39タイトル ⑪ 市販 CD・カセット 相互貸借貸出数(タイトル) 2,363タイトル ⑫ テキストデータ 相互貸借貸出数(タイトル) 0タイトル (4)各サービスの実施状況(N=310) ① 点字・録音資料の郵送貸出 あり 248館(80%) なし 60館(19.4%) 無回答 2館(0.6%) 実績(タイトル数) 187,924タイトル ② 一般図書資料の郵送貸出 あり 136館(43.9%) なし 170館(54.8%) 無回答 4館(1.3%) 実績(タイトル数) 44,185タイトル ③ 職員等による宅配サービス あり 90館(29.1%) なし 219館(70.7%) 無回答 1館(0.2%) 実績(タイトル数) 59,267タイトル ④ 施設入所者へのサービス あり 90館(29.1%) なし 219館(70.7%) 無回答 1館(0.2%) 実績(タイトル数) 96,960タイトル ⑤ 対面朗読 あり 205館(66.1%) なし 103館(33.2%) 無回答 2館(0.7%) 実績(総時間数) 34,381時間59 秒 ⑥ プライベートサービス 実施している 72館(23.2%) 実施していない 235館(75.8%) 無回答 3館(1.0%) 実績数: 点訳 335件 音訳(カセットテープ) 181件 音訳(デイジー) 3,427件 テキストデータ作成 16件 拡大写本 0件 その他 45件(※音訳CD、布の絵本) 4. 音訳者等の図書館協力者・ボランティアについて (1)資料製作や対面朗読で活躍している図書館協力者・ボランティアの数 点訳者・ボランティア 2,247人 音訳者・ボランティア 6,008人 デイジー編集者・ボランティア 2,226人 テキストデータ制作者・ボランティア 64人 その他 1,056人(※対面朗読、布の絵本、おもちゃ製作、施設訪問など) 図書館協力者・ボランティアの総数(実人員数) 8,876人 (2)図書館協力者・ボランティア養成講習会(N=310) 実施した 119館(38.4%) 実施していない 134館(43.2%) 無回答 57館(18.4%) 実施した場合の養成講習者数 講習会有 119館 *点訳(初級) 回数 53回(18館) 1回の日数 133日 7.4日/回 養成者数 472人 *点訳(中級) 回数 46回(13館) 1回の日数 109日 8.4日/回 養成者数 823人 *音訳(初級) 回数 285.5回 86館 1回の日数 769~833日 8.9~9.7日/回 養成者数 4,920~4,922人 *音訳(中級) 回数 290回 64館 1回の日数 514~ 545日 8.0~8.5日/回 養成者数 4,130~4,140人 *その他 回数 98回 26館 1回の日数 163日 養成者数 1,475人 (3) 図書館協力者・ボランティアに関する課題(自由記述) ・ボランティアメンバーの高齢化 ・新しいメンバーが増えない ・若い世代(40代)は仕事があり、なかなか続かない。 ・技術継承と新人の育成 ・音訳ボランティア団体の活動の継続を確保すること ・点訳本を利用される方が減った ・対面朗読の依頼が少なく、経験不足であることが課題 ・対面朗読の際、利用者の希望する日時とボランティアの活動可能日が合わす、調整が難しい ・研修体制づくり ・音訳者への校正教育 ・生産中止になった DR1 からパソコン音訳への移行。 ・新旧ボランティアの意識の平準化 ・宅配ボランティアの希望するエリアと利用者のマッチングが難しい ・コロナの影響で依頼が難しい。ブルーバックス等図版の多いものを依頼できない。 ・個々のボランティアが独立した活動を行っているため、図書館としての活動協力は活発とはいえない。 5. 視覚障害者等に対するICT機器(情報機器)の利用支援について(N=310) (1)デイジー再生機等の貸出 行っている 142館(45.8%) 行っていない 162館(52.3%) 無回答 6館(1.9%) (2)デイジー再生機やタブレットの操作説明や講習 行っている 55館(17.7%) 行っていない 252館(81.3%) 無回答 3館(1.0%) (3)パソコンやスマホの操作説明・講習 行っている 15館(4.8%) 行っていない 292館(94.2%) 無回答 3館(1.0%) (4)ICT 機器の情報提供や、相談先の紹介等 行っている 70館(22.6%) 行っていない 234館(75.5%) 無回答 6館(1.9%) 6. 点字図書館と公共図書館の連携 (1)点字図書館と公共図書館が連携する協議会について ある 29館(9.4%) ない 278館(89.7%) 無回答 3館(0.9%) (2)点字図書館やサピエ図書館に望むこと(自由記述) <点字図書館に対する要望> ・法律の後押しにより社会の理解度が向上し、環境は整備されてきましたが、公立図書館では、長期間同じ職員が障害者のためのサービスに従事することが難しく、知識や経験の蓄積ができません。また一人一人の方に十分時間をかけて対応すると、他の業務の時間を圧迫し、障害者の方により利用していただくためのPRも結局自らの首を絞めることになり、ためらいます。ともに障害のある方にサービスを行う機関として、公立図書館と点字図書館が連携を深め、よりよいサービスの実施に協力しあえていけたらと思います。 ・デイジー再生機やタブレット等の体験型研修の開催。 ・視覚障がい者向けのパソコンやスマホの操作の出前講習。 ・同じタイトルの本を複数の点字図書館が製作している場合、2館目以降のデータの登録を国立国会図書館でできるようにしてほしい。 ・録音図書の質の向上。質のよくない録音資料の差し替え。 ・点字図書館と公共図書館の資料製作の相互依頼。 ・相互のサービスのPR、イベントの合同開催。 ・市内の障害者の方が点字図書館の利用登録をされた際に、「地元の図書館でも受けられるサービスがあるので、ご案内(電話が望ましい)をさしあげてもよいか」を聞いていただき、「良い」と言われた方がいらっしゃったら、こちらへ連絡先を教えていただける等の連携をとっていただけるとありがたいです。(福祉課に相談しても、障害者の方の連絡先は当然教えてもらえませんし、ご案内を送ってもらうことも、「向こうが希望されていないのに、こちらから送ることはできません」と断られてしまうので、当館から直接サービスのご案内をする手だてがなく、新しい利用者の方を増やすことの難しさを感じています。) ・公共図書館からの資料の製作希望を受け付けてほしい。 ・公共図書館の障害者サービス担当職員向けの問い合わせ・相談窓口を設けてほしい。 ・点字図書館が公共図書館と別個に存在する場合、連携というより分担(点字資料等を一方に集約するなど)も含めた検討・協議。 ・公共図書館で障害者サービスを円滑に推進するため、近隣の点字図書館で行える支援と点字図書館で行える支援の違いや連携について、定期的に情報交換できる場が設けられると良いと考えます。 ・点字図書館で相互貸借を依頼する際、HPから予約が入っていないものを選んでいるが、貸出中の時があり、こちらの障がい者宅配サービスに間に合わないことがある。貸出中を見分ける方法はあるか。 ・点字図書館には障がい者サービスの専門図書館として、公共図書館への支援を業務として担ってほしい。 ・区内に社会福祉法人運営の点字図書館がない限り、なかなか「連携」というものをイメージしにくいのが現状かと思います。いまのところ点字図書館との関わりは、資料の相互貸借(「サピエ」からの配信データ利用を含む)を通じたものにとどまっており、共通の利用者を見据えた「連携」が考えるには、定期的に意見を交わしあえる具体的な「場」が必要ではないかと思われます。なお、公立図書館側からみると、視覚特別支援学校(盲学校)附属図書館との関係についても同様の課題があります。盲学校附属図書館と点字図書館との関係・連携については、おそらく長い歴史を有していることと思いますが、今後連携を考えたい公立図書館の立場として学ばせていただくことが多いのではないかと考えております。 ・公共図書館職員向け研修の充実。 ・障害者資料の選書についてアドバイスしてほしい。 ・自治体内の点字図書館と連携できるような体制を作りたいので、公共図書館の役割や現状を理解して協力してほしい。また、公共図書館が点字図書館についての理解を深めるための機会を設けてほしい。 ・今後もサピエ図書館の利用促進を図り、点字図書館が実施する研修に参加することにより、職員の資質の向上に努めたい。 ・テキストデイジー、マルチメディアデイジーの作成方法をご教授願いたい。 <サピエに対する要望> ・本のジャンル検索で、ファンタジーが選択できると便利です。 ・サピエ図書館の研修に参加したいが人数的なものもあり、業務中参加するのがむずかしいので、研修のテキストなど、報告書があれば嬉しいです。 ・テキストデータの収集。システムについて、複数ファイルの一括ダウンロード、CSVファイルの読み込みによるデータの一括登録・編集が可能なシステムにしてほしい。書誌について、書誌割れの解消、シリーズ検索を容易にしてほしい。 ・図書館でサピエのお試し利用ができればありがたい。実際に体験することで、予算ヒアリング時の説明に説得力が増す気がするので。 ・利用者にとって聞きやすいものばかりではないため、自身で録音図書を選べるように1つの作品に対して複数登録できるようにしてほしい。 ・現物取り寄せのオンラインリクエストの際、貸出中か、予約待ち状況がわかるとありがたい。また、オンリクしたものの発信後のキャンセルは、現在直接電話連絡するしかないが、オンライン上でキャンセルできるようにしていただけるとありがたい。 ・(1)音訳・点訳指導員認定講習会等の情報が、公共図書館には届かないことがありました。サピエに加盟している公共図書館へは、福祉施設(点字図書館等)と同時の情報提供をお願いしたいと思います。 (2)福祉施設(点字図書館等)は、サピエへの着手登録のルールが守られていないことがよくあります。(先に着手登録してあるものや、シリーズで制作しているものを着手される。)当館のボランティアも、長年、経験と研鑽を積んでいて、期限内に一定の基準に達したものを気づいていないかもしれませんが、着手登録のルールを守るよう徹底していただきたいと思います。 上記のような福祉施設と公共図書館の壁がなくなり、ご教示をいただきながら、連携ができればよいと思います。 ・サピエ図書館の「新着完成情報」を、図書または逐次刊行物で絞り込めるようにしてほしい。 ・国立国会図書館にデータがあるものについては、「所属なし」ではなく、「CD所蔵」にしてほしい。 ・以下の点は各製作館が責任を持つものなのか、事務局でも確認をするのか、方法も含めて検討してほしい。 (1)書誌情報の間違いを修正してほしい。 (2)「ー」を「‐」で書いている等の誤字があるので修正してほしい。 (3)完成予定の大まかな基準を決めてほしい。1年を超えてできない資料について、確認してほしい。 ・資料製作依頼を掲示板に書き込むと、どこかが手を挙げてくれるような、簡単な製作依頼システムを作ってほしい。(図書館から、利用者から) ・録音図書の製作着手から完成までの期間の短縮。 ・サピエ利用者への貸出資料について、安定した所蔵資料の確保をお願いいたします。 ・資料製作に関して基準はあるものの、細かい部分は各館で判断に揺れが生じる。詳細な音訳マニュアル等の更新をお願いしたい。 ・今後はサービスの周知により力を入れていきたいです。法律の施行などにより、サービスの利用は拡大するかと思われます。今後もご指導などよろしくお願いいたします。 ・いつもサピエを通して、利用者の希望する資料を点字図書館から借り受けて提供しており、大変お世話になっております。これからもよろしくお願いいたします。 ・なかなか日常のなかで、じっくりと使用することができていませんが、いつも情報提供など、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。 ・資料数や種類(分類)の充実、とくに児童書。 ・サピエ図書館は、全国の点字図書館などから気軽に相互貸借できて大変に助かっています。 ・今年度は研修をZOOMで行ってくださり、参加しやすくとてもよかったです。実際に研修場所に行っての研修も学ぶことが多いでしょう!両方選べるようにしてくださるとありがたいです。 ・会員登録があった場合、メールなどで通知が届くシステムになれば助かります。 ・製作期間の短縮化が図れれば良いです。 ・サピエ利用者へアンケートを行い、公開してほしい。 ・積極的な情報提供を望みます。 ・公立図書館や音訳ボランティアに向けた情報をもっと発信してほしい。 ・音声デイジーデータの種類や数がさらに充実することを望む。 ・図書館で行っているバリアフリーサービスについて、当事者にアピールするためにどのような工夫をしていくべきか教えていただきたいです。 ・国からの運営補助をなんとか増額してもらって、サピエ年会費が不要になるようにしてほしい(せめて特別支援学校だけでも)。特に学校図書館の参入障壁になっている。 ・音声デイジーなどでシリーズものでありながら、途中で欠本しているものがある。作成館に直接相談することもできるが、他に方法はないのか。 ・サピエ会員、図書館の利用者カードを作成できない方(矯正施設)へ、デイジー図書を貸したい場合、どのような方法がありますか? ・デイジー図書がマックPCでも利用できるようにしてほしい。 ・わからないことは親切に教えていただき、助かっています。サピエなど利用者さんが実際にどのように使っているか動画などがあると、イメージがつかめるかと思います。 ・音訳リクエストを受けてほしい ・シネマデイジーが好評です。タイトル数、増えると助かります。 ② 公共図書館(障害者サービス実施館)における障害者サービスの現況と考察 本章では、公共図書館の中から障害者サービスを実施していると考えられる図書館(343館)を対象として実施した、質問紙による実態調査の結果とその考察を報告する。 この報告からも再度明らかになったが、全国の公共図書館の内、一定水準以上の障害者サービスを実施している館が2割程度であるとされている。そこで、本調査では、サピエ図書館や国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービスへの登録状況等を考慮し、また合わせて都道府県立図書館のすべてを加えて、343館に調査を行った(2021年10月末日直接送付)。結果、310館からの回答があり、回答率 90.4%となっている。質問紙の直接郵送によるやり取りで、これだけの回答をいただけたことは、公共図書館のこの問題に対する関心の高さを思うと共に、誠意を感じる。これにより、現在の公共図書館の実情をかなり正確に明らかにできたものと思われる。 なお、それぞれの実施率等を表すパーセントは障害者サービス実施館のそれであり、全図書館における実施率ではないことに留意してほしい。仮に、全図書館を対象に調査をした場合「同じような数値が出る」のではなく、残り8割はほぼ実施していない可能性が高いので、「相当低い割合になる」ことが予想される。 1 基本となるサービス体制 (1)「サピエ図書館」や国立国会図書館「視覚障害者等用データ送信サービス」への参加状況 「サピエ図書館への会員登録」を行っている館が204館(65.8%)で、「国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービス」117館(37.7%)となっている。 これらのネットワークに参加することは、全国的な相互貸借・ダウンロードを活用してサービスを行うための基本である。公共図書館がサピエに加入するためには年間4万円の経費がかかるので、すべての館が参加するのは困難だが、積極的なサービスを行っている館には基本的なツールである。ちなみに国会図書館のそれは登録が無料である。それなのに参加率がさらに低いことを考えると、経費の問題ではなく、そもそものサービスの方法や考え方が正しく理解されていないのではないかと思われる。 (2)郵便制度の活用 「特定録音物等発受施設指定」を受けている図書館が68館(21.9%)となっている。 これはいうまでもなく視覚障害者に録音物を無料で送るための制度であるが、この認可を受けていないということは「無料の郵送サービスを行っていない」ということに他ならない。(1)の結果と合わせて考えると、全国の資料やデータを借りて、自館の利用者にサービスを行うことを理解できていない館が非常に多いことが分かる。 それに対して、「心身障害者用ゆうメール発受施設届出」を出している図書館が116館(37.4%)となっている。これも高い数字とは言えないが前述の特定録音物よりは高い数字になっている。このことから、「自館の所蔵資料を貸し出す」ことのみを考えている館が多いことが分かる。 (3)障害者サービスを担当する職員 「障害者サービスを担当する職員がいる」と回答した館が275館(88.7%)となっている。これは、サービス実施館においては担当者がいることが当たり前となっていることを意味している。逆にいうと、担当者を置くことがサービスを実施するための条件であるともいえる。 なお、「全職員で障害者への対応を行っている」と回答している館があったが、考え方は理解できるものの、正しい障害者サービスを行うための「担当者がいない」ことに他ならない。 2 障害者サービス用資料の所蔵と製作 公共図書館の障害者サービスでは、取り扱っている障害者サービス用資料の種類が多いのが特徴である。 (1)資料の所蔵状況 おもな障害者サービス用資料の、「資料別所蔵館数」「総所蔵数(タイトル数)」「平均所蔵数」について記す。 点字 278館、117,372、422 音声デイジー 214館、93,756、438 マルチメディアデイジー 154館、14,742、96 大活字本 300館、621,671、2,072 拡大写本 40館、6,616、662 触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) 280館、18,957、68 布の絵本 176館、6,290、36 LLブック 260館、6,128、24 市販CD・カセット 107館、57,591、538 「点字」「音声デイジー」「大活字本」「触る絵本・点字付き絵本」「LL ブック」の所蔵館が200を超えている。ここでも購入できるものを中心に所蔵していることが予想される。 特に、「点字」「大活字本」「触る絵本・点字付き絵本」の所蔵が9割を超え、LLブックの所蔵率も高い。 1館あたりの所蔵数では、大活字本が2,072タイトルと最も多く、点字・音声デイジー・一般CDも多い。 (2)資料製作の状況 公共図書館で資料の製作を行っている館はそれほど多くない。資料製作には高度な技術を必要とするため、「ある程度力のある図書館」が実施し、国立国会図書館を通じて全国に提供している。 おもな障害者サービス用資料の、「資料別製作実施館数」「総製作数」「平均製作数」「2019年度製作総数」について記す。 点字 76館、27,488、362、955 音声デイジー 139館、44,782、322、3,830 マルチメディアデイジー 8館、198、25、28 拡大写本 7館、484、69、16 触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) 28館、1,948、70、121 布の絵本 54館、1,849、34、81 点字を製作している館が76、音声デイジーを製作している館が139あることがわかった。マルチメディアデイジー・テキストデイジー・拡大写本を製作している館はわずかである。 単年度(2019年度)の製作総数を見ると、音声デイジーが3,830タイトルとなっていて、点字図書館を含めた全製作数のそれなりの割合になっていることが分かる。また、製作館数が139館であることから、1館当たりの平均製作数は27.5タイトルとなる。なお、公共図書館では録音雑誌を製作している館はごくわずかであるため、これらの製作数の多くは図書であることが予想される。点字の製作数は955となっていて、音声デイジーに比べるとその数は少ない。 3 障害者サービスの利用実績 (1)利用者数 障害者サービス実施館では、257館(82.9%)が障害者サービスの利用登録を行っている。これは当然必要なことであるが、未実施館ではサービスの利用登録そのものがない館が多い。 利用登録者の総数は34,159人で、その内視覚障害者は10,408人となっている。