--表紙-- 「サピエ」を活用して読書が困難な人にも開かれた図書館に  障害者差別解消法により、公立図書館は読書が困難な人も図書館を利用できるように、合理的配慮*をすることが求められます。 2014年1月、日本は国連の障害者権利条約を批准しました。そして、障害がある人もない人も生きやすい社会を目指して、2016年4月1日から障害者差別解消法が施行されます。  *合理的配慮:障害のある人が日常生活や社会生活を送る上で妨げとなる社会的障壁を取り除くために、過重な負担にならない範囲で提供される必要かつ合理的な条件整備をいいます。  --イラスト(説明)--  中央に「地域の公共図書館 UNIVERSAL LIBRARY」のイラスト。図書館の周りには、白杖を持って歩く人、電話でデイジー図書を依頼する人、拡大鏡で本を読む人、点字図書のイラストがある。  図書館には日本地図が重なっている。  図書館の上方中央に「サピエ 視覚障害者情報総合ネットワーク」、左上に「視覚障害者情報提供施設・団体」、右上に「ボランティア」と書かれた雲状のイラストがあり、図書館とつながっている様子を表している。  --イラスト 終わり-- --中面(見開き)-- 【サピエのしくみ】  サピエは、視覚障害者や活字による読書に困難のある人が利用できるコンテンツ(点字データ、音声デイジーデータ等)をはじめ、暮らしに役立つ身近な情報などさまざまな情報を提供するネットワークで、2010年4月から運用を始めています。  ※サピエは、ラテン語のsapientia(サピエンティア=知識、叡智)を語源とし、それを呼びやすいように短くしたものです。  --イラスト-- 【WHAT is sapie? サピエを使って利用者に情報が届くまで】  (視覚障害利用者。電話)村岡花子さんの訳した『赤毛のアン』を録音図書で読みたいんですがありますか?  (図書館職員。電話応対)はい。『赤毛のアン』ですね。サピエで検索してみます。  (図書館職員。パソコンで検索)あ、ありました。すぐダウンロードしますね。  (視覚障害利用者。電話)ありがとうございます。デイジーで読みたいんですが  (図書館職員。電話応対)はい。CDにして郵送します。  CDが郵便で自宅に届く。お茶を飲みながらCD図書を聞く利用者。(吹き出し:アンはマシュー・・・)  --イラスト 終わり-- 【プロセス】 1.  視覚障害等の利用者から図書のリクエストの電話が入ります。  担当者はサピエが交付するログインIDとパスワードを使い書誌を検索したり、点字、音声デイジー、テキストデイジー、シネマ・デイジーなどのコンテンツをダウンロードします。  著者名、キーワードが曖昧な場合にも検索により希望の作品を絞り込むことができます。 2.  利用者の希望するメディア(点字図書、CDなど)で貸し出します。  サピエ上にデータがなくても、書誌が登録されていれば、その所蔵館にリクエスト(オンラインリクエスト)して、現物の貸し出しを受け、それを利用者に郵送して貸し出します。 【サピエを利用できる人】  視覚障害者  その他視覚による表現の認識に障害のある人(学習障害、発達障害、知的障害等、読みの障害のある人)  寝たきりやまひ等により、資料を持ったりページをめくったりできない人  ※公共図書館において登録が必要 【Q&A】 Q1 サピエにはどんな種類のデータがどのくらいありますか?  点字、音声デイジー、テキストデイジー、マルチメディアデイジー、シネマ・デイジーの5種類のデータがあります。  [コンテンツ登録数](2014年8月現在)  点字:159,850タイトル  音声デイジー:55,715タイトル  テキストデイジー:883タイトル  マルチメディアデイジー:42タイトル  シネマ・デイジー:105タイトル  ※書誌総目録数:878,828タイトル Q2 サピエを活用している施設や団体はどのくらいありますか?  点字図書館や公共図書館、ボランティア団体など288施設・団体が加盟しています。また、12,923人の個人会員が直接利用しています(2014年3月現在)。最近は公共図書館の加盟が増えており、すでに点字図書館数を上回っています。  点字図書館:86  公共図書館:109
