点字・録音・拡大資料等の相互貸借に関する申合せ (はじめに)  図書館は、憲法に定められている生存権、教育を受ける権利、表現の自由、学問の自由など、あらゆる権利と自由を保障するために必要な資料を利用者の求めに応じて公正かつ迅速に提供する責務を担っている。  この責務を遂行するためには、図書館は、通常の印刷物を読むことが困難な利用者に対し、その求めに応じて利用できる形態に変換して提供するための最大限の努力をはらわなければならない。  しかし、この形態の変換には多くの手間と時間と費用を要し、現存する点字・録音・拡大等の資料は、利用者の資料請求を満たすにはあまりにも僅少であると言わざるを得ない。  そこで、行政区域(サービス対象地域)を越えた、また館種を越えたすべての視覚障害者情報提供施設・団体(以下「施設」という)が互いに協力して、これらの僅少な資料を有効に活用できる体制を確立する必要がある。  1981年度より国立国会図書館が「点字図書・録音図書全国総合目録」を作成配布し、全国の所蔵資料の検索が可能となったことから、相互貸借による資料の利用が徐々に増えてきた。そこで、相互貸借を行う上でのルール作りが必要となり、「申合せ」を作成することとなった。特に、「てんやく広場」を発端として「ないーぶネット」「サピエ」と発展してきた全国視覚障害者情報提供施設協会が運営するネットワークにより、視覚障害者への情報提供を推進するために相互貸借は不可欠である。  このような情報環境の時代にあって、ここに資料の相互貸借の実施に必要な最小限の約束ごとを定め、かつ相互に遵守するものとする。なおこの申合せは、次の条件を前提とする。  1 施設相互に信頼関係が存すること。  2 施設は相互に協力関係を深め、資料の製作開始情報を交換し、重複を避けるとともに、質の向上に努めること。  3 施設がサービス対象としている利用者の資料要求に対しては、最後まで責任をもって応えること。  4 一人の利用者の一つの資料要求に対して、参加施設が一体となって総力を挙げて応えること。  5 参加施設は所蔵するすべての資料を開放することを原則とし、視覚障害者情報総合ネットワークの「サピエ」ならびに、国立国会図書館作成の「点字図書・録音図書全国総合目録」に参加するよう努力すること。  6 相互貸借の手続きを最大限簡素化すること。  (目的)  第1条 この申合せは、利用者が各施設の窓口を通じて参加施設の全蔵書を利用できる方法及び利用者に対する情報提供サービスを、より一層充実強化するための資料の相互貸借について必要な事項を定める。  (参加資格)  第2条 この申合せに参加できるのは、通常の印刷物を読むことができない利用者に対しサービスを行っている視覚障害者情報提供施設・団体、公共・大学・学校等の図書館で、この申合せを遵守しうるすべての施設とする。  (資料の範囲)  第3条 相互貸借をする資料の範囲は、各施設が所蔵する全蔵書とする。ただし閲覧用辞書など貸出施設で貸出を不適当とするものは除外する。  (資料の種類)  第4条 相互貸借をする資料の種類は、点字資料、録音資料、大活字または拡大資料、さわる絵本など、通常の印刷物を読むことができない利用者のために形態を変換したすべての資料とする。  (貸出期間)  第5条 資料の貸出期間は郵送に要する往復の日数を除き30日以内とする。  2 貸出期間の延長は、貸借相互施設の協議による。  3 貸出施設は、業務に必要があると認められるときは、期間内でも返却を求めることができる。  4 貸出施設に予約者がある場合は、借受施設はコピーをして速やかに返却するなどの配慮をする。ただし、コピーは著作権法上認められる範囲で行なうこととする。  (貸出手続)  第6条 資料の借受については、電話・手紙・FAX・「サピエ」オンラインリクエスト・Eメール等で申込みを行う。なお借受申込書、発送通知、受領書等特別の書式を設けないことを原則とする。  2 貸出施設は、求められた資料をすぐに提供できない場合、すみやかにその旨を借受施設へ連絡する。  3 資料を貸出する場合、例えばコピーをして貸出するような一過性の対応であっても、その資料が何であるかが借受側に分かるような方法で、書名・施設名等を墨字で明示するものとする。さらに、可能な限り点字も併記するよう努める。  4 相互貸借に参加する施設は、原則として特定録音物等郵便物発受施設の指定を受けて、郵送により資料を貸借する。ただし、その方法が困難な施設については、借受施設が貸出施設へ赴くか、通常の郵便料金等の送料を支払って貸出、返却の手続きを行うものとする。なお、墨字の扱いは、点字に墨字を併記をするなど「内国郵便約款」を遵守することとする。  5 製作した資料は、可能な限り製作した施設・団体が所蔵若しくは提供するものとし、他施設・団体からの貸出依頼に協力するものとする。  (返却手続)  第7条 借受施設は、貸出施設に資料を返却する際、必ず資料の状態を点検する。(破損、資料の入れ違い等)  (貸借に要する費用)  第8条 郵送料等、貸借に要する費用がかかる場合は、借受施設の負担とする。  (資料の複製)  第9条 録音資料をコピーする場合は、著作権法施行令第2条に定める施設以外の施設及び図書館は、著作権者の許諾を必要とする。    (事故の際の処理)  第10条 相互貸借資料に関する遅延・き損・紛失等の事故は、借受施設において次の各号に掲げるところにより処置するものとする。  @貸出施設製作の資料については、同等の未使用のテープ・CD等により弁償する。  A録音資料・点字資料等市販の資料については、現品を持って弁償する。  B貸出施設製作の点字資料については、原則として借受施設が点訳し弁償する。ただし、パソコン点訳による点字データが存在する場合はデータを活用し、原則として点字打ち出し並びに製作材料の負担による弁償を行う。  C上記以外の資料および郵送ケース・郵送袋等付随物品について、その他この申合せに記載のない事項については借受施設、貸出施設双方協議の上、適宜弁償する。  なお、借受施設、貸出施設双方の協議による合意事項は、本申合せに優先するが、相互貸借の必要性を理解し、互いに誠意を持って対応することとする。   (補則)   サービス対象地域以外の利用者からリクエストがあった場合、サービス対象地域の施設をとおして借りられることを利用者に誠意をもって伝える。ただし次のような場合には、この方法によらず直接貸出できるものとする。  @ 当該施設が相互貸借を実施していないか、そのための協議が成立しない場合。  A 利用者の希望により緊急を要する場合。  (付則)   この申合せの改廃は全国視覚障害者情報提供施設協会理事会の承認を得るものとする。  1.この申合せは、1981年11月5日より施行する。  2.この申合せは、1987年10月20日より改正施行する。  3.この申合せは、2002年10月11日より改正施行する。  4.この申合せは、2018年5月30日より改正施行する。