ただし、「不明」と回答した館も多く、実際の利用者数はさらに多いことになる。 不明の理由として、前述の「障害者サービスの登録がない」の他、発達障害・肢体不自由・高齢者などは一般と区別した特別な登録がないため人数が把握できない等の理由が考えられる。 また、視覚障害者10,408人は、無料の郵送サービスを受けるための障害者サービスの登録が必要な人のため、かなり正確な数字であると思われる。 (2)個人貸出数、オンライン提供数 障害者等にメディアや紙などの現物で貸出している総数と、製作した資料データを国立国会図書館のサイトから送信している場合のオンライン提供数は以下のようになっている。(オンライン提供数は、個人と施設の区別ができないため、その合計数。ただし、かなりの割合が個人利用であると思われる。) (以下、個人貸出数、オンライン提供数の順に記載。空欄は-で示す。) 点字 15,464 11,063 カセットテープ 23,293 ー 音声デイジー 200,251 281,798 大活字本 371,640 - 触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) 8,936 - 布の絵本 2,119 - LL ブック 1,263 - なお、国立国会図書館からのオンライン提供は、サピエ図書館のサイトからも利用できるようになっている。 個人貸出の中心は音声デイジーで200,251タイトル貸出している。点字は15,464タイトルで、デイジーの1割以下になっている。カセットテープの貸出が意外に多いが、今後急速に減少していくものと思われる。また、これらの資料は郵送による貸出が中心になっている。 大活字本の貸出が371,640タイトルと最も多い。ただし、この数字は図書館システムを利用して提供した総数である可能性が高く、高齢者を含む一般利用者の利用も含まれた数字ではないかと思われる。 オンラインによる資料データの提供では、現物の利用数を超える配信数になってきている。ちなみに、点字データは点字ディスプレイを用いて点字として利用することもできるが、音声パソコン等で音声で読むこともできるため、点字が読めないユーザーの利用も考えられる。 マルチメディアデイジー・テキストデイジー・テキストデータの利用はまだまだ少ない。 布の絵本やLLブック等は所蔵数も少ないこともあり、貸出数は少ないが、今後利用者に認知されていくことで利用が増えていくことを期待したい。 (3)相互貸借による提供(図書館・点字図書館・学校・団体への貸出) 相互貸借による提供でも、音声デイジーが最も多くなっている(40,046タイトル)。点字の貸出もそれなりに多い。これらは、おもに無料の郵送により提供されているものと思われる。 大活字本や布の絵本の提供もそれなりにあるが、これらは都道府県立図書館が運用する資料搬送車などを活用して相互貸借しているものと思われる。 (4)各サービスごとの実施館数と実績 「点字・録音資料の郵送貸出」を実施している館は248館で、全実施館の80%となっている。その貸出実績は187,924タイトルで、公共図書館の障害者サービスの中心といえる。 「一般図書資料の郵送貸出」を実施している館は136館で実施率は43.9%となっている。その貸出実績は44,185タイトルとなっている。なお、一般図書資料を重度障害者に郵送するには、「心身障害者ゆうメール」という割引制度がある。ただし、割引といっても無料ではないので、その経費を図書館・利用者が負担する等の課題がある。 「職員等による宅配サービス」を実施している館は90館で、実施率は29.1%となっていて、それなりに行われていることがわかる。また、その貸出実績は59,267タイトルで、実施館では活発に行われていることがわかる。 このサービスには法律や手続き上の課題がないので、要は図書館が主体的に行うかどうかが鍵となる。また、職員が行うほか、高齢者事業団に委託する、図書館ボランティアが訪問する、移動図書館車で立ち寄る等のさまざまな方法がある。 なお、宅配便業者による宅配は、ここではなく「郵送貸出」になるので注意が必要である。 「施設入所者・学校へのサービス」を実施している館は90館で、実施率は29.1%となっている。その貸出実績は96,960タイトルで活発に行われていることが分かる。 「対面朗読サービス」を実施している館は205館(66.1%)で、障害者サービス実施館の7割近くが行っていることになる。ただし、サービスを実施しているとしても(窓口はあっても)、実際の利用がない館が多いことが課題となっている。その実績(総時間数)は34,381時間で、利用がある館では多く利用されていることが分かる。 対面朗読サービスは「閲覧をすべての人に保障する」ためのいわば公共図書館の基本的なサービスであるが、その実施のためには読み手の確保が課題となる。職員が読む場合は別として、音訳者・音訳ボランティアが読む場合はその養成・育成などの問題を解決しなくてはならない。 なお、昨今、新型コロナウイルス対策でオンライン方式の対面朗読が行われているが、2019年度時点ではまだほぼ存在しない。ただ対面朗読の新たな方法として可能性を持っている。 4 音訳者等の図書館協力者・ボランティア (1)図書館協力者・ボランティアの現状 資料製作や対面朗読を行うほとんどの図書館では、音訳者等の図書館協力者やボランティアを活用している。なお、図書館協力者は賃金や謝金等で何らかの対価を支払っている人、ボランティアは無償または交通費程度の支払いの人をいう。 全国の人数を見ると、点訳・2,247人、音訳・6,008人、デイジー編集・2,226人、テキストデータ制作・64人、その他・1,056人となっている。その他については、いずれかに含まれている可能性が高いが、布の絵本製作等がある。また、音訳者がデイジー編集も行っている場合が多く、一部ダブルカウントされていると思われる。 公共図書館の音訳者は6,000人ほどで、前述2の(2)より音声デイジーを年間3,830タイトル製作していることから、一人が年間1~2タイトルを製作していることがわかる。 図書館協力者やボランティアのための養成講座・研修会を実施した館が、全国で119館(38.4%)ある。この館数は、音声デイジーを製作している館数に近く、音訳者か点訳者がいる館では何らかの講座や研修会を実施しているものと思われる。 (2)図書館協力者・ボランティアに関する課題 図書館協力者・ボランティアを活用している館に課題を自由に書いてもらった。この回答は、2019年度時点というよりは、今の課題である。 多くの館が抱えている課題は、図書館協力者の高齢化と人数の減少である。これにより、資料製作や対面朗読が円滑にできない、予定通りできないという問題が生じている。音訳や点訳は専門技術であり、その継承は重要で時間もかかる。しかし、新しい人・若い人が入ってこない等の課題があり、継承や存続も危ぶまれているところもある。 この原因は、「夫婦で働かなくてはならないという経済的要因」と「ライフスタイルの変化」が考えられる。これらは以前に戻ることはないので、今後の在り方を根本的に考えていかなくてはならないだろう。 また、新型コロナウイルスの影響で、活動が制限されたり、活動そのものが休止になったりした例があった。これにより、資料がなかなか完成しない、対面朗読ができない等の具体的問題が生じている。また、しばらく活動を休止したことにより、意欲が下がってしまい、この気に引退する人も見受けられる。今後、活動の立て直しも求められている。 5 視覚障害者等に対するICT 機器(情報機器)の利用支援 公共図書館の大きな役割として、広く社会全体に障害者サービス(さまざまな資料やサービス方法、再生方法)等を広報することが求められている。しかし、これらの活動は残念ながらまだまだ始めたばかりといってよいかもしれない。 「デイジー再生機等の貸出」を行っている館は142館で全体の45.8%である。サービス実施館の約半数が行っている。 「デイジー再生機やタブレットの操作説明や講習」を行っている館は55館で、全体の17.7%にとどまっている。 「パソコンやスマホの操作説明・講習」となると、15館(4.8%)が実施しているに過ぎない。デイジー等のデータを再生するためにパソコン・タブレット・スマホが利用できる。これからアクセシブルな電子書籍が多くなれば、これらの再生のためにも必須の技術となる。まずは図書館職員がそれらのスキルを身につける必要がある。 図書館としては、「ICT 機器の情報提供や、相談先の紹介等」はレファレンスとしても行うべきだが、実際に行っている館は70館(22.6%)にとどまっている。図書館は資料の提供だけではなく、それを使うための情報、機器を入手するための情報も積極的に提供していきたい。 6 点字図書館と公共図書館の連携 点字図書館と公共図書館の連携のあり方については、まだまだ定まったものはなく、試行錯誤段階であると思われる。もちろん、製作した資料の相互利用は全国的レベルで行われている。まずは、お互いを知り、連携協力できる部分を見つけていくことになろう。 「点字図書館と公共図書館が連携する協議会」があると回答した館は29館で、全体の9.4%となっている。しかし、そもそも点字図書館は各県に1~2館程度であるため、市区町村レベルでの連携というよりは、都道府県レベルの協議会が現実的である。そこで、47都道府県立図書館の内、この協議会があると回答した館は15館で32.6%となっている。 最後に点字図書館やサピエ図書館に望むことを自由に書いてもらった。 大きな課題から、細かい希望までいろいろな意見が寄せられた。すべて、前向きに改善してほしい、より使いやすくしてほしいというものであり、公共図書館からサピエ図書館への大きな期待がうかがえる。 7 まとめ 公共図書館の障害者サービスは、「図書館利用に障害のある人々へのサービス」であり、その目的は「すべての人にすべての図書館サービス・資料を提供すること」にある。公共図書館では、対象となる利用者が幅広い、扱っている障害者サービス用資料の種類が多い、サービス方法が多彩という特徴がある。しかし、それらを充実して行っている図書館は少なく全体の2割程度であるといわれている。本調査では、その実情が明らかになり、サービス実施館の状況が見えてきた。障害者サービスでは、全国の点字図書館や公共図書館が著作権法第37条第3項で製作した資料を全国的な相互貸借やダウンロードにより入手して利用者に提供することが求められている。しかし、残念ながらその意味を理解していない館がまだまだ多いようである。自館で所蔵している資料を提供することに重点を置いてサービスを行っている館が多いことが明らかになった。 全国の図書館からは「利用者からの依頼がない、希望がない」という声もよく聞くが、実は依頼がないのではなく、図書館にさまざまな形式の資料や郵送等による便利なサービスがあることを知らないのである。知らない人からリクエストは来ない。 図書館はもっと積極的に利用者に働きかけていかなくてはならない。資料を並べて待っていたのでは利用は生まれない。では具体的に何をすればよいのか。その答えが、この報告書にある障害者サービス実施館が行っていること、実績のある図書館が行っていることなのである。人やお金があまりなくてもできることはたくさんある。ぜひ、図書館職員の力で「誰もが使える図書館」を作っていってほしい。 2) 視覚特別支援学校(盲学校)における学校図書館向けアンケート集計結果と考察 ①アンケート調査結果 2021年 10月末日、調査票を全国の盲学校図書館67館に送付し、58館からの回答を得た。 (回答率 86.6%)N=58 1. 児童・生徒数、教職員数 幼稚部 157人 小学部 456人 中学部 366人 高等部(普通科、高等学校相当) 535人 高等部(専攻科相当) 573人 合計 2,087人 教職員 3,956人 2. 職員(図書館(室)担当者) 図書館(室)担当職員数 143人(正規 101人、嘱託・非常勤 30人、不明 12人) うち、 司書教諭 32人(正規 28人、嘱託・非常勤 4人) 学校司書 25人(正規 12人、嘱託・非常勤 13人) 3. 年間資料購入費(N=58) 13,201,893 円(1館あたり平均227,619円) ※最低0円~最高1,400,000円 4. 蔵書数(N=58) 墨字図書(雑誌を含む。以下同じ) 409,720タイトル(平均7,064タイトル) 点字図書(L 点字含む) 138,845タイトル(平均2,394タイトル) 自館製作 20,581タイトル(平均355タイトル) カセット録音図書 18,048タイトル(平均311タイトル) 自館製作 3,715タイトル(平均64タイトル) 音声デイジー図書 26,260タイトル(平均453タイトル) 自館製作 3,922タイトル(平均68タイトル) テキストデイジー図書 90タイトル(平均1.6タイトル) 自館製作 17タイトル(平均0.29タイトル) マルチメディアデイジー図書 3,836タイトル(平均66タイトル) 自館製作 37タイトル(平均0.64タイトル) 拡大図書(拡大写本・大活字本含む) 23,709タイトル(平均409タイトル) 自館製作 2,965タイトル(平均51タイトル) 触る絵本(点字絵本・布の絵本含む) 4,574タイトル(平均79タイトル) 自館製作 442タイトル(平均8タイトル) 市販のテープ・CD 3,717タイトル(平均64タイトル) 5. ボランティア(N=58) 個人ボランティア いる 18館(31.0%) (内訳:点訳ボランティア 37人、音訳ボランティア 3人、点字つきさわる絵本製作 1人) いない 40館(69.0%) 協力団体 ある 43館(74.1%) (内訳:点訳団体 158団体、音訳団体 55団体、その他※ 43団体) ※その他の内訳:拡大写本、読み聞かせ・朗読、対面朗読、触る絵本、図書館整備、テキスト化など ない 12館(20.7%) 無回答 3館(5.2%) 6. サピエ図書館等への会員登録(N=58) (1)サピエ図書館への会員登録 あり 25館(43.1%) なし 33館(56.9%) →サピエへの会員登録の予定:あり 2館、なし 31館 →なしの理由 ・料金がかかる ・年会費が4万円と高額 ・予算が捻出できない ・敷地内に点字図書館がある ・公共図書館やインターネット活用のため ・点字使用生徒の在籍なし ・個人で登録しているため ・生徒が卒業後も継続加入できる個人会員としての登録を薦めているため など。 (2)国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」について 利用している(送信承認館になっている) 5館(8.6%) 利用していない 53館(91.4%) →同サービスへの承認申請の予定:あり 5館、なし 48館 →未利用の理由 ・点字使用生徒の在籍なし ・利用者がいない ・手続きが煩雑 ・サピエ会員であり利用目的には十分 ・地元の点字図書館を通して館間貸出 ・加入方法・仕組みなど詳細不明のため ・利用するかどうかは個人に委ねている ・係がこのサービスを知らなかった など。 7. 他機関との連携(N=58) (1)点字図書館との連携 あり 30館(51.7%) なし 26館(44.8%) 無回答 2館(3.5%) →点字図書館との連携ありの内容: ・館間貸出 ・相互貸借 ・情報交換 ・生徒の実習 ・点字図書館からの蔵書寄贈 ・視覚障害に関する情報サービスの利用 ・サピエ図書館への利用登録 ・学習教材の点訳(個人) など (2)公共図書館との連携 あり 39館(67.2%) なし 19館(32.8%) →公共図書館との連携ありの内容: ・資料の借受 ・相互貸借 ・団体貸出 ・除籍本の寄贈 ・対面朗読ボランティアの派遣 ・学校教育活動に必要となる墨字図書やDVDの借用 ・読書感想文課題図書の点訳依頼 ・学校図書館へのアドバイス ・児童書、学習用図書、デイジー図書の貸出 など (3)他校の学校図書館(室)との連携 あり 20館(34.5%) なし 38館(65.5%) →他校の学校図書館(室)との連携ありの内容: ・県立学校図書館との相互貸借 ・専攻科教科書テキストデータの共有 ・不要な本の寄贈 ・団体貸出の利用 ・研究会での交流・情報交換 ・情報交換 など (4)大学図書館との連携 あり 2館(3.4%) なし 56館(96.6%) →大学図書館との連携ありの内容:大学附属としてのサービスを受けられるなど。 (5)その他の機関との連携 あり 12館(20.7%) なし 46館(79.3%) →その他の機関との連携ありの内容: ・視聴覚障害情報センターとの連携 ・情報センターに図書の点字印刷を依頼 ・公共団体・私設団体から雑誌を定期購読している ・民間点訳ボランティアによる課題図書の点訳 ・NPO法人による手作り点字カレンダーの寄贈 ・NPO法人などからの図書寄贈 など 8. 図書館(室)運営上の課題(自由記述) ・図書費の予算が年々減額されている中で、幼児・児童・生徒への書籍の提供に工夫を要する。 ・予算減少のため、専攻科に必要な専門書が購入できない。 ・古い蔵書(墨字・点字・カセットテープ)の保管場所が手狭である。 ・古い蔵書の廃棄の基準作成が難しい。 ・多様な図書媒体の管理が難しい。 ・読書形態の多様化によりニーズがつかみにくい。 ・仕事内容が多岐にわたり、一般的な学校図書館にはない仕事や時間がかかる作業も多い。組織的、継続的に運営していく必要があると思うが、体制作りが難しい。視覚支援学校の図書館間の情報共有の機会がほしい。 ・図書台帳が電子化されていない。電子化するには予算と、膨大な量の入力作業が必要となり、図書の専任はいないため難しい。 ・読書数を増やすためのアイディアが少ない。幼児・児童・生徒の個人に合わせた地域図書館等との連携方法。 ・担当係に、司書教諭、学校司書が配置されていないこと。また、視覚障害児(者)の教育に詳しい者が担当でないことが、運営に苦慮している部分と捉えています。 ・担当者が1年ないし、数年で変わってしまう。 ・全盲児(生)の在籍がない。 ・担当職員が配置されていない。エアコンその他環境が整っていない。 ・図鑑や辞典および拡大図書の更新がむずかしく、資料提供の対応に遅れが出る。 ・図書の媒体変換をお願いしているボランティアグループの高齢化が進んでいる。 ・学校図書館の蔵書構成として、教科書で掲載している図書(各教科で)は置きたいと考えているが、様々な媒体を揃えるのはむずかしく、データ等も探す手間がかかったり、資料データがないことも多い。 ・児童生徒数の減少に伴い、職員数が減ってきているが、伝統校であり蔵書数が多い。蔵書管理等の図書業務の効率化が課題である。 ・拡大図書の利用ニーズに充分応えきれていない。 ・ICT(iPad やブレイルメモスマート)の活用。オーディオブックなどの利用。 ・幼稚部~高等部と在校生の年齢に幅があるうえに、障害の重度・重複化、多様化などもあり、発達段階に応じた良書を購入することが求められる。 ・読書のバリアフリーを図るため、DAISY図書やオーディオブックなど、電子書籍の蔵書を充実させる必要がある。 ・点字利用者が減少し、拡大図書利用者が増えたため、図書室のレイアウト変更が必要となっている。 ・(設備面)学校図書館の予算では、館内設備において、「温湿度管理」や「遮光カーテン」など。/整備が十分に行えないため、蔵書の品質管理がむずかしい。 (蔵書管理・図書整備面)原簿がデータベース化されていないため、蔵書管理がむずかしく、蔵書調査の際、集計に時間を要する(一部の蔵書のみエクセルで原簿・貸出管理)。/校内に図書館教育係が配置されているが、教員は授業に携わっているため、人員を必要とする作業を定期的に行うことがむずかしい。 (閲覧室・書庫の図書の入れ替え、廃棄対象図書の検討および廃棄など)拡大文字本の購入の際、シリーズ全巻が拡大文字本になっていないため、生徒への紹介が途中までになるケースが多い。 (予算面)図書購入のほとんどを PTA寄贈内で捻出しているため、高価格の図書の整備が十分に行えない(拡大文字本や学習辞典など)/予算内で、理療科関連の図書や学習辞典などの購入がむずかしいため、最新情報の提供が十分に行えていない。/サピエ図書館への登録を検討しているが、年会費の予算捻出がむずかしい。 (協力団体について)ボランティア団体が少なく、図書館蔵書の点訳・音訳が十分に行えない。/ボランティアの高齢化・会員不足により、対面朗読協力者の確保が年々むずかしくなってきている。 ・盲学校でも高校生以上の読書離れが深刻化している。 ・読書支援機器、アプリなどを購入したいが高額な費用がかかる。 ・点字書籍、大活字書籍などを充実したいが高額である。 ・常勤の学校司書が在籍していないが、もし在籍すれば、公共図書館や点字図書館との連携がとりやすくなる。 ・中高生の間で「なろう系」とよばれるライトノベルの人気が高まっており、学校図書館へのリクエストも寄せられるが、内容が過激なものや性的描写のあるものが多数存在し、本校では選書対象から外している。 ・図書室を肢体不自由の生徒が利用しやすいように整備したいが、要望を出してもすぐには実現がむずかしい。 ・視覚支援学校の図書館間の情報共有の機会がほしい。 ・本校は、図書館担当が多数の業務を兼任しており、図書館業務に専念できる環境にない。また、図書館選任の専門職員がいないため、図書に関する疑問や課題が多く挙がっている状態である。 ・専任の司書教諭がいるわけではないので、書籍購入、配架、読書指導が精一杯である。 ・蔵書管理をコンピュータで行っている訳ではなく、記録も大まかなので、このような調査に的確に応えられない。 ②視覚特別支援学校(盲学校)における学校図書館の現況と考察 本章では、本調査研究事業の一環として実施した全国の視覚特別支援学校(以下、盲学校)の学校図書館に関する実態調査の結果とその考察を報告する。特別支援学校の学校図書館に関する実態調査は、公益社団法人全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)と専修大学文学部ジャーナリズム学科図書館情報学研究室が共同で6年ごとに行っている。直近の調査は2019年に行われた(以下、SLA2019調査)。しかし、この調査は、盲学校だけに特化したものではないため、サピエ図書館の会員登録、資料製作、ボランティア等の状況については調査されていない。こうした点を含めて実態を明らかにするべく、今回の調査を実施した。 調査票は、2021年10月末日に、全国の盲学校の学校図書館67館に送付した。その結果、58館から回答を得た(回答率86.6%)。 1. 児童・生徒数、教職員数 児童生徒数は、1校平均36.0人だった。義務教育段階(小学部、中学部)は、インクルーシブ教育の進展もあって、少人数化が顕著である。小学部では1校平均7.9人、中学部は6.3人となった。1クラス1~2人という規模といえる。職員数は、1校平均68.2人だった。 2. 職員(図書館(室)担当者) 学校図書館の担当職員数は、1校平均2.4人だった。2~3人の職員で運営している学校図書館が多いものと推察される。担当職員のうち、専門職員である司書教諭の配置率は55.2%、学校司書の配置率は43.1%だった。 2021年度に全国SLAが実施した小学校、中学校、高等学校対象の「2021学校図書館調査」の結果によると、担当職員数は小学校と中学校がともに2.0人、高等学校は3.1人なので、盲学校との大きな差はみられない。司書教諭の配置率についても、小学校61.1%、中学校50.3%なので、盲学校の配置率は小学校と中学校の中間に位置している。学校司書の配置率については、小学校81.4%、中学校84.1%、高等学校78.3%となっており、盲学校は中学校の半分程度の配置率にとどまっている。司書教諭と学校司書は、学校図書館運営の「クルマの両輪」と言われており、盲学校においても両者の配置率向上が欠かせない。 3. 年間資料購入費 年間資料購入費は、0円~140万円まで幅があり、1館平均22.7万円だった。 SLA2019調査でも1館平均23.1万円だったので、大きな差はみられない。しかし、全国SLAの「2021学校図書館調査」によると、小学校、中学校、高等学校では、それぞれ48.7万円、64.5万円、101.2万円となっており、盲学校との大きな開きがある。少なくとも、0円という状況の改善は喫緊である。 4. 蔵書数 5. ボランティア 蔵書数については、SLA2019調査など、これまでの調査でも明らかにされてきたところである。しかし、学校図書館における自館製作のタイトル数は、本調査によって初めて明らかになった。自館製作の資料タイトル数は、多い順に点字図書、音声デイジー図書、カセット録音図書、拡大図書だった。 これら資料の自館製作に深く関わるのがボランティアの存在である。このボランティアの状況についても、本調査によって初めて明らかになった。個人ボランティアのいる学校図書館は31.0%にとどまるが、協力団体がある学校図書館は74.1%にのぼる。協力団体は、資料製作に関わる団体が主だが、「読み聞かせ」や「図書館整備」に携わる団体もある。 6. サピエ図書館等への会員登録 サピエ図書館は43.1%、国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービスは8.6%の学校図書館しか会員登録や送信承認館となっていない。また、今後の会員登録や送信承認申請の予定館も少数にとどまっている。その理由はさまざまだが、アクセシブルな資料を提供するための図書館相互の連携ツールとして、これらを積極的に活用しようという機運が残念ながら盲学校ではまだ高まっていないといわざるを得ない。なお、サピエ図書館への会員登録の割合と学校司書の配置率がともに43.1%で同一なのも偶然の一致とはいえない。専門職員の配置の有無が学校図書館の環境整備に大きく影響する例といってよいだろう。 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(以下、読書バリアフリー法)では、第10条において「インターネットを利用したサービスの提供体制の強化」を規定している。盲学校の学校図書館においてもサピエ図書館への会員登録と国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービスへの送信承認申請の促進に向けて、国や教育委員会からの支援の強化が望まれる。 7. 他機関との連携 公共図書館、点字図書館との連携の実施率は5割を超えており、インターネットを活用したサピエ図書館等への会員登録よりも高くなっている。とはいえ、どちらとも連携していない盲学校の学校図書館は3~4割にものぼる。他の学校図書館や大学図書館との連携となるとその実施率はまだ低いままである。 読書バリアフリー法第9条では、「視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等」に向けて、点字図書館等との連携の重要性を規定しており、その一層の促進が求められる。 なお、学校図書館等との連携強化に向けて、2021年度から文部科学省の委託事業として「学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム」事業を開始している。2022年3月には、そのウェブサイト(https://accessreading.org/conso/)も公開されており、参考になる。 8. 図書館(室)運営上の課題(自由記述) 挙げられた課題は多岐にわたるが、おおよそ「担当職員・運営体制」、「予算」、「資料」、「設備」、「連携」、「その他」などに大別できる。なかでも、「担当職員・運営体制」、「予算」、「資料」に関わる課題が多く寄せられたが、これらは SLA2019調査の結果とほぼ同様だった。 これらの課題は相互に関連し合っており、どれか1つへのアプローチだけでは抜本的な解決は難しい。これまでの学校図書館の運営は、ほぼ各盲学校の努力にのみ任されてきたといってよい。読書バリアフリー法が施行された今、盲学校の学校図書館が抱える課題を解決し、その充実・振興のための総合的なアプローチの検討を国や教育委員会には望みたい。 9.  まとめ 学校図書館は、毎日通う学校の中にある、子どもにとって最も身近な図書館である。そのため、生涯にわたる図書館利用の入口と言われることがある。学校図書館の利用状況が、卒業後の公共図書館や点字図書館の利用につながるかどうかを決定づけるとも言われる。 そう考えると、盲学校の学校図書館の充実・振興は、公共図書館や点字図書館の新たな利用者開拓にも直結する問題である。「もっと読みたい」「図書館は役立つ」といった意識をすべての子どもに持ってもらえるような学校図書館の環境づくりとサービス提供が欠かせない。そのためには、すでに述べたような課題を解決していく必要があるものの、国や教育委員会の施策に待つところが大きいことは言うまでもない。しかし、連携を図ることで解決の糸口を見いだせたり、実際に解決につながったりする課題もある。したがって、学校図書館の側からの働きかけを待つだけではなく、公共図書館や点字図書館の側からも学校図書館に働きかけて、これまで以上に連携を強めていくことが肝要と言える。 3)点字図書館(視覚障害者情報提供施設)向けアンケート集計結果と考察 ①アンケート調査結果 令和元年度実態調査「日本の点字図書館36」 【蔵書数等は2020年3月31日現在の数値、貸出数等は2019年4月1日〜2020年3月31日までの実績】 調査担当:日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会 実態調査プロジェクト Ⅰ 施設数・職員数 施設数84 N=81 回答率96.4% ◎設置主体 都道府県 30 市 17 区 2 特殊法人 1 社会福祉法人 25 NPO法人 2 宗教法人 3 任意団体 1 合計 81 ◎経営主体 市 8 区 1 特殊法人 2 社会福祉法人 51 一般社団法人 4 公益社団法人 1 一般財団法人 1 公益財団法人 4 NPO 法人 3 宗教法人 3 任意団体 1 合計 81 ◎職員数 職員総数 848 正規職員(内、視覚障害者) 481(51) 非常勤 ・ 嘱託等(内、視覚障害者) 367(38) ◎司書(補)資格 正規専任・兼任職員中 司書(補)の職員数 164 Ⅱ 資料 (1)自館所蔵の貸出用資料の種類 点字図書 79 L点字 26 点字雑誌 68 カセット図書 70 カセット雑誌 49 音声デイジー図書 80 テキストデイジー図書 36 マルチメディアデイジー図書 48 音声デイジー雑誌 73 拡大図書 15 触る絵本 ( 点字絵本含む )  42 市販テープ(音楽・演芸・雑誌等) 29 デイジー以外の一般CD(音楽・演芸・雑誌等) 57 (2)蔵書数 ※実際に蔵書としているもの ①点字図書 総図書数 (複本含む) 769,294 タイトル数 (複本なし)  494,915 内自館製作タイトル数 219,556 ②カセット図書 総図書数 (複本含む) 735,583 タイトル数 (複本なし)  329,316 内自館製作タイトル数 174,016 ③一般CD総図書数 (複本含む) 7,148 タイトル数 (複本なし)  6,790 内自館製作タイトル数 89 ④音声デイジー図書 総図書数 (複本含む) 527,960 タイトル数 (複本なし)  444,895 内自館製作タイトル数 170,995 ⑤テキストデイジー図書 総図書数 (複本含む) 3,036 タイトル数 (複本なし)  3,077 内自館製作タイトル数 2,748 ⑥マルチメディアデイジー図書 総図書数 (複本含む) 3,851 タイトル数 (複本なし)  3,594 内自館製作タイトル数 470 (3)年間受入数(タイトル数 複本なし) ①点字図書 自館製作 7,714 寄贈 596 購入 147 厚労省委託 1,873 他館複製 518 NHK委託 ー その他 0 合計 10,848 ②点字雑誌 自館製作 1,122 寄贈 1,279 購入 3,798 厚労省委託 ー 他館複製 314 NHK委託 ー その他 ー 合計 6,513 ③カセット図書 自館製作 480 寄贈 5 購入 0 厚労省委託 22 他館複製 30 NHK委託 ー その他 0 合計 537 ④カセット雑誌 自館製作 621 寄贈 230 購入 125 厚労省委託 ー 他館複製 503 NHK委託 その他 ー 合計 1,479 ⑤音声デイジー図書 自館製作 7,734 寄贈 1,084 購入 43 厚労省委託 2,148 他館複製 2,318 NHK委託 276 その他 0 合計 13,603 ⑥テキストデイジー図書 自館製作 947 寄贈 0 購入 0 厚労省委託 0 他館複製 0 NHK委託 ー その他 0 合計 947 ⑦マルチメディアデイジー図書 自館製作 28 寄贈 46 購入 1 厚労省委託 465 他館複製 0 NHK委託 ー その他 0 合計 540 ⑧音声デイジー雑誌 自館製作 2,826 寄贈 1,754 購入 806 厚労省委託 ー 他館複製 15,126 NHK委託 ー その他 ー 合計 20,512 ⑨一般CD図書 自館製作 4 寄贈 119 購入 107 厚労省委託 0 他館複製 0 NHK委託 ー その他 0 合計 230 ⑩一般CD雑誌 自館製作 6 寄贈 259 購入 2 厚労省委託 ー 他館複製 31 NHK委託 ー その他 ー 合計 298 Ⅲ 利用 (1)利用登録者数 ① 総数 登録者数 79,756 内点字触読者数 24,415 B会員※ 453 ② 2019年度新規 登録者数 2,175 内点字触読者数 365 B会員※ 73 ※B会員とは、視覚障害者以外の文字による読書に困難をかかえる人。 (2)自館所蔵貸出数 ※個人への貸出数 ①点字図書 実施 80 未実施 1 延貸出数 37,952 ②点字雑誌 実施 69 未実施 12 延貸出数 31,819 ③カセット図書 実施 71 未実施 10 延貸出数 11,958 ④カセット雑誌 実施 48 未実施 33 延貸出数 21,933 ⑤音声デイジー図書 実施 81 未実施 0 延貸出数 475,082 ⑥テキストデイジー図書 実施 26 未実施 55 延貸出数 3,673 ⑦マルチメディアデイジー図書 実施 47 未実施 34 延貸出数 739 ⑧音声デイジー雑誌 実施 74 未実施 7 延貸出数 307,734 ⑨一般CD図書 実施 48 未実施 33 延貸出数 3,976 ⑩一般CD雑誌 実施 31 未実施 50 延貸出数 8,516 (3)他館との相互貸借(借受) ※他館所蔵図書等の個人への貸出数 ①点字図書 実施 80 未実施 1 延貸出数 18,257 ②点字雑誌 実施 46 未実施 35 延貸出数 3,798 ③カセット図書 実施 75 未実施 6 延貸出数 11,786 ④カセット雑誌 実施 55 未実施 26 延貸出数 3,591 ⑤音声デイジー図書 実施 81 未実施 0 延貸出数 374,419 ⑥テキストデイジー図書 実施 23 未実施 58 延貸出数 48 ⑦マルチメディアデイジー図書 実施 35 未実施 46 延貸出数 28 ⑧音声デイジー雑誌 実施 73 未実施 8 延貸出数 149,332 ⑨一般CD図書 実施 54 未実施 27 延貸出数 2,223 ⑩一般CD雑誌 実施 35 未実施 46 延貸出数 561 (4)他館との相互貸借(貸出) ※自館所蔵図書等の他館への貸出数 ①点字図書 実施 80 未実施 1 延貸出数 23,691 ②点字雑誌 実施 44 未実施 37 延貸出数 1,484 ③カセット図書 実施 71 未実施 10 延貸出数 16,282 ④カセット雑誌 実施 32 未実施 49 延貸出数 1,123 ⑤音声デイジー図書 実施 81 未実施 0 延貸出数 273,153 ⑥テキストデイジー図書 実施 19 未実施 62 延貸出数 70 ⑦マルチメディアデイジー図書 実施 27 未実施 54 延貸出数 152 ⑧音声デイジー雑誌 実施 66 未実施 15 延貸出数 32,510 ⑨一般CD図書 実施 41 未実施 40 延貸出数 1,760 ⑩一般CD雑誌 実施 23 未実施 58 延貸出数 294 (5)プライベートサービス ①点訳 実施 76 未実施 5 件数 2,665 実績数(ページ) 341,688 ②音訳(カセット) 実施 32 未実施 49 件数 45 実績数(時間) 82 ③音訳(デイジー) 実施 76 未実施 5 件数 1,559 実績数(時間) 6,683 ④テキスト 実施 41 未実施 40 件数 434 実績数(ページ) 46,300 ⑤拡大写本 実施 7 未実施 74 件数 19 実績数(ページ) 2,789 ⑥立体コピー 実施 7 未実施 74 件数 10 実績数(枚) 32 ⑦点字プリンタ打ちだし 実施 59 未実施 22 件数 2,056 実績数(ページ) 397,232 ⑧対面朗読 実施 53 未実施 28 件数 4,558 実績数(時間) 9,062 ⑨その他 実施 25 未実施 56 (6)自館製作コンテンツ利用(ダウンロードのみ) ①点字データ 実施 77 未実施 4 タイトル数 107,712 延利用者数 483,527 ②音声デイジー 実施 78 未実施 3 タイトル数 234,358 延利用者数 3,544,577 ③テキストデイジー 実施 55 未実施 26 タイトル数 11,467 延利用者数 283,331 ④マルチメディアデイジー 実施 13 未実施 68 タイトル数 291 延利用者数 5,178 (7)貸出総数 ①デイジー図書 音声デイジー 4,667,231 テキストデイジー 287,122 マルチメディアデイジー 6,097 音声デイジー雑誌 489,576 科目総数 5,476,300 ②カセット図書 カセット図書 39,909 カセット雑誌 26,647 科目総数 67,098 ③一般CD 一般CD図書 7,959 一般CD雑誌 9,371 科目総数 17,330 ④点字図書 点字図書 563,427 点字雑誌 37,101 科目総数 603,625 ⑤総貸出数 6,164,353 Ⅳ ボランティア (1)ボランティア養成講習会 ①点訳講習会 対面での講習会 実施 67、未実施 14 通信による教育 実施 12、未実施 69 2019年度開始受講実人員数 1,095 2019年度認定者数 509 ②音訳講習会 対面での講習会 実施 67、未実施 14 通信による教育 実施 2、未実施 79 2019年度開始受講実人員数 1,045 2019年度認定者数 540 ③デイジー編集講習会 対面での講習会 実施 21、未実施 67 通信による教育 実施 1、未実施 80 2019年度開始受講実人員数 97 2019年度認定者数 74 ④視覚障害者へのPCサポート 対面での講習会 実施 8、未実施 73 通信による教育 実施 0、未実施 81 2019年度開始受講実人員数 62 2019年度認定者数 52 (2)点訳者数・音訳者数ほか各種ボランティア延人数 点訳者数 6,198 点訳校正者数 2,620 点写者数 4 作業ボランティア数:貸出・返却業務 384、テープ・CD 473、点字印刷 169 視覚障害者へのPCサポート 294 その他作業ボランティア数 616 音訳者数 6,239 録音校正者数 2,004 対面音訳者数 818 デイジー編集者数 1,464 シネマデイジー製作 137 マルチメディアデイジー製作 69 テキストデイジー製作 491 テキスト化 349 Ⅴ その他 情報提供サービス以外の業務 レクリエーション等の行事 53 視覚障害者対象の点字講習 44 視覚障害者対象の歩行訓練 28 視覚障害者対象のワープロパソコン講習 43 パソコン以外の機械操作説明・講習等 64 視覚障害者用具の斡旋もしくは販売 35 視覚障害者団体事務局等の業務 26 生活・職業・結婚等の相談業務 36 点字(録音)版の自治体広報等の製作 56 パソコンボランティアの養成・派遣事業 11 学校等への講師派遣、学生・生徒受け入れ等の協力 66 視覚障害者への機器の貸出 63 令和3年度障害者福祉推進事業 「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」 点字図書館向けアンケート(ICT機器普及に向けた取り組みについて)集計結果 2021 年 10 月末日、調査票を全国の点字図書館84館に送付し、84館からの回答を得た。 (回答率 100%)N=84 1. 2019年度パソコン講習を 行った 45館(53.6%) 行っていない 39館(46.4%) 2. 2019年度スマホの操作説明・講習などを 行った 48館(57.1%) 行っていない 36館(42.9%) 3. 2019年度ICT機器の情報提供・相談先の紹介などを 行った 65館(77.4%) 行っていない 19館(22.6%) 4. 