  大学図書館:7  盲学校:17  ボランティア団体:43  その他:26 Q3 サピエを利用するために必要な機材は?  パソコンとインターネット環境さえあれば視覚障害者等個人会員の登録窓口としてスタートできます。また、オンラインリクエストによって所蔵館から借り受け、利用者に貸し出すことはすぐにできます。その後は、予算に応じて必要な機材をそろえてください。 [あれば役立つ機材]  CDにデータを書き込めるパソコン  CDコピー機  CD郵送ケース等  点字編集ソフト  点字プリンタ  コンピュータ用点字用紙等 Q4 サピエの法的根拠は何ですか?  サピエは、著作権法第37条を法的根拠とし、公表された著作物を、点字データ、音声デイジーデータをはじめ、視覚障害者等(視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある人)が必要とする方式によってデータを製作し、対象者に公衆送信を行うことが認められています。 Q5 サピエの利用料はどのくらいかかりますか?  施設会員の年間利用料は4万円です。  *「利用料」は「図書購入費」等の科目に替えることも可能です。図書館が設定する予算科目に対応できます。また、図書館の事情によって、会員種別を選択します。詳しくは、サピエ事務局にご相談ください。 --裏面-- 【サピエを活用しています】 1.サピエが実現した視覚障害者が本を選べる環境     岡山県立図書館 島津屋護さん(司書)  当館では2011年にサピエを導入しました。サービス開始時にはチラシを作り、岡山県内の図書館や視覚障害者センター、病院や特別支援学校などへのアナウンスに力を入れ、新聞紙上でも案内を行いました。この結果、導入前は100冊程度しかなかったデイジーの貸し出し件数が2013年には約6000冊と飛躍的に増加しました。潜在ニーズがあったのだと思います。再生機器を持っていない利用者が自分の機器を購入するまでの間、当館で用意したプレクストークなどの再生機器も40台ほどを貸し出しています。  当館では録音図書の製作はしておらず点字図書館から借りる一方なのですが、朗読ボランティア養成などに協力しています。  サピエを活用する一番のメリットは利用者の方が本を選べる環境ができたことですね。中途で失明された方が「長い間読書をあきらめていたが本を読む楽しさを取り戻せた」とおっしゃるのを聞くと司書としてのやりがいを感じます。 2.視覚障害者と図書館をつなぐ本のソムリエに     千葉県立西部図書館 松井進さん  千葉県には3つの県立図書館があり、障害者サービスの登録者数は3館合同で、400~500名です。当館がサピエ(当時は「ないーぶネット」)に加入したのは10年ほど前です。利用者さんの中には自分でパソコンを利用してサピエを検索しオンラインリクエストをする方も、曖昧な書籍の情報をもとに電話で本の選択について相談してくる方もいます。最近は、点字よりも音声データのリクエストが増えています。デイジーがスマートフォンで読めるようになったことも大きな進歩です。映画に副音声のついたシネマ・デイジーや、月刊の文芸誌や週刊誌などの録音雑誌にも人気があります。インターネットを見て話題の情報には常に注意を払っています。ドラマや映画の原作、本屋大賞やミステリー大賞、直木・芥川などの文学賞の情報も目が離せません。  図書館は情報の扉を開く場所。私自身も視覚障害者で本と人をつなぐ仕事をしていますが、自分を、目の悪い方と図書館をつなぐ、「本のソムリエ」だと思っています。 【利用者の声 VOICE】  デイジー図書で読書三昧の日々です     中村裕子さん(千葉県)  私は以前から本や漫画が好きだったので、中途失明により読書ができなくなったのが一番のショックでした。でも地域の公立図書館を通してサピエの本を電話でリクエストできるようになり本当に幸せです。私が好きな本はダーク・ビット・シリーズやトム・クランシーの作品で、時代物では佐伯泰英や平岩弓枝の「はやぶさ新八御用旅」シリーズを借ります。自宅では料理をする時も洗濯物を干す時も一日中聞く読書をしています。旅行にもSDに入れて携帯型のデイジー再生機を持って行くほど読書に親しんでいます。 【お問い合わせ】  詳しくは電話、メールで下記サピエ事務局へお問い合わせください。  E-MAIL:sapie-jimu@naiiv.net  TEL・FAX:06-6441-1078 ----- 特定非営利活動法人 全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)サピエ事務局 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2 E-MAIL:sapie-jimu@naiiv.net TEL・FAX:06-6441-1078 www.sapie.or.jp (ここまで)