2019年度デイジー図書プレイヤーの操作説明や講習を 行った 72館(85.7%) 行っていない 12館(14.3%) 5. 2019年度デイジー図書プレイヤーの貸出を 行った 65館(77.4%) 行っていない 19館(22.6%) ②点字図書館(視覚障害者情報提供施設)におけるサービスの現況と考察 本章では点字図書館におけるサービスについて、実態調査をもとに結果と考察を報告する。今回、公共図書館・視覚特別支援学校の学校図書館については新たな調査であったが、点字図書館については同様の調査が、(社福)日本盲人社会福祉施設協議会の情報サービス部会により毎年行われており(内部資料「日本の点字図書館」)、2019年度の調査はすでに行われていたため、この結果を参考とした。2019年度の調査票は84施設に送付されており回答は81施設、回答率96.4%であった。 なお、他の調査との比較のため、質問設定をしていなかった、新たな調査項目 (ICT機器普及に向けた取り組み ) については、その部分のみを「2019年度分追加調査」として協力してもらいデータを集計した。追加項目の回答率は100%であった。 1 施設・職員の状況 点字図書館の設置主体は行政が設置しているものが60.5%で、残りは社会福祉法人、NPO法人等であった。さらに経営主体を見ていくと、行政が経営をしている施設は13.6%であった。最も多かったものは63%の社会福祉法人であった。 職員数は施設の規模が異なるためここでは示さないが、正規職員の10.6%、非常勤職員の10.4%が視覚障害者職員であった。障害者雇用という点では点字図書館は一つの雇用場所になっていることがわかる。 2 利用者数 登録者数は79,756 人であった。複数館に登録することが可能であるため一概には言えないが、視覚障害者を31万人とすると、身体障害者手帳所持者の25.7%が登録利用をしているということになる。 B会員 (視覚障害者以外の読書困難者 )は453 人で、毎年増加しているとはいえ、その数は多いとは言えない状況であった。これは各館の設置条例の中身により、視覚障害者のみの登録利用に限定している館もあるためと考えられ、位置づけが変わらないと状況はそれほど変化していかないかもしれない。 3 所蔵資料と年間の図書受け入れ状況 所蔵資料は、点字図書・L点字図書・カセット図書・音声デイジー図書・テキストデイジー図書・マルチメディアデイジー図書・音声デイジー雑誌・拡大図書・触る絵本 (点字絵本含む)・市販テープ・デイジー以外の一般CD(音楽・演芸・雑誌等)であった。 各館が全てを蔵書しているわけでなく、館により所蔵しているものは異なっていた。少ないものをピックアップすると、L点字図書が32.1%、テキストデイジー図書が44.4%、拡大図書が18.5%であった。拡大図書を所蔵しているところは少なく、音声と点字が中心であり、見えない人たちへの図書提供が主となっていることがうかがえた。 図書の受け入れ状況は、自館で製作したものが最も多く、続いて他館が製作したものを受け入れしているというものが同じ割合で、合計で全体の約7割を占めていた。点字図書館がボランティアの力で蔵書を増やしていることが明らかとなった。 一方で購入図書の割合は少なく、全体の9.1%であった。購入図書の内訳を詳しく見ていくと、点字雑誌は58.3%が購入されていた。デイジー雑誌も3.9%と他の種類よりは購入が多くなっていた。販売されているものが少ないということもあるが、購入費自体はわからないものの、かなり低い結果となった。 4 図書の個人貸出数、オンライン提供、プライベートサービス 総貸出数は6,164,353であった。内訳をみていくと、デイジー図書が88.8%であった。点字図書は9.8%、カセット図書は1.1%であった。カセット図書の利用数は少ないが、個人へのカセット図書貸し出しは87.6%の館で実施をしており、デイジーに移行できていない人に継続的に対応をしていることが分かる。 自館製作のダウンロード利用をみると、点字データが30.4%と総貸出数と比較すると割合が増えており、点字はオンラインからのデータでの活用が多いことが分かった。 プライベートサービスは音訳化、点訳化に加えて、テキスト化・拡大写本・立体コピー・点字プリンタ打ちだし・対面朗読が実施されていた。各館により実施サービスは異なるが、点字プリンタ打ちだしは約3割が未実施、対面朗読も4割弱が未実施であった。点字図書館があるから十分なサービスが受けられるという状況ではないことが見えてきた。 5 点字図書館で活動するボランティアの実状  点訳者数・音訳者数ほか各種ボランティア延人数は、22,329人となっていた。点訳者・音訳者はともに約28%で最も多い割合となった。シネマデイジー製作・マルチメディアデイジー製作・テキストデイジー製作・テキスト化という分野はここ数年で新しく出てきた活動であるが、約1,000人(4%)であった。この人数は今後増えていくことが予想される。ただ、延べ人数となっているように複数の活動を行っているボランティアが多くいると考えられ、現在活動をしている人が新しい分野に移ると今までの活動が縮小することも考えられ、この点は注視する必要がある。 活動ボランティアを細かく見ていくために施設を5つほどピックアップして一覧とした(「参考資料」4ページ)。それによると、各ボランティアの実働状況は9割近くで、登録者はしっかり活動をしていることが分かった。年齢層を見ていくと60代の後半で高齢化がかなり進んでいることが明らかとなった。活動年数は10年以上が約50%となっており、活動が長い人が点字図書館を支えている体制が見えてきた。今回取り上げた施設だと20年以上の活動という人が約17%であり、超ベテランの方が多い状況であった。製作数は個人差があるが、年間製作数は1冊台であった。ボランティアが1名減ると年間1冊の図書製作数が減っていくことになる。 6 ICT機器の情報提供や利用等の読書支援の状況 ICT機器の利用ができると、機器を活用しての読書が可能となる。最近の機器の進歩は早く、視覚に障害があると単独で利用方法を習得することは困難で、適切な支援・情報提供が望まれ、また利用につながる読書支援が必要となってくる。 ICT機器の講習については、パソコン講習を行ったと回答したのが45館(53.6%)、スマホの操作説明・講習などを行ったと回答をしたのが、48館(57.1%)であった。スマホはiPhoneのボイスオーバーでの活用が中心だと思われるが、数年前まではスマホ講習への取り組みが少なかったことを考えると、パソコンを上回る実施館数となっており、ニーズが増えてきていることが想像できる。 またICT機器の情報提供・相談先の紹介などを行ったと回答したのは65館(77.4%)となっていた。講習を実施していないが、講習が受けられるところ等を紹介しているところは多いようである。 読書機器の講習では、デイジー図書プレイヤーの操作説明や講習を行ったと回答をしたのは72館(85.7%)であった。デイジー図書プレイヤーの貸出を行っていたのは65館(77.4%)でいずれも多くの施設で実施されていた。デイジー図書を利用する際にデイジー図書プレイヤーが必要であるため、多くの館で実施していることが明かとなった。 もう一つの読書支援で点字の利用もあるが、点字講習を行ったと回答したのは、44館(54.3%) であった。パソコン、スマホ講習と実施館数に大きな差はなかった。 7 その他のサービスの提供状況 視覚障害者に情報を提供する施設ということで、図書館業務以外のサービスを提供をしている施設もあった。最も多かったサービスは、学校等への講師派遣、学生・生徒の受け入れであった。66館 (81.5% ) が実施していた。 その他ではレクリエーション等行事の実施、生活・職業・結婚等の相談業務、用具の斡旋、販売、歩行訓練の提供などがあった。また、数は少なかったが、パソコンボランティアの養成・派遣事業を行っているというところが 11館 (13.6%) あった。 8 まとめ 視覚障害者は高齢化が進んでおり、7割以上が60歳以上というデータが出ている。今まで利用してきた方法や機器で読書を楽しむことができるのが一番だが、見えにくくなると新しい機器の活用が必要となってくる。今後さらに高齢化が進んでくれば、図書の提供はもちろんだが、読書するための方法を再習得するような支援サービスが必要となってくるだろう。既に始めているところもあることが分かったが、まだ半分近くが実施していない状況でもあった。図書を提供すれば楽しめるということではなく、その前段階に目を向けていく必要がある。 またボランティアの高齢化も課題である。今まで頑張ってきたボランティアがしばらくは継続できるかもしれないが、その先は先細り、ボランティアの大幅な減少が予想される。点字図書館に所蔵される図書のほとんどがボランティアにより製作をされたものであることから、この先どのようにしていくのか、公共図書館との連携はもちろんだが、業界全体で対策を検討する時期に来ていると思われる。 ------------ C ヒアリング調査結果 1)大学関係へのヒアリング 国立大学A 大学図書館担当者からのメールによる情報提供 私立大学B 障害学生支援部署担当者へのZOOMによるヒアリング をもとに、本稿をまとめた。 (1)大学図書館における「視覚障害者等が利用しやすい書籍等の蔵書数」について 文部科学省が例年夏から秋にかけて大学図書館を対象に調査を実施し、毎年3月下旬に結果を発表している学術情報基盤実態調査(旧大学図書館実態調査)の中に、「視覚障害者等が利用しやすい書籍等の所蔵数」という項目がある。 以下は、2022年3月25日に発表された令和3年度の調査結果で、令和3年5月1日現在の数である。(大学数は809 大学で、うち国立大学86校、公立大学98校、私立大学625校) ①視覚障害者等が利用しやすい書籍等の所蔵数―紙 国立大学A(8学部以上) 20校 1,419点 国立大学B(5~7学部) 20校 4,628点 国立大学C(2~4学部) 19校 7,521点 国立大学D(単科大学) 27校 2,114点 公立大学A(8学部以上) 1校 0点 公立大学B(5~7学部) 11校 110点 公立大学C(2~4学部) 38校 0点 公立大学D(単科大学) 48校 0点 私立大学A(8学部以上) 46校 486点 私立大学B(5~7学部) 87校 204点 私立大学C(2~4学部) 275校 36点 私立大学D(単科大学) 217校 419点 ②視覚障害者等が利用しやすい書籍等の所蔵数―電子 国立大学A(8学部以上) 20校 77,626点 国立大学B(5~7学部) 20校 483点 国立大学C(2~4学部) 19校 944点 国立大学D(単科大学) 27校 4点 公立大学A(8学部以上) 1校 0点 公立大学B(5~7学部) 11校 8点 公立大学C(2~4学部) 38校 953点 公立大学D(単科大学) 48校 274点 私立大学A(8学部以上) 46校 25,965点 私立大学B(5~7学部) 87校 13,768点 私立大学C(2~4学部) 275校 4,390点 私立大学D(単科大学) 217校 6,370点 ③視覚障害者等が利用しやすい書籍等の所蔵数―録音図書 国立大学A(8学部以上) 20校 316点 国立大学B(5~7学部) 20校 265点 国立大学C(2~4学部) 19校 4,478点 国立大学D(単科大学) 27校 106点 公立大学A(8学部以上) 1校 436点 公立大学B(5~7学部) 11校 0点 公立大学C(2~4学部) 38校 0点 公立大学D(単科大学) 48校 215点 私立大学A(8学部以上) 46校 1,386点 私立大学B(5~7学部) 87校 2,019点 私立大学C(2~4学部) 275校 2,905点 私立大学D(単科大学) 217校 52点 なお、これらが購入されたものか、ボランティアなどにより製作されたものかについて、この統計からは不明である。 (2)国立大学(A大学附属図書館)からの情報提供 1.A大学における障害のある学生・教職員への支援体制について A大学における障害のある学生・教職員に対する全体的な支援は、障害学生支援部署であるバリアフリー支援室が実施している。バリアフリー支援室にはサポートスタッフと呼ばれる学生がおり、様々な支援活動に参画している。 以下は、視覚障害のある学生や教員へのサポート例である。 ①書籍・資料の各種加工 文字拡大、PDF データ化、デキストデータ化、点訳 ②対面朗読 サポートスタッフが対面で書籍や資料などを読み上げている。図書館には対面朗読専用室や防音ブースがあり、対面朗読で利用されている。 ③代読・代筆 授業などで筆記を求められる場合、サポートスタッフが記載事項を代読し、当該学生の口述内容を代筆する。また、授業中の板書、プロジェクター、字幕などの視覚的情報をサポートスタッフがその場で読み上げたり、メモをしておいて、あとで読み上げたりする。 また、支援の一環として、A大学附属図書館ではバリアフリー支援室と連携しつつ、視覚障害、肢体不自由などのため、紙媒体の資料の利用が困難な人を対象に、図書館所蔵資料等の電子化サービスを行っている。 ウェブサイトには、以下の記述がある。 「学内図書館所蔵資料の PDF 化およびテキスト化。学習・教育・研究等に必要なものであれば、利用者自身の持ち込み資料(自身所有のもの、利用者が所属部局の図書館室を通して学外図書館から借り受けたもの等)も可能です。 ※授業のレジュメ等は本サービスの対象にはなりません。所属部局のバリアフリー支援実施担当者にご相談ください。」 2.ボランティア養成について 行っていない。 3.サピエ加入について 行っていない。 4.大学図書館とバリアフリー支援室との連携について 定例会議などを設けるのではなく、お互いが必要な時に連絡を取り合って、臨機応変に対応している。 (3)私立大学(B大学)障害学生支援部署へのヒアリングから 1.支援の対象者について B大学では、2006年に当初は身体障害学生を支援する部署として発足したが、現在は発達障害学生も対象にしている。 身体障害学生にしぼると、2022年度4月現在40名が登録、そのうち、視覚障害学生の在籍は5名(大学院生1名、学部の4年生が2名、2年生が2名)。大学院生1名は、この4月から他の私立大学を卒業し入学してきた学生となる。この大学院生を含めた5名のうち、全盲の学生が1名、弱視の学生が4名である。 2.障害学生への情報保障について 支援の基本として、必要な資料をテキストデータ化もしくは PDFデータ化して渡すことにしている。テキストデータ化での支援の場合、最近の授業では教科書を使うよりも、スライド資料などを教員が製作されるので、教員からスライド資料やワープロ文書などを提出してもらい、それを支援部署のスタッフが基本的にテキストデータ化している。 過去にロースクールに視覚障害のある学生が在籍した際、法律系の出版社と相談して、教科書のテキストデータを提供してもらったことがある。 ただし2019 年度に理数系の学部に視覚障がい学生が入るということで、理系の出版社に相談してみたところ、テキストデータの提供はむずかしいという話になった。 そこでその学生と相談した結果、その学生が高校の時にやっていた方式を参考に、点訳や図表グラフの点図化などについて、外部の専門のボランティア団体に作成を依頼することになった。この場合、有償でお願いしている。スケジュールとしては、授業の3週間前に点訳を依頼し、授業の1週間前に提出してもらっている(パワーポイント20ページくらいで2週間という目安)。 他の弱視の学生の支援では、支援学生に教科書を渡して、グーグルレンズを使って、テキストデータ化し、原本とのつきあわせ校正と修正をやってもらう場合もある。 その場合は、1ページいくらという謝金を払っている。 3.情報保障で作成されるデータの扱いについて 個人所有のデータという位置づけにしているので、B大学ではアーカイブ化は行っていない。 4.支援学生の養成について 支援学生の養成講座を開講し、学生の中から支援学生を募集し、登録している。 5.大学図書館との連携について これまであまり行われてこなかった。最近、弱視の学生から図書館への拡大読書器の設置が要望され、障害学生支援部署で保有のものが、かなり古い機種であったため、現在、拡大読書器の導入を検討するため、大学図書館と話し合いをもっている。こうしたことがきっかけで、できるところから大学図書館との連携が図れると良いと考えている。 2)点字出版所へのヒアリング 社会福祉法人東京点字出版所 理事長 肥後正幸さん 1. 点字出版所について 日本の点字出版所は、2022年1月現在、25施設あり、これらの施設は、日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)の点字出版部会に加盟している。ちなみに、肥後さんは、点字出版部会の部会長を務めている。 肥後さんによると、これらの点字出版所の7~8割は長く継続している施設だという。点字出版を行うにはどうしても専門的な設備を揃える必要があるため、ここ数年、新規参入はない。 点字出版所は、大きく分けて「選挙のお知らせ」(注1)の作成と、点字図書や点字教科書の製作を担っている。 選挙については、日盲委(日本盲人福祉委員会)の中にプロジェクトチームがあり、選挙の時期が決まると、各都道府県の選挙管理委員会に状況を聞いたうえで、各点字出版所に問い合わせて、割り振りを決めている。 点字図書については、一般に市販されている本を点訳する。 視覚特別支援学校(盲学校)の小学部と中学部で使用する点字教科書については、教科ごとに1種類、文部科学省著作となっている教科書を製作する。 高等部は、普通科と理療科に分かれていて自由販売になるが、普通科の点字教科書を作っている出版所は5社、理療科の点字教科書を作っている出版所は6社。それ以外には、市町村から広報の点字版制作を請け負っている出版所もある。 肥後さんによると、「点字教科書を手がけていない点字出版所は、経営的に厳しい側面があるだろう」とのこと。 2.点字教科書製作の現状 近年、盲学校の数が減少傾向にあり、また点字が読める盲学生が減ってきているとされ、点字教科書製作にも多少影響はあるという。ただし、各教科に1人でも点字使用の生徒がいれば、必ず製作されるので、受注が減るわけではない。 教科書には、さまざまな図版が使われているが、点字教科書は現在でも点字プリンター出力は用いられておらず、コンピュータを使わず、いわゆる手作業による触図が使われている。 点字プリンター出力が使われていない理由としては、点字プリンターでは出力時にエラーが発生すると、点が抜けてしまう危険があるからで、その点、製版機を使ったほうが安定する。 当面はとくに問題がないということだが、製版機を製作するメーカーが少なくなってきている結果、メンテナンスがむずかしい状況が発生している。また、製版機を扱える人材が高齢化してきているため、将来に不安な面がないとは言えない。 教科書のデータ化や音声化について、まだ普通科のほうでは手がけられていないが、理療科の教科書については、令和5年度から従来の「点字+音声デイジー」に加えて、「墨字拡大版+ UD ブラウザ」「点字+点字データ」という方式になることが決まった。 3.点字出版とサピエとの関係 東京点字出版所は、点字教科書をメインに手がけているが、年度初めなど、若干仕事がゆるやかになるため、サピエに登録されていない一般書を点字図書として出版することがある。逆に、すでに出版所が点字図書を出版している場合、サピエにはそのタイトルをアップしないでほしいという協定のようなものがある。 肥後さんによると、点字図書館と点字出版所との情報交換の場などは基本的には無いという。日盲社協の中に情報サービス部会というのがあるが、いまのところ点字出版部会と研修会などを合同で開催するような機会は無いそうだ。 4.点字出版所が年間に発行する点数 大阪にある日本ライトハウス点字情報技術センターが、日盲社協点字出版部会の事務局を務めているが、毎月「点字出版速報」を出している。「点字出版速報」には、点字出版所と点字図書館が出版している点数が掲載されている。同センターから、年間の点字出版点数と、総合目録が発行されている。 2021年4月から現在までに同センターのデータベースに登録された、完成図書の件数は、154件である。 5.点字新聞・雑誌の発行状況 定期的に刊行されている点字新聞・雑誌としては、点字毎日(毎日新聞社)や点字ジャーナル(東京ヘレン・ケラー協会)などが知られている。 6.自治体広報類の点字版・音訳版について 東京点字出版所は、地元である三鷹市の広報の点字版を製作している。 音訳版については、点字出版所がやってしまうと、そこにも別予算が必要になってしまうため、ボランティアに依頼しているケースが多い。 肥後さんの話では、東京点字出版所に以前、ある市からボランティアの高齢化のため、音訳版のほうの見積も出してもらえないかという依頼があった。出版所の場合、どうしても採算をとらなければならないため、そのように見積を出してみたら、その後返事がなかったという。 このままでは、将来的に自治体広報の点字版や音訳版が発行されなくなっていくかもしれないという懸念から、日盲社協点字出版部会では5,6年前に一度、まったく広報の点字版や音訳版を製作していない都道府県を調べて、アプローチしたという。たとえば、島根県が以前製作されていなかったが、翌年から島根ライトハウスライブラリーという点字図書館が発行するようになった。この調査がきっかけで、都道府県レベルの調べはついたのだが、市町村レベルまでは調査ができていない。 7.個人からの点字図書製作リクエストについて まれに視覚障害個人からのリクエストはあるが、点字出版の場合、1冊製作するのも10 冊製作するのも価格が変わらないため、(注2)1冊の価格がとても高いものになってしまう。一応、見積を出すのだが、実際に製作するケースはほとんど無い。 理想的には、図書館がある程度点字図書を購入して、利用者に貸出するというのが望ましいと考えられるが、実際には図書館からの購入は、日本点字図書館を除けば、ほぼ無いという。 「価格差保障制度」(注3)を利用して点字図書を購入している視覚障害者がいるかどうか尋ねたところ、いることはいるが、以前の 10 分の1程度に減っているという。 この理由として、肥後さんは、実施主体が国から地方自治体に変わったことにより、視覚障害者への周知が足りないことや、自治体担当者のほうも、日常生活用具については知っていたとしても、点字図書も対象になっていることまで知らないケースがあるのではないかと指摘する。 8.東京点字出版所について 最後に、東京点字出版所の歴史について伺った。東京点字出版所は、現理事長・肥後正幸さんの祖父である肥後基一さん(1904 ‐ 1978 島根県出身)が独学で点字図書の作り方を考えながら、大正 15 年(1926 年)に当時の淀橋町柏木(現在の新宿区)で創業。当時は、鍼灸に関連する図書や雑誌、教科書を発行していた。戦時中、東京光の家出版部と合併していた時期を経て、昭和 27 年(1952 年)、現在の場所(三鷹市下連雀)に移転し、現在に至っている。職員は、肥後さんを含めて 15 名(正職員)である。 *注1:選挙公報の点字版、拡大文字版、録音版の正式名称。法律上、視覚障害者のための選挙公報は発行されていないため、こう呼ばれている。 参考 URL:http://nichimou.org/blog/160928-kaichou/ *注2:点字出版は、一般的に亜鉛か塩化ビニール製の原版を製作し、点字用紙をプレスして印刷されるため、原版製作費が出版経費の大半を占める。 *注3:正式には、点字図書給付事業。1992 年(平成4年)2月、視覚障害者や点字出版所からの長年の要望が実り、実現した制度。原本と点字図書の差額を自治体が負担する制度で、給付対象者は「主に情報の入手を点字によっている視覚障害者」とされ、障害等級の制限はない。2006年(平成 18年)10月1日に成立した障害者総合支援法により、市町村ごとに対応が異なっている。 参考 URL: http://www.lighthouse.or.jp/tecti/tecti/hosyo.html ------------ まとめ 最後に、令和3年度障害者福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」(以下、本事業)の成果と今後の課題をまとめる。 本事業では、従来から(社福)日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会が実施している「日本の点字図書館(点字図書館実態調査)」の 2019年度の調査対象(84館)に加えて、全国の公共図書館のうち「サピエ図書館」の加盟館ないしは障害者サービスを実施していると考えられる館あわせて343館を抽出し、また、全国の視覚特別支援学校(盲学校)の学校図書館(以下、盲学校図書館)67館に対して、アンケート調査を実施した。調査にあたっては、それぞれの館に合致した設問項目を検討し、主に 2019年度実績を問う形で調査した(新型コロナの影響を受けていないことを考慮した措置)。さらに、点字出版施設、大学図書館に対しても、ヒアリング調査を実施した。 その結果、点字図書館は86館(100%)、公共図書館は310館(90.4%)、盲学校図書館は58館(86.6%)の回答を得た。 館種別の調査結果とその考察については、各章においてすでに詳述しているので、ここではなるべく重複を避け、全体的なまとめを述べていきたい。 まず、本事業においては、調査対象を点字図書館に限定せず、ともに「読書バリアフリー」を推進している公共図書館、盲学校図書館にアンケート調査を、そして点字出版所と大学図書館にヒアリング調査を行ったことで、「サピエ図書館」への加盟状況や「連携」の状況などの相互の関係性が明らかとなったことは大きい。アンケートの自由記述回答からは、それぞれの課題も確認でき、そこには共通する課題が少なくないことも把握できた。 次に、館種別に特徴的な点をみると、点字図書館に対しては、これまでの「日本の点字図書館」の調査項目には含めていなかった ICT 支援に関する調査を追加で実施した。あわせて、アクセシブルな書籍の製作に携わる点訳、音訳等のボランティアに関する詳細な調査を抽出した5館のみであるが調査した。その結果からは、これまで「感覚」として捉えてきた点訳者、音訳者等の高齢化問題(点訳、音訳等を始める年齢自体も上がっている、経験年数も減少している)がエビデンスとして導き出されたことは大きな収穫であった。 公共図書館については、本事業では、「サピエ図書館」に加盟するなど障害者サービスを実施していると考えられる図書館を抽出しての調査であった。障害者サービスを実施していると考えられる図書館だけを対象とした調査は初めての試みであり、その実態が明らかとなった意義は大きいといえる。ただし、その結果からは、「特定録音物等発受施設指定」を受けている館が2割にとどまるなど、サービスの提供は決して十分とは言い難い面も明らかとなった。残りの公共図書館の状況は、いかばかりか、想像に難くないだろう。 盲学校図書館については、これまで行われてきた調査では把握されてこなかった自館でのアクセシブルな書籍の製作状況、ボランティアの状況、「サピエ図書館」や国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」の状況が初めて詳らかとなった。かねてより指摘されてきた通り、職員配置や年間資料購入費の面で厳しい状況が改めて確認できた。この点が「サピエ図書館」への加盟や「連携」等のネックになっているものと考えられる。 どの館種にも共通する課題を整理したい。まずは、アクセシブルな書籍の製作についてである。著作権法第 37 条の権利制限に基づく点訳、音訳、テキストデータ化については、ボランティアの協力が不可欠であるが、点訳、音訳、テキストデータ化のボランティアのいずれもが60歳以上が多くを占めており、資料製作の維持が困難になる状況がいずれくる可能性があることが示されたといえる。資料製作能力の維持・拡大のために、新しい方法による人材育成が必要になるが、点字図書館の正職員数は平均で約6人、公共図書館でも障害者サービス担当職員 5人以下が約75%を占める状況であり、図書館側に新しいボランティアの育成や新しい方法を模索する人的余裕がない状況も推察される。大学との連携により、ボランティアの活動を大学の単位として認定することによって学生の参加を促し、当面の人材を確保するなど、社会リソースの幅広い活用も視野に入れた対策の検討が必要だろう。視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(以下、読書バリアフリー法)に基づく省庁や出版社の取り組みにより、アクセシブルな書籍が商業的に出版されるようになったとしても、大量部数を同時に刊行する商業出版の性格上、様々な障害を理由に読書が困難な方一人一人に対応するような、きめ細やかな対応は現実的には難しいと思われる。そのため、著作権法第37 条の権利制限に基づく資料製作の重要性は今後も変わらない。当然のことではあるが、中長期的な資料製作体制の維持・充実のためには、点字図書館、公共図書館、盲学校図書館、大学図書館の職員体制の整備が求められる。 次に、アクセシブルな書籍の共有についてである。「サピエ図書館」や国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」がシステム連携だけではなく、収集範囲の点で役割を分担することで、全国の公共図書館、点字図書館、盲学校図書館、大学図書館等が著作権法第37条に基づいて製作したデータの全国的な共有が形としては実現している。しかし、両者ともまだ加盟館ないし送信承認館となっている館は公共図書館、盲学校図書館では限られている。盲学校図書館にあっては、年間資料購入費の規模があまりにも小さく、「サピエ図書館」の年会費4万円の捻出が困難な盲学校図書館が少なくないものと推察される。一方、年会費の支払いを求めていない国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」は、盲学校図書館にとって有力な選択肢になるべきはずだが、送信承認館はわずか5館(8.6%)に止まっている。まだ「サピエ図書館」と「視覚障害者等用データ送信サービス」を知らない図書館もあり、より一層の広報、周知の取り組みも必要といえよう。 繰り返しになるが、これまでは図書館の種類ごとに調査や議論が行われるきらいがあった。しかし、本事業により、図書館の枠を超えて調査を行えたことは、読書バリアフリー法の目的である「障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現」に向けた大きな一歩であるといえよう。本事業の成果が、これからの行政の施策や、各図書館の取り組みに生かされることを願っている。 ------------ 参考資料 (1~6ページ) (1ページ) 令和3年度障害者総合福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」事業 公共図書館向けアンケート 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 この調査は読書バリアフリー法の成立を受けて、視覚障害者等へのサービスを行っている図書館等の実情を調査するためのものです。この他に、点字図書館、学校図書館向けの調査も行っています。後日、これらの調査をまとめた報告を公表する予定です。お忙しいところ申し訳ありませんが、調査へのご協力をお願いいたします。 アンケート記入上の注意点 (1)統計数字などは、2019年度の数字で回答してください。 (2)この調査で扱う「製作している資料」とは、原本のある図書や雑誌を障害者用に製作し、資料として受け入れて提供しているものを指します。(市の広報・社協だよりなどの点字版等は資料には含みません。また、それらの寄贈を受けていることを資料製作とはいいません。) (3)自治体内に複数の図書館がある場合は、それらを一つにまとめてご回答ください。(自治体単位で集計をします。) 0.基本情報 施設名称: 郵便番号・所在地: 電話番号: FAX番号: メールアドレス: サピエ図書館への会員登録:あり・なし (なしの場合、今後の予定は:あり ・ 検討中・なし ) 国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスへの登録:あり・なし (なしの場合、今後の予定は:あり ・ 検討中・なし ) 特定録音物等発受施設指定:あり・なし 心身障害者用ゆうメール発受施設届出:あり・なし 担当者氏名: 1.障害者サービスを担当する職員がいますか。 (ここで言う担当職員とは専任兼務は問いませんが、事務分掌に障害者サービスが書かれている職員のことです) ・いる(うち、正規人数・非正規人数) ・いない 2.障害者サービス用資料の所蔵、製作について伺います。 *下記(1)~(12)の資料ごとに、所蔵の有無、所蔵数(タイトル)、製作の有無、全製作数(タイトル)、2019年度製作数(タイトル)を回答してください。 *製作を行っていない場合は、該当部分は空欄にしてください。 *タイトル数が分からない場合は、おおよその数でけっこうです。 (例 点字本3冊で1タイトル、カセットテープ5本で1タイトル) *以下の資料はいずれも雑誌を含みます。 (1)点字 (2)カセットテープ(市販のカセットブック等は除く) (3)音声デイジー (4)テキストデイジー (5)マルチメディアデイジー (6)拡大写本(パソコンなどによる手製) (7)大活字本(市販) (8)触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) (9)布の絵本 (10)LLブック (11)市販CD・カセット(障害者サービスのために購入したもの) (12)テキストデータ 3.障害者サービスの利用実績について伺います。 (1)利用登録者数 *障害者サービス利用登録者数。2020年3月末の人数を原則とします。 ・総数:(うち、視覚障害者数) ・障害者サービスの登録を行っていない (2)資料の個人貸出数と、オンライン提供数(製作した資料データを国立国会図書館のサイトから送信している場合)。 *いずれも2019年度実績でお願いします。個人貸出数には、相互貸借やダウンロードで入手した資料の提供も含みます。 *提供そのものをしていない場合は空欄 *提供しているが実績のない場合は「0」 *提供しているが実績が分からない場合は「?」 としてください。 *下記①~⑫の資料ごとに、個人貸出数(タイトル)、オンライン提供数を回答してください。 ①点字 ②カセットテープ(市販のカセットブック等は除く) ③音声デイジー ④テキストデイジー ⑤マルチメディアデイジー ⑥拡大写本(パソコンなどによる手製) ⑦大活字本(市販) ⑧触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) ⑨布の絵本 ⑩LLブック ⑪市販CD・カセット(障害者への提供数) ⑫テキストデータ (3)資料の貸出状況・相互貸借(図書館・点字図書館・学校・団体への貸出 *2019年度の実績タイトル数でお願いします。 *提供そのものをしていない場合は空欄 *提供しているが実績のない場合は「0」 *提供しているが実績が分からない場合は「?」 としてください。 *下記①~⑫の資料ごとに、相互貸借貸出数(タイトル)を回答してください。 ①点字 ②カセットテープ(市販のカセットブック等は除く) ③音声デイジー ④テキストデイジー ⑤マルチメディアデイジー ⑥拡大写本(パソコンなどによる手製) ⑦大活字本(市販) ⑧触る絵本(点字絵本、ユニバーサル絵本を含む) ⑨布の絵本 ⑩LLブック ⑪市販CD・カセット ⑫テキストデータ (4)各サービスの実施状況 次のサービスを実施していますか。実施の有無と、行っている場合の実績(個人)を書いてください。 *実績数は、おおまかな数でもけっこうです。 *実施しているが実績のない場合は「0」 *実施しているが実績が不明な場合は「?」 としてください。 *下記①~⑤のサービス名ごとに、実施の有無、実績(タイトル数)を回答してください。 ①点字・録音資料の郵送貸出 ②一般図書資料の郵送貸出 ③職員等による宅配サービス ④施設入所者へのサービス ⑤対面朗読(実績は総時間数) (5)プライベートサービス プライベート資料製作(利用者個人のための資料製作、蔵書としないもの)を実施していますか。 ・実施している ・実施していない 【実施している場合、実績件数】 点訳: 音訳(カセットテープ): 音訳(デイジー): テキストデータ作成: 拡大写本: その他(具体的に): 4.音訳者等の図書館協力者・ボランティアについて伺います。 *音訳者等がいない館は、次の「設問5.」にお進みください。 (1)資料製作や対面朗読で活動している図書館協力者・ボランティアの数 *図書館に直接登録ではなく、協力団体(グループ)の場合は、おおむねの人数でかまいません。 *該当項目がない場合は空欄にしてください。 *一人の人がいくつかの活動をしている場合は、それぞれにカウントしてください。 *最後の「総数」は実人員を書いてください。 点訳者・ボランティア: 音訳者・ボランティア: デイジー編集者・ボランティア: テキストデータ制作者・ボランティア: その他(具体的に: ): 図書館協力者・ボランティアの総数 実人員数 : (2)図書館協力者・ボランティア養成講習会 2015年度~2019年度(5年間)に、 ・実施した ・実施していない 【実施した場合は、「点訳・音訳等の種類、5年間での実施回数、1回の日数、養成者数」を書いてください。】 (例、「点訳 初級1回、中級1回、それぞれ15日 15人」) 表に記入しにくい場合は、別途記載してください。 点訳(初級): 点訳(中級): 音訳(初級) : 音訳(中級) : (3)図書館協力者・ボランティアに関する課題がありましたら自由に書いてください。 5.視覚障害者等に対するICT機器(情報機器)の利用支援について伺います。 (1)デイジー再生機等の貸出を行っていますか。 ・行っている ・行っていない (2)デイジー再生機やタブレットの操作説明や講習を行っていますか。 ・行っている ・行っていない (3)パソコンやスマホの操作説明・講習などを行っていますか。 ・行っている ・行っていない (4)ICT機器の情報提供や、相談先の紹介等を行っていますか。 ・行っている ・行っていない 6.点字図書館と公共図書館の連携について伺います。 (1)点字図書館と公共図書館が連携する協議会等がありますか。 ある場合は、その名称と、行っている活動を具体的に書いてください。 ・ある 名称: 具体的活動: ・ない (2)点字図書館やサピエ図書館に望むことがありましたら自由に書いてください。  設問は以上です。ご協力いただきありがとうございました。 (2ページ) 令和3年度障害者総合福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」事業 盲学校図書館向けアンケート 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会  この調査は読書バリアフリー法の成立を受けて、視覚特別支援学校 盲学校)の図書館等の実情を調査するためのものです。この他に、点字図書館、公立図書館向けの調査も行っています。後日、これらの調査をまとめた報告を公表する予定です。お忙しいところ申し訳ありませんが、調査へのご協力をお願いいたします。 なお、統計数字などは、2019年度の数字で回答してくださるようお願いします。 0.基本情報 学校名: 郵便番号・所在地: 電話番号: FAX番号: メールアドレス: 担当者氏名: 1.児童・生徒数、教職員数 幼稚部: 小学部: 中学部: 高等部(普通科等、高等学校相当): 高等部(専攻科相当): (合計: ) 教職員: 2.職員(図書館(室)担当者) 図書館(室)担当職員数:(うち、正規職員数、嘱託・非常勤数) うち、 司書教諭:(正規職員数、嘱託・非常勤数) 学校司書:(正規職員数、嘱託・非常勤数) 3. 年間資料購入費(円) 4.蔵書数(タイトル数) 墨字図書(雑誌を含む。以下同じ): 点字図書(L点字含む):(うち、自館製作数) カセット録音図書:(うち、自館製作数) 音声デイジー図書:(うち、自館製作数) テキストデイジー図書:(うち、自館製作数) マルチメディアデイジー図書:(うち、自館製作数) 拡大図書(拡大写本・大活字本含む):(うち、自館製作数) 触る絵本(点字絵本・布の絵本含む):(うち、自館製作数) 市販のテープ・CD: 5.ボランティア 貴校の図書館(室)には、協力ボランティア(団体)がいますか。 個人ボランティア ・いる(点訳 人、音訳 人、その他(具体的に:) 人) ・いない 協力団体 ・ある(点訳  団体、音訳  団体、その他(具体的に:)  団体) ・ない 6.サピエ図書館等への登録 (1)サピエ図書館への会員登録 ・あり ・なし (「なし」の場合)サピエ図書館への会員登録の予定: あり・なし (「なし」の場合の理由をお聞かせください: ) (2)国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」について ・利用している(送信承認館になっている) ・利用していない (未利用の場合)同サービスへの承認申請の予定: あり・なし (未利用の理由をお聞かせください: ) 7.他機関との連携 (1)点字図書館との連携: あり・なし (「あり」の場合、その内容:) (2)公共図書館との連携: あり・なし (「あり」の場合、その内容:) (3)他校の学校図書館(室)との連携: あり・なし (「あり」の場合、その内容:) (4)大学図書館との連携: あり・なし (「あり」の場合、その内容:) (5)その他の機関との連携: あり・なし (「あり」の場合、その内容:) 8.図書館(室)運営上の課題がございましたらご自由にお書きください。 設問は以上です。ご協力いただきありがとうございました。 (3ページ) 全視情協発第 21-114 号 2021年10月26日 日盲社協情報サービス部会加盟施設長様 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 理事長 竹下 亘 「日本の点字図書館36(2019年度実態調査)」の調査結果の使用ならびに追加調査のお願い 拝啓 時下ますますご健勝のことと拝察いたします。平素は、視覚障害者への情報提供サービスにご尽力賜り、ありがとうございます。 本協会では、国の読書バリアフリー法推進策の一環として、今年度、厚生労働省障害者総合福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」事業を受託し、全国の点字図書館や公共図書館、学校図書館等の現状に関するアンケート調査を行うことになりました。 ご承知の通り、全国の点字図書館については毎年、日盲社協情報サービス部会で「日本の点字図書館」実態調査が行われておりますので、2020年度に行われた「36(2019年度)」の調査結果を本事業に活用させていただきたいと存じます。 この件については、日盲社協情報サービス部会長様にはご了解をいただきましたが、調査にご協力くださった加盟施設の皆様にもご了承いただきたく、お願い申し上げます。 また、当時の調査には含まれていなかった別紙項目について、改めて調査させていただきたく思います。 業務ご多忙の中を恐縮ですが、11月15日(月)頃までにご回答くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 本事業の結果は、今年度末に調査報告書にまとめ、貴施設にも送らせていただきます。 ご不明の点などは、全視情協事務局までお問い合わせください。 ご理解ご協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。 敬具 全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)事務局 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2 TEL 06-6441-1068 FAX 06-6441-1066 E-mail zensijokyo-jimu@naiiv.net (別紙) 回答先:全視情協事務局(勝手ながらご回答は11月15日(月)までにお願いします) FAX 06-6441-1066 E-mail zensijokyo-jimu@naiiv.net ICT機器普及に向けた取り組みについて(アンケート調査ご協力のお願い) 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 令和3年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究」事業の一環として、視覚障害者情報提供施設(点字図書館)のICT機器普及に向けた取り組みについてお伺いします。 2019 年度(2019年4月1日~2020年3月31日)、視覚障害者等を対象にした下記事業について、貴施設での実施の有無をご回答くださいますようお願いします。 ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。 貴施設名: ご担当者様お名前: 【2019 年度(2019年4月1日~2020年3月31日)、視覚障害者等を対象に下記事業を行いましたか。】 1.パソコン講習 行った・行っていない 2.スマホの操作説明・講習など 行った・行っていない 3.ICT機器の情報提供・相談先の紹介等 行った・行っていない 4.デイジー図書プレイヤーの操作説明や講習 行った・行っていない 5.デイジー図書プレイヤーの貸出 行った・行っていない (以上です。ご協力ありがとうございました。) (4ページ) 点字図書館の点訳・音訳等ボランティアの実状(2019年度) 全視情協加盟点字図書館のうち、関東、近畿、中国、九州の5館を対象に、全視情協事務局が調査(2022年2月)。 1.登録人数と実働 (休止) 人数 点訳 登録:A 178、B 173、C 129、D 142、E 27、計 471 休止:A 64、B 29、C 11、D 12、E 0、計 52 実働:A 114、B144、C 118、D 130、E 27、計 419 実働率:A 64.0、B 83.2、C 91.5、D 91.5、E 100、計 90 音訳 登録:A 187、B 174、C 227、D 110、E 41、計 552 休止:A 11、B 27、C 14、D 21、E 8、計 70 実働:A 176、B 147、C 213、D 89、E 33、計 482 実働率:A 94.1、B 84.5、C 93.85、D 80.95、E 80.5、計 87.3 電子書籍 登録:A ー、B 11、C 27、D 12、E 1、計 51 休止:A ー、B 0、C 4、D 1、E 0、計 5 実働:Aー、B 11、C 23、D 11、E 1、計 46 実働率:A ー、B 100、C 85.2、D 91.7、E 100、計 90.2 2.年代構成 (% ) と平均年齢(A、C、Eのみ) 点訳 39 下:A 0、C 2.33、E 0 40~:A 1、C 5.43、E 1 50~:A 17、C 13.2、E 8 60~:A 47、C40.3、E 6 70~:A 30、C 29.5、E11 80~:A 5、C 5.43、E 1 不明:A 0、C 3.88、E 0 平均:A 64.7、C 65.8、E 61.2 音訳 39 下:A 0、C 0、E 0 40~:A 3、C 1.49、E 2 50~:A 24、C 11.4、E 8 60~:A 49、C 38.3、E 19 70~:A 25、C 34.3、E 10 80~:A 0、C 9.45、E 1 不明:A 0 、C 4.98、E 0 平均:A 64、C 68.7、E 60 電子書籍 39 下:A ー、C 3.7、E ー 40~:A ー、C 11.1、E ー 50~:A ー、C 7.41、E ー 60~:A ー、C 44.4、E ー 70~:A ー、C 25.9、E 1 80~:A ー、C 3.7、E ー 不明:A ー、C 3.7、E ー 平均:A ー、C 62.7、E 70 3-1 .活動年数(B、D、E のみ) 点訳 5年以下:B 66人 38.2%、D 52人 36.6%、E 7人 25.9% 6~10年:B 39人 22.5%、D 23人 16.2%、E 4人 14.8% 11~15年:B 31人 17.9%、D 26人 18.3%、E 6人 22.3% 16~20年:B 22人 12.7%、D 18人 12.7%、E 5人 18.5% 21年以上:B 15人 8.7%、D 23人 16.2%、E 5人 18.5% 合計:B 173人、D 142人、E 27人 音訳 5年以下:B 60人 34.5%、D 29人 26.4%、E 10人 26.3% 6~10年:B 38人 21.8%、D 19人 17.3%、E 7人 18.4% 11~15年:B 22人 12.6%、D 21人 19.1%、E 9人 23.7% 16~20年:B 27人 15.5%、D 15人 13.6%、E 4人 10.5% 21年以上:B 27人 15.5%、D 26人 23.6%、E 8人 21.1% 合計:B 174人、D 110人、E 38人 電子書籍 5年以下:B 11人 100%、D 11人 91.7%、E 1人 100% 6~10年:B 0人 0%、D 1人 8.3%、E 0人 0% 11~15年:B 0人 0%、D 0人 0%、E 0人 0% 16~20年:B 0人 0%、D 0人 0%、E 0人 0% 21年以上:B 0人 0%、D 0人 0%、E 0人 0% 合計:B 11人、D 12人、E 1人 3-2 .活動年数平均(Bは未集計) A: 点訳 8.3年、音訳 12.41年、電子書籍 ー C: 点訳 11.98年、音訳 13.72年、電子書籍 8.44年 D: 点訳 10.7年、音訳 12.6年、電子書籍 3.0年 E: 点訳 11.25年、音訳 12.44年、電子書籍 3年 4.ボランティア一人当たりの年間図書製作数 点訳 年間製作数:A 169、B 174、C 204、D 254、E 13、計645 実働人数:A 114、B 144、C 114、D 130、E 27、計 415 1人あたりの製作数: A 1.48、B 1.21、C 1.79、D 1.95、E 0.48、計 1.55 音訳 年間製作数:A 164、B 178、C 336、D 80、E 51、計 645 実働人数:A 176、B 147、C 176、D 89、E 33、計 445 1人あたりの製作数:A 0.93、B 1.21、C 1.91、D 0.90、E 1.55、計 1.45 (5ページ) 読書バリアフリー法(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律) 令和元年法律第四十九号 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進し、もって障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化(文字・活字文化振興法(平成十七年法律第九十一号)第二条に規定する文字・活字文化をいう。)の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「視覚障害者等」とは、視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍(雑誌、新聞その他の刊行物を含む。以下同じ。)について、視覚による表現の認識が困難な者をいう。 2 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい書籍」とは、点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍をいう。 3 この法律において「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」とは、電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。第十一条第二項及び第十二条第二項において同じ。)であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるものをいう。 (基本理念) 第三条 視覚障害者等の読書環境の整備の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。  一 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が視覚障害者等の読書に係る利便性の向上に著しく資する特性を有することに鑑み、情報通信その他の分野における先端的な技術等を活用して視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること。  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍及び視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「視覚障害者等が利用しやすい書籍等」という。)の量的拡充及び質の向上が図られること。  三 視覚障害者等の障害の種類及び程度に応じた配慮がなされること。 (国の責務) 第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (財政上の措置等) 第六条 政府は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 第二章 基本計画等 (基本計画) 第七条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(以下この章において「基本計画」という。)を定めなければならない。 2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策についての基本的な方針  二 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関し政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  三 前二号に掲げるもののほか、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議しなければならない。 4 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定しようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 5 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 6 前三項の規定は、基本計画の変更について準用する。 (地方公共団体の計画) 第八条 地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を定めようとするときは、あらかじめ、視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 3 地方公共団体は、第一項の計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 前二項の規定は、第一項の計画の変更について準用する。 第三章 基本的施策 (視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等) 第九条 国及び地方公共団体は、公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館並びに学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、各々の果たすべき役割に応じ、点字図書館とも連携して、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制の整備が行われるよう、必要な施策を講ずるものとする。 2 国及び地方公共団体は、点字図書館について、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の充実、公立図書館等に対する視覚障害者等が利用しやすい書籍等の利用に関する情報提供その他の視覚障害者等が利用しやすい書籍等を視覚障害者が十分かつ円滑に利用することができるようにするための取組の促進に必要な施策を講ずるものとする。 (インターネットを利用したサービスの提供体制の強化) 第十条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等がインターネットを利用して全国各地に存する視覚障害者等が利用しやすい書籍等を十分かつ円滑に利用することができるようにするため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。  一 点字図書館等から著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十七条第二項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等(以下「特定電子書籍等」という。)であってインターネットにより送信することができるもの及び当該点字図書館等の有する視覚障害者等が利用しやすい書籍等に関する情報の提供を受け、これらをインターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援  二 視覚障害者等が利用しやすい書籍等に係るインターネットを利用したサービスの提供についての国立国会図書館、前号のネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携の強化 (特定書籍及び特定電子書籍等の製作の支援) 第十一条 国及び地方公共団体は、著作権法第三十七条第一項又は第三項本文の規定により製作される視覚障害者等が利用しやすい書籍(以下「特定書籍」という。)及び特定電子書籍等の製作を支援するため、製作に係る基準の作成等のこれらの質の向上を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、特定書籍及び特定電子書籍等の効率的な製作を促進するため、出版を行う者(次条及び第十八条において「出版者」という。)からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するための環境の整備に必要な支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 (視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等) 第十二条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、書籍を購入した視覚障害者等からの求めに応じて出版者が当該書籍に係る電磁的記録の提供を行うことその他の出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。 (外国からの視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の入手のための環境の整備) 第十三条 国は、視覚障害者等が、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の枠組みに基づき、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、その入手に関する相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備について必要な施策を講ずるものとする。 (端末機器等及びこれに関する情報の入手の支援) 第十四条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等及びこれに関する情報を視覚障害者等が入手することを支援するため、必要な施策を講ずるものとする。 (情報通信技術の習得支援) 第十五条 国及び地方公共団体は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するに当たって必要となる情報通信技術を視覚障害者等が習得することを支援するため、講習会及び巡回指導の実施の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。 (研究開発の推進等) 第十六条 国は、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発の推進及びその成果の普及に必要な施策を講ずるものとする。 (人材の育成等) 第十七条 国及び地方公共団体は、特定書籍及び特定電子書籍等の製作並びに公立図書館等、国立国会図書館及び点字図書館における視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援に係る人材の育成、資質の向上及び確保を図るため、研修の実施の推進、広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。 第四章 協議の場等 第十八条 国は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の効果的な推進を図るため、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、総務省その他の関係行政機関の職員、国立国会図書館、公立図書館等、点字図書館、第十条第一号のネットワークを運営する者、特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者、出版者、視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。 附則 この法律は、公布の日から施行する。 参考URL 厚生労働省ウェブサイト PDF データ https://www.mhlw.go.jp/content/000735771.pdf テキストデータ https://www.mhlw.go.jp/content/000735804.txt 点字データ https://www.mhlw.go.jp/content/000735858.bes (6ページ) 読書バリアフリー法基本計画(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画) 令和2年7月 文部科学省 厚生労働省 Ⅰ はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  令和元年6月21日、議員立法により、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)が成立した。 我が国は、平成26年に、国連の「障害者の権利に関する条約」を批准した。同条約は、「障害の社会モデル」の考え方を示しつつ、締約国に対して、障害者があらゆる形態の意思疎通によって表現及び意見の自由についての権利を行使できるようにすること、障害者の生涯学習の機会を確保すること、障害者が利用しやすい様式を通じて、文化的な作品を享受する機会を確保することなどを求めている。また、同条約の締結に向け、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)をはじめとする様々な国内法制度が整備され、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けた取組が進められている。 こうした大きな流れがある中で、特に「読書バリアフリー法」の成立に向けた動きの契機となったのは、平成25年6月27日の世界知的所有権機関(WIPO)による、「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(以下「マラケシュ条約」という。)の採択である。 平成30年の第196回通常国会においては、「マラケシュ条約」の締結の承認とともに、著作権法(昭和45年法律第48号)の改正が行われ、一部の条項を除き、平成31年1月1日に施行された。これにより、視覚障害者等のために書籍の音訳等を著作権者等の許諾なく行うことを認める権利制限規定(著作権法第37条第3項)において、同規定の対象者として、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持てない者等が含まれることが明確になった。また、権利制限の対象とする行為について、コピー(複製)、譲渡やインターネット送信(自動公衆送信)に加えて、新たにメール送信等も対象とされた。更に、視覚障害者等のために書籍の音訳等を権利者の許諾なく行うことができる団体等についても、障害者施設、図書館等の公共施設の設置者や文化庁長官が個別に指定する者に加え、新たに、一定の要件を満たすボランティア団体等も対象とされることとなった。 更に、この改正著作権法に係る国会での審議の際、衆議院・参議院の両委員会において、「視覚障害者等の読書の機会の充実を図るためには、本法と併せて、…(略)…当該視覚障害者等のためのインターネット上も含めた図書館サービス等の提供体制の強化、アクセシブルな電子書籍の販売等の促進その他の環境整備も重要であることに鑑み、その推進の在り方について検討を加え、法制上の措置その他の必要な措置を講ずること。」との附帯決議がなされたことが、その後の読書バリアフリー法の制定の動きを加速化した。 2.基本計画について (1)位置付け 読書バリアフリー法は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法(昭和45年法律第84号)の理念にのっとって、障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することを目的とするものである。 読書バリアフリー法第7条第1項には、「文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を定める旨の規定があり、この基本的な計画(以下「基本計画」という。)には、基本的な方針、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策その他必要な事項を定めることとされている。   また、同条第3項及び第4項では、基本計画を策定するときは、あらかじめ、「経済産業大臣、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議」することを定めているとともに、「視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ものとされている。加えて、第18条において、国は、「施策の効果的な推進を図るため、…(略)…関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずる」ものとされている。これらの規定に基づき、本基本計画は、関係者協議会を設置し、関係者から聴取した意見を踏まえて、策定されるものである。 なお、基本計画は、視覚障害者等の読書環境の整備を通じ、障害者の社会参加・活躍の推進や共生社会の実現を目指すものであり、障害者基本法に基づく「障害者基本計画」の基本理念や方針を踏まえて作成する必要がある。また、基本計画の実現に向けた取組を進めることは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨にも適うものである。 (2)対象期間 本基本計画は令和2年度から令和6年度までを対象とする。基本計画の策定後は、定期的に進捗状況を把握・評価していくものとする。 (3)構成 本基本計画は、この「Ⅰ はじめに」、「Ⅱ 基本的な方針」、「Ⅲ 施策の方向性」及び「Ⅳ おわりに」で構成される。 「Ⅱ 基本的な方針」では、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本理念を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。 「Ⅲ 施策の方向性」では、読書バリアフリー法第9条から第17条までに規定する9の分野の基本的施策について、本基本計画の対象期間に国が講ずる施策の方向性を示している。 「Ⅳ おわりに」では、計画に基づく取組を進めるに当たり念頭に置くべきことなどを示している。 (4)基本計画の対象 読書バリアフリー法第2条第1項において、「視覚障害者等」とは、「視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍…(略)…について、視覚による表現の認識が困難な者」と定義されている。具体的には、視覚障害者、読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害がある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障害者であり、基本計画においてもこれらの者を対象とする。 なお、読書環境の整備に当たっては、視覚障害者等以外の、読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も必要である。 また、乳幼児期から高齢期までの各ライフステージにおいて必要とされる様々な種類の書籍を考慮しつつ取り組む必要がある。なお、同項において、「書籍」には、雑誌、新聞その他の刊行物も含むこととしている。 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 読書は、乳幼児・青少年期、成人期、高齢期の一生涯にわたって、個人の学びや成長を支えるものであり、教養や娯楽を得る手段のみならず、教育や就労を支える重要な活動である。特に、学校教育段階においては、教科書以外にも、副読本、参考書、資料集、学術論文等が、学習や教育・研究に関連する活動の支えとなる。また、中等教育機関、高等教育機関及び職業教育機関への選抜試験の受験、進学や、資格取得のほか、就職活動、職業生活等の人生のあらゆる段階において、書籍を通じて専門的知識を得ることが不可欠である。   一方で、我が国において視覚障害者等が利用しやすい書籍等はいまだ少なく、障害の有無にかかわらず全ての国民が文字・活字文化を等しく恵沢できる状況とはなっていない。 視覚障害者等の読書環境の整備を推進するため、読書バリアフリー法は、第3条で「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること」等を定めている。 読書バリアフリー法第2条第2項において、「視覚障害者等が利用しやすい書籍」(以下「アクセシブルな書籍」という。)とは、「点字図書、拡大図書その他の視覚障害者等がその内容を容易に認識することができる書籍」と定義されており、例えば点字図書、拡大図書、音訳図書、触る絵本、LLブック、布の絵本等がある。 また、読書バリアフリー法第2条第3項において、「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」(以下「アクセシブルな電子書籍等」という。)とは、「電子書籍その他の書籍に相当する文字、音声、点字等の電磁的記録…(略)…であって、電子計算機等を利用して視覚障害者等がその内容を容易に認識することができるもの」と定義されており、例えば、音声読み上げ対応の電子書籍、デイジー図書、オーディオブック、テキストデータ等がある。 視覚障害者等による、これらのアクセシブルな書籍及びアクセシブルな電子書籍等(以下「アクセシブルな書籍等」という。)に関する状況と課題については、「借りる」と「購入する」の2つの側面から捉えられる。 「借りる」に関しては、点字図書館と一部の公立図書館が、ボランティア・図書館協力者等の協力を得つつ、アクセシブルな書籍等の製作に取り組むとともに、窓口貸出・郵送貸出・宅配サービス・施設入所者へのサービス等の障害者サービスを必要に応じて展開してきており、視覚障害者等の情報保障の支えとなってきた。また、視覚障害等のある学生が在籍する大学や高等専門学校においても、学生からの求めに応じ、書籍等の製作が行われつつあるとともに、特別支援学校(視覚障害)の一部においてもサピエ図書館との連携により、在籍する児童生徒が書籍等を利用できるよう環境を整えている。 一方で、これらのアクセシブルな書籍等の数がニーズに対して不足していることに加え、点字図書館と公立図書館においてアクセシブルな書籍等の製作等に協力する人材の確保が難しくなってきており、今後の継続的な提供体制には課題がある。また、製作される書籍等の質が必ずしも担保されていない場合があること、サピエ図書館や国立国会図書館を含む、各図書館が所有する様々な形態の書籍等が十分に共有されておらず、全国の視覚障害者等が効率的に利用できる仕組みになっていないことが指摘されている。更に、今後、アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるに当たり、視覚障害者等がそれらを公立図書館で利用できるようにする観点からの取組も重要である。 「購入する」に関しては、点字出版施設等が製作するアクセシブルな書籍に加えて、出版者が製作する合成音声読み上げや文字の拡大に対応できる電子書籍等が、少しずつ市場に出回ってきている。点字図書や大活字図書等の印刷物の利用者としては視覚障害者が中心となるが、電子書籍等は、読み上げや文字の拡大が可能であるなど、発達障害者や肢体不自由のある者でも利用がしやすく、電子書籍等の発展に期待が大きく寄せられている。 その一方で、視覚障害者等にとって利用しづらい電子書籍等も少なくないこと、印刷本の出版と同時に販売されるものは少ないこと、紙市場に比して電子出版の市場規模(推定販売金額)は令和元年時点で2割弱に留まり、特に教育や研究において求められる電子書籍等は極めて少ないこと等、日本における普及は始まったばかりであり、多くの課題が残されている。なお、視覚障害者等のために、自社発行物の巻末に電子データの引換券を添付するといった取組も存在するが、ごく一部の出版社に限られているのが現状である。 また、電子書籍等に加えて、点字図書や大活字図書等の印刷物についても引き続き多くのニーズがあり、より多くの書籍が発行されることが望まれている。 前述のとおり、平成30年の第196回通常国会において成立した改正著作権法及び読書バリアフリー法において、視覚障害者や発達障害者のほか、肢体不自由により書籍を持つことができない者等が対象となり、アクセシブルな書籍等へのニーズが拡大していることを踏まえ、近年の先端技術を活用した、効率的で持続可能な仕組みを構築する必要がある。   Ⅱ 基本的な方針  1.アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供 市場で流通している電子書籍等が少なかった時代には、著作権法第37条第1項に基づき製作された点字図書や、同条第3項に基づき障害者施設、図書館、一定の要件を満たすボランティア団体等が権利者の許諾なく製作できる録音図書、拡大図書等の書籍が、視覚障害者等の読書環境を支える中心となってきた。 今後は、それらに加え、市場で流通する電子書籍等と、著作権法第37条第3項に基づき製作される電子書籍等を車の両輪として、両面から取組を進め、アクセシブルな電子書籍等の普及を図る時代となっている。 合わせて、アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等を視覚障害者等がより円滑に使える環境を整備することも必要である。 また、障害の状況によって端末機器等を使えない場合や、紙や布といった現物の書籍が必要とされる場面・ニーズもあるため、引き続きアクセシブルな書籍の提供を継続するための取組も必要である。更に、書籍利用のためのアクセシビリティのみならず、書籍の入手や利用に係るアクセシビリティの改善・向上にも合わせて取り組む必要がある。 2.アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上 利用者の視点からは、アクセシブルな書籍等の「量的拡充」及び「質の向上」の両方のニーズがある。 「量的拡充」に関しては、今後のアクセシブルな書籍等のニーズの拡大に対応するため、公立図書館、点字図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館、国立国会図書館において、各々の果たすべき役割に応じ、アクセシブルな書籍等を充実させることが重要である。また、アクセシブルな書籍等を全国の視覚障害者等に届けるための仕組みとして、製作されたアクセシブルな書籍等の共有に向けた図書館間の連携やネットワークを構築することが重要である。 「質の向上」については、書籍等の製作に係る基準の作成や、製作に従事する者の研修が必要である。 また、「量的拡充」及び「質の向上」のいずれにおいても、これまでに製作された書籍等について、書籍・電子書籍等の形態を問わずアクセシブルなものにし、長期的にデータとして保存するための取組や、製作者が効率的に作業できるよう出版者から製作者に電子データを提供する仕組みを構築することが効果的である。特に、教育や研究に必要とされるアクセシブルな電子書籍等がニーズに比して不足しており、この分野の取組が喫緊の課題である。 なお、書籍等のコンテンツや用途によって、「正確性」が求められる場合、「速報性」が求められる場合など様々であり、双方の観点のバランスを取りながら進めていくことが必要である。 3.視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮 視覚障害者等の障害の種類及び程度によって、アクセシブルといえる書籍等の提供媒体及び利用方法は異なる。このため、読書環境の整備を進めるに当たっては、個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な形態の書籍等を用意することが必要である。 なお、視覚障害者等が、著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍(以下「特定書籍」という。)及び同条第2項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな電子書籍等(以下「特定電子書籍等」という。)の利用を希望する場合、これらの特定書籍・特定電子書籍等を視覚障害者等の利用に供する機関においては、障害者手帳や医学的診断基準に基づく診断書の有無に限ることなく、他の根拠資料を用いる等、柔軟な対応により障害等の確認を行うことが適切である。 Ⅲ 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 【基本的考え方】 公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、点字図書館とも連携して、アクセシブルな書籍等の充実、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。 また、点字図書館については、アクセシブルな書籍等の充実、公立図書館等に対する利用に関する情報提供、視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図る。 (1)アクセシブルな書籍等の充実 ・公立図書館等において、地域や機関等の実情を踏まえ、点字図書館や他の図書館等と連携しつつ、アクセシブルな書籍等を充実させる取組を促進する。 ・国立国会図書館において、学術文献の録音資料やテキストデータの製作を促進するとともに、公立図書館等で製作される特定電子書籍等を収集し、アクセシブルな書籍等の充実を図る。 ・点字図書館及び点字出版施設(以下「点字図書館等」という。)が、今まで培ってきたノウハウを生かし、引き続き障害の種類及び程度に応じたアクセシブルな書籍等が充実するよう、点字図書館等による製作の支援を行う。 ・国立国会図書館と日本点字図書館が協力して実施している図書館等におけるテキストデータ製作支援の実験の取組を進め、それにより得られた知見を活用すること等により、点字図書館や公立図書館等におけるアクセシブルな電子書籍等の製作の取組を支援する。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・公立図書館や学校図書館において、各館の特性や利用者のニーズ等に応じ、段差の解消や対面朗読室等の施設の整備、アクセシブルな書籍等の紹介コーナーの設置、拡大読書機器等の読書支援機器の整備、点字による表示、ピクトグラム等を使ったわかりやすい表示、インターネットを活用した広報・情報提供体制の充実及び障害者サービスの充実を図る取組を促進する。 ・学校における学校図書館を活用した支援を充実するため、設置者である各教育委員会等に対し、司書教諭・学校司書の配置の重要性について周知するとともに、司書教諭をはじめ学級担任や通級の担当者、特別支援教育コーディネーター等の教員間の連携の重要性について周知するなどして支援体制の整備を図る。 ・インクルーシブ教育システムの理念にのっとって、視覚障害等のある児童生徒及び学生等が在籍する初等中等教育機関及び高等教育機関において読書環境を保障することが重要であり、以下の取組を推進する。 ①点字図書館及び公立図書館と学校図書館の連携を図り、視覚障害等のある児童生徒を支援するための取組を進める。 ②各教育委員会を通して、特別支援学校、特別支援学級設置校、及び視覚障害等のある児童生徒が在籍する学校に対し、視覚障害等のある児童生徒が生涯学習の場である図書館の利用について学ぶ機会を設けることの重要性及び具体的な利用方法について周知を図る。 ③全国の大学及び高等専門学校の附属図書館が保有するアクセシブルな書籍等の所在情報を共有するためのリポジトリを国立情報学研究所において整備し、視覚障害者等による円滑な利用を促進する。また、同リポジトリと国立国会図書館のデータベースとの連携について検討を進める。更に、同リポジトリやデータベース等で公開される学術論文等について、視覚障害者等のアクセシビリティの向上に努める。 ④全国の大学等の障害学生支援を担う施設は、大学図書館に類する役割や機能を有する施設であれば、著作権法施行令(昭和45年政令第335号)において視覚障害者等のための複製が認められる者として位置付けられていることについて大学等に周知するとともに、大学等の図書館と学内の障害学生支援担当部局等の関係部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化する。 ・点字図書館において、公立図書館や地域のICTサポートセンター等との連携を図り、視覚障害者等に対し、様々なアクセシブルな書籍等や端末機器を活用して読書の機会を提供する等とともに、点字・録音図書等の郵送サービスを含む地域の視覚障害者に対するアクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援を引き続き実施していく。 ・点字図書館が担ってきた音訳図書の製作やアクセシブルな書籍等の利用に関する情報提供などの機能は視覚障害者以外の視覚による表現の認識が困難な者の読書環境の整備の推進に役立つものであることから、地域における公立図書館等との連携を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と協議しながら、点字図書館等の利用対象者の範囲について、アクセシブルな書籍等を必要とする方が利用できるよう制度面を含め検討を行い、その検討結果を踏まえ、受入れ環境の整備及びアクセシブルな書籍等の充実について検討する。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 【基本的考え方】 インターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援を行い、アクセシブルな書籍等の十分かつ円滑な利用を促進する。 また、国立国会図書館、同ネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の間の連携強化を図り、インターネットを利用したサービスの提供体制の強化を図る。 ・現在、国立国会図書館においては、自ら製作した「学術文献録音図書」の音声デイジーデータや、公立図書館等が製作し、国立国会図書館が収集した視覚障害者等用データを、個人、公立図書館等及び点字図書館に送信するサービスを実施している。一方、サピエ図書館においては、全国の点字図書館等で製作された点字やデイジーデータを個人や会員施設等がダウンロードすることができる体制を整えている。また、双方のシステム間の連携も図られており、視覚障害者等が全国にあるアクセシブルな書籍等を統合的に検索できるシステムも国立国会図書館により整備されている。これらのシステムの十分な活用を図るため、視覚障害者だけでなく視覚による表現の認識が困難な者も利用できることも含め、関係機関・団体間の連携等を通してこれらシステムの周知を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を図り、国立国会図書館やサピエ図書館のサービスについての周知や連携に必要な情報提供を研修会の開催やリーフレットの作成等を通じて行い、多くの視覚障害者等が視覚障害者等用データの送信サービスやサピエ図書館を利用できるよう会員加入の促進等の取組を進める。 ・このような取組を進めていく中で、視覚障害者等の障害の特性に応じた利用しやすいサービスが提供できるよう、国立国会図書館とサピエ図書館の役割も踏まえながら、サービス内容、システムの改善や提供体制等の検討を行う。 ・サピエ図書館の運営は、加入図書館やボランティア団体等からの会費や障害当事者からの寄付、国の補助金で実施しているところであるが、会員加入の促進を図り、将来的な会員の拡大等の状況や国の役割も踏まえ、安定的な運営が図られるよう支援を推進していく。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 【基本的考え方】 特定書籍・特定電子書籍等の製作支援のため、製作に係る基準の作成等、質の向上を図るための取組に対する支援を行う。 (1)製作基準の作成等の質の向上のための取組への支援 ・アクセシブルな書籍等やサピエ図書館におけるアクセシブルな電子書籍等の充実及び質の向上を図るため、その製作手順や仕様の基準の作成についてサピエ図書館を運営する者への支援を行い、特定書籍や特定電子書籍等の製作を行う者への製作手順等の共有を図る。 ・地域における点字図書館と公立図書館等との連携を支援し、特定書籍や特定電子書籍等の製作のノウハウや製作された書籍等に関する情報の共有による製作の効率化を図る。 ・出版者に対し、特定書籍及び特定電子書籍等の製作に係る基準の作成等の質の向上を図るための取組に資する情報提供や助言等を行う。 ・障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発(特定電子書籍等の質の向上に資する製作支援技術を含む。)を行う者への支援を引き続き実施する。 (2)出版者からの製作者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備への支援  ・出版者からの特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する電磁的記録の提供を促進するための情報提供や助言等を行う。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討していく。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 【基本的考え方】  アクセシブルな電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策の推進を図る。 また、視覚障害者等への合理的配慮の提供の観点から、出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策の推進を図る。 (1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進  ・アクセシブルな電子書籍等の販売が促進されるようにするため、昨今の新たな技術(特にICT)の動向と視覚障害者等の多様なニーズを分析し、視覚障害者等の読書環境の整備に向けた取組を検討する。 (2)著作権者と出版者との契約に関する情報提供  ・出版者は、著作権者との出版に関する契約において電磁的記録の提供が含まれていない場合、著作権者から改めて許諾を受ける必要がある。このため、著作権者と出版者との契約の在り方等、アクセシブルな電子書籍等の販売等に関する著作権者と出版者との契約に資する情報提供や助言等を行う。 (3)出版者からの書籍購入者に対する電磁的記録等の提供の促進のための環境整備に関する検討への支援 ・出版者が書籍に係る電磁的記録の提供を行うこと、その他出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に資する情報提供や助言等を実施する。その際、視覚障害等のある児童生徒及び学生等の教育や研究に必要とされる書籍等や、視覚障害等のある教育関係者や図書館関係者等が職務活動の遂行に必要とする書籍等の電磁的記録の提供が重要であることにも留意する。 ・電磁的記録の提供については、流出の防止、作成に係る費用負担の在り方、管理する仕組み等の課題がある。このため、出版関係者との検討の場を設け、電磁的記録の提供に関する課題や具体的な方法について検討するとともにアクセシブルな電子書籍等の製作及び販売等の促進を図っていく。 (4)その他 ・音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍等を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における適切な基準の整理等を行い、図書館への導入を支援する。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 【基本的考え方】 「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の枠組みに基づき、視覚障害者等がアクセシブルな電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備を図る。 ・アクセシブルな電子書籍等の受入れ・提供のための国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関(国立国会図書館、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会等)において、役割分担及び連携方法の整理を行い、外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手及び国内で製作されたアクセシブルな電子書籍等の外国への提供を促進する。また、大学関係機関への情報提供やノウハウの共有を行う等、連携の強化を図り、外国で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を円滑に入手したり、日本で製作された学術文献のアクセシブルな電子書籍等を外国に提供したりできる環境の整備を進めていく。 ・外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進するため、国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行うとともに、その運用状況も踏まえつつ、必要に応じて更なる環境整備を行う。 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 【基本的考え方】 アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等、これに関する情報及びこれを利用するのに必要な情報通信技術について視覚障害者等が入手及び習得するため、必要な支援等を行う。 ・視覚障害者等によるアクセシブルな書籍等の利用を促進するため、端末機器等の利用に当たり、支援の必要な者が必要な支援を受けられるよう、以下の取組を推進する。 ① 点字図書館と公立図書館が地域のICTサポートセンターと連携し、視覚障害者等に対して、様々な読書媒体の紹介やそれらを利用するための端末機器等の情報入手に関する支援を行う。なお、読書困難者の読書を支援する拡大読書機、ルーペ等の拡大補助具、点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の機器について、個々の状態に応じた活用に留意する。 ② 点字図書館と公立図書館が連携し、サピエ図書館及び国立国会図書館の視覚障害者等用データの送信サービス等にかかる、パソコン、タブレット、スマートフォン等を用いた利用方法に関する相談及び習得支援、端末機器の貸出等による支援を行う。 ③ 地方公共団体による、アクセシブルな電子書籍等を利用するための点字ディスプレイ、デイジープレイヤー等の端末機器等の給付を行う。 ・上記の取組を推進するため、ICTサポートセンターの普及の支援や端末機器等の習得支援等を行う公立図書館等の職員等に対する研修を実施し、視覚障害者等が身近な地域において端末機器等の利用に係る講習会等の支援を受けることが可能となるよう、施策の推進を図る。 ・小・中・高等学校、特別支援学校の学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、また、現在、学校におけるICT環境整備が進められていることも踏まえ、各教育委員会の指導主事等を集めた全国会議等の場においてその趣旨を説明する等、その周知を図る。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 【基本的考え方】 アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発及びその成果の普及に必要な施策の推進を図る。 ・アクセシブルな電子書籍等及びこれを利用するための端末機器も含め、広く障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発やサービスの提供を行う者に対する資金面での支援及びその開発成果の普及を引き続き実施する。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) 【基本的考え方】 特定書籍・特定電子書籍等の製作及びアクセシブルな書籍等の利用のための支援に関する人材について、これらの養成、資質の向上及び確保に係る支援を行い、円滑な利用を促進する。 また、公立図書館等及び国立国会図書館において、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実のため、司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ、司書等の資質の向上を図る。 (1)司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上  ・司書及び司書補(以下「司書等」という。)、司書教諭及び学校司書(以下「司書教諭等」という。)並びに職員、ボランティア及び図書館協力者(以下「職員等」という。)を対象に、障害者サービスに関する内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法に習熟するための研修等を実施し、資質の向上を図る。また、公立図書館においては、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備を行う。 ・大学の司書等及び司書教諭等の養成は、専門的職員としての入口に位置付けられる重要な段階である。このため、養成課程において、学生段階から障害者サービスの知識等について学習する機会を充実する。 (2)点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ・点字図書館等や公立図書館等及びそこで活動するボランティア団体等における点訳、音訳、アクセシブルな電子データ製作等に携わる人材について、製作基準の共有やノウハウ等の習得に係る研修の取組を支援し、質の向上を推進する。 ・点訳や音訳、アクセシブルな電子データ製作に携わる人材の不足が課題となっており、この分野における人材の確保が必要となっている。このため、点字図書館、公立図書館等と地方公共団体が連携して、人材の募集や養成、活動支援等に計画的に取り組むことができるよう支援する。 なお、製作人材の確保に関しては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策を関係者間で検討していく必要がある。 ・新たな端末機器やソフトウェア、合成音声の活用等、技術の進歩に応じてアクセシブルな書籍等の製作を行う人材や体制を確保していくことも必要である。 Ⅳ おわりに 本基本計画では、視覚障害者等が読書を通じて文字・活字文化に触れることのできる環境整備を行うための第一期の計画として、当面の取組の方向性を示した。今後、更に実態把握を行い、より具体的な目標や達成時期等についての検討や定期的な評価を行っていく。   本基本計画に基づき取組を着実に推進していくためには、地方公共団体や関係機関、当事者等多くの関係者の理解が必要であり、丁寧な周知を行うとともに、国において、引き続き、関係者間による協議会を設置し、課題の解決に向けた取組を実施していく。また、関連施策の実施に当たって、国は必要な財源の確保に努める。   また、地方公共団体においても、本基本計画による取組がより具体的に進展するよう、取り組むべき事項や課題ごとに、組織の枠を超えた取組や関係者間で連携した取組が行えるような体制の構築を図る必要がある。特に都道府県は、域内全体の視覚障害者等の読書環境の整備が図られるよう、自ら行うべき図書館等の施策の充実を図るとともに、市町村に対して必要な指導・助言等を行うものとする。 国は、本基本計画を踏まえ、地方公共団体における計画の策定が円滑に行われるよう、好事例の周知をはじめとした支援を行っていく。 本基本計画に基づく施策の推進を図る際には、その対象者である視覚障害者等には、盲、弱視(ロービジョン)、盲ろう、発達障害、肢体不自由等、様々な特性があることを踏まえて取り組むことが求められる。加えて、聴覚障害者、知的障害者、高齢者、外国人等、様々な状況により読書や図書館の利用に困難を伴う者への配慮も認識して取り組むことが必要である。とりわけ、アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る研究開発の推進に当たっては、長期的な視点から、全ての者に配慮したユニバーサルデザインの実現を目指すことが重要である。 この基本計画に基づく施策の推進により、全ての国民が文字・活字文化の恵沢を享受できる社会が実現し、真の共生社会の実現に寄与することが期待される。 ※ここでは、注は省略して掲載いたしました。注の内容につきましては、下記URLをご参照ください。 参考URL PDFデータ https://www.mhlw.go.jp/content/000648646.pdf テキストデータ https://www.mhlw.go.jp/content/000735856.txt 点字データ https://www.mhlw.go.jp/content/000735860.bes ------------ 報告書執筆者一覧(50音順) 川崎弘(視覚障害者総合支援センターちば) 佐藤聖一(埼玉県立久喜図書館) 成松一郎(有限会社読書工房) 野口武悟(専修大学文学部) 原田敦史(堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター点字図書館) ------------ 奥付 令和3年度障害者総合福祉推進事業 点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究事業報告書 発行日:2022年3月31日 編集・発行:特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会 住所:〒 550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1-13-2 電話:06-6441-1068 FAX:06-6441-1066 E メール:zensijokyo-jimu@naiiv.net ウェブサイト:http://www.naiiv.net/ 組版:有限会社読書工房 印刷:アポロ印刷株式会社